国民健康保険料が上がる確定申告3選|税理士が解説する国保の落とし穴

国民健康保険料が上がる確定申告3選|税理士が解説する国保の落とし穴
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確定申告をすると所得税・住民税だけでなく国民健康保険料まで増える理由を徹底解説します。

国民健康保険料とは|加入者と保障内容の現状

国民健康保険料は、特定の市区町村では「国民健康保険税」という名称がついているところもありますが、基本的に同じものと考えていただければと思います。

加入者の区分は大きく以下のように分かれます。

区分健康保険年金
個人事業主・フリーランス国民健康保険国民年金
会社員・会社経営者健康保険(一部は健康保険組合)厚生年金保険

この国民健康保険なんですけれども、実は保険料が高い割に保障内容が非常に薄いです。会社員が加入する健康保険にはちゃんと備わっているような出産手当金傷病手当金がないなど、結構デメリットが多い割には高いという状況です。

⚠️ 注意

来年度から所得1,000万円前後の方は上限が2万円引き上げされることが決まっており、国民健康保険料はどんどん高くなっています。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主・フリーランスは国民健康保険+国民年金に加入
  • 国保は出産手当金・傷病手当金がなく保障が薄い
  • 来年度から上限が2万円引き上げられ、さらに負担増へ

国民健康保険料はどうやって計算されるのか

国民健康保険料は、所得税や住民税の計算とほぼ連動しています。個人事業主・フリーランスの方を想定すると、計算の流れは次のようになります。

  1. 売上から必要経費を引いて「事業所得」を計算する
  2. 医療費控除・配偶者控除・生命保険料控除などの「所得控除」を差し引く
  3. 残った「課税所得」に税率をかけて所得税を計算する(超過累進税率)
  4. 住宅ローン控除などの税額控除があればさらに差し引く

所得税以外にもかかる税金として、以下のものがあります。

税目税率・内容
住民税一律10%
事業税約5%前後(業種によって異なる)
復興特別所得税所得税額の2.1%

給与収入・年金収入・不動産収入がある方は、それぞれの所得を課税所得に合算していくイメージです。

東京都大田区の計算例|国保料の算定基礎額とは

実際の保険料がどのように決まるのか、東京都大田区の公式ウェブサイトの令和5年度の計算方法を例に見ていきましょう。国民健康保険料は複雑で、次の3つのカテゴリに分けて計算されます。

  • 医療分
  • 後期高齢者支援金分
  • 介護分(40歳以上の方のみ)

それぞれに「所得割」と「均等割」があり、3つの区分で計算した合計が保険料になります。

区分所得割(算定基礎額×税率)均等割(1人あたり)上限額
医療分算定基礎額 × 7.17%4万5,000円65万円
後期高齢者支援金分算定基礎額 × 2.42%1万2,000円22万円
介護分(40歳以上)算定基礎額 × 2.2%17万円

3区分を合算した世帯限度額は104万円となります(来年度からはさらに2万円増額の予定)。

📌 ポイント:算定基礎額とは

算定基礎額=前年の総所得金額 − 43万円です。住民税の基礎控除が43万円であることから、実質的には「事業所得(儲け)とほぼイコール」と捉えていただけばOKです。所得控除の中で国保算定に反映されるのは、この基礎控除(43万円)のみです。医療費控除などその他の所得控除を増やしても、国保料には影響しません。

なお、市区町村によって保険料率や計算方法が微妙に異なりますので、お住まいの自治体でご確認ください。

国民健康保険料を安くするためには、「売上を下げる」か「必要経費を増やす」かのどちらかしかありません。売上を下げるのは本末転倒ですから、基本的には必要経費をいかに増やすかがポイントになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 国保料は医療分・後期高齢者支援金分・介護分の3区分で計算
  • 算定基礎額=前年総所得−43万円(ほぼ事業所得)
  • 東京都大田区の世帯上限は104万円(来年度さらに増額)
  • 医療費控除などの所得控除は国保算定に反映されない

【パターン①】いつもより儲かった・臨時の雑収入があった

1つ目のパターンは、単純に業績が好調だった場合や、商売の中で臨時の雑収入が発生した場合です。

売上が上がり利益が上がると、算定基礎額(=総所得)も上がります。東京都大田区の場合、算定基礎額に対して約12%の料率をかけて保険料を算定しますので、儲けが増えれば保険料もそのまま上がります。

📌 ポイント

これは「いつもより儲かった年」に限らず、翌年の国保通知(6月頃到着)で初めて気づくケースが多いです。確定申告を終えた後に「なぜこんなに高いの?」と驚かれる方が多いので、事前に資金繰りに織り込んでおくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業の利益が増えると国保料も連動して増加する
  • 国保通知は翌年6月頃に届くため、確定申告後に驚くケースが多い
  • 増加するのは臨時収入が発生した翌年1年限り

【パターン②】譲渡所得などの臨時収入があった

2つ目のパターンは、事業以外の臨時収入が発生した場合です。具体的には以下のものが該当します。

収入の種類所得区分具体例
車・不動産・金の売却譲渡所得事業用車の売却、不動産売却、金の売却
FX・仮想通貨の利益雑所得FX取引の利益、ビットコイン等の売却益
保険金収入一時所得満期保険金など(身体の損害に関するものは非課税)
退職金退職所得会社退職時の退職金

これらは毎年発生するものではなく、たまにしか出てきません。しかし、たまたまこういったものが発生すると、当然ながら所得税・住民税の負担が増え、さらに国民健康保険料も増えていくことになります。

特に注目したいのがFXや仮想通貨です。昨年後半からビットコインを含む仮想通貨の価格相場が上昇しており、半減期の到来もあって2024年〜2025年中にさらに相場が大きく上がる可能性があると多くの方が予想しています。

⚠️ 注意

仮想通貨・FXで大きな利益を得た場合、会社員・会社経営者の方は別として、国民健康保険に加入している方は国保料の負担が思いっきり増えてしまう可能性があります。利益確定のタイミングで翌年の国保料負担も念頭に置いておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 車・不動産・金の売却益(譲渡所得)は国保算定に加算される
  • FX・仮想通貨の利益(雑所得)も同様に加算される
  • 保険金収入(一時所得)・退職金(退職所得)も対象
  • 仮想通貨相場の上昇局面では特に注意が必要

【パターン③】株式投資の節税目的であえて確定申告した場合

3つ目のパターンは、株式投資をされている方が節税のためにあえて確定申告をした場合です。これが最も見落とされやすい盲点です。

まず、新NISA口座のみで投資をしている方はご安心ください。新NISAは非課税なので、この問題は関係ありません。

問題になるのは特定口座(源泉徴収あり)で株式投資をしている場合です。この口座を選んでいると、配当金の受け取りや株の売却益に対して約20%の税金が自動的に徴収されます。何もしなければその20%が引かれて終わり、確定申告は不要です。

ただし、以下のような場合は確定申告をした方が節税になることがあります。

  • 配当控除を受ける場合
  • 複数口座を持っていて、特定の口座で損失が発生している場合(損益通算
  • 米国株など海外株の配当金を受け取っている場合(外国税額控除)※海外では約30%徴収されるため、確定申告で取り戻せる

⚠️ 注意:株式申告の重大な盲点

確かに所得税・住民税は節税できますが、確定申告をすることで株の儲けが国民健康保険料の計算にもカウントされてしまいます。特定口座(源泉徴収あり)を選んでいれば、申告しない限り国保の算定上は「隠れ所得」のような扱いになりカウントされません。しかし、節税目的で申告した途端に国保料に反映されてしまいます。所得税・住民税の節税効果と国保料の増加分を比較した上で、申告するかどうかを判断することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 新NISAのみの方はこの問題に関係なし
  • 特定口座(源泉徴収あり)は申告しなければ国保に反映されない
  • 配当控除・損益通算・外国税額控除のために申告すると国保料も増加
  • 所得税節税効果と国保料増加分を必ず比較検討すること

国民健康保険料の削減策はあるのか

結論から言うと、削減策はほとんどありません。ただし、いくつかの選択肢は存在します。

① 国民健康保険組合への加入

個人事業主・フリーランスの方は、ご自身の業界に国民健康保険組合が存在する場合はそちらへの加入を検討してみてください。国保組合は所得ではなく頭数(定額)で保険料が算定されることが多いため、たくさん稼いでいる方は大幅に削減できる場合があります。

② 住民税(≒所得税)の節税

住民税を節税すれば国民健康保険料も削減することができます。具体的な節税策として以下が挙げられます。

  • ふるさと納税をして各種特典を受ける
  • 業務に関連する接待交際費(飲食費など)を活用する
  • プライベートと仕事両方で使っている車の減価償却費を家事按分で計上する
  • 倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入する(ただし個人事業主は出口設計が必要)
  • 30万円未満または10万円未満の設備投資をして経費に落とす

③ マイクロ法人の活用

個人事業主の方が法人を設立し、そこで政府管掌の社会保険に加入して役員報酬を最低額に設定すると、国民健康保険から脱退することができ、社会保険料を下げることができます。

⚠️ マイクロ法人の注意点

  • 役員報酬を下げると将来の年金が減る
  • 傷病手当金が減るなどのデメリットがある
  • マイクロ法人の活用が加熱しすぎているため、税制改正で今後使えなくなる可能性がある
  • 使うとしても一時的・事業規模が小さいうちだけというつもりで活用すること

📝 このセクションのまとめ

  • 業界の国保組合があれば加入を検討(定額制で高所得者に有利)
  • 必要経費の積み上げや各種節税策で住民税を下げることが国保削減にもつながる
  • マイクロ法人は有効な手段だが、デメリット・税制改正リスクに注意

まとめ|国保負担増は1年限り、資金繰りに織り込もう

国民健康保険料が増えてしまう確定申告の3パターンをおさらいします。

パターン具体例国保への影響
①いつもより儲かった業績好調・臨時の雑収入儲けに連動して増加
②譲渡所得などの臨時収入不動産・車・金の売却、FX・仮想通貨の利益、保険金収入、退職金所得に加算されて増加
③株式投資をあえて申告配当控除・損益通算・外国税額控除目的の申告株の儲けが国保算定に反映

税理士実務においても、資産家の方が不動産売却をされた翌年の6月頃に国民健康保険料の通知が届いて、その金額を見て驚かれるケースがよくあります。「なんでこんなに高いの?」と思われるのは当然ですが、これは皆さんの所得と連動するためやむを得ない部分があります。

📌 ポイント:国保負担増は翌年1年だけ

臨時収入による国保負担の増加は、その臨時収入が発生した翌年1年限りです。翌々年以降は通常の水準に戻りますので、一時的な負担増として資金繰りに織り込んでおきましょう。今年このような確定申告をされる方は、「国保の負担が増える」というつもりで準備しておくことをおすすめします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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