新NISAのデメリットを税理士が解説|損益通算できない落とし穴と相続時の注意点
新NISAには税金的に損をするケースが存在します。始める前に知っておくべきデメリットを解説します。
新NISAは「神制度」なのか?相続専門税理士の見解
2024年1月から始まった新NISA制度。基本的にはメリットがたくさんあり、ぜひ皆さんにどんどん使っていただきたい制度です。しかし実は、税金的に損をしてしまうケースというものも存在します。
相続専門税理士である筆者がNISAについてお話しするということは、そうなんです。相続の時にNISAを持っていると損をしてしまうということが、これからたくさん増えていくからです。ですので、NISAを始めようと思っている方については、ぜひ今回の内容を最後まで見ていただき、慎重にご判断していただければと思います。
「新NISAは神制度と聞きました。絶対やった方がいいですよね」というご質問をいただいています。よく「神制度」だという風に言われるのですが、ぶっちゃけた話をすると、私はこの新NISA制度は神制度と呼ばれるまでのものではないという風に実は思っています。神制度はふるさと納税ですね。ふるさと納税はあれは歴然とした神制度なのですが、NISAがそこに匹敵するかというと、実は匹敵はしないという風に思っております。
株式・投資信託にかかる税金の基本|売却益と配当金
株式や投資信託を購入して資産運用していこうと思った時、税金は一体どのようにかかっていくのか。考えるべきことは2つあります。
1つ目は売却益です。これは買った株式が将来値上がりして売却をした時、買った金額より売った金額の方が高いので、その差額のことを売却益といいます。売って儲けたということですね。そしてもう1つが配当金です。投資信託の場合には分配金という言い方をしますが、株式を持っている方については、その会社が株主に対して配当金という利益の一部を還元してくれます。これによって儲けが出るという、大きくこの2つがあります。
この売却益と配当金の2つについては、それぞれ税金がかかっていきます。税率は20.315%ということで、約20%の税金がかかっていきます。その内訳は、所得税が15.315%、そして住民税が5%という割合になっています。
それで、新NISA口座というものを作っていただくと、その中で株式を持ったり、投資信託を持ったりしていただければ、この売却益にかかるものだったり、配当金にかかる本来20%の税金、これが全て非課税になっていきます。しかも非課税期間は無期限になりました。ずっと持っていてもこの非課税の恩恵を受け続けることができるということで、一見すごく良さそうに見えるのですが、これはちょっと「ちょろまかされているんじゃないか」という風に私は思っています。
NISAで見落とされているデメリット|損益通算と繰越控除が使えない
具体的にどういうことか。注目していただきたいのは売却益の取り扱いです。詳しく見ていきましょう。
例えば、100万円で買った株式を将来売却したら150万円で売れたとします。50万円値上がりしましたね。この場合、100万と150万の差額の50万円が売却益となりまして、本来であればこの売却益50万に対して20%、つまり10万円の税金を払わなければいけません。
では一方で、100万円で買った株式が将来50万円でしか売れませんでしたという場合、今度はこれ値下がりしているので「売却損」という言い方をします。この売却損50万については、売却損50万×20%をしても元々税金がかかってきません。儲けていませんので、この場合は税金は0円です。これは当然の話ですね。
ここまではいいかと思うのですが、こういったケースはどうでしょうか。例えばA株式を売却して50万円に下がってしまい売却損50万が出た、そしてB株式という別の銘柄は100万で買ったものが150万に値上がりしていたとします。この場合、売却損50万円が出ています。この2つの株式でそれぞれ売却損と売却益が出ているのですが、このようなケースにおいては損と益を通算(相殺)することができるんですね。この売却損50万と売却益50万を相殺、つまりプラスマイナス0にしてくれる制度があります。この制度のことを損益通算という言い方をします。
さらにです。例えばA株を売って売却損が50万出ました。そしてB株を売ったら売却益が30万円出ました。そうすると、50と30を比べると30の方が低いので、20万円分、損益通算しきれない金額というものが生じます。この損益通算しきれなかった金額については、翌年以降3年間繰り越すことができる制度があります。この制度のことを繰越控除という風に呼びます。
この損益通算と繰越控除という2つの特例制度につきましては、実はNISAだと使えないんです。これは金融庁のパンフレットにもしっかり書いてあります。「NISA口座にて損失が発生した場合、特定口座や一般口座で保有する他の株式等の配当金や売却益などと損益通算できますか? できません。また損失の繰越控除(3年間)もできません。」ということです。
ですので、NISA口座で運用している売却益については確かに非課税になるのですが、売却損については損益通算ができない、そして繰越もできないという位置づけになっているんですね。うまくいく時はすごくいいのですが、失敗してしまった時、損した時というのは、この救済制度とも呼べる損益通算・繰越控除が使えない、こんな関係になっているんです。
NISAはハイリスク・ハイリターンにしているだけ?期待値で考える
このことを踏まえると、NISA口座というのは、配当金は確かに非課税にしてくれます。しかし売買に関しては、ハイリスク・ハイリターンにしているだけなんですね。
ここでちょっとしたクイズを出します。どちらのくじ引きが好きでしょうか?
・1/2の確率で8万円もらえるけど、1/2の確率で8万円払うことになるくじ引き
・1/2の確率で10万円もらえるけど、1/2の確率で10万円払うことになるくじ引き
この質問というのは、NISAを使うか使わないかの選択と実は同じなんです。NISAを選んだ場合というのは、うまく売却益が出れば非課税になりますが、売却損を出してしまった場合には損益通算ができないというデメリットがあります。このメリットとデメリットは、期待値的に見ると同じくらいの大きさになっていきますので、非課税のメリットだけが世の中的にはかなり注目されているのですが、損益通算もできないというデメリットはあまり多くは語られていない、そんな印象を受けます。
私がこの業界に入ったのは、ちょうど2011年、リーマンショックが起きた頃だったんですね。あの時の確定申告書を、会計事務所で働いていましたので、たくさん作ってきましたが、非常に多くの方がこの損益通算、そして繰越控除の確定申告を作ることになったんです。今は株価が結構上がっていますので、売却益のところにしか注目が行っていないのですが、相場が下がった時というのは非常に多くの方がこの損益通算・繰越控除に救われるんです。なかなか伝わっていないと思いますので、あえて強調させていただきます。
ですので、新NISAは神制度だという風によく表現されるのですが、売却益のメリットというのは損益通算ができない以上、評価から外れるんじゃないかと、評価するべきではないという風に思っています。NISAには確かに税金的なメリットはあるけれども、期待値的に見れば配当金にかかるメリットだけが評価するべきものなのかなという風に私は思っています。
特に、今後NISA口座で買ったから損切りしたくないなという方も現れてしまうんじゃないかといったところをすごく懸念しております。ただ、NISA口座で買った株が値下がりしても、上がるまで待てば損することはないんじゃないのという意見も当然あるかと思います。非課税期間も無期限化されたわけだしということで、おっしゃる通りなんです。NISA口座で買ったものが値下がりしても値上がりするまでじっとしっかり持っていただければ損することはありません。むしろメリットしかない制度と言えるでしょう。ですので、NISAというのは基本的に長期投資にすごく向いている口座だと私も理解しております。
NISAを持ったまま亡くなったらどうなる?相続発生時の落とし穴
ただ、確かに非課税期間は無期限なのですが、これが永久に続くわけじゃないんです。そうなんです。NISAを持ったまま亡くなってしまったらどうなるでしょうかというのが、今回のメイントピックになっていきます。
運用していた株式に含み損がある状態で相続が発生すると、損失が確定してしまいます。これがどういうことか説明していきます。
まず、相続した株式を売却した時の税金の考え方についてお話しします。例えば、とある方が株式を100万円で購入しました。この方が亡くなってしまいます。亡くなってしまった時の株式が、例えば50万円くらいに値下がりしていたとします。この株式を相続した相続人が売却をしました。その時には株価が回復して150万円まで増えていたとします。
この場合の税金の計算は一体どのように行っていくかというと、売った金額150万から、お父さんが買った時の価格100万円を引くのか、それとも相続した時の価格50万円を引くのか、という問題が出てきます。もし相続した時の株価をベースに見ていくのであれば、150万から50万を引いた売却益は100万円ということになります。一方でお父さんが買った時の価格をベースに見ていけば、150万から100万円を引いた50万円が売却益ということになります。
今回このケースはどちらが正解かというと、お父さんが買ってきた時の100万円を使うのが正解です。相続した株式を売却した場合、取得費(買ってきた時の価格)は亡くなった方の取得価格を引き継いで税金を計算します。ということで、売った価格と亡くなった方が元々買ってきた価格、ここを比べていく、これが原則なんですね。ですので今回のこのケースにおいては、50万円に対して税金がかかっていくことになります。
NISA口座の株式を相続した場合|取得費の引き継ぎができない問題
それで一方で、これがもしNISA口座で運用していた場合はどうなるのかというお話をしていきます。前提条件は同じです。NISA口座を使って100万円の株式を購入し、相続の時には50万円になって、そして売った時には150万円になっていましたというケースです。
先ほどは100万円と150万の差額を見ていったのですが、NISAで運用していた場合というのは、購入時の価格を使うのではなく、相続時の価格を使うこととされています。つまり、NISAは取得費の引き継ぎというものが認められていないんです。なぜかというと、亡くなった方個人のNISA口座から相続人のNISA口座への移管というものはできないということが決まっています。ですので、NISA口座で運用していた株式を相続した場合、取得費・取得価格は相続時の株価で税金を計算することとなります。
ですので、先ほどの例で言えば、特定口座・一般口座であれば売却益は50万円で済んだのですが、NISAで運用をしていれば、売却益は100万円ということで、支払う税金が倍になるこんな現象が起こります。
もっと言うと、お父さんが株式を100万円で買いました。相続の時に値下がりしています。売った時に100万円に戻っていましたという場合であったとしても、相続時の株価との比較になっていきますので、売却益50万が発生するということになってしまうんです。株価が元の数字に戻っただけなのに税金が発生する可能性ありということです。これがもし特定口座・一般口座であれば、株価が元の数字に戻った場合には税金は発生しないということになっていきます。
ということで、NISA口座で運用していた株式が値下がり(含み損)がある状態で相続が発生してしまうと、この損失というものがもう切り捨てられてしまいます。そして相続人にそれは繰り越せませんので、結果として所得税の負担が高くなってしまうこんな現象が起こってしまうんです。ですので、やはり注意をしていかないといけない制度です。
ちなみにこれはプロ向けのワンポイントアドバイスなのですが、NISA口座で運用していた株式を相続して売却した場合、取得費加算の特例は使えることとなっていますので、相続税を課税された方については、NISA口座でも取得費加算の特例を忘れないように注意をしていきましょう。
投資のタイミングと「円で持つ」という選択肢
投資の格言でこんな言葉があります。「山高ければ谷深し」という格言がございまして、これは相場がすごく高くなっている時というのは、下がる時の下がり方もすごいよという格言なのですが、この動画を撮影しているのは2024年1月16日なのですが、今日経平均株価がどんどん高くなっていて、過去最高を記録したというニュースが流れています。
NISAが始まったので何もしないのは良くない、何もしないのはもったいないからどんどん投資していこうという方がすごく多いと思うのですが、投資というのは何を買うかというのも大事なのですが、いつ買うかというのもすごく大切なんです。株価がすごく高くなっている時に株式を買ってしまえば、「山高ければ谷深し」ということで、多額の含み損を抱えてしまうようなことも起こり得ますので、投資を始めたいという方は、今どのタイミングで買うのかということをしっかり見極めていただく必要があるんじゃないかと思っております。
私はあえて日本円で持つのも立派な投資だという風に思っています。普通預金・定期預金に持っている、これもある種の投資ではあるんです。もし株式が暴落した時だとか、今後不動産価格が下がった時、その時のためにしっかり日本円を蓄えておく、これも立派な投資だと思っていますので、別に何もしていないわけじゃないという風に思っております。
まとめ|NISAのメリットとデメリットは同じくらいの大きさと考えよう
今回の内容では「まだやるな、新NISAの落とし穴」ということで、基本的にはNISAはおすすめの制度です。長期投資をするには持ってこいですね。やはり、買ったらもうずっと塩漬けくらいの気持ちで株式や投資信託にどんどん投資していくのが、私としてはおすすめなのですが、ただとは言っても、やはりNISA口座で運用していて、含み損がでっかく出てしまっている状態で相続が発生しましたというようなケースにおいては、この損失の繰り越しができませんので、結果として普通の口座で株式を運用していた方が税金的に良かったということが起こってしまう可能性はあるんです。
ですので、非課税にできるというメリットと損益通算できないというデメリットは同じくらいの大きさのものだと考えて、このNISAというものに向き合っていただくことをお勧めいたします。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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