2027年から厚生年金上限が3段階UP!手取り激減前に知るべき新社会保険ルールを税理士が解説
2027年から厚生年金保険料の上限が3段階で引き上げられます。手取りへの影響と正しい役員報酬の決め方を解説します。
2025年年金改革法案が可決――会社経営者・高収入サラリーマンが注目すべき変更点
先日、2025年の年金改革法案が可決されました。年収106万円の壁や在職老齢年金など、さまざまなトピックがありましたが、会社経営者および高収入のサラリーマンの方にとって最も気になるのが、厚生年金保険料の上限引き上げです。
「うちの会社には関係ない」と思っている社長さんも要注意です。来期の役員報酬を決める前に、この変更点をしっかり把握しておく必要があります。
📌 ポイント
2027年から厚生年金保険料の上限が3段階で引き上げられます。これにより、月収65万円超の方は保険料の負担が増加します。会社員・会社経営者のいずれにとっても影響がある重要な改正です。
📝 このセクションのまとめ
- 2025年に年金改革法案が可決された
- 高収入者・会社経営者に直接影響する厚生年金保険料の上限引き上げが含まれる
- 「関係ない」と思っている社長さんも内容を把握しておく必要がある
そもそも厚生年金保険料はいくら引かれているのか?現行の仕組みをおさらい
役員報酬や給与を支払う際、会社はそこからさまざまなものを源泉徴収します。主なものは以下のとおりです。
- 健康保険料(年金事務所へ納付)
- 厚生年金保険料(年金事務所へ納付)
- 所得税(税務署へ納付)
- 住民税(自治体へ納付)
- 雇用保険料(会社員のみ)
今回のテーマはこの中の厚生年金保険料に関するお話です。
政府管掌の社会保険料率は以下のとおりです(自治体によって多少異なります)。
| 保険の種類 | 保険料率(目安) | 負担の仕方 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約10〜11% | 会社と個人で折半(オーナー企業は実質全額自己負担) |
| 厚生年金保険料 | 18% | 会社と個人で折半(オーナー企業は実質全額自己負担) |
例えば月給100万円(年収1200万円)の方の場合、現行の保険料は以下のとおりです。
| 保険の種類 | 等級・上限 | 個人負担月額 | 年間負担額(概算) |
|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 第43等級(上限130万) | 56,350円 | 約68万円 |
| 厚生年金保険料 | 第32等級(上限65万円で頭打ち) | 59,475円 | 約71万円 |
ポイントは、健康保険料の上限が月収130万円に設定されているのに対し、厚生年金保険料の上限は月収65万円で頭打ちになっている点です。月給100万円の方でも、厚生年金保険料の計算上は65万円として扱われるため、それ以上は保険料が増えない仕組みになっていました。
📝 このセクションのまとめ
- 厚生年金保険料率は18%(会社・個人で折半)
- 現行の上限は月収65万円(第32等級)で頭打ち
- 健康保険料の上限(130万円)と比べて厚生年金保険料の上限は低い水準にある
なぜ上限を引き上げるのか?政府の意図と背景
政府がこの上限引き上げに注目した背景には、健康保険料と厚生年金保険料の計算上の格差があります。健康保険料の上限は昔は100万円にも満たなかったものが、現在は130万円まで引き上げられています。一方、厚生年金保険料の上限は65万円のままで止まっていました。
政府の資料では、次の2点が指摘されています。
- 月給65万円を超えると、それ以上給与が増えても保険料が増えない。しかし「それ以上給与を取っているのに年金を受け取れない」という不公平が生じている。
- 現在の厚生年金保険料の上限である月収65万円以上を稼いでいる方が、なんと約10.5%・265万人にのぼり、グラフ上で突出して多い。
政府の説明としては「賃金が65万円を超える方に、賃金に見合った保険料を負担いただき、これまでよりも現役時代の賃金に見合った年金を受け取れるようにする」というものです。また、「これによって厚生年金全体の給付水準が上昇する」とされています。
📌 ポイント
なお、月収65万円以下の方の保険料は変動なしです。今回の引き上げは、月収65万円超の高収入層のみに影響します。
ただし、実態としては社会保険料収入を増やしたいという財政的な意図が大きいとも言えます。「年金が増えるよ」という説明がされていますが、実際に元が取れるかどうかは後述のとおり疑問が残ります。
📝 このセクションのまとめ
- 健康保険料と厚生年金保険料の上限に格差があったことが今回の見直しの背景
- 月収65万円超の方が約265万人(10.5%)いることも引き上げの根拠とされている
- 月収65万円以下の方には影響なし
3段階引き上げの具体的なスケジュールと内容
今回決定した厚生年金保険料の上限引き上げは、以下の3段階で実施されます。
| 時期 | 上限月収 |
|---|---|
| 現行(〜2027年8月) | 65万円 |
| 2027年9月〜 | 68万円 |
| 2028年9月〜 | 71万円 |
| 2029年9月〜 | 75万円 |
大まかに言うと、年収で約1000万円前後の方が影響を受けるラインとなります。段階的に上限が引き上げられることで、毎年少しずつ負担が増えていく形です。
📝 このセクションのまとめ
- 2027年9月・2028年9月・2029年9月の3段階で引き上げ
- 上限は現行65万円から最終的に75万円へ
- 年収約1000万円以上の方が影響を受ける
手取りはいくら減る?年間負担増と元が取れるまでの年数を試算
では、実際に手取りはどれだけ減るのでしょうか。年収1200万円(月給100万円)の方を例に試算します。
| 時期 | 上限月収 | 個人負担の年間増加額(概算) | 会社負担を含む合計増加額 |
|---|---|---|---|
| 2027年9月〜(68万円上限) | 68万円 | 約3万円増 | 約6万円増 |
| 2028年9月〜(71万円上限) | 71万円 | 約6万6,000円増 | 約13万2,000円増 |
| 2029年9月〜(75万円上限) | 75万円 | 約11万円増 | 約22万円増 |
社会保険料の負担が増えると、所得税・住民税の計算上は控除として扱われるため、その分だけ所得税と住民税は少し下がります。ただし、その節税効果は年間で7,500円程度にとどまるため、実質的な手取り減少は以下のとおりです。
| 時期 | 個人の実質手取り減(概算) |
|---|---|
| 2027年〜 | 年間約2万5,000〜2万6,000円の減少 |
| 2028年〜 | さらに増加 |
| 2029年〜 | 年間約11万円の個人負担増(税負担軽減分を差し引いても大幅減) |
⚠️ 注意
政府の資料では個人負担分のみが記載されています。しかし会社も同額を負担しているため、オーナー企業の社長さんにとっては会社負担分も純粋な経費です。最終的に2029年以降は個人・会社合計で年間約22万円もの負担増になる点は、資料では明示されていません。
頑張って企業努力で利益を出して昇給したとしても、そこに高額な社会保険料の会社負担分・個人負担分がついてくる。それなのに、こういった政府資料ではその点がうやむやにされているのは、納得がいかないところです。
年金で元は取れるのか?
負担が増える一方で、将来受け取れる年金はどれだけ増えるのでしょうか。
| 上限月収 | 年金増加額(年間) | 個人負担分のみで元を取る年数 | 会社負担含めた場合の元を取る年数 |
|---|---|---|---|
| 68万円 | 約3万7,000円 | 約18〜20年 | 約40年弱 |
| 71万円 | 約7万3,000円 | 約18〜20年 | 約40年弱 |
| 75万円 | 約12万2,000円 | 約18〜20年 | 約40年弱 |
個人負担分だけで計算しても元を取るのに約20年かかります。さらに会社負担分も含めると、元を取るのに約40年弱という計算になります。平均寿命が伸びているとはいえ、あまり喜べる話ではありません。
📝 このセクションのまとめ
- 2029年以降、個人負担だけで年間約11万円の増加、会社負担を含めると約22万円の増加
- 所得税・住民税の軽減効果は年間7,500円程度にとどまる
- 年金増加分で元を取るには個人負担のみでも約20年、会社負担含めると約40年弱かかる
正しい役員報酬の決め方――シミュレーションの手順と考え方
この社会保険料の引き上げを踏まえて、役員報酬をどのように決めるべきかを解説します。役員報酬は年に1回しか変更できないため、事前のシミュレーションが非常に重要です。
役員報酬を決める手順
- 事業の数値計画を立てる:決算前に来期の業績予測を行い、どれだけ利益が上がりそうかを把握する
- 役員報酬の原資となる金額を算定する:予測利益をベースに、役員報酬に充てられる金額の上限を確認する
- 生活に必要な手取り額を確認する:自分が生活できるだけの手取り額がいくら必要かを明確にする
- 個人と法人の税負担をトータルでシミュレーションする:月60万・70万・80万・90万・100万など複数のパターンで、個人の税金・社会保険料の負担と法人税などの負担を比較する
2つの基本的な考え方
| 考え方 | 内容 | 向いている方 |
|---|---|---|
| A:法人・個人トータルの税負担を最小化 | 個人と法人の税負担を合計して最も少なくなる報酬額を選ぶ定番の方法 | 税負担を純粋に小さくしたい方 |
| B:法人に利益を残す | 役員報酬を抑えて法人に利益を蓄積し、設備投資・事業拡大・人員増強に充てる | 事業拡大・投資を重視する方 |
| C:個人の生活を充実させる | 給与を多く取って資産運用・生活水準向上に充てる | 1人法人など個人の生活を重視する方 |
税負担の目安となる年収ライン
社会保険料の個人負担分と所得税を合わせた負担割合を試算すると、概ね以下のような傾向があります。
| 法人の課税所得 | 法人税の実効税率(目安) |
|---|---|
| 400万円以下 | 約23% |
| 400万〜800万円 | 約25% |
| 800万円超 | 約32%前後まで上昇 |
個人の税負担(所得税+住民税+社会保険料)が法人税率と逆転してくるのは、年収1,500万〜1,800万円あたりです。この辺りが、役員報酬の損得を考えるラインの目安となります。
また、この年収帯までは住民税よりも社会保険料の方が圧倒的に大きいという点も覚えておきましょう。社会保険料の負担が嫌だという方は、今後の上限引き上げを踏まえて月収65万円以下に抑える方向で検討するか、あるいは長生きする自信があるということで、給与収入に対する社会保険料の負担割合を小さくするためにさらに多く取っていくか、いずれかを選ぶことになります。
📝 このセクションのまとめ
- 役員報酬は年1回しか変更できないため、事前のシミュレーションが必須
- 法人・個人トータルの税負担を最小化するか、法人に利益を残すか、個人の生活を充実させるかで考え方が異なる
- 年収1,500万〜1,800万円あたりが、役員報酬の損得を考える目安のライン
マイクロ法人・役員報酬を極端に下げるスキームの注意点
最近、マイクロ法人(役員報酬を極端に低く設定して社会保険料を抑える手法)が流行っています。ただし、以下のデメリットがある点を理解しておく必要があります。
- 会社をやめる際の退職金(役員退職金)が大して受け取れなくなる(退職金は退職直前の役員報酬月額を元に算定するのが実務上一般的なため)
- 将来の年金が少なくなる
- 傷病手当金などの給付が減少する
マイクロ法人を一時的な節税策として活用するのはありですが、事業のステージに合わせて変えていく必要があります。特に会社を清算・廃業していく直前には、役員報酬を相当な額で取っていくことをおすすめします。
事前確定届出給与(賞与)スキームについて
「月給を極端に低く設定して、事前確定届出給与(いわゆる役員賞与)で年間1,000万円などを受け取る」というスキームも一部で活用されています。賞与の社会保険料には上限が設けられているため、その上限を超えると保険料の負担が増えないという構造を利用するものです。
⚠️ 注意
この事前確定届出給与スキームは、厚生労働省も注目しており、近々改正が入りそうな気配があります。現時点ではお勧めできません。もし検討する場合は、改正リスクを十分に理解した上で判断してください。
📝 このセクションのまとめ
- 役員報酬を極端に低くするマイクロ法人は退職金・年金・給付金の減少というデメリットがある
- 会社の清算・廃業直前には役員報酬を相当な額に戻すことが重要
- 事前確定届出給与スキームは厚生労働省が注目しており、近々改正の可能性があるため現時点ではお勧めできない
さらなる引き上げも視野に――79万・83万・98万という試算が存在する
今回の3段階引き上げ(最終75万円)だけで終わらない可能性があります。以前の厚生労働省の資料には、上限が79万円・83万円・98万円に引き上げられた場合の試算も存在しています。
この国の財政は、よほどの政治改革がなければさらに好転することは期待しにくい状況です。そのため、今後も厚生年金保険料の上限が段階的に引き上げられる可能性は極めて高いと考えておく必要があります。
📌 ポイント
少し先の話ではありますが、上限が79万・83万・98万円まで引き上げられるシナリオも政府内で試算されています。役員報酬の長期的な設計を考える際には、このリスクも念頭に置いておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 厚生労働省は79万・83万・98万円への引き上げも試算している
- 財政状況を踏まえると、今後も上限引き上げが続く可能性が高い
- 役員報酬の長期設計においてこのリスクを織り込んでおくことが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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