60歳以降の厚生年金保険料は損?基礎年金が増えない仕組みと経過的加算を解説
60歳以降に払い続ける厚生年金保険料、実は国民年金には反映されないって知っていましたか?
公的年金の2階建て構造をおさらい
公的年金は、国民年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)の2階建てになっています。
- 国民年金:自営業者・学生・会社員・専業主婦など、すべての国民に加入義務がある
- 厚生年金:会社員・公務員だけが加入する上乗せ部分
会社員や公務員は、厚生年金保険料として1本立てで保険料を納めていますが、その中には国民年金の保険料も含まれています。厚生年金は国民年金の土台に上乗せされている仕組みだからです。
そのため、会社員がもらえる年金は老齢厚生年金(2階部分)と老齢基礎年金(国民年金部分)の両方になります。
📝 このセクションのまとめ
- 公的年金は国民年金(1階)+厚生年金(2階)の2階建て
- 厚生年金保険料の中には国民年金保険料も含まれている
- 会社員は老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方を受け取れる
問題の核心:60歳以降の保険料は国民年金に反映されない
国民年金には、保険料の支払い義務期間が定められています。20歳から60歳までの40年間です。60歳になると国民年金から脱退することになり、40年間すべて支払えば満額の国民年金を受け取れます。
一方、厚生年金は企業に勤めている限り70歳になるまで加入義務があります。厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれているわけですから、実質的に70歳まで国民年金保険料を払い続けていることになります。
⚠️ 注意
60歳以降にいくら厚生年金保険料を支払っても、国民年金(老齢基礎年金)は1円も増えません。国民年金は20歳から60歳までの間に支払った保険料だけしかカウントされないからです。
60歳になったら国民年金部分が脱退扱いになって厚生年金保険料が安くなればよいのですが、そういった制度にはなっていません。60歳以降に厚生年金保険料に含めて支払った国民年金保険料は、いくら払っても切り捨てになってしまうのです。
📝 このセクションのまとめ
- 国民年金の加入義務は20歳〜60歳の40年間
- 厚生年金は70歳まで加入義務があり、保険料に国民年金分が含まれる
- 60歳以降に払った国民年金保険料は老齢基礎年金に一切反映されない
具体的にいくら損をするのか?試算してみると
20歳から60歳まで40年間国民年金保険料を支払った場合、60歳時点で国民年金は満額になり、年間約80万円を受け取れます。満額になっているので、それ以上は増えません。
仮に70歳まで会社に勤めて保険料を払い続けたとしても、国民年金は満額の年間80万円のままで一切変わりません。にもかかわらず、年金保険料は払い続けなければならないのです。
| シナリオ | 年間国民年金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 60歳時点(40年加入・満額) | 約80万円 | これ以上は増えない |
| 65歳時点(正当に反映された場合) | 約90万円 | 年間約2万円アップが5年分 |
| 70歳時点(正当に反映された場合) | 約100万円 | 年間約2万円アップが10年分 |
| 実際の70歳時点 | 約80万円(変わらず) | 60歳以降分は反映ゼロ |
📌 ポイント
60歳以降に支払った国民年金保険料が正当に反映されていれば、年間約2万円ずつ年金が増えていくはずです。その差額を80歳まで積み上げると、消えた年金は約275万円にのぼります。
📝 このセクションのまとめ
- 60歳以降も保険料を払い続けても国民年金は満額の年間約80万円のまま
- 正当に反映されれば65歳で約90万円、70歳で約100万円になるはずだった
- 80歳までに換算すると約275万円の損失
解消のチャンスがあった:国民年金納付期間の5年延長案
実はこの矛盾を解消するチャンスがありました。国民年金の納付期間を5年延長して、60歳から65歳に引き上げる案が検討されていたのです。
この案が実現していれば、会社員には追加の保険料負担は発生せず(すでに厚生年金保険料として払っているため)、払っている保険料に見合って国民年金を増やすことができました。会社員にとっては年金制度の矛盾がかなり解消されるはずでした。
しかし、この案は見送りになりました。自営業者など国民年金第1号被保険者の方面からの反対があったためで、会社員が「国に年金を収奪されている」という矛盾は残ることになりました。
この問題に気づいている人は極めてわずかで、大半の人は気づかないまま給与から自動的に天引きされているというのが現実です。
📝 このセクションのまとめ
- 国民年金納付期間を65歳まで延長する案があったが見送りに
- 延長案が実現すれば会社員の追加負担なく年金増額ができた
- 制度の矛盾に気づかないまま天引きされている人が大多数
一部救済あり:「経過的加算」という制度
60歳以降に厚生年金保険料を支払っても、まったくの損かというとそうではありません。「経過的加算」という年金が上乗せされる仕組みがあります。
たとえば、20〜21歳の学生時代に保険料の支払い猶予(学生特例)を受けていて、22歳で就職し62歳まで会社員として働いた人のケースを考えてみましょう。
- 国民年金の計算では、加入期間は60歳までの38年しかカウントされない
- 満額には2年分足りない
- 60歳から62歳までの2年間は保険料を払っているのに国民年金が増えない
このような矛盾を是正するのが経過的加算です。このケースでは国民年金2年分に相当する金額が年金に上乗せされて支給され、結果として国民年金に40年加入した場合と同額の満額相当の年金を受け取ることができます。
📌 ポイント
経過的加算は、学生特例を使った人だけでなく、国民年金保険料を支払っていた人でも受け取れる場合があります。計算式が厚生年金の加入月数をベースにしているためです。
📝 このセクションのまとめ
- 「経過的加算」という上乗せ年金で一部救済される
- 学生特例を使った人など、国民年金加入期間が40年に満たない人が対象
- 満額相当の年金を受け取れるよう補填される仕組み
経過的加算の計算式(令和7年度版)
令和7年度の経過的加算は、次の計算式で求めます。
| 計算要素 | 内容 |
|---|---|
| A(厚生年金加入分) | 1,734円 × 厚生年金に加入していた月数(上限480ヶ月) |
| B(国民年金換算分) | 831,700円 × 20歳〜60歳の間に厚生年金に加入していた月数 ÷ 480ヶ月 |
| 経過的加算額 | A − B |
831,700円は国民年金の満額相当で、それを480ヶ月で割ると1,734円になります。つまりBは、国民年金の計算に取り込まれた期間分の金額です。
AからBを引くことで、厚生年金に加入していたが国民年金の計算に取り込まれなかった期間(60歳以降や20歳前の期間)を年金に加算する仕組みになっています。
先ほどの例(22歳就職・62歳退職)に当てはめると、厚生年金の加入期間40年(480ヶ月)がAで、そのうち60歳までの38年(456ヶ月)がBの計算に使われます。AからBを差し引いた2年分(24ヶ月)が経過的加算として支給されます。
⚠️ 注意
この人が70歳まで働き続けた場合、62歳で厚生年金加入期間が40年(満額)に達した以降は経過的加算の対象にはなりません。62歳以降の国民年金保険料部分は、まさに払い損になってしまいます。
📝 このセクションのまとめ
- 経過的加算 = A(厚生年金加入全期間分)− B(国民年金に取り込まれた期間分)
- 国民年金に反映されなかった期間分だけが上乗せされる
- 厚生年金加入が480ヶ月(40年)を超えた部分は経過的加算の対象外
経過的加算をもらえる人・もらえない人のパターン
どのようなケースが経過的加算の対象になるか、3つのパターンで整理します。
| パターン | 就職・退職の時期 | 国民年金加入期間 | 経過的加算 | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| パターン① | 18歳就職・58歳退職 | 20〜58歳の38年 | あり(2年分) | 20歳前の2年間(18〜20歳)の厚生年金加入が国民年金に反映されないため |
| パターン② | 20歳就職・62歳退職 | 20〜60歳の40年(満額) | なし | 国民年金が満額の40年に達しているため、60歳以降の保険料は完全に払い損 |
| パターン③ | 22歳就職・62歳退職(学生特例2年) | 22〜60歳の38年 | あり(2年分) | 60〜62歳の厚生年金加入分が国民年金に反映されないため |
📌 ポイント:経過的加算をもらえる人の条件
- 20歳〜60歳の間に厚生年金を納付した期間が40年(480ヶ月)に満たないこと
- かつ、20歳前または60歳以降に厚生年金に加入していた期間があること
この2つの条件を両方満たす人が経過的加算の対象になります。
📝 このセクションのまとめ
- 18歳就職など20歳前から厚生年金に加入していた人も経過的加算の対象になる
- 20歳就職で国民年金が満額40年の人は経過的加算がなく、60歳以降は完全に払い損
- 学生特例を使わず保険料を払っていた人でも、条件次第で経過的加算を受けられる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
関連記事
社会保険料を合法的に削減する9つの方法を税理士が解説
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
