医療費控除の完全ガイド|5大原則から申告ミスを税理士が解説

医療費控除の完全ガイド|5大原則から申告ミスを税理士が解説
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最も活用されながら最もミスが多い医療費控除の全てを、5大原則・5大注意点・具体的な対象判定まで徹底解説します。

医療費控除は「誰でも簡単にお得」ではない

医療費の領収書を集めて確定申告をすれば、誰でも簡単にお得に税金が返ってくる——そうお思いの方はたくさんいらっしゃると思います。しかし実際は、特定の人に限られますし、何度申告してもお得かどうかも実はわからないというのが医療費控除の実態です。

最も活用されているのに最もミスが多い。それが医療費控除です。以下では、その落とし穴をバッチリ解説していきます。

⚠️ 注意

医療費控除は「納税者であること」が大前提です。もともと非課税の方や、扶養に入っている側の方は医療費控除の対象外になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 医療費控除は誰でも使えるわけではなく、納税者に限られる
  • 活用者が多い一方、ミスも非常に多い制度

医療費控除の5大原則

医療費控除を正しく使うために、まず押さえておくべき5つの原則を解説します。

【原則1】納税者還付
納税者でなければ還付されません。もともと非課税の方や扶養に入っている側の方は対象外です。還付される金額は、その方の所得税率に応じて15%〜55%の範囲になります。

【原則2】10万円基準
年間の医療費が10万円を超えた部分だけが医療費控除の対象です。ただし、所得金額が200万円未満の場合は例外として「5%基準」が発動します。

条件適用される基準医療費控除額の計算
所得金額200万円以上10万円基準医療費合計 - 10万円
所得金額200万円未満5%基準(例外)医療費合計 - 所得金額×5%

実際の計算例を見てみましょう。

ケース年収年間医療費医療費控除額税金の軽減額(目安)還付率
ケース①500万円30万円20万円(30万-10万)4万円約20%
ケース②200万円30万円234,000円(5%基準)35,200円約15%

📌 ポイント

自分が10万円基準か5%基準かわからない場合は、e-Tax(国税庁の確定申告書等作成コーナー)で金額を入力すれば自動計算されます。どちらの基準かをあまり気にする必要はありません。

【原則3】医療のみ対象
医療費控除の対象は「医療」に限られます。予防や美容は対象外です。予防接種も「医療ではなく予防」という判断で対象外になります。

介護についてはだいたいダメですが、例外もあります。

介護の種類医療費控除の可否
特別養護老人ホームの費用✅ 対象
有料老人ホームの費用(要介護3〜5でも)❌ 対象外

【原則4】実払主義
実際に支払った金額だけが対象です。保険適用後の3割負担・2割負担の実額で計算します。その後、保険金で補填された場合や高額療養費が戻ってきた場合は、その金額を差し引かなければなりません。

  • 12月31日までに実際に払った分が対象(未払いはNG)
  • クレジットカードは病院でカードを通した日(銀行引き落とし日ではない)で計上OK
  • 治療前の前払いも医療費控除に含めてOK

【原則5】家族合算
同じ財布の家族であれば、全員の医療費を合算できます。共働きで扶養外の配偶者でも、同居家族や仕送りしている子どもも含めてOKです。全員の医療費を合計して、一番所得が高い方の確定申告にまとめるのが最もお得です。

📌 ポイント

「医療費は嫁姑でも手を握れ」という川柳があるように、普段仲が悪い家族でも医療費控除のときだけは仲良く合算しましょう。これが確定申告の冬の風物詩です。

📝 このセクションのまとめ

  • 原則①:納税者でないと還付されない(還付率は所得税率に応じて15〜55%)
  • 原則②:10万円超の部分が対象(所得200万円未満は5%基準)
  • 原則③:予防・美容・一部介護は対象外
  • 原則④:実際に支払った金額のみ対象(保険金補填分は差し引く)
  • 原則⑤:同じ財布の家族なら全員合算して一番所得の高い人が申告

医療費控除の5大注意点

5大原則を理解したうえで、さらに知っておくべき5つの注意点を解説します。

【注意点1】保険適用外でも医療費控除の対象になる
歯の治療における金歯やインプラントは健康保険が効かず高額になりますが、医療費控除の適用範囲内です。ただし、何百万円といった極端に高額な場合は対象外になる規定もあります。

【注意点2】セルフメディケーション税制との選択
セルフメディケーション税制とは、バファリンプレミアムやロキソニンSテープなどのスイッチOTC医薬品を年間12,000円以上購入した場合に、超えた部分に医療費控除と同様の控除を適用できる制度です。レシートに「★」マークがついているものが対象です。

⚠️ 注意

セルフメディケーション税制と医療費控除はどちらか一方の選択制です。現在、セルフメディケーション税制の利用者は全体の1%未満と非常に少ない状況です。どちらが有利か判断できない場合は、e-Taxの「控除額を試算する」機能で自動判定できます。

【注意点3】ふるさと納税への影響
医療費控除が大きくなればなるほど、ふるさと納税の控除枠が小さくなります。また、会社員でワンストップ特例を利用していた方が医療費控除のために確定申告をする場合、ワンストップ特例の効力が無効になります。ふるさと納税の情報も確定申告書に改めて入力し直す必要があります。

【注意点4】領収書を紛失した場合の対処法
本来は医療費の領収書を集めて自宅に保管しなければなりませんが、紛失してしまうこともあります。その場合の代替手段は以下の通りです。

  • 病院で支払額証明書またはレシートを再発行してもらう
  • 振込払いの場合は通帳を証拠として保管
  • クレジットカード払いの場合はクレジットカード明細を保管
  • 上記が難しい場合はお薬手帳で証明
  • 最終手段として家計簿や病院日記(税務署から求められた際に提示)
  • 今後は領収書の写真を撮っておくのも有効

【注意点5】受け取った保険金の扱い
病気・怪我で保険金を受け取った場合、差し引く必要があるものとないものがあります。

保険金・給付金の種類医療費から差し引く必要
高額療養費(社会保険・国民健康保険)✅ 差し引く
出産育児一時金✅ 差し引く
療養費・家族療養費✅ 差し引く
民間保険の医療保険・入院費給付金✅ 差し引く
傷病手当金❌ 差し引かなくてよい(仕事ができなかった分の補填)
出産手当金❌ 差し引かなくてよい(仕事ができなかった分の補填)
がん診断給付金❌ 差し引かなくてよい
就業不能保険・所得補償保険❌ 差し引かなくてよい

📝 このセクションのまとめ

  • 保険適用外(金歯・インプラント等)でも医療費控除の対象になる
  • セルフメディケーション税制と医療費控除はどちらか選択制(e-Taxで自動判定可)
  • 医療費控除の申告はふるさと納税の枠に影響し、ワンストップ特例も無効になる
  • 領収書紛失時は通帳・カード明細・お薬手帳・家計簿で代替可能
  • 保険金は種類によって差し引く必要があるものとないものがある

医療費控除の対象になる?ならない?具体例一覧

5大原則・5大注意点を踏まえて、具体的な費用が医療費控除の対象になるかどうかを確認していきましょう。

■ 病院での費用

費用の種類医療費控除備考
治療費・紹介状✅ 対象
診断書作成料❌ 対象外
入院費・病院食✅ 対象
差額ベッド代(個室等)❌ 原則対象外医師の指示がある場合は対象
パジャマ・洗面用具等のアメニティ❌ 対象外
病院スタッフへの謝礼❌ 対象外

■ 通院交通費

交通手段医療費控除備考
電車・バス✅ 対象
タクシー❌ 原則対象外電車・バスでの通院が困難な場合は対象
自家用車のガソリン代・駐車場代❌ 対象外プライベート利用の可能性があるため

⚠️ 注意

タクシーは原則対象外ですが、電車・バスでの通院がどうしても困難な場合は医療費控除の対象になります。電車・バスもプライベート利用の可能性があるのに認められているのは確かに不思議な点ですが、現行のルールではこのように定められています。

■ 薬・サプリメント・医療器具

種類医療費控除備考
薬局で購入する薬(市販薬全般)✅ 対象傷テープ・湿布薬も含む
漢方薬(漢方薬店で購入)❌ 原則対象外医師の処方箋があればOK
サプリメント❌ 対象外医師の指示があってもNG
メガネ(近視・遠視・乱視)❌ 対象外「一般的に普及しているから」という理由
メガネ(白内障・緑内障等で医師の処方箋あり)✅ 対象
レーシック等の視力矯正手術✅ 対象

■ 治療・リハビリ関連

種類医療費控除備考
治療目的の温泉・運動施設✅ 対象医師の証明書が必要
治療目的の鍼・灸・あんまマッサージ✅ 対象治療目的に限る
美容鍼❌ 対象外美容目的のため
一般的なマッサージ(リラクゼーション)❌ 対象外医療ではないため

■ 出産関連

種類医療費控除備考
入院費・出産費用✅ 対象
出産時のタクシー代✅ 対象
里帰り出産のための旅費❌ 対象外

■ 健康診断・PCR検査・コロナ関連

種類医療費控除備考
健康診断・人間ドック(異常なし)❌ 対象外予防と同じ扱いになる
健康診断・人間ドック(病気が発見された)✅ 対象検査費用が対象になる
PCR検査(陰性)❌ 原則対象外医師の指示による場合は対象
PCR検査(陽性)✅ 対象
コロナ関連の医薬品✅ 対象
マスク代❌ 対象外予防扱いのため

📌 ポイント

健康診断やPCR検査は、お金を払った時点では医療費控除かどうかわかりません。結果として病気・陽性が判明した場合に初めて対象になるという点に注意が必要です。判断に迷う場合は国税庁のホームページを確認するか、税務署に直接電話するのが最も確実です。

📝 このセクションのまとめ

  • 保険適用外(金歯・インプラント)は対象、診断書作成料・差額ベッド代(原則)は対象外
  • 電車・バスはOK、タクシー・ガソリン代は原則NG
  • 漢方薬は処方箋なしでNG、サプリは医師指示があってもNG
  • 健康診断・PCR検査は「異常なし・陰性」なら対象外、「病気発見・陽性」なら対象
  • マスク代は予防扱いで対象外

e-Taxで医療費控除を入力してみよう

最後に、国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)を使って実際に医療費控除を入力する手順を解説します。

  1. 確定申告書等作成コーナーの画面を開き、控除の一覧から「医療費控除」を選択して「入力する」を押す
  2. 「医療費控除」か「セルフメディケーション税制」かを選択する画面が表示される
  3. どちらが有利かわからない場合は「控除額を試算する」ボタンを押し、金額を入力して「判定する」を押すと自動で判定してくれる
  4. 「医療費控除を適用する」を選択し、入力画面へ進む
  5. 「領収書から入力する」を選択し、以下の項目を1件ずつ入力する
入力項目内容
医療を受けた方の名前患者の氏名
病院・薬局などの支払先の名称医療機関名・薬局名
医療費の区分治療・薬・通院交通費など
支払った医療費の金額実際に支払った金額
保険金などで補填された金額受け取った保険金等の金額

「もう1件入力」ボタンでどんどん追加入力し、全件入力が終わったら「次へ進む」を押すと計算結果の確認画面が表示されます。医療費控除額が自動計算され、「次へ進む」を押すと確定申告書に自動反映されます。

📌 ポイント

e-Taxでは「医療費のお知らせ(健康保険組合等が発行する書類)」からの入力や、「医療費集計フォーム」の読み込みにも対応しています。領収書が多い場合は集計フォームを活用すると便利です。

📝 このセクションのまとめ

  • e-Taxの「控除額を試算する」機能で医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらが有利か自動判定できる
  • 領収書から1件ずつ入力し、「次へ進む」で自動計算・確定申告書への反映が完了する
  • 医療費のお知らせや集計フォームを使った入力方法も選択できる

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!

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