個人年金保険は一括受取りと年金受取りどちらが得か?税金と手取り額を税理士が解説

個人年金保険は一括受取りと年金受取りどちらが得か?税金と手取り額を税理士が解説
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個人年金保険の受け取り方で手取り額は大きく変わります。一括受取と年金受取、さらに受取時期の違いを実例で徹底比較します。

個人年金保険の受け取り方で税金の種類が変わる

個人年金保険を一括で受け取ると「一時所得」分割して年金で受け取ると「雑所得」になります。一時所得と雑所得では税金の計算方法が大きく違ってくるため、どちらで受け取るかによって手取り額が変わってきます。

📌 ポイント

個人年金保険の受け取り方と課税区分の関係は以下のとおりです。

  • 年金で分割して受け取る → 雑所得
  • 一括(一時金)で受け取る → 一時所得

📝 このセクションのまとめ

  • 受け取り方が「年金」か「一括」かで課税区分が異なる
  • 課税区分の違いが税金額・手取り額に大きく影響する

実例で確認!この個人年金保険契約の内容

今回使用する実例の個人年金保険契約の内容を確認しましょう。これは65歳支払い開始の10年確定年金です。

項目内容
年金支払い開始年齢65歳
年金の種類10年確定年金
保険料(年払い)31万8,759円
うち医療特約保険料15,153円
ネット年金保険料(年額)30万3,606円
払込期間平成3年11月〜平成31年(令和元年)11月 全29回
払込保険料総額880万4,574円
受取年金額(年額)180万円
受取年金総額(10年分)1,800万円
契約時の予定利率5.5%(平成3年11月時点)

払込保険料の総額は880万4,574円ですが、受け取れる年金の総額は1,800万円と、約2倍になっています。いわゆる「お宝保険」です。これは契約当時の予定利率が5.5%もあったためで、現在の低金利環境では考えられない利回りです。

📝 このセクションのまとめ

  • 29年間の払込総額880万円超が、受取総額1,800万円になるお宝保険
  • 予定利率5.5%という高利率が背景にある

3つの受け取りパターンと受取金額の比較

この個人年金保険には、受け取り方として以下の選択肢があります。

  1. 65歳から10年間、年金で受け取る → 総額 1,800万円
  2. 65歳時点で一括(一時金)で受け取る → 1,488万6,537円
  3. 70歳から10年間、年金で受け取る(5年繰り下げ) → 総額 2,250万7,430円

一括受取の場合、将来受け取る年金が現在価値に割り引かれるため、310万円以上のマイナスになります。一方、5年繰り下げた場合はその間の利回りが上乗せされ、受取年金は年額225万743円、10年で2,250万7,430円と、65歳受取に比べて450万円以上のプラスになります。

受け取りパターン受取総額65歳受取(年金)との差
①65歳から年金受取(10年)1,800万円基準
②65歳で一括受取1,488万6,537円▲311万3,463円
③70歳から年金受取(5年繰り下げ・10年)2,250万7,430円+450万7,430円

📌 ポイント

5年繰り下げると受取総額が25%増になります。ただし、公的年金(老齢年金)を5年繰り下げると42%増額になるため、公的年金の繰り下げ受給の方がさらに有利です。

📝 このセクションのまとめ

  • 受取総額だけ見ると「70歳繰り下げ年金受取」が最も多い
  • 一括受取は現在価値への割引が入るため受取総額が最も少ない
  • ただし手取り額を比べるには税金の計算が必要

雑所得(年金受取)の税金計算方法

年金で受け取る場合は雑所得として課税されます。雑所得の計算式は次のとおりです。

📌 雑所得の計算式

雑所得 = 収入金額(年金額)- 必要経費(対応する払込保険料)

必要経費は、払込保険料総額のうち当年の年金額に対応する金額です。

【①65歳から年金受取のケース】

  • 収入金額:年180万円
  • 必要経費:払込保険料総額880万4,574円 × 1/10 = 88万457円(年金180万円は受取総額1,800万円の10分の1のため)
  • 雑所得(年間):180万円 - 88万457円 = 91万9,543円

【③70歳から年金受取のケース】

  • 収入金額:年225万743円
  • 必要経費:88万457円(①と同額)
  • 雑所得(年間):225万743円 - 88万457円 = 137万286円

📝 このセクションのまとめ

  • 年金受取の場合は「収入 − 必要経費」が雑所得となる
  • 必要経費は払込保険料総額をその年の受取割合で按分して計算する

一時所得(一括受取)の税金計算方法

一括で受け取る場合は一時所得として課税されます。一時所得の計算式は次のとおりです。

📌 一時所得の計算式

一時所得 =(収入金額 - 支出した金額 - 特別控除額50万円)× 1/2

一時所得には50万円の特別控除があり、さらに所得金額は残額の1/2になります。

【②65歳で一括受取のケース】

  • 収入金額(一時金):1,488万6,537円
  • 支出した金額(払込保険料総額):880万4,574円
  • 特別控除額:50万円
  • 一時所得:(1,488万6,537円 - 880万4,574円 - 50万円)× 1/2 = 279万981円

一時所得は特別控除と1/2計算のおかげで、課税される所得金額が大幅に圧縮されるのが特徴です。

📝 このセクションのまとめ

  • 一括受取の一時所得は50万円の特別控除+1/2計算で所得が大きく圧縮される
  • 今回の実例では一時所得は約279万円にとどまる

3パターンの税金額と手取り額を比較

税金は個人年金以外の所得と合算して課税されるため、税率は個人によって異なります。ここでは3つのパターンを比較するための目安として、所得金額に税率を掛けて所得税・住民税を概算で計算します。

受け取りパターン所得区分課税所得額税金合計受取総額手取り額
①65歳から年金受取(10年)雑所得年91万9,543円(10年間)138万8,000円(10年合計)1,800万円1,661万2,000円
②65歳で一括受取一時所得279万981円(一回)46万4,300円1,488万6,537円1,442万2,237円
③70歳から年金受取(5年繰り下げ・10年)雑所得年137万286円(10年間)206万9,000円(10年合計)2,250万7,430円2,043万8,430円

結果をまとめると、手取り額の多い順は次のとおりです。

  1. 🥇 ③70歳から年金受取 手取り約2,043万円
  2. 🥈 ①65歳から年金受取 手取り約1,661万円
  3. 🥉 ②65歳で一括受取 手取り約1,442万円

一括受取は税金こそ46万4,300円と最も安いですが、受取金額そのものが現在価値への割引で大きく減ってしまうため、手取り額は最も少なくなります。受け取りを遅らせるほど利率の高い運用益が上乗せされ、手取り額が増える結果となりました。

📝 このセクションのまとめ

  • 税金だけ見れば一括受取が最安だが、手取り額は最も少ない
  • 受取総額と税金の両方を考慮すると、70歳繰り下げ年金受取が最も手取りが多い
  • 受け取りを遅らせるほど手取りが増えるという結果になった

一概に「年金受取が得」とは言えない理由

手取り額だけを見れば「70歳から年金で受け取るのが最も得」という結論になります。しかし、個々人のライフプランによっては、一括受取の方がトータルで有利になるケースもあります。

代表的なケースが住民税非課税世帯に関する問題です。

⚠️ 注意

公的年金だけなら住民税非課税世帯に該当する方が、個人年金を毎年年金で受け取ると所得が増えて住民税非課税世帯から外れてしまう可能性があります。そうなると、以下のメリットが失われます。

  • 介護費用の自己負担が増える
  • 医療費が高くなる
  • 各種給付金をもらえなくなる

このような場合は、手取り額が少なくなっても一括受取の方がトータルで得になることがあります。特に常時介護サービスを利用している方は住民税非課税世帯のメリットが大きいため、一括受取を検討する価値があります。

また、別の活用方法も考えられます。個人年金を一時金で受け取り、それを公的年金(老齢年金)が支給されるまでのつなぎ資金として使うという方法です。

公的年金を5年繰り下げて受給すると42%増額され、その増額された年金が一生涯支給されます。今回の実例の個人年金は利回りが非常に良いものですが、5年繰り下げても増額は25%止まりで、しかも10年間しか受け取れません。それに対して、公的年金の繰り下げ受給は42%増額が生涯続くため、長い目で見ると公的年金の繰り下げ受給の方が有利になるケースが多いです。

📌 ポイント:個人年金の一括受取+公的年金の繰り下げ受給という選択肢

  • 個人年金を一時金で受け取り、生活費のつなぎ資金に充てる
  • その間、公的年金を5年繰り下げて42%増額させる
  • 増額された公的年金を一生涯受け取る

この組み合わせがトータルで最も有利になる場合もあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 住民税非課税世帯に該当する(またはギリギリ該当する)方は、年金受取で所得が増えると各種メリットを失うリスクがある
  • 一括受取した資金を公的年金の繰り下げ受給のつなぎ資金に使う方法も有効
  • 最適な受け取り方は、自分の所得状況・ライフプランに合わせて判断することが大切

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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