老齢厚生年金の仕組みを専門家がわかりやすく解説|加給年金・繰り上げ・繰り下げも完全網羅

老齢厚生年金の仕組みを専門家がわかりやすく解説|加給年金・繰り上げ・繰り下げも完全網羅
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老齢厚生年金はサラリーマンの「上乗せ年金」。その仕組みと加給年金の全体像をわかりやすく解説します。

老齢厚生年金とは?全体像を把握しよう

老齢厚生年金は、会社員や公務員として働いていた人が受け取れる「上乗せ年金」です。老齢基礎年金(国民年金)の上に乗っかるイメージで、厚生年金保険料を納めていた期間に応じて支給されます。

老齢厚生年金には、大きく分けて2種類あります。

種類概要受給開始年齢
本来の老齢厚生年金原則的な老齢厚生年金。報酬比例部分+経過的加算で構成65歳から
特別支給の老齢厚生年金60歳→65歳への引き上げに伴う経過措置として設けられた年金性別・生年月日によって異なる(65歳未満)

もともと年金は60歳から受け取れる制度でしたが、国が財政上の理由から65歳に引き上げることを決定しました。ただし、いきなり「明日から65歳以降しかもらえません」と変更すると、当時63歳・64歳だった人が困ってしまいます。そこで、段階的に受給開始年齢を後ろ倒しにする経過措置として設けられたのが「特別支給の老齢厚生年金」です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

特別支給の老齢厚生年金は「在職老齢年金」との調整が生じる場合があります。働きながら受給する場合、給与と年金の合計額が一定基準を超えると年金が一部または全額支給停止になるため、受給前に確認が必要です。

📌 ポイント

特別支給の老齢厚生年金は現状でもらえる人が残りわずかです(現時点で60〜61歳前後の女性が対象の一部)。今後は対象者がいなくなる制度のため、まずは本来の老齢厚生年金の仕組みを理解することが最優先です。

📝 このセクションのまとめ

  • 老齢厚生年金は会社員・公務員向けの上乗せ年金
  • 本来の老齢厚生年金(65歳〜)と特別支給の老齢厚生年金(経過措置)の2種類がある
  • 特別支給はもらえる人が激減しており、今後は本来の制度が中心

老齢厚生年金の受給要件|誰がもらえるのか

老齢厚生年金をもらうためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていること
    老齢厚生年金は老齢基礎年金の「上乗せ」です。国民年金の納付済み期間・免除期間・合算対象期間を合計して10年以上なければ、老齢厚生年金も受け取れません。なお、この10年は厚生年金側ではなく、あくまで国民年金側で判定されます。
  2. 厚生年金に1か月以上加入していること
    厚生年金への加入期間は1か月以上あればOKです。たとえば「入社してすぐ退職した」という場合でも、1か月分の厚生年金は受け取れます(金額はごくわずかですが)。当然、長く勤めて保険料をたくさん納めるほど、受け取れる年金額は増えます。

📌 ポイント

特別支給の老齢厚生年金の場合は厚生年金への加入期間が1年以上必要です。ただし、現在ほぼ対象者がいないため、まずは「1か月以上で本来の老齢厚生年金はもらえる」という点を押さえておきましょう。

💡 補足:動画では触れていませんが…

海外在住期間がある方は「合算対象期間(カラ期間)」として10年の受給資格期間に算入できる場合があります。年金事務所への相談で受給資格が認められるケースもあるため、「10年に足りないかも」と思ったら確認することをおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 国民年金の受給資格期間10年が前提条件
  • 厚生年金は1か月以上の加入でOK(長いほど年金額は増える)
  • 受給開始は原則65歳から

特別支給の老齢厚生年金|経過措置の仕組みを理解する

特別支給の老齢厚生年金は、年金受給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げる過程で設けられた経過措置です。受給開始年齢は性別と生年月日によって異なります。

生年月日(男性)生年月日(女性)特別支給の受給開始年齢
昭和36年4月1日以前生まれ昭和41年4月1日以前生まれ60〜64歳(段階的に引き上げ)
昭和36年4月2日以降生まれ昭和41年4月2日以降生まれ特別支給なし(65歳から)

ポイントは生年月日が遅い人ほど受給開始年齢が引き上げられ、最終的には65歳からに統一されるという点です。昭和19年以前生まれの男性(戦前生まれ)はかつて60歳からガッツリ受け取れていましたが、段階的な引き上げにより現役世代はほぼ全員が65歳からとなっています。

特別支給の老齢厚生年金の年金額は、定額部分報酬比例部分の2つで構成されます。定額部分は老齢基礎年金に相当するもの、報酬比例部分は現在の老齢厚生年金に相当するものです。65歳以降は定額部分が老齢基礎年金に切り替わり、報酬比例部分が老齢厚生年金として支給される形になります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

女性の特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢は男性より5年遅れで設定されています。これはかつて女性の退職年齢が男性より早かった歴史的背景によるものです。

📝 このセクションのまとめ

  • 特別支給は60歳→65歳への段階的引き上げの経過措置
  • 生年月日が遅いほど受給開始年齢が高くなる
  • 昭和36年4月2日以降生まれの男性・昭和41年4月2日以降生まれの女性は特別支給なし
  • 特別支給の年金額=定額部分+報酬比例部分

老齢厚生年金の年金額の計算方法|報酬比例部分と経過的加算

65歳以降に受け取る本来の老齢厚生年金の額は、報酬比例部分経過的加算額を合計したものです。

構成要素内容計算のポイント
報酬比例部分現役時代の給与・ボーナスの平均額と加入月数に基づいて算出標準報酬月額の平均×乗率×加入月数(2003年3月以前と以降で乗率が異なる)
経過的加算額特別支給の定額部分と老齢基礎年金の差額を補填するための調整額定額部分の計算額-老齢基礎年金の満額相当額

報酬比例部分は、現役時代に毎月どれくらいの給与・ボーナスをもらっていたか(標準報酬月額・標準賞与額)と、厚生年金に加入していた月数によって決まります。たとえば「月額平均30万円の給与で300か月(25年)加入していた」という場合、その金額に所定の乗率をかけて年金額が算出されます。

経過的加算額は、特別支給の定額部分の計算額が老齢基礎年金の額を上回る場合に、その差額を補填するものです。「定額部分の計算額 − 老齢基礎年金の額」で求められます。老齢厚生年金の計算で最もわかりにくい部分がこの経過的加算ですが、「定額部分から老齢基礎年金を引いた差額を老齢厚生年金に上乗せする調整」と理解しておけばOKです。

📌 ポイント

実際の計算問題では、問題文に計算式や数値が与えられることがほとんどです。まずは「報酬比例部分は現役時代の給与×月数で決まる」「経過的加算は定額部分と老齢基礎年金の差額」という概念を理解することが最優先です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

2003年(平成15年)4月を境に、報酬比例部分の計算に使う乗率が異なります。2003年3月以前は「平均標準報酬月額×乗率①」、2003年4月以降は「平均標準報酬額(賞与込み)×乗率②」で計算します。実務では年金定期便に記載された見込み額を確認するのが最も確実です。

📝 このセクションのまとめ

  • 老齢厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算額
  • 報酬比例部分は現役時代の給与・賞与の平均と加入月数で決まる
  • 経過的加算は「定額部分の計算額-老齢基礎年金の額」で求める調整額
  • 実際の受給見込み額は「ねんきん定期便」で確認できる

加給年金とは?家族がいる人への上乗せ制度

加給年金とは、年金版の「家族手当」です。65歳になって老齢厚生年金を受け取り始めた時点で、養う家族がいる場合に年金額が上乗せされる制度です。

65歳で仕事を辞めると収入が大きく減ります。そのとき、まだ年金をもらっていない年下の配偶者や、育て盛りの子供がいれば生活費がかさみます。そういった家庭を支援するために設けられているのが加給年金です。

対象家族条件備考
配偶者65歳未満であること配偶者が65歳になると老齢基礎年金を自分で受け取れるため、加給年金は終了
子供18歳未満(高校卒業まで)であること障害等級1・2級の場合は20歳未満まで対象

配偶者が65歳未満であることが条件なのは、65歳になれば配偶者自身が老齢基礎年金(国民年金)を受け取れるようになるからです。自分の年金で生活費をまかなえるようになれば、夫の年金に上乗せする必要がなくなるという考え方です。

子供については18歳未満(高校卒業まで)が基準です。高校を卒業するまでは養育費がかかるため、その間は年金に上乗せするという仕組みです。

⚠️ 注意

配偶者が厚生年金の加入期間20年以上ある場合や、配偶者自身が老齢厚生年金を受け取っている場合は、加給年金は支給停止されます。共働きで妻もガッツリ会社員として働いてきたようなケースでは、夫の年金に加給年金は加算されません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

加給年金の支給額は2024年度時点で配偶者分が年額約23万円(特別加算を含む)です。子供については1人目・2人目が各約7.5万円、3人目以降が各約2.5万円となっています。受給者の生年月日によって特別加算の額が異なる点にも注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 加給年金は年金版の家族手当。65歳以降に養う家族がいる場合に上乗せされる
  • 対象は「65歳未満の配偶者」または「18歳未満の子供」
  • 配偶者が厚生年金加入20年以上の場合は支給停止
  • 配偶者が65歳になると加給年金は終了する

振替加算とは?加給年金が終わった後の調整制度

加給年金は配偶者が65歳になると終了します。ただし、配偶者が65歳になって老齢基礎年金を受け取り始めた際、加給年金がなくなった分だけ生活費が減ってしまうケースがあります。

そこで設けられているのが振替加算です。夫の年金についていた加給年金が終了するタイミングで、今度は妻(配偶者)の老齢基礎年金に一定額が上乗せされます。「夫から妻へ振り替えて加算する」というイメージから「振替加算」と呼ばれています。

タイミング内容
夫が65歳〜妻が64歳まで夫の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされる
妻が65歳になった時点加給年金が終了し、妻の老齢基礎年金に振替加算が上乗せされる

📌 ポイント

振替加算の額は配偶者(妻)の生年月日によって異なります。生年月日が新しいほど振替加算の額は少なくなり、昭和41年4月2日以降生まれの方は振替加算がゼロとなります。まずは「加給年金の要件」を確実に押さえることが最優先です。

📝 このセクションのまとめ

  • 振替加算は配偶者が65歳になって加給年金が終了した後、配偶者の老齢基礎年金に上乗せされる調整額
  • 配偶者の生年月日が新しいほど振替加算額は少なく、昭和41年4月2日以降生まれはゼロ
  • まずは加給年金の仕組みを優先して理解する

老齢厚生年金の繰り上げ・繰り下げ受給|加給年金との関係に注意

老齢厚生年金も老齢基礎年金と同様に、受給開始時期を早めたり(繰り上げ)、遅らせたり(繰り下げ)することができます。

項目繰り上げ受給繰り下げ受給
受給可能期間60歳〜64歳66歳〜75歳
増減率1か月あたり−0.4%(減額)1か月あたり+0.7%(増額)
加給年金の扱い65歳にならないと加給年金は受け取れない(繰り上げても加給年金はもらえない)本体の繰り下げ中は加給年金も受け取れない。かつ増額されない

繰り上げ・繰り下げの増減率は老齢基礎年金と同じです。覚え直す必要はありません。ただし、加給年金との関係については注意が必要です。

繰り上げの場合:老齢厚生年金を60歳から受け取り始めても、加給年金は65歳にならないともらえません。「繰り上げれば加給年金も早くもらえる」は誤りです。

繰り下げの場合:老齢厚生年金の本体を繰り下げている期間中は、加給年金も受け取れません。さらに、加給年金は固定額のため、繰り下げ率(0.7%)をかけて増額されることもありません。

⚠️ 注意

加給年金をもらえる状況(65歳未満の配偶者がいる、18歳未満の子供がいるなど)の方が老齢厚生年金を繰り下げると、繰り下げ期間中は加給年金がまるごと受け取れなくなります。たとえば70歳まで繰り下げた場合、5年分の加給年金(配偶者分で約115万円相当)を受け取れない可能性があります。加給年金がもらえる方は繰り下げを慎重に検討してください。

💡 補足:動画では触れていませんが…

老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることができます。「老齢基礎年金だけ繰り下げて老齢厚生年金は65歳から受け取る」という選択も可能です。加給年金がある場合は老齢厚生年金の繰り下げを見送り、老齢基礎年金だけ繰り下げるという戦略が有効なケースもあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 繰り上げは60〜64歳で受給開始(1か月−0.4%減額)、繰り下げは66〜75歳で受給開始(1か月+0.7%増額)
  • 繰り上げをしても加給年金は65歳になるまでもらえない
  • 繰り下げ中は加給年金を受け取れず、増額もされない
  • 加給年金がある人は繰り下げで損になる可能性があるため要注意

🔄 最新アップデート

2022年4月の法改正により、老齢厚生年金(および老齢基礎年金)の繰り下げ上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました(1952年4月2日以降生まれの方が対象)。最大増額率は84%(75歳まで繰り下げた場合)となっています。また、2023年4月からは在職老齢年金の支給停止基準額が月額48万円に引き上げられており、働きながら年金を受け取りやすくなっています。

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」で自分の老齢厚生年金の見込み額を確認する
  2. 配偶者の年齢・厚生年金加入期間を確認し、加給年金の対象になるかチェックする
  3. 繰り上げ・繰り下げをシミュレーションし、加給年金の有無を踏まえて損益分岐点を計算する
  4. 不明点は最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターで無料相談する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル ほんださん / 東大式FPチャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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