事業主貸・事業主借とは?税理士が解説する個人事業主の正しい仕訳の使い方

事業主貸・事業主借とは?税理士が解説する個人事業主の正しい仕訳の使い方
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個人事業主・フリーランスが確定申告で必ず目にする「事業主貸」「事業主借」。税額に影響しない仮勘定の意味と正しい仕訳を具体例で解説します。

事業主貸・事業主借は税額に影響しない仮勘定

個人事業主・フリーランスの皆さんは、確定申告の作業の中でこの2つの言葉に出会ったことがあるのではないでしょうか。「事業主貸」そして「事業主借」。一体何なのか、と思われている方はとても多いと思います。

📌 ポイント

事業主貸・事業主借は、いずれも税額に影響しないし、これを使ったところで節税にもなりません。あくまでも「残高合わせのための仮の勘定科目」です。

確定申告の作業とは、確定申告書(第一表・第二表)を作ることです。個人事業主や個人の大家さんは、その前に「決算書」を作成します。青色申告の場合は4枚、白色申告の場合は2枚の決算書に事業の業績や財務状況を記載し、それをもとに申告書を作り上げていきます。

今回の事業主貸・事業主借は、決算書の1枚目(損益計算書)には一切出てきません。つまり皆さんの業績には関係なく、税額にも節税にも一切関わってこないということです。

では、どこに出てくるのかというと、決算書4枚目の貸借対照表です。左側(資産の部)に「事業主貸」が、右側(負債の部)の下の方に「事業主借」が位置しています。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸・事業主借は損益計算書には出てこない
  • 貸借対照表に登場する残高合わせのための仮勘定
  • 税額・節税には一切影響しない

事業主貸とは何か?意味と具体例

事業主貸をシンプルに言うと、「事業資金をプライベートのために使った」という意味です。

法人ほど厳密なルールはありませんが、事業をされている方は事業用の預金口座とプライベートの預金口座を基本的に分けておいた方がよいです。事業用の口座だけを帳簿に載せ、会計ソフト上でデータ入力をして残高の管理・把握をしていきます。

この事業用の預金を、例えばプライベートのものに使った場合、経費にならない支出があったとしても預金の残高は合わせなければなりません。その際に、資料や消耗品などの経費科目を使うのはおかしいですね。経費の過大計上=脱税になります。そのためにとりあえず使う仮の勘定科目として「事業主貸」があるわけです。

なお、法人の場合は「役員貸付金」という厳密な科目を使って残高の把握が必要になりますが、個人事業の場合は事業主貸の残高を把握する必要はありません

事業主貸を使う具体的なケースは以下の通りです。

具体例内容
自分の給料・生活費個人事業主には「給与」という勘定科目がない。経費計上できないが生活資金は必要なので事業主貸を使う
生命保険料・小規模企業共済必要経費にはならない(所得控除として税額を減らす効果はある)。事業上の経費ではないため事業主貸で区分する
家事関連費の自己否認分(家事按分)車の減価償却費やオフィス併用の自宅家賃のうちプライベート使用分を取り消す処理に使う

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸=事業資金をプライベートのために使った場合の仮勘定
  • 給料・生命保険料・家事按分の自己否認分などが代表的な使用場面
  • 残高の把握は不要(法人の役員貸付金とは異なる)

事業主貸の仕訳例【3パターン】

事業主貸の仕訳を具体的に見ていきましょう。借方・貸方という簿記の概念に慣れていない方も、ぜひニュアンスを掴んでいただければと思います。

#取引内容借方貸方
自分への給与(生活費の引き出し)事業主貸現金・預金
生命保険料の支払い事業主貸現金・預金
家事関連費の自己否認(例:家賃10万円のうちプライベート70%分=7万円を取り消す)事業主貸 7万円地代家賃 7万円

①の自分への給与は、事業で稼いだ口座から自分の生活費を取るしかないのでやむを得ない仕訳です。

③の家事按分の自己否認は少しイメージが湧きにくいかもしれません。例えば毎月家賃10万円を払っていて、そのうちプライベートが70%の場合、地代家賃7万円を取り消します。そのときの相手勘定が「事業主貸」です。ニュアンスとしては、「事業用の口座から家賃を全額払ったけれど、そのうち7割のプライベート分については、事業の口座からプライベートの口座に貸してあげている」という意味合いです。

📌 省エネ化のポイント

②の生命保険料や小規模企業共済については、プライベートの口座から引き落としに設定するだけで仕訳が不要になります。確定申告の会計データ入力の労力を減らしたい方は、ぜひ口座を分けて省エネ化しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 給与・保険料の支払いは「借方:事業主貸 / 貸方:現金・預金」
  • 家事按分の否認は「借方:事業主貸 / 貸方:地代家賃(等)」
  • プライベート口座引き落としにすれば仕訳自体が不要になる

事業主借とは何か?意味と具体例

事業主借は事業主貸と真逆の考え方です。「事業経費を支払うためにプライベートの資金で立て替えた」というものです。法人で言えば「役員借入金」にあたり、法人の場合は残高の把握が必須ですが、個人事業主の場合はその必要はありません。

事業主借を使う具体的なケースは以下の通りです。

具体例内容
プライベート用クレジットカードで経費決済事業用の口座は動いていないが、経費として計上が必要な場合
預金利息を受け取った事業用口座の残高が増えるが、事業所得ではなく利子所得のため事業主借で処理
車などの固定資産を売却した現金が入ってくるが、譲渡所得のため事業所得には計上できず事業主借で処理

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主借=プライベート資金で事業経費を立て替えた場合の仮勘定
  • 預金利息・固定資産売却など「事業所得でない収入」の残高合わせにも使う
  • 法人の役員借入金に相当するが、個人は残高把握不要

事業主借の仕訳例【3パターン】と法人との違い

事業主借の仕訳も具体的に確認しましょう。特に預金利息と固定資産売却については、法人の経理と大きく異なるため注意が必要です。

#取引内容借方貸方
プライベート用クレジットカードで消耗品を購入消耗品費事業主借
事業用口座に預金利息が入金された現金・預金事業主借
車(固定資産)を売却して現金が入った現金・預金事業主借(+車両運搬具の残高を減らす)

⑤ プライベートカードで経費決済した場合:事業上の経費なので消耗品費として計上できます。ただし事業用の口座は一切動いていないため、個人資金で立て替えた=「事業主から借りて払った」というニュアンスで、貸方に事業主借が来ます。なお、カード会社の規約上、プライベートカードの事業利用が問題になるケースもあるため、念のごご注意ください。

⑥ 預金利息を受け取った場合:法人であれば「受取利息」という勘定科目を使いますが、個人の場合はそれが誤りになります。なぜかというと、個人が受け取る預金利息は利子所得であり、すでに源泉徴収で税金が差し引かれているため、確定申告は不要(申告不要)だからです。株式の配当や売却益と同様に、基本的に申告不要となっています。

⚠️ 注意

預金利息を事業収入に計上してしまうのは誤りです。利子所得は事業所得ではありません。ただし預金残高は増えているので残高合わせは必要です。その際の科目として「事業主借」を使います。

⑦ 車などの固定資産を売却した場合:簿記検定では「固定資産売却益」「固定資産売却損」という科目を習いますが、法人ではそれでOKでも、個人の場合はそれが誤りです。個人が固定資産を売却した場合、その大部分は譲渡所得(総合課税)になります。事業所得ではありません。

譲渡所得は最終的に事業所得と合算されますが、50万円の特別控除があったり、長期の総合譲渡所得については1/2に圧縮されたりと、計算方法が異なります。そのため、売却益・売却損を事業所得に計上するのは正しくなく、残高合わせのための「事業主借」を使います。

⚠️ 注意

固定資産の売却経理処理は会計事務所でも間違いが非常に多い箇所です。個人の固定資産売却は譲渡所得として処理するのが正しく、事業所得に「固定資産売却益」を計上するのは所得税法上の誤りです。

📝 このセクションのまとめ

  • プライベートカード経費は「借方:消耗品費 / 貸方:事業主借」
  • 預金利息は利子所得のため「受取利息」は使わず「事業主借」で残高合わせ
  • 固定資産売却は譲渡所得のため「固定資産売却益/損」は使わず「事業主借」で処理
  • 固定資産の経理処理は会計事務所でも間違いが多い要注意ポイント

事業主貸・事業主借は「残高合わせの仮勘定」と覚えよう

ここまでの内容をまとめると、事業主貸・事業主借とはこういうものです。

  • 経費にも収入にもならない、残高合わせのための仮勘定
  • 残高の把握は不要
  • 会計ソフトが自動的に相殺してくれる

極端な話、事業主貸と事業主借を厳密に分ける必要はなく、「事業主」という勘定科目1本だけを使うのでもOKです。個人資金の出入りを厳密に把握したい場合は分けた方がよいですが、残高の把握は法人のように求められていません。

なぜ残高の把握が不要かというと、会計ソフトが自動的に相殺してくれるからです。貸借対照表の仕組みを確認しておきましょう。

貸借対照表の項目位置内容
事業主貸左側(資産の部)事業資金をプライベートに使った累計
事業主借右側(負債の部)プライベート資金を事業に充てた累計
元入金右側(資本の部)個人事業主の資本金に相当するもの
青色申告特別控除前の所得金額右側(資本の部)今年の利益

今年の利益と元入金を合算した金額から、事業主貸の残高を差し引いた残額が、翌年期首の元入金になります。このように自動的に計算・相殺される仕組みになっているため、残高を個別に管理する必要がないのです。

📌 ポイント

事業主貸・事業主借で迷ったときは、さらっと流してください。売上を固める・仕入れを固める・経費を固めるの方がよっぽど大事です。不安に思わなくて大丈夫です。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸・事業主借は残高合わせの仮勘定で、残高把握は不要
  • 会計ソフトが自動相殺してくれるため、1本の科目にまとめてもOK
  • 貸借対照表上で「今年の利益+元入金-事業主貸」が翌年の元入金になる

金融機関からの見られ方:事業主貸が多すぎると印象が悪い

一点補足として、事業主貸・事業主借について金融機関がどう見るかについても触れておきます。

科目意味合い金融機関からの印象
事業主貸が多い事業主の個人的な使い込みが多い悪い印象になりやすい
事業主借が多い個人のお金を事業につぎ込んでいる比較的問題になりにくい

法人の場合、役員貸付金の残高が大きくなると役員賞与として課税される可能性が高まったり、金融機関での信用評価が落ちたりといったデメリットがあります。

個人事業主の場合はそこまで厳密ではありませんが、事業主貸の残高が膨らみすぎないように注意を払っておくことをおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業主貸が多い=個人的な使い込みが多いと見られ、金融機関の印象が悪くなる
  • 事業主借が多い場合は比較的問題になりにくい
  • 個人事業主でも事業主貸の残高が膨らみすぎないよう意識しておくとよい

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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