経営セーフティ共済で節税できなかった?税理士が解説する書類添付漏れと解約の落とし穴
加入したのに節税できなかった——経営セーフティ共済の失敗事例と正しい使い方を徹底解説します。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは何か
経営セーフティ共済の正式名称は中小企業倒産防止共済です。節税策として広く知られていますが、本来の機能はこうです。
📌 本来の目的
取引先が倒産した際、掛金総額の最大10倍・最大8,000万円まで、無担保・無保証・無審査で共済金の融資を受けられる共済制度です。銀行融資よりもスピーディーに資金調達できる点が最大の特徴です。
ただし、商売上の掛け取引(売掛金)がなければ共済金の融資を受けられないケースがあります。現金商売のみの方は基本的に対象外となる点にご注意ください。
また、今日時点での倒産・法的整理の場合のみが対象であり、夜逃げは対象外です。
加入資格についても確認しておきましょう。
- 完全な新設法人(1期目)は加入不可。基本的に2期目から。
- 個人事業から法人成りした場合は1期目から加入可能。
- 個人事業主も加入可能。
- 医療法人は対象外。
📝 このセクションのまとめ
- 本来の目的は連鎖倒産防止のための共済制度
- 売掛金がない現金商売は対象外になるケースあり
- 新設法人1期目は原則加入不可(法人成りは例外)
- 医療法人は対象外
経営セーフティ共済の主な機能とメリット
経営セーフティ共済には節税以外にも多彩な機能が備わっています。掛金の基本スペックを確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月額掛金の範囲 | 最低5,000円〜最大20万円(常時変更可能) |
| 積立上限 | 800万円 |
| 掛金の税務上の扱い | 全額損金算入(経費計上)可能 |
| 年払い(前納)の上限 | 月額20万円×12ヶ月=240万円 |
| 解約時の返戻率 | 40ヶ月以上加入で100%返還 |
| 前納割引 | わずかながら割引あり |
| 運営機関 | 中小企業基盤整備機構(政府系組織) |
特に注目すべきは1年分を前納して全額経費算入できる点です。月額最大20万円×12ヶ月分=240万円の経費を一度に計上できます。
📌 継続適用は不要
家賃や生命保険の年払いは「短期前払い費用の特例」により継続適用が必要ですが、経営セーフティ共済は現金主義(払った金額だけが経費)のルールが適用されるため、継続適用は不要です。毎年自由に月払い・年払いを選択できます。
また、積み立てた解約手当金の範囲内で借り入れができる機能もあります。
- 融資金利:年0.9%(非常に低利)
- 返済方法:1年一括返済(金利を払い続けることで借り換え可能)
- 満額800万円積み立て時の融資限度額:760万円(金利負担は年約7万円)
📝 このセクションのまとめ
- 掛金は月5,000円〜20万円で常時変更可能
- 年払いで最大240万円を一括経費計上できる
- 40ヶ月以上加入で解約時100%返還
- 積立額の範囲内で年0.9%の低利融資が可能
- 継続適用不要で柔軟に使える
経営セーフティ共済のデメリットと注意点
メリットだけでなく、デメリットをしっかり把握することが大切です。
| デメリット | 詳細 |
|---|---|
| 積立上限が1社あたり800万円 | 800万円以上積み立てたければ2社以上の経営が必要 |
| 40ヶ月未満の解約は目減り | 解約返戻金が100%にならず損をする可能性がある |
| 運用益なし | 小規模企業共済のような利回り(約1%)はない。ただしマイナスにもならない |
| 倒産時の共済金借入で積立が目減り | 借入額の10分の1が積立額から控除される。8,000万円借入時は800万円が没収 |
| 出口課税のリスク | 解約時に解約手当金が収益として課税対象になる |
⚠️ 注意:倒産時の共済金融資は「実質有利子」
連鎖倒産防止のための共済金融資は「無利子」とされていますが、借入額の10分の1に相当する積立額が没収されます。8,000万円を借りた場合、積み立てた800万円が控除されてしまいます。本来の貸付機能は実質的に使いにくい点に注意が必要です。
また、前納(年払い)を希望する場合は希望月の5日までに手続きをしないと、経費計上のタイミングが1ヶ月ずれてしまいます。新規加入してすぐに年払いを希望する場合は手続きに約2ヶ月かかるため、早めの手続きが不可欠です。
📝 このセクションのまとめ
- 40ヶ月未満解約は返戻金が目減りする
- 倒産時の共済金融資は積立額が実質没収されるリスクあり
- 解約手当金は収益として課税される(出口課税)
- 前納手続きは希望月の5日までに。新規加入は約2ヶ月かかる
実際にあった失敗事例①:書類添付漏れで経費を否認された
ここからは実際にあった失敗事例を紹介します。まず最初の事例は、法人税申告書への書類添付漏れによる経費否認です。
中小企業基盤整備機構のホームページには次のように記載されています。
📌 損金算入に必要な書類(法人の場合)
掛金を損金に算入するためには、以下の2つの書類を確定申告書に添付することが必要です。
- 特定の危機に対する負担金等の損金算入に関する明細書(法人税別表10-7)
- 適用額明細書(中小企業の軽減税率適用時に通常添付される書類)
②の適用額明細書は中小企業の軽減税率を適用する際に通常添付されるため、多くの場合は問題ありません。しかし、①の別表10-7が添付されていないケースが実際に多く見られます。
別表10-7の記載イメージはこのようなものです。「中小企業倒産防止共済」と記入し、金額欄に支払った金額(例:240万円)を記入します。この書類の添付がなければ、掛金を経費に落とすことができません。
実際に起きた事例として、会計事務所を変更して来られたお客様のケースがあります。前の会計事務所が倒産防止共済への加入をアドバイスしたものの、申告書に別表10-7が添付されていませんでした。その後税務調査が入り、経費が否認されてしまいました。書類の添付漏れは交渉でどうにかなるものではなく、本当に気の毒な事例でした。
⚠️ 注意:個人事業主の場合も書類添付が必要
個人事業主の場合も、「特定の危機に対する負担金等の必要経費に関する明細書」の添付が必要です。こちらは決まったフォーマットはなく、WordなどでA4用紙に作成して確定申告書に添付すればOKです。
顧問税理士がいるから安心とは限りません。申告書の控えが届いた際は、別表10-7が添付されているかどうか必ず確認してください。できれば申告期限前、申告書提出前の段階で確認することをおすすめします。
📝 このセクションのまとめ
- 損金算入には別表10-7と適用額明細書の2つの添付が必須
- 別表10-7の添付漏れは税務調査で経費否認の原因になる
- 顧問税理士がいても添付漏れは起きる。自分でも確認を
- 個人事業主も明細書の添付が必要(フォーマット自由)
実際にあった失敗事例②:解約タイミングのミスで出口課税された
もう一つの失敗事例は、解約のタイミングをミスって出口で多額の課税を受けてしまったケースです。
経営セーフティ共済は、正確には「節税」ではなく「課税の繰り延べ(税金の先送り)」です。入り口では掛金を経費計上して利益を圧縮できますが、解約時には解約手当金が収益として計上されます。
業績が好調な年に解約すると、その年の利益に解約手当金が上乗せされ、多額の納税が発生してしまいます。生命保険でもよくある話ですが、節税策は必ず「出口」をイメージしてから活用することが重要です。
⚠️ 注意:解約手当金は必ず収益として課税される
解約手当金は全額が収益として課税対象になります。解約のタイミングを誤ると、入り口で節税できた以上の税負担が出口で発生することがあります。解約前に必ず税理士に相談しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 経営セーフティ共済は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」
- 解約手当金は全額収益として課税される
- 業績好調な年に解約すると多額の納税が発生するリスクがある
- 出口をイメージしてから加入・解約を検討することが重要
成功事例:解約手当金をうまく「消す」方法
では、どうすれば解約時の課税を避けられるのでしょうか。解約手当金を何らかの経費・損失で相殺するのがポイントです。実際にあった成功事例を紹介します。
| 解約手当金の「消し方」 | 対象業種・状況 | ポイント |
|---|---|---|
| 赤字・繰越欠損金を活用 | 建築業など業績変動が激しい業種 | 大赤字の年に解約すれば解約手当金と相殺できる |
| 大規模修繕に当てる | 大家業・製造業(工場保有)など | 数千万円規模の修繕費で解約手当金を相殺 |
| 役員賞与・退職金に当てる | 法人全般 | 事前確定届出給与(役員賞与)や退職金として支出 |
例えば建築業の場合、ある年度に1,000万円以上の赤字が出たタイミングで倒産防止共済を解約しました。満額800万円積み立てていたため800万円が収入に計上されましたが、それを上回る赤字があったため課税されずに済み、かつ資金を手元に戻すことができました。入り口で節税して、出口でも課税されずに済んだ成功事例です。
大規模修繕も、物件によっては数千万円単位の費用がかかるため、解約手当金との相殺に有効です。
📌 課税の繰り延べは「悪」ではない
経営セーフティ共済は節税ではなく課税の繰り延べですが、これは必ずしも悪いことではありません。会社経営で最も大事なのは節税ではなく資金繰りです。資金繰りを自らコントロールするための「課税の繰り延べ」として活用する発想が重要です。
なお、一度解約しても再び経営セーフティ共済への加入は可能です。資金繰りが落ち着いて再び節税の必要性が出てきた段階で再加入するという活用方法もあります。
ただし、業績変動がなく赤字になることがない業種の方は、解約のタイミングが非常に難しくなります。設備投資もなければ、事前確定届出給与(役員賞与)として取るか、退職金に当てるかしか選択肢がなくなってきます。
個人事業主の方には経営セーフティ共済をおすすめしにくい理由もここにあります。個人事業主は役員給与の概念がなく、800万円を超える赤字もなかなか発生しません。退職金の概念もないため、最終的には事業所得として課税されてしまいます。
📝 このセクションのまとめ
- 解約手当金は赤字・大規模修繕・退職金などで相殺するのが成功パターン
- 業績変動の激しい業種(建築業など)は赤字の年に解約するのが有効
- 一度解約しても再加入は可能
- 個人事業主は出口が限られるため法人向けにおすすめ
加入初年度の節税効果と融資審査を有利にする経理処理
加入初年度は特に大きな節税効果が得られます。具体的に見てみましょう。
| 経費計上の内訳 | 金額 |
|---|---|
| 月払い(決算月以外の11ヶ月分)月額20万円×11ヶ月 | 220万円 |
| 決算月に年払い(前納) | 240万円 |
| 合計経費 | 460万円 |
| 所得水準 | 実効税率(目安) | 節税効果(460万円に対して) |
|---|---|---|
| 年間所得800万円以下の部分 | 約25% | 約115万円 |
| 年間所得800万円超の部分 | 約30% | 約140万円 |
初年度に最大460万円の経費を作ることができ、法人税・住民税等を合わせた節税効果は約115万円〜140万円になります。ただし、資金繰りへの影響が大きいため、資金繰りに余裕がない方は無理をしないようにしてください。
次に、融資審査を有利にする経理処理についてです。一般的な経理処理と、おすすめの経理処理を比較します。
| 経理処理の方法 | 決算書への影響 | 節税効果 | 融資審査への影響 |
|---|---|---|---|
| 一般的な方法:保険料として経費処理 | 費用が増加、資産は増えない | あり | 財務体質が弱く見える |
| おすすめ方法:保険積立金として資産計上+申告書別表4で損金算入 | 貸借対照表の資産が増加 | あり(申告書上で調整) | 財務体質が充実して見える |
おすすめの処理は、経理上は「保険積立金」として資産計上し、法人税申告書の別表4で減算(損金算入)する方法です。これにより、決算書(貸借対照表)上は資産が増えて財務体質が充実して見えるため、融資審査に有利になります。なおかつ節税効果も得られる、いいとこ取りの処理です。
⚠️ 注意:どちらの経理処理でも別表10-7の添付は必須
「保険料として経費処理しているから別表10-7は不要」ということにはなりません。どちらの経理処理を選択した場合でも、法人税申告書への別表10-7の添付は必ず必要です。添付を忘れると、せっかく狙っていた節税効果を失うことになります。
📝 このセクションのまとめ
- 加入初年度は最大460万円の経費計上で115〜140万円の節税効果
- 融資審査を意識するなら「保険積立金」として資産計上+別表4で損金算入する処理がおすすめ
- どちらの処理でも別表10-7の添付は必須
加入すべき会社・加入しなくてよい会社の判断基準
最後に、加入すべきかどうかの判断基準を整理します。
加入すべき会社・事業者
- 連鎖倒産が怖いのでリスクヘッジをしたい(特にBtoB:卸売・製造業・建築業など取引金額が大きい業種)
- 利益が出ているので節税をしたい
- 自分の意志では貯蓄が難しいので強制的に積み立てたい
加入しなくてよい会社・事業者
- 利益が出ておらず節税の必要性もなく、リスクヘッジも不要な小規模事業者
- 100%現金商売で売掛金がない事業者(小売業・飲食業など主にBtoC)。加入できても本来の融資を受けられない
- 自分の意志で貯蓄ができ、すでに800万円をすぐ用意できる方
📌 掛金はいくらにすべきか
掛金の金額は、節税希望額と資金繰りの状況によって決まります。一概には言えないため、顧問税理士や専門家に相談しながら決めることをおすすめします。
📝 このセクションのまとめ
- BtoB業種で利益が出ている法人は加入を強くおすすめ
- 現金商売のみ・利益なし・リスクヘッジ不要なら加入しなくてよい
- 保証・貯蓄・節税・融資機能を兼ね備えた制度は他にほぼ存在しない
- 加入すべきと判断したら早めに手続きを開始する
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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