国民健康保険料が来年度から上限2万円引き上げ|個人事業主・フリーランスの対策3選を税理士が解説

国民健康保険料が来年度から上限2万円引き上げ|個人事業主・フリーランスの対策3選を税理士が解説
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国民健康保険料の上限が来年度から年間2万円引き上げられ年額10万円となる方針がほぼ決定。3年連続の値上げで、個人事業主・フリーランスの負担はますます重くなっています。今回は有効な対策3つを詳しく解説します。

個人事業主・フリーランスの社会保険制度はなぜ不利なのか

社会保険制度は、個人事業主・フリーランスと、会社員・法人経営者とで制度が大きく異なります。

区分健康保険年金
会社員・法人経営者健康保険(健康保険組合)厚生年金保険
個人事業主・フリーランス国民健康保険国民年金保険

国民健康保険は自治体によって計算方法が異なりますが、少し稼ぎが上がるだけで保険料がべらぼうに高くなってしまうという特徴があります。その割に、保障内容は健康保険と比べて薄いのが現状です。

📌 ポイント

国民健康保険料は「国民健康保険税」として税金扱いになっている自治体(町村)もありますが、基本的には同じものと考えてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主・フリーランスは国民健康保険+国民年金の組み合わせ
  • 稼ぎが増えるほど国民健康保険料も急増する構造
  • 会社員の健康保険と比べて保障内容が薄い

国民健康保険料の上限が来年度から2万円引き上げ|3年連続の値上げ

厚生労働省の方針がほぼ固まりました。来年度から国民健康保険料の年間上限額を2万円引き上げ、年額10万円とする方針です。これは実に3年連続の引き上げとなります。

引き上げの目的として挙げられているのは以下の2点です。

  • 医療費の増大への対応
  • 高所得者層の負担を引き上げることで中間層の負担を和らげる

📌 ポイント

今回の上限引き上げは全員が対象ではありません。ざっくり言うと、所得1,000万円前後の方がターゲットになると考えてください。ただし昨今の税制改正が増税続きの中でこの引き上げが実施されることは、個人事業主・フリーランスにとって非常に厳しい状況です。

📝 このセクションのまとめ

  • 来年度から上限が年額2万円引き上げられ年額10万円に
  • 3年連続の値上げ
  • 対象は主に所得1,000万円前後の高所得者層

対策の結論|個人事業主・フリーランスが取れる3つの手段

所得がある程度あり、国民健康保険料の負担増が気になるという方は、以下の3つの対策を検討してください。おすすめ順に並べています。

  1. 国民健康保険組合(国保組合)への加入
  2. 住民税の節税
  3. マイクロ法人化(一部の方のみ)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

対策①|国民健康保険組合(国保組合)への加入

政府が運営する国民健康保険とは別に、各業界団体が独自に組合を作っている場合があります。これが国民健康保険組合(国保組合)です。どんな業界にも存在するわけではなく、今後新規の国保組合設立は認められていないため、既存のものはかなりレアケースです。

国保組合の保険料の特徴は以下のとおりです。

  • 保険料の算定方法が非常にシンプル(所得に関係なく定額
  • 扶養家族がいれば定額が加算される仕組み
  • 所得水準に関係なく低額であることが多い

そのため、たくさん稼いでいる方ほど国保組合に加入した方が有利になることが多いです。

📌 豆知識:法人なりしても継続加入できる場合がある

既に法人化されている方は基本的に国保組合への加入はできません。ただし、個人事業主の時点で国保組合に加入していた方が法人なりをした場合は、継続加入が可能なケースもあります

代表的な国保組合の例として、以下のようなものがあります。

国保組合名主な対象業種保険料の例(月額)
文芸美術国民健康保険組合文芸・美術・著作活動に従事し、組合加盟団体の会員(グラフィックデザイナー協会など)定額(所得不問)
大阪飲食国保飲食業界事業主:月額2万6,000円、家族1人追加:1万6,000円、従業員1人:1万6,000円

例えば文芸美術国民健康保険組合は、社団法人日本グラフィックデザイナー協会も加盟団体に含まれており、Web関連事業者やスマホアプリ関連の方でも協会の審査に通れば加入できるケースがあります。

📌 ポイント

業種の線引きが曖昧な国保組合もあります。「自分の業界には関係ない」と決めつけず、まず近そうな組合に問い合わせて加入できないか確認してみることをおすすめします。

📝 このセクションのまとめ

  • 国保組合は所得に関係なく定額保険料のため、高所得者ほどメリットが大きい
  • 新規設立は認められておらず、既存組合はレアケース
  • 業種の線引きが曖昧な場合もあるので、まず問い合わせを
  • 個人事業主時代に加入していれば法人なり後も継続加入できる場合がある

対策②|住民税の節税で国民健康保険料を下げる

自分の業界に国保組合がないという場合は、住民税の節税を検討してください。実は国民健康保険料は住民税の金額に連動しています。つまり、住民税を下げることで国民健康保険料も下げることができます。

所得税・住民税の計算の流れはおおむね以下のとおりです。

ステップ内容
売上(収入)
- 必要経費 = 事業所得(不動産所得・雑所得)
- 所得控除(医療費控除・配偶者控除など)= 課税所得
× 税率(所得税:超過累進税率 5%〜45%)= 所得税額
- 税額控除(住宅ローン控除など)= 納付所得税額
住民税:一律 10%、事業税:約5%(業種による)、復興特別所得税:2.1%(所得税額に上乗せ)

住民税も所得税とほぼ同じ計算方法で、主な違いは所得控除の金額が一部異なる点と、税率が一律10%という点のみです。

国民健康保険料を下げるためには住民税を下げる必要があり、住民税を下げるためには課税所得を下げる必要があります。そのための手段は次の3つです。

  • 売上を下げる(※本末転倒なのでNG)
  • 必要経費を増やす
  • 所得控除を増やす

売上を減らすことは商売の目的に反しますので、実質的には「必要経費を増やす」か「所得控除を増やす」かの2択です。

経費として計上できる主な項目の例は以下のとおりです。

  • 青色申告特別控除の活用
  • 接待交際費(売上に結びつくものであれば)
  • 家事関連費(仕事とプライベート併用の車の減価償却費など、仕事使用分)

⚠️ 注意

経費を使うということはキャッシュアウト(お金が減る)ことを意味します。会社員の方が「会社が経費を持ってくれる」という意味の経費とは概念が全く異なります。特に駆け出しのフリーランスの方は、資金繰りとのバランスを必ず考えてください。節税のために無駄な経費を使うことは本末転倒です。

📝 このセクションのまとめ

  • 国民健康保険料は住民税の金額に連動するため、住民税節税が直接効く
  • 節税の基本は「必要経費を増やす」か「所得控除を増やす」かの2択
  • 経費を使えばその分お金も減る。資金繰りとのバランスが重要

対策③|マイクロ法人化|メリットと見落とされがちなリスク

3つ目の対策がマイクロ法人化です。ただし、これは全員におすすめできるわけではありません。マイクロ法人とは、社員を雇用せず事業拡大も考えない、社長1人だけの会社のことです。法律用語ではなく造語であり、社会保険料の削減のためだけに考えられた会社というイメージです。

なぜ社会保険料が削減できるのかというと、会社を作ってその役員になると、政府管掌の社会保険(健康保険・厚生年金)に強制加入となり、国民健康保険・国民年金から脱退する形になるからです。そして政府管掌の健康保険・厚生年金の保険料は、法人から受け取る役員報酬の金額によって決まります。

役員報酬を最低ランクに設定した場合の保険料の目安(東京都)は以下のとおりです。

保険の種類月額保険料(会社負担+個人負担の合計)
健康保険(40歳未満・介護保険なし)約5,800円
健康保険(40歳以上・介護保険あり)約6,855円
厚生年金保険約16,000円
合計(40歳未満の場合)約2万円強

個人事業主の方はすでに国民年金で月約17,000円を払っています。それを考えると、国民健康保険料が月5,000円程度の方はそれほど差はありませんが、所得水準が高くて国民健康保険料を何万円も払っている方にとっては、マイクロ法人を使うことで保険料の負担を大幅に引き下げることができます。

ただし、マイクロ法人には多くのリスクと注意点があります。

⚠️ マイクロ法人の主なリスク・デメリット

  • 2社経営の不公平問題:個人事業と法人の2本立てで経営している場合と、2社法人を経営している場合で社会保険料の計算方法が異なり不公平が生じる。2社経営では両社の役員報酬を合算して社会保険料が決まるため負担が大きくなる。
  • 個人事業と法人の事業の線引きを明確にする必要がある:曖昧だと、個人の収入として疑われるリスクがある。
  • 法人に利益が残りすぎる問題:役員報酬を低く抑えると法人側に利益が積み上がる。個人事業主側の節税策は法人と比べて限られるため、バランス調整が難しい。
  • 個人に財産が残りにくい:役員報酬が月5〜6万円では生活できない。
  • 将来の年金が少なくなる:厚生年金の保険料が低ければ低いほど将来受け取れる年金も少なくなる。
  • 会社から個人への貸し付けが発生しやすい:生活費が不足して会社からお金を借りると、役員賞与として源泉徴収されるリスクがある。自分の会社であっても借りたお金は返済が必要。
  • 役員退職金が取りにくい:役員退職金は「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(代表取締役は約3倍前後)」が相場。役員報酬が月5〜6万円では退職金もほとんど取れない。
  • 会社解散時に財産が配当扱いになる:退職金として取らずに会社に財産が残った状態で解散すると、残った財産は配当扱いとなる。非上場会社の配当は総合課税(超過累進税率)が適用され、最大で所得税45%+住民税10%=55%の税負担が発生する可能性がある。
  • 近い将来の法改正リスク:このスキームはすでに改正候補として挙がっていると言われている。

マイクロ法人が向いているのは、本当に小規模・ミニマリスト的に事業を続けていく方で、かつ法改正がある前の期間に限られます。事業を大きく拡大していきたい方は、早い段階でマイクロ法人スキームをやめて、普通に法人経営をして役員報酬をしっかり取る方向に切り替えた方が良いでしょう。

📌 マイクロ法人のメリット(社会保険面)

デメリットばかりではありません。法人化して社会保険に加入することで、国民健康保険にはない以下のメリットが得られます。

  • 傷病手当金(病気・ケガで働けない時の手当)が受けられる
  • 出産手当金が受けられる(国民健康保険にはない)
  • 厚生年金加入により将来の年金が増える可能性がある
  • 障害になった時の障害年金が手厚くなる

📝 このセクションのまとめ

  • マイクロ法人は役員報酬を最低ランクに設定することで社会保険料を大幅削減できる
  • リスクが多く、全員におすすめできるわけではない
  • 小規模・ミニマリスト型の事業者向けで、法改正前の期間限定スキームという認識が必要
  • 事業拡大を目指す方は早めに通常の法人経営に切り替えるべき

まとめ|起業・事業スタート時にゴールをイメージすることが重要

今回の国民健康保険料上限2万円引き上げを受けた対策を改めて整理します。

対策向いている人注意点
①国保組合への加入対応する組合がある業種の方・高所得者業界によっては組合が存在しない
②住民税の節税国保組合がない業種の方全般経費を使えばお金も減る。資金繰りに注意
③マイクロ法人化小規模・ミニマリスト型の事業者リスク多数。法改正リスクあり。全員向けではない

起業や事業をスタートする際には、将来の目標・ゴールをイメージしておくことが重要です。

  • 食べていければいい・小規模でやっていきたい方:マイクロ法人スキームなどをうまく活用して保険料の削減を検討してください。
  • 事業を大きくして世の中に貢献していきたい方:「節税は後、黒字が先」。まずビジネスをしっかり作ってしっかり稼ぐことを優先し、途中でマイクロ法人を活用するのはよいですが、どこかで本格的な法人運営に注力していくことをおすすめします。

📌 最終まとめ

国民健康保険料の上限引き上げは3年連続。個人事業主・フリーランスにとってますます不利な状況が続いています。使える対策は「国保組合への加入」「住民税の節税」「マイクロ法人化」の3つ。自分の状況・将来のゴールに合わせて最適な手段を選んでください。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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