赤字を節税に活用する方法を税理士が解説|欠損金の繰越控除と繰り戻し還付
赤字を賢く使えば、法人税を合法的に大幅に減らせます。
成長企業が税金をほとんど払わない理由
ソフトバンクやAmazonなど、急成長している企業が「税金をほとんど払っていない」とニュースになることがあります。これは脱税ではなく、赤字をうまく節税に活用する合法的な制度を利用しているからです。
具体的には、「繰り戻し還付」と「繰越控除」という2つの制度のいずれか、あるいは両方を組み合わせて活用しています。メルカリのようなIT系企業も、先行投資で赤字を作りながら成長し、税金をほとんど払わずに規模を拡大してきた時期がありました。
📌 2つの制度のざっくりした違い
- 繰り戻し還付:今期の赤字を過去の黒字と相殺する制度
- 繰越控除:今期の赤字を将来の黒字と相殺する制度
どちらが有利かは会社の経営状況によって異なるため、一概にどちらが良いとは言えません。
📝 このセクションのまとめ
- 成長企業が税金を抑えているのは合法的な制度を活用しているから
- 「繰り戻し還付」と「繰越控除」の2つが主な手段
- どちらを使うかは経営状況次第
法人税計算の基本用語を押さえよう
この制度を理解するうえで、法人税の計算でよく使われる用語を先に確認しておきましょう。
| 一般的な呼び方 | 法人税上の呼び方 |
|---|---|
| 収益(売上など) | 益金(えききん) |
| 経費 | 損金(そんきん) |
| 赤字 | 欠損(けっそん) |
| 赤字の金額 | 欠損金(けっそんきん) |
法人税の計算は「益金 − 損金 = 課税所得」という式で行われます。この結果がマイナスになった場合、欠損金が発生したと言います。
この欠損金を他の年度の所得から差し引くことができれば、その年度の課税所得が減り、法人税が軽減される仕組みになっています。これが「欠損金の繰越控除」と「繰り戻し還付」の根本的な考え方です。
📝 このセクションのまとめ
- 収益=益金、経費=損金、赤字の金額=欠損金
- 益金から損金を引いてマイナスになると欠損金が発生
- 欠損金を他の年度の所得と相殺することで法人税を軽減できる
欠損金の繰越控除とは|将来の黒字と相殺する制度
欠損金の繰越控除とは、欠損金が発生した翌年度以降に益金(黒字)が発生した年度に、マイナスとプラスを相殺できる制度です。言い換えると、現在の赤字によって将来の黒字を相殺することができる制度です。
繰越期間は以前は7年、次いで9年でしたが、平成30年の改正によって現在は10年間繰り越すことができます。
また、大法人と中小法人では控除できる割合が異なります。
| 区分 | 控除できる割合 | 繰越期間 |
|---|---|---|
| 大法人 | 所得の50% | 10年間 |
| 中小法人 | 所得の100% | 10年間 |
中小法人は所得の100%まで欠損金と相殺できるため、黒字が出た年に全額を消すことが可能です。
繰越控除の具体的なシミュレーション
ある飲食店を例に、繰越控除の流れをシミュレーションしてみましょう。
| 年度 | 損益 | 課税所得 | 繰越欠損金の残高 |
|---|---|---|---|
| 2020年度 | 欠損金 ▲200万円 | 0円 | 200万円を翌年へ繰り越し |
| 2021年度 | 益金 +400万円 | 200万円(400万−200万) | 0円(欠損金を全額消化) |
2020年度に200万円の欠損金が発生した場合、その年の課税所得は0円となり、欠損金200万円は翌年度以降に繰り越されます(これを繰越欠損金と言います)。2021年度に400万円の益金が出た場合、2020年度の欠損金200万円と相殺できるため、課税所得は200万円に圧縮されます。
繰越欠損金が残った場合は、その金額を翌年以降にさらに持ち越すことができます。つまり、欠損金がなくなるまで最長10年間、益金と相殺し続けることが可能です。
📌 10年間フル活用のイメージ
ある中小企業で2020年度に1,000万円の欠損金が出たとします。それ以降、毎年100万円の益金が出た場合、10年後まで益金を消し続けることができます。つまり10年間、法人税の負担を大幅に抑えながら経営できることになります。
実際のクライアント事例でも、設備投資などで最初に大きな赤字が出て、その後機械が稼働して利益が出てきたケースで、当初の赤字を翌年以降の益金にぶつけることで法人税の支払いが少なくなり、資金繰りを改善しながら軌道に乗せていった会社があります。
また、借り入れなどでキャッシュを確保できれば、先行投資をして赤字を意図的に作り、将来の回収で十分な利益を得ながら税金を払わずに成長していくことも可能です。これがソフトバンクやメルカリなどIT系企業が実践してきた、いわば「究極の節税」の考え方です。
📝 このセクションのまとめ
- 繰越控除は赤字(欠損金)を最長10年間、将来の黒字と相殺できる
- 中小法人は所得の100%まで相殺可能
- 先行投資で赤字を作り、将来の黒字で回収する戦略に有効
- 資金繰りを改善しながら成長できる
欠損金の繰り戻し還付とは|過去の納税額を取り戻す制度
繰り戻し還付は、繰越控除とは逆の方向に働く制度です。前年度は黒字で法人税を納付していて、今年度は赤字(欠損金)が出た場合に、前年度にすでに納付してある法人税の一部について還付(返金)を受けることができる制度です。
📌 繰り戻し還付のポイント
- 前年度に黒字で法人税を納付していることが条件
- 今年度に欠損金(赤字)が発生した場合に申請できる
- 前年度に納付した法人税の一部が還付される
- 住民税・事業税・消費税は対象外(法人税のみ)
注意点として、実効税率が約37.5%になるのは地方税(住民税・事業税)も含まれているからです。繰り戻し還付で戻ってくるのは法人税部分のみであり、前年に納付した税金の全額が戻るわけではありません。
この制度は意外と知られておらず、クライアントに伝えると「えっ、そんな制度もあるんですか!」とよく驚かれます。
繰り戻し還付の計算式と具体的なシミュレーション
還付される法人税額は、以下の計算式で求めます。
📌 繰り戻し還付額の計算式
還付額 = 前年度の法人税額 × (今年度の欠損金 ÷ 前年度の所得金額)
具体的なシミュレーションを見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 前年度の黒字(所得金額) | 1,000万円 |
| 前年度に納付した法人税 | 約300万円 |
| 今年度の赤字(欠損金) | 500万円 |
| 還付請求できる金額 | 150万円(300万 × 500万 ÷ 1,000万) |
この例では、前年度に納付した法人税300万円のうち、150万円が還付請求の対象となります。キャッシュフローの観点からは、一度払った税金が戻ってくるため、資金繰りに大きなメリットがあります。
📝 このセクションのまとめ
- 繰り戻し還付は前年度の法人税の一部が戻ってくる制度
- 還付額 = 前年度法人税 × (今年度欠損金 ÷ 前年度所得金額)
- 住民税・事業税・消費税は対象外で、法人税のみが対象
- キャッシュが戻ってくるため資金繰り改善に直結する
繰越控除と繰り戻し還付、どちらを選ぶべきか
欠損金が生じた場合、繰り戻し還付と繰越控除のどちらを選択すべきかを判断する必要があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 繰り戻し還付 | 繰越控除 |
|---|---|---|
| 相殺する方向 | 過去(前年度)の黒字 | 将来(翌年度以降)の黒字 |
| 効果のタイミング | 即時(申請後に還付) | 将来の黒字が出たとき |
| 対象税目 | 法人税のみ | 法人税・住民税・事業税 |
| 前年度の状況 | 前年度が黒字であることが必要 | 前年度の状況は問わない |
| 翌年度以降が赤字の場合 | 使用可能 | 使用不可(黒字が出ないと活用できない) |
| 短期キャッシュフロー | 有利 | 将来次第 |
短期的なキャッシュフロー改善については、繰り戻し還付の方が繰越控除に比べて有利です。一方、繰越控除は将来に黒字が出ないと活用できないため、翌年度以降も赤字が続く見込みの場合はそもそも使える場面が来ません。
翌年以降の売上がどうなるかは正直なところ読みにくいため、前年度が黒字だった場合は繰り戻し還付の方が良い選択肢になる可能性が高いです。
また、繰り戻し還付では住民税・事業税は返ってきませんが、翌年に赤字が続く場合は繰越控除によって住民税や事業税も将来の黒字と相殺することができます。両制度を組み合わせて考えることも重要です。
⚠️ 注意:繰り戻し還付と税務調査の関係
「繰り戻し還付を申請すると税務調査が入りやすい」という都市伝説のような話があります。これは、還付請求があった場合、税務署がその内容について調査を行い、記録に残す義務があるためです。ただし、調査といっても調査官が実際に来るケースもあれば、電話確認だけのこともありますし、特に何の連絡もなくスルーされることもあります。過去の税務処理にやましい点がなければ、過剰に恐れる必要はありません。それよりも還付によってキャッシュが増えるメリットを考慮した上で判断してください。
顧問税理士から「税務調査が来る可能性があるから面倒」と言われることもあるかもしれませんが、還付請求によって元手のキャッシュが増え、資金繰りにメリットがあるのであれば、そのメリットも十分に考慮した上で繰り戻し還付を使うかどうか検討してみてください。
📝 このセクションのまとめ
- 短期キャッシュフロー重視なら繰り戻し還付が有利
- 翌年以降も赤字が続く見込みなら繰越控除は活用できない
- 前年度が黒字だった場合は繰り戻し還付を優先的に検討する
- 税務調査への過剰な恐れは不要。過去の処理が適正であれば問題ない
- 繰り戻し還付(法人税)+繰越控除(住民税・事業税)の組み合わせも有効
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 社長の資産防衛チャンネルを応援しています!
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