マイクロ法人・一般社団の社保削減スキームに警告!税理士が解説する規制強化の波

マイクロ法人・一般社団の社保削減スキームに警告!税理士が解説する規制強化の波
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国保逃れ炎上をきっかけに、マイクロ法人・一般社団法人を使った社会保険料削減スキームへの規制強化が現実味を帯びています。

今回の炎上事件の背景:地方議員の「国保逃れ」とは?

今、ある炎上事件が話題になっています。兵庫県内の市議・県議など地方議員4名が、関係者が立ち上げた一般社団法人の理事に就任し、国民健康保険を脱退して健康保険(協会けんぽ)に切り替えていたことが問題視されています。

この一般社団法人は、金融・会計に関する「勉強・検証団体」という体裁をとっており、議員たちはその理事として月1万1,700円の報酬を受け取る一方、月3万4,000〜5万円の会費を支払っていました。理事としての業務は「金融・会計に関するアンケートに月2回メールで回答するだけ」という非常にシンプルなものでした。

⚠️ 注意

この法人の理事にはなんと700名以上が就任していたことが判明しています。一般的な一般社団法人の理事の数としては明らかに異常であり、実質的に「国保逃れ」を目的として設立された法人であると強く疑われています。当該議員は現在、所属政党から処分を検討されています。

📝 このセクションのまとめ

  • 地方議員4名が一般社団法人の理事就任を通じて国保を脱退・健康保険に切り替えていた
  • 理事業務は「月2回メールでアンケートに答えるだけ」という実態のないもの
  • 理事700名超という異常な規模が「国保逃れ目的」を裏付けている

そもそも国民健康保険はなぜ高いのか?

会社員・サラリーマンや法人役員は、協会けんぽまたは企業の健康保険組合に加入し、あわせて厚生年金保険にも加入するのが一般的です。これらの保険料は月給の額をベースに計算されます。

一方、個人事業主・フリーランス・年金受給者・そして国会議員や地方議員などは、こうした健康保険・厚生年金には原則加入できません。そのため国民健康保険(国保)と国民年金に加入しなければならないのです。

保険の種類加入対象者保険料の決まり方特徴
健康保険(協会けんぽ等)会社員・法人役員月給をベースに算定保障が手厚い・傷病手当金あり
国民健康保険個人事業主・議員など所得・住民税をベースに算定保険料が高い・保障が薄い
国民年金個人事業主・議員など定額(月約1万7,000円)将来の年金受給額が少ない

国民年金は月額約1万7,000円と厚生年金に比べれば安いですが、将来もらえる年金額は乏しくなります。問題は国民健康保険で、財源が乏しいこともあり保険料が非常に高く設定されています。実際、個人事業主・フリーランスの方の中には、所得税や住民税よりもこの国民健康保険料の方が負担として重いと感じている方が多くいます。

📌 ポイント:国保の保険料上限(40歳以上の例)

所得が一定水準(概ね1,000万円近く)に達すると、国民健康保険料は年間最大109万円(上限額)に達します。たとえば議員報酬が年間1,500万円の場合、支払うべき国保保険料は年間100万円超になることがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主・議員などは国保・国民年金に加入しなければならない
  • 国保は所得が高くなるほど保険料が上がり、上限は年間109万円
  • 保険料が高い割に保障内容は健康保険より薄い

一般社団法人スキームの具体的な仕組みと削減効果

今回問題となった一般社団法人スキームの仕組みを整理します。法人税法上、一般社団法人の理事は「役員」に該当します。役員として法人から報酬を受け取ることで、社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者になることができます。

健康保険料は月給をベースに計算されるため、月給(役員報酬)を低く設定すれば保険料も大幅に下がります。今回の事例では月給1万7,000円に設定されており、兵庫県の最新の保険料額は以下の通りです。

保険の種類月給1万7,000円時の保険料
健康保険料(本人負担分)3,407円/月
厚生年金保険料(本人負担分)8,052円/月(国民年金の約半額)

この結果、議員報酬1,500万円+理事報酬(年間約14万円)の合計に対する健康保険料は年間わずか約4万円となります。国保の場合は年間109万円だったので、年間約100万円の削減が可能になります。

項目国保加入時一般社団スキーム利用時
年間健康保険料約109万円約4万円
一般社団への会費(年間)約40〜60万円
実質的な節約額約45〜65万円

⚠️ 注意

今回の一般社団法人は、国保逃れをしたい人のために設立されたと疑われており、会費も名目上のものに過ぎないと見られています。理事700名超という異常な実態がその証左です。勤務実態がないにもかかわらず社会保険に加入するのは「租税回避行為」に近い行為であり、脱税ではないとしても、通常行い得ない取引・行為として否認されるリスクがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 一般社団法人の理事(役員)になることで健康保険に加入できる仕組みを悪用
  • 月給1万7,000円に設定することで健康保険料を年間4万円まで圧縮
  • 会費負担を差し引いても年間45〜65万円の節約効果がある
  • 勤務実態のない役員就任は租税回避行為として否認リスクあり

中小企業・個人事業主の間で流行る3つの社保削減スキーム

今回の一般社団スキームは氷山の一角です。中小企業経営者や個人事業主の間では、以下の3つのスキームが代表的なものとして流行っています。

  1. マイクロ法人スキーム(個人事業主向け・国保削減)
  2. 事前確定届出給与スキーム(中小企業向け・健康保険料・厚生年金削減)
  3. 一般社団法人スキーム(今回の炎上事例・国保削減)

マイクロ法人スキームの仕組みとデメリット

最もメジャーなのがこのマイクロ法人スキームです。約5年前からネットやブログで広まり始めました。仕組みはシンプルで、個人事業を続けながら自分で小さな株式会社や合同会社を設立し、その法人の社長(役員)として低額の役員報酬を設定します。

📌 マイクロ法人スキームの仕組み

  • 個人事業を続けながら別に小さな法人(マイクロ法人)を設立する
  • その法人の役員報酬を低額(月5万円程度)に設定する
  • 健康保険・厚生年金の被保険者になり、国保から脱退できる
  • 月給が低いため、健康保険料・厚生年金保険料も大幅に低くなる

ただし、このスキームには多くのデメリットがあります。

  • 税務リスク:個人事業と法人を実態として分けてビジネスができているか、形だけではないかという観点で税務調査のリスクがある
  • 事業拡大の障害:役員報酬を低く抑えることにこだわると、法人に利益が出て課税される全体の税負担が重くなる。事業拡大を目指す人には使いにくい
  • 傷病手当金の保障が低い:月給が低ければ、いざというときの傷病手当金の保障額も低くなる
  • 将来の厚生年金が少ない:月給が低ければ、将来受け取れる厚生年金額も少なくなる

一時的にマイクロ法人を活用して、その後事業規模が大きくなった段階で役員報酬を正常化していくという使い方であれば問題ありませんが、ずっとこのスキームにこだわり続けると経営上の弊害がたくさん生じます。

事前確定届出給与スキームと規制強化の動向

2つ目の事前確定届出給与スキームは、個人事業主向けではなく、年収1,000万円以上の中小企業経営者向けのスキームです。毎月の役員報酬(月給)として受け取るのではなく、賞与という形でまとめて受け取ることで、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)を圧縮するというものです。

⚠️ 注意

事前確定届出給与スキームはすでに厚生労働省から目をつけられています。個人的には、3つのスキームの中で最も早く法改正・規制が入るのはこのスキームだと考えています。賞与で1,000万円超をドカンと受け取る形になるため資金繰りリスクも高く、マイクロ法人と同様のデメリットも多数あります。

また、マイクロ法人スキームも、今回の一般社団スキームの炎上を受けて、近いうちに規制強化の対象になる可能性が高いと見ています。税制上は現時点で一応適法ではありますが、不当な国保逃れとして租税回避行為に近い行為と見なされるリスクがあります。脱税行為ではないものの、通常行い得ない取引・行為については「その取引・行為を認めない」という租税回避否認の考え方が適用される可能性があります。

📝 このセクションのまとめ

  • マイクロ法人・一般社団・事前確定届出給与の3スキームが代表的
  • 事前確定届出給与スキームはすでに厚生労働省が注視しており、最初に規制が入る可能性が高い
  • マイクロ法人スキームも今回の炎上を受けて規制強化が近いと予想される
  • 現時点で適法でも、租税回避行為として否認されるリスクがある

合法的な国保削減の対策3選

では、スキームに頼らない合法的な国民健康保険料の削減策はあるのでしょうか。大きく3つの方法があります。

  1. 住民税の節税を徹底する
  2. 国民健康保険組合(国保組合)に加入する
  3. 実態のあるアルバイト・役員就任で社会保険に加入する

①住民税の節税を徹底する

国民健康保険料の計算は住民税をベースに算定されており、住民税は確定申告での所得税計算がベースになっています。つまり所得税を節税することで住民税が下がり、連動して国民健康保険料も削減できます。具体的な節税策としては以下が挙げられます。

  • 白色申告から青色申告に切り替える(青色申告特別控除の活用)
  • 少額減価償却資産の特例を活用する(取得価額30万円未満の設備投資を一括経費計上)※近く上限が40万円に変更予定

②国民健康保険組合(国保組合)への加入を検討する

業界によっては国保組合が存在します。たとえば税理士であれば「税理士国保」があり、所得水準で保険料が上がるのではなく、家族の人数で保険料が決まる仕組みになっています。所得が高い方ほど負担が大幅に軽減される場合があります。まずは自分の業界に国保組合があるかどうか確認することをお勧めします。

③実態のあるアルバイト・役員就任で社会保険に加入する

実際にアルバイトをして社会保険に加入するという方法です。これを悪用したのが今回の一般社団スキームですが、実態のある勤務であれば全く問題ありません。社会保険に加入するには週20時間以上の勤務などの条件をクリアする必要があります。

知人の会社で実態のある役員を兼務するという方法も有効です。ただし、議員の場合は兼業禁止規定があったり、政務活動の合間にアルバイトをするのは現実的に難しかったりするため、この方法が使いにくいケースもあります。

⚠️ 注意

冒頭の炎上事例のように、勤務実態がないのに働いているように見せかけて社会保険に加入するのは絶対にNGです。事実関係をねじ曲げた形での社保加入は、租税回避行為として否認されるだけでなく、社会的な信用を大きく損なうことになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 青色申告・少額減価償却特例などの節税で住民税→国保料を連動して下げる
  • 業界の国保組合があれば加入を検討する(所得ではなく家族数で保険料が決まる場合あり)
  • 実態のあるアルバイト・役員兼務で社会保険加入という方法もある
  • 勤務実態のない形での社保加入は絶対にNG

社会保険料の負担軽減を国に求める声

今回これだけ多くの人が国保逃れのスキームに手を出してしまう背景には、社会保険料・国民健康保険料の負担が重すぎるという根本的な問題があります。年収178万円の壁が創設されたからといって、国民の社会保険料負担が実質的に減っているわけではありません。

個人的には、こうした社会保険料の削減こそ国が積極的に推進すべき課題だと考えています。スキームに頼らざるを得ない状況を生み出している制度そのものの見直しが、本質的な解決策ではないでしょうか。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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