未成年者がいる場合の相続手続きを税理士が解説【特別代理人・相続税ゼロの方法】
相続人に未成年者がいる場合、特別代理人の選任が必要になるケースがあります。手続きの基礎から相続税ゼロを実現する遺産分割の工夫まで解説します。
遺産分割の2つのルール:遺言書がある場合とない場合
亡くなった方の遺産をどのように分けていくかは、遺言書がある場合とない場合でルールが分かれます。遺言書がある場合は遺言書の通りに分けます。遺言書がない場合は、遺産分割協議、つまり相続人全員での話し合いで分け方を決めることになります。
ただし、相続人全員で話し合いをしようとしても、未成年者、たとえば赤ちゃんが相続人の中にいた場合、その赤ちゃんはまだ分割協議に参加してもよく分かりませんので、ちゃんとした話し合いをすることができません。こういった時にどうすればいいのかが問題になります。
未成年者がいる場合の原則:親権者が代理人として参加
まず大原則として、未成年者が相続人の中にいる場合には、親権者が代理人として遺産分割協議に参加することができます。たとえばお父さんが亡くなって、お母さんに親権がある場合は、この親権者であるお母さんが代理人として遺産分割協議に参加します。これが原則です。
ただし、この図をよく見ていただくと、今回相続人になるのはお母さんとこの赤ちゃんの2人です。赤ちゃんの代理人としてお母さんが遺産分割協議に参加しようとすると、何が起きるでしょうか。お母さんが多く相続すれば赤ちゃんはその分少なくなりますし、赤ちゃんが多く相続すればお母さんは少なくなります。このような関係性のことを利益相反と言います。
遺産分割協議の代理人について利益相反が生じてしまっている場合、お母さんは代理人になることができません。未成年者と親権者が同時に相続人になる場合には、親権者は代理人になれないのです。
特別代理人の選任が必要なケースとは
では、親権者が代理人になれない場合はどうすればいいのでしょうか。ここで出てくるのが特別代理人の選任です。未成年者と親権者が同時に相続人になる場合には、特別代理人の選任が必要になります。
先ほどの例で言うと、お母さんは親権者として代理人になれませんので、また別の方を代理人として選ばなければなりません。この赤ちゃんの代理人のことを特別代理人と言います。実際の遺産分割協議書の作成については、お母さんと特別代理人の2人がその書類にサインをして実印を押し、手続きをすることになります。お母さんの印鑑証明書と特別代理人の印鑑証明書を使っていろんな手続きをすることになりますので、特別代理人を選ぶということが通常の相続とは大きく異なる点です。
よくある質問として、「私は現在17歳です。未成年ではありますが遺産分割協議の内容は理解できます。話し合いに参加してもいいですか?」というものがあります。現在は18歳から成人年齢に引き下げられましたが、たとえば17歳・16歳・15歳といった年齢であればある程度のことは自分で分かりますので、そういった方については遺産分割協議に参加してもいいのではないかと思われる方が多いと思います。
しかし、実はこれもダメなのです。未成年者がサインした遺産分割協議書を法務局や銀行に持っていったとしても、特別代理人の署名・押印がないと受理できないと突き返されてしまいます。17歳といった年齢であっても、特別代理人をちゃんと選ばなければなりません。
ただし、1つポイントがあります。成人になる18歳の誕生日を迎えてから遺産分割協議を始めるのも1つの手です。もうすぐ18歳になるという方については、成人になった誕生日を迎えた後であれば遺産分割協議に参加できますので、相続発生時点での年齢では決まらないということです。あえて少し遅らせるというのも1つの手としてはあります。ただし、相続税の申告期限は待ってくれませんので、その兼ね合いを考える必要があります。
特別代理人の選任が不要なケース
続いて、未成年者と親権者が同時に相続人にならない場合には、特別代理人の選任は不要です。これはどういったシチュエーションかというと、たとえば次のような親族図のケースです。
今回亡くなったお父さんがいて、このお父さんは以前に離婚をしていました。前の奥さんとの間に子供がいて、再婚して5歳の子供がいるという状態です。この場合の相続人は、再婚した奥さんと前妻との間の娘さんの2人になります。この場合、娘さんの親権者は前妻さんです。この前妻さんが親権者になっていますので、利益相反は起きていません。したがって、前妻さんが代理人として遺産分割協議に参加することが可能です。
特別代理人の申し立て方法・費用・スケジュール
特別代理人が必要になった場合は、家庭裁判所に対して申し立てを行います。未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行いましょう。費用は収入印紙800円と連絡用の切手代のみです。
必要書類は以下の通りです。
・特別代理人選任申立書
・未成年者の戸籍謄本
・親権者の戸籍謄本
・特別代理人候補者の住民票など
・遺産分割協議書案
申し立てをする際には、「私たちはこの人を特別代理人にしたい」ということをこちらから申し立てることになります。家庭裁判所が一方的に「あの人を代理人にしなさい」という性質のものではなく、あくまでこちらから候補者を申し立てる形です。また、遺産分割協議書案、つまり「遺産はこのように分けようと思っています」という案も一緒に裁判所に提出することになります。
このことから、特別代理人の申し立てをしようとする際は、誰を候補者にするのか、そしてどのように遺産を分けていくのかをある程度しっかり固めた上で申し立てを行う必要があります。
申し立てを行ってから実際に特別代理人が選ばれるまでは、大体1ヶ月程度の時間がかかります。特に相続税の申告が必要な方については、特別代理人の選任が終わってから遺産分割協議書を作成し、税務署に申告する必要があります。相続税の申告は相続発生日から10ヶ月以内に行わなければなりませんので、スケジュール管理には十分注意しましょう。
遺産分割の分け方と相続税の関係
ここからはかなり実務的な話になります。特別代理人の申し立てをする際に、どのような分け方を希望する方が多いのかを考えていきます。
多くの方はこのようにおっしゃいます。「この子に相続させても生活費に使えないので、私ができるだけ多く相続したいです」。お気持ちは大変よく分かります。配偶者が多めに相続して子供の教育費や生活費に充てていきたいという考えです。
ただし、この点については多くの弁護士や司法書士が「法定相続分で分けるべき」と考えているケースも多くあります。原則は法定相続分ではあるものの、配偶者に少し多めに相続してもらう案で提出して認められたケースもありますので、必ず法定相続分でないと認められないというわけではありませんが、慎重に考えていく必要があります。
また、若くして亡くなった方の相続については、相続税が発生しやすいという点も押さえておく必要があります。理由としては次のようなものが挙げられます。
まず、住宅ローンが団体信用生命保険(団信)によって免除されることが非常に多くあります。この場合、相続税の計算上では免除されるローンは控除の対象になりません。不動産が丸ごと課税の対象になる一方、ローンは控除できませんので、この部分だけでもかなりの価格になります。
次に、生命保険金です。若いうちはたくさんの保険金が下りる契約に加入されている方も多いので、保険金も結構多くなることがあります。さらに、勤務先から死亡退職金としてまとまったお金が支給されることもあります。死亡退職金は生命保険の非課税枠と同様に「500万円×法定相続人の数」まで非課税とされていますが、それを超えた部分については相続税の対象になります。こうした要素が組み合わさると、意外と相続税申告が必要になるケースが多いのです。
配偶者控除・未成年者控除を活用して相続税をゼロにする方法
相続税の取り扱いを考える際に、まず配偶者の税額軽減(配偶者控除)という特例があります。夫婦間の相続においては最低でも1億6,000万円まで相続税が無税になるという特例です。ご主人が亡くなって奥様が相続する部分は、最低でも1億6,000万円まで無税になります。
そして未成年者控除という制度もあります。相続人が未成年者である場合は、18歳に達するまでの年数1年につき10万円が相続税額から差し引かれます。
具体的に見ていくと、たとえば相続人が8歳のお子さんだった場合、「18-8=10」という数字で、10×10万円=100万円が税額控除となります。
この100万円という数字だけ聞くと少なく感じるかもしれませんが、未成年者控除は税額控除であるという点が重要です。死亡退職金の非課税枠や生命保険の非課税枠は財産の価格から引くものですが、未成年者控除は計算された税額そのものから引きますので、恩恵が非常に大きいのです。
たとえば相続税の早見表(子供だけが相続人の場合)で、財産額5,000万円・子供が2人の場合の相続税は80万円です。未成年者控除で100万円引けるとすれば、この80万円を丸ごと引けることになりますので、相続税は0円になります。
さらに、未成年者控除のプレゼントという制度もあります。未成年者控除額が本人の相続税額より大きいため控除額の全額を引き切れない場合は、その引き切れない金額を未成年者の扶養義務者の相続税から差し引くことができます。
たとえば、相続人がお母さんと子供2人で、そのうち子供1人が15歳の未成年者だとします。この未成年の相続人の相続税を未成年者控除で全て控除して余りが出た場合、その控除しきれなかった金額を他の相続人の相続税から引くことができるのです。いわば未成年者控除の余りをプレゼントできるということです。
なお、ここで言う扶養義務者とは、配偶者・直系血族・兄弟姉妹の他、三親等内の親族のうち一定のものを言います。ポイントは、実際に扶養しているかどうかは問われないという点です。兄弟姉妹の間では通常繰り越すことができますので、積極的に活用しましょう。
そして、相続人全員の相続税が0円になれば相続税申告は不要になります。
相続税負担を最小限にする遺産分割の工夫と注意点
これまで紹介してきた制度を踏まえると、どのような分け方が相続税の負担を最も抑えることができるのでしょうか。
まず、未成年者に対しては未成年者控除を使い切るだけの財産を相続してもらいます。そして残りの財産は全て配偶者が相続するという形を取れば、配偶者が相続する財産が1億6,000万円に収まっていれば、相続人全員の相続税を0円にすることができます。
ただし、この場合は配偶者控除を使うため、相続税の申告は必要になります。申告不要と勘違いしないよう注意してください。
最後に注意点をお話しします。極端に配偶者が相続しすぎると問題が生じる可能性があります。税金のことだけ考えた場合は配偶者が多く相続するのが税金的には有利になりますが、極端に配偶者が相続しすぎてしまうと、将来この子供が大人になった時に「あの時の遺産分割協議は無効である」という訴えを起こされる可能性があります。
この辺りは税金のことと法律のことをしっかりと専門家に監修してもらいながら手続きを進めることをお勧めします。
未成年者がいる場合の相続手続きについてまとめると、まず特別代理人の申し立てが必要になりますのでスケジュール感に注意しましょう。また、遺産分割の工夫次第では相続税の負担を最小限にすることも可能ですので、ぜひしっかりと押さえておいていただければと思います。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
関連記事
養子縁組で相続税を大幅節税!税理士が解説するメリット・デメリット
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
