法定相続情報証明制度とは?メリット・デメリットと申請手順を税理士が解説
相続手続きの書類負担を大幅に減らせる「法定相続情報証明制度」の全貌を解説します。
法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度は、2017年5月29日に開始された制度です。相続人が法務局へ必要書類を提出することで、戸籍謄本の束の代わりとなる証明書を交付してもらえる仕組みです。
相続税の申告・預貯金の払い戻しや名義変更・不動産の相続登記など、相続に関する手続きでは、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本一式を収集し、各窓口で提出する必要があります。被相続人が複数の金融機関で口座を持っている場合、手続きのたびに戸籍謄本を取得するか、手続きが終わったら返却してもらって次の金融機関に提出するという方法を取らなければならず、時間と金銭面での負担が大きくなっていました。
この制度を利用すると、無料で交付される認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」を戸籍謄本の代わりに提出できます。保管から5年間は必要な通数を何度でも交付が可能で、戸籍謄本を何度も集めたり返却を待ったりする必要がなくなります。
📌 ポイント
法定相続情報一覧図の写しは、被相続人と相続人の関係を家系図のようにまとめた書類です。法務局の登記官が認証した認証文付きで交付されるため、各窓口で戸籍謄本の束の代わりとして使用できます。
制度が設けられた背景:相続登記の促進
法定相続情報証明制度は、相続登記を促進する目的で施行されました。相続登記とは、土地や家屋などの不動産の所有者が亡くなった場合に、相続人の名義に登記を変更することです。
相続登記をしていない不動産は、空き家のまま放置されたり、現在の所有者が不明で誰も手をつけられない状態になったりしています。不動産が登記されずに放置され所有者が分からなくなる要因のひとつとして、戸籍謄本を何枚も用意しなければならない登記手続きの複雑さが挙げられていました。
⚠️ 注意
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。不動産を相続した場合は、原則として所有権を取得したことを知った日から3年以内に法務局で相続登記の申請を行う必要があります。
📝 このセクションのまとめ
- 法定相続情報証明制度は2017年5月29日開始
- 戸籍謄本の束の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を利用できる
- 相続登記の促進を目的として施行された
- 相続登記は2024年4月1日から義務化(3年以内に申請が必要)
法定相続情報証明制度のメリット
法定相続情報証明制度には、相続手続きにおける負担を軽減できるメリットがいくつかあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 戸籍謄本の収集が1回で済む | 相続手続きのたびに戸籍謄本を集め直す必要がなくなる |
| 5年間・何度でも無料で交付 | 認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを無料で繰り返し取得できる |
| 費用負担の軽減 | 戸籍謄本(1通450円)・除籍謄本(1通750円)の取得費用を削減できる |
| 複数手続きの同時進行が可能 | 複数通交付してもらえるため、複数の相続手続きを並行して進められる |
| 専門家による代理申し出が可能 | 税理士・司法書士・行政書士などの資格者が法務局への申し出を代理できる |
| 郵送での申し出が可能 | 外出が難しい場合でも郵送で手続きできる |
特に大きなメリットは、戸籍謄本を何度も集める必要がなくなることです。法定相続人を明らかにするために、被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本が必要になります。戸籍は転籍や結婚などで変わるため、最新のものを取得しただけでは情報が足りません。戸籍謄本で認知した子供の存在を知ることも珍しくなく、特に取り寄せには手間がかかります。
📌 ポイント
税理士・司法書士・行政書士などの資格者が法務局への申し出を代理できます。外出することが難しいお年寄りや法務局に行く時間がない方は、代理申し出を利用することで相続手続きの負担を大幅に軽減できます。
📝 このセクションのまとめ
- 戸籍謄本の収集・返却待ちの繰り返しから解放される
- 証明書の交付は5年間・何度でも無料
- 複数の相続手続きを同時並行で進められる
- 専門家への代理申し出・郵送対応も可能
法定相続情報証明制度のデメリット
便利な制度ですが、デメリットもあります。最大のデメリットは、制度の利用前に相続人が「法定相続情報一覧図」を作成しなければならないことです。
一覧図を作成するには、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本などの必要書類を集めなければいけません。つまり、この制度を活用しても、最低1度は戸籍謄本を収集する必要があります。
- 提出した一覧図に誤りがあると訂正を求められる場合がある
- 訂正箇所によっては一覧図の再作成を求められるケースもある
- 子供の認知や相続人の排除など相続人に変更があれば、その都度一覧図を修正する必要がある
- 変更が多いほど手間がかかる
⚠️ 注意
相続手続きの件数が少ない場合(例:金融機関の口座が1つだけ、不動産がない等)は、一覧図の作成手間がかえって負担になることもあります。自分にとって有効な制度かどうかを事前に判断することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 利用前に法定相続情報一覧図の作成が必要(最低1回の戸籍謄本収集は避けられない)
- 一覧図に誤りがあると訂正・再作成が必要になる場合がある
- 相続人に変更が生じるたびに一覧図の修正が必要
- 全ての人にとってメリットがあるわけではなく、事前の判断が重要
申し出手順と必要書類:4つのステップ
認証文付きの法定相続情報一覧図の写しの交付を受けるためには、事前に申し出手続きが必要です。以下の4つの手順に沿って進めましょう。
- 必要書類の収集
- 法定相続情報一覧図の作成
- 申し出書と書類を法務局へ提出
- 法定相続情報一覧図の写しの交付
ステップ①:必要書類の収集
最初のステップが最も重要です。以下の書類を漏れなく準備しましょう。
| 書類の種類 | 内容・備考 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本 | 出生から死亡までの連続したもの |
| 被相続人の住民票の除票 | 取得できない場合は被相続人の戸籍の附票を用意 |
| 相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本 | 全員分が必要 |
| 申し出人の氏名・住所を確認できる公的書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
| 各相続人の住民票記載事項証明書 | 一覧図に相続人の住所を記載する場合のみ必要 |
📌 ポイント:戸籍謄本の広域交付制度(2024年3月1日開始)
2024年3月1日より戸籍謄本等の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍謄本を取得できるようになりました。ただし、広域交付の対象は戸籍謄本のみで、兄弟姉妹は対象外です。詳しい取得方法は法務省のホームページにある「戸籍法の一部を改正する法律について」をご確認ください。
なお、法務局へ提出した戸籍謄本などの書類は、登記官の確認後に返還されます。
ステップ②〜④:一覧図の作成・提出・交付
必要書類を取り寄せたら、法定相続情報一覧図の作成を行います。フォーマットは法務局のウェブサイト「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」からダウンロードできます。法定相続人が配偶者および子供である場合や、法定相続人が子供のみである場合など、様々なケースの記載例を確認できます。
一覧図を作成したら、申し出書と戸籍謄本などと一緒に法務局へ提出します。申し出書のフォーマットは法務局のウェブサイト「法定相続情報証明制度の具体的な手続きについて」からダウンロードできます。
申し出先の法務局は、次のいずれかを管轄する法務局から選ぶことができます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申し出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
申し出は相続人本人のほか、法定代理人・相続人の民法上の親族・資格者代理人(税理士・司法書士・行政書士等)も行うことができます。
法務局の登記官が提出書類に不備や不足がないか確認し、問題がなければ法定相続情報一覧図が法務局に保管されて申し出手続きは完了です。その後、相続手続きで必要になったときに申し出ることで、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
📌 ポイント:交付の手数料と郵送対応
- 認証文付きの法定相続情報一覧図の写しの交付手数料は無料
- 保管から5年間は何度でも交付可能
- 申し出・交付ともに郵送での対応が可能(郵送料は申し出人の負担)
📝 このセクションのまとめ
- 申し出は4ステップ:書類収集→一覧図作成→法務局へ提出→写しの交付
- 一覧図・申し出書のフォーマットは法務局のウェブサイトからダウンロード可能
- 申し出先は被相続人の本籍地・住所地・申し出人の住所地・不動産所在地の管轄法務局から選択
- 税理士・司法書士・行政書士による代理申し出が可能。郵送対応も可
- 写しの交付は無料・5年間有効
まとめ:専門家への相談も検討しよう
法定相続情報証明制度は、相続人が法定相続情報一覧図を作成して法務局へあらかじめ申し出しておくことで利用できる制度です。
相続手続きにおける負担を軽減できるメリットがある一方で、事前に戸籍謄本を収集したり書類を作成したりする手間がかかるというデメリットもあります。まずは自分にとって有効な制度かどうかを判断してから活用を検討しましょう。
相続手続きは複雑なため、手続きに不安がある場合や負担を軽減したい場合は、税理士などに相談しながら進めることをお勧めします。申し出も交付も手間がかかるため、手続きの負担を軽減させたい方は税理士などへの依頼を検討してみてください。
📝 制度活用の判断ポイント
- 複数の金融機関に口座がある場合 → 活用を強くお勧め
- 不動産の相続登記が必要な場合 → 活用を強くお勧め
- 相続手続きが1〜2件のみの場合 → 手間対効果を慎重に検討
- 手続きが複雑で不安がある場合 → 税理士・司法書士への相談を検討
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル VSG相続専門税理士ch の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは VSG相続専門税理士chを応援しています!
