雑所得確定申告が有利な理由を税理士が解説|個人事業主・副業・投資家向け新ルール
雑所得(業務)確定申告は帳簿不要で作業量が大幅に減る。向いている人・向いていない人を整理して解説します。
雑所得(業務)確定申告が向いている人
雑所得確定申告がみんなに向いているわけではありませんが、向いている方は結構いらっしゃいます。以下のような方に特に有利です。
- 忙しくて会計ソフトへの入力ができない
- お金よりも時間を優先したい
- レシートや領収書を日付ごとに分けるのが面倒
- とにかく手を抜きたい
- 毎年確定申告がストレスになっている
- 計算・整理整頓が苦手
- とにかく会社に副業がバレたくない
- 暗号資産(仮想通貨)や海外FXの税金で少しでも得したい
こういった方々は、雑所得(業務)という形で確定申告をするのが有利です。この場合、確定申告の作業量が事業所得に比べて3分の1以下になります。
📌 ポイント:楽を取るか節税を取るか
雑所得(業務)は作業が楽な反面、節税効果は限定的です。一方、事業所得の青色申告65万円控除は手間がかかりますが節税効果は大きくなります。青色10万円控除や白色申告をするくらいなら、雑所得(業務)の方が全然いいというケースも多くあります。
📝 このセクションのまとめ
- 帳簿作成・会計ソフト入力が負担な人には雑所得(業務)が向いている
- 暗号資産・海外FXをやっている人も雑所得(業務)が有利になる場合がある
- 青色申告65万円控除を使うなら事業所得の方が節税効果は大きい
e-Taxで雑所得(業務)確定申告をやってみた
実際にe-Taxの確定申告書等作成コーナーで雑所得(業務)の申告をやってみます。まず確定申告書等作成コーナーにアクセスし、「作成開始」ボタンを押します。マイナンバーカードを使うルートもありますが、今回は最も簡単な印刷提出の方法で進めます。
令和5年分の申告書を作成する場合、事業所得・青色申告・白色申告の方はこちらからスタートする必要がありますが、雑所得申告の方はこちらのスタートで大丈夫です。
入力の流れは以下の通りです。
- 生年月日を入力し、「給与以外に申告する収入はありますか」→「はい」を選択
- 「青色申告の承認を受けていますか」→今回は青色を使わないので「いいえ」を選択
- 予定納税の通知があれば「はい」、なければ「いいえ」を選択
- 「雑所得(業務)」の入力欄を開く
- 売上先ごとに収入金額・必要経費・源泉徴収税額・所得の生ずる場所(会社住所)・会社名を入力
- 複数の売上先がある場合は「もう1件入力」で追加
- 前々年分の業務に係る雑所得(2年前の収入)が1000万円を超えているか確認し、超えていなければ「いいえ」
📌 雑所得(業務)入力のポイント
雑所得(業務)の場合、売上先ごとの合計額と経費の合計額を入力するだけで大丈夫です。1件1件の明細を入力する必要はありません。例えば、収入600万円・必要経費200万円・源泉徴収税額40万円という形で合計額だけ入力すれば雑所得は400万円と計算されます。
また、現金主義の特例という制度があります。これは請求書を発行したタイミングではなく、入金が入ったタイミングで売上に計上してよいという特例で、確定申告をしやすくする仕組みです。
📝 このセクションのまとめ
- e-Taxの雑所得(業務)入力は「合計額を書くだけ」で完結する
- 現金主義の特例で入金ベースの売上計上が可能
- 事前の届け出は不要
2022年の新ルール:帳簿の有無で事業所得か雑所得かが決まる
所得税には給与所得・利子所得・譲渡所得など10種類の所得区分があります。個人事業主や会社員の副業については事業所得か雑所得かを選ぶことになりますが、この境い目はもともと非常にあいまいなものでした。
事業所得の要件として「営利性・利益が出ていること・継続していること・反復して同じことをやっていること」などの要素がありますが、昔からこの境い目はファジーでした。そのため、本来であれば事業のように見えても、わざと雑所得で申告する方もいらっしゃいました。雑所得にしておけば帳簿が不要で、ざっくりと確定申告ができるからです。また、昔は雑所得の方が税務調査があまり来ないという噂もありました(実際はどうかわかりませんが)。
そこで2022年からルールが変わりました。きっかけになったのは次のようなケースです。
📌 副業節税スキームの問題
会社員が給与所得500万円で税金40万円を納めていたとします。この方が副業を始め、副業で100万円の赤字が出た場合、副業を事業所得として申告すると、給与所得500万円から事業所得▲100万円を差し引いた400万円に対してのみ税金がかかります。結果として税金が20万円に減ってしまいます。この「給与の利益と副業の損を足すこと」を損益通算と言い、これを利用した副業節税が流行し始めました。
これを防ぐために、国は最終的に「帳簿をちゃんとつけているなら赤字でも事業所得でよい。帳簿がなければ雑所得」というルールを追加しました。つまり、帳簿の有無が事業所得と雑所得を分ける重要な判断基準になったのです。
| 区分 | 帳簿 | 損益通算 | 青色控除 |
|---|---|---|---|
| 事業所得(青色申告65万円控除) | 必要(複式簿記) | できる | 最大65万円 |
| 事業所得(青色申告10万円控除) | 必要 | できる | 10万円 |
| 事業所得(白色申告) | 必要 | できる | なし |
| 雑所得(業務) | 不要※ | 雑所得内のみ | なし |
※収入が1000万円超の場合は収支内訳書の作成が必要なため帳簿が必要。300万円超1000万円以下は請求書・領収書の保存が必要。300万円以下は保存も不要。
📝 このセクションのまとめ
- 2022年から「帳簿の有無」が事業所得・雑所得の分岐点になった
- 副業赤字による損益通算節税スキームへの対策が新ルールの背景
- 年間収入300万円以下の雑所得(業務)は領収書保存も不要
事業所得(青色・白色)と雑所得(業務)の税額比較
事業所得の青色申告・白色申告、そして雑所得(業務)の3つは、それぞれメリット・デメリットがありますが、基本的には同じ税率(所得税・住民税)が適用されます。つまり、税率自体は変わらないので、自分が一番やりやすいものを選択すればよいということになります。
ただし、青色申告控除の有無で税額に差が出ます。具体的な例で比較してみましょう。
| 申告方法 | 収入 | 経費 | 控除 | 所得税 | 住民税 | 合計納税額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 青色申告(10万円控除あり) | 600万円 | 200万円 | 10万円 | 20万円 | 31万円 | 51万円 |
| 雑所得(業務)・白色申告(控除なし) | 600万円 | 200万円 | なし | 21万円 | 32万円 | 53万円 |
この例では、青色申告10万円控除を使うかどうかで年間2万円の差が生じます。この2万円の節税と、会計ソフトに1件1件入力する手間暇のどちらを取るかという選択になります。
- 2万円でも節税したい → 青色申告10万円控除を選択
- 会計ソフト入力の手間が惜しい → 雑所得(業務)を選択
📌 青色申告65万円控除との差は大きい
青色申告65万円控除の場合は話が変わります。仮に税率20%の方であれば、65万円控除によって13万円の節税になります。65万円控除を使えるのであれば、事業所得の青色申告の方が圧倒的に節税効果は大きいです。
⚠️ 格安税理士への丸投げに注意
確定申告を税理士に依頼する場合の相場は20〜30万円です。「3万円・5万円で確定申告します」という格安の場合、税理士が雑所得(業務)として申告している可能性があります。帳簿不要で領収書を合計するだけなので税理士側の作業が非常に楽になるからです。どうせ税理士に頼むなら、青色申告65万円控除が適用されているかを必ず確認しましょう。節税額が13万円以上になるケースでは、きちんとした申告の方がトータルで得になります。
📝 このセクションのまとめ
- 青色10万円控除と雑所得(業務)の税額差は年2万円程度(収入600万・経費200万の場合)
- 青色65万円控除なら税率20%で年13万円の節税になる
- 格安税理士が雑所得申告をしている場合があるので青色65万円控除の適用を確認すること
雑所得の種類と暗号資産・海外FXとの損益通算
雑所得の種類について整理しておきます。
| 種類 | 該当するもの | 課税方式 | 損益通算 |
|---|---|---|---|
| 雑所得(公的年金等) | 年金 | 総合課税 | 雑所得内で可 |
| 雑所得(業務) | 副業収入・クラウドソーシングなど | 総合課税 | 雑所得内で可 |
| 雑所得(その他) | 暗号資産・仮想通貨・海外FX | 総合課税 | 雑所得内で可 |
| 先物取引に係る雑所得 | 国内FX・先物取引 | 分離課税(20.315%) | 同種のみ |
ポイントは、公的年金・業務・その他の雑所得は、雑所得内であれば損益通算ができるという点です。これを活用すると次のような節税が可能になります。
📌 雑所得内の損益通算の具体例
会社員が副業(クラウドソーシングなど)で500万円稼いで税金40万円を払う予定だったとします。この年に暗号資産(ビットコイン)の取引で100万円の損失が出た場合、副業収入500万円(雑所得・業務)とビットコイン損失▲100万円(雑所得・その他)を損益通算できます。結果として課税対象は400万円になり、税金が20万円に減ります。これは現時点では合法の仕組みです。
この仕組みを活用すると、次のような戦略が考えられます。
- 仮想通貨をやっていて赤字が出そうな年に、副業を始めるか何かしらの雑所得(業務)を発生させることで損益通算を狙う
- 年金をもらっている方も、暗号資産や海外FXの赤字と損益通算することができる
⚠️ 注意:都合よく申告区分を変えるのは問題になる可能性がある
普段は事業所得として申告しているのに、ビットコインで赤字が出た年だけ雑所得(業務)に変えるというやり方は、租税回避行為として問題になる可能性があります。ずっと雑所得(業務)で申告しているのであれば問題ないですが、都合よく申告区分を変えるのは避けた方が無難です。
📝 このセクションのまとめ
- 雑所得(公的年金・業務・その他)の間では損益通算が可能
- 暗号資産・海外FXの損失と副業収入を損益通算できる(合法)
- 国内FX・先物取引は分離課税(20.315%)で他の雑所得との損益通算は不可
- 都合よく申告区分を変えることは租税回避行為になる可能性がある
雑所得(業務)のその他のメリット:副業バレ対策
副業をしている場合、会社にバレないようにするには確定申告時に「給与以外の住民税については自分で納付する」にチェックを入れることがよく知られています。ただし、地方自治体によっては、うっかり副業の住民税も会社に通知がいってしまう可能性があります。
その場合でも、会社に届く住民税通知書には、公的年金・業務・その他の雑所得を合算した数字が記載されます。住民税通知書を見ただけでは、それが副業なのかビットコインの利益なのかが判別できません。そのため、雑所得(業務)として申告していれば、住民税通知書から副業がすぐにバレるということはありません。
📝 このセクションのまとめ
- 住民税通知書には雑所得の合計額のみ記載されるため、副業か投資かの判別が難しい
- 確定申告時に「給与以外の住民税は自分で納付」の選択と組み合わせることでバレるリスクを低減できる
雑所得(業務)の注意点とデメリット
雑所得(業務)にはメリットが多い反面、いくつか注意点とデメリットもあります。
① 事業所得ではないと指摘されないか?
これまで事業所得で申告していたのに雑所得(業務)に変えた場合、税務署から「これは事業所得ではないか」と言われないか心配される方もいらっしゃいます。現在の新ルールでは、帳簿の有無が非常に重視されています。「今回は帳簿が作れなかったから雑所得に変えた」というのは理由として成立します。そもそも帳簿が作れないということは、事業とは言えないという考え方が新ルールの根底にあるからです。
また、仮に事業所得だと言われたとしても、税金の額が変わらないケースも多いです。事業所得に変えた方が税金が安くなる(控除や専従者給与が使える)ような場合は、税務署から積極的に指摘されることはまずありません。税額が変わらないのにわざわざ指摘される可能性は相当低いと考えられます。
② 経費の範囲が変わるか?
経費かどうかの判断基準は「職業性 × 直接性 × 収益性」です。直接性については、雑所得の場合はより直接的な関連が求められます。青色申告であれば直接性が薄くても経費として認められる可能性が高く、白色申告はその中間です。ただし、この直接性の判定は調査官の考え方によってだいぶ変わりますし、明確にアウト・セーフの線引きがあるわけではありません。「雑所得だったらより仕事に直結するものでないと経費として認められにくいかもしれない」という程度の認識でよいでしょう。
③ 信用度が低い
融資を受けたりビジネスをする際に確定申告書の提示を求められた場合、事業所得がゼロで雑所得だけがある確定申告書を見せると、「この人は本気で事業をやっているわけではない」と見なされる可能性が高いです。規模が大きくなってから事業所得に切り替えるというのも全然ありだと思いますが、融資を視野に入れているなら早めに事業所得への切り替えを検討した方がよいでしょう。
⚠️ 雑所得(業務)のデメリットまとめ
- 青色申告のような大きな節税控除がない
- 専従者給与(家族への給与を経費にする仕組み)が使えない
- 給与所得など他の所得との損益通算はできない
- 融資審査などで信用度が低く見られる可能性がある
- 経費の直接性がより厳しく見られる傾向がある
📝 このセクションのまとめ
- 帳簿を作れないことを理由に雑所得(業務)に変えることは新ルール上問題ない
- 税額が変わらないケースでは税務署から積極的に指摘されることは少ない
- 融資を検討しているなら事業所得への切り替えを早めに検討すること
- 雑所得(業務)は節税よりも「手間を減らす」ことを優先する人向けの選択肢
📌 本記事の情報について
本記事は2024年1月21日時点の情報をもとに作成しています。特に暗号資産(仮想通貨)関係の税制は今後変わる可能性があります。最新の税制改正情報を随時確認するようにしてください。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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