役員報酬 損益計算書で最初に見るべき理由|財務のプロが解説

役員報酬 損益計算書で最初に見るべき理由|財務のプロが解説
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損益計算書で真っ先に見るべきは売上でも利益でもなく「役員報酬」です。その理由を財務コンサルタントが徹底解説します。

損益計算書(PL)で一般的に注目される指標とは

損益計算書(PL)を見る際、多くの方が注目するのは以下のような指標です。

  • 営業利益・経常利益などの利益額
  • 売上高経常利益率(売上に占める経常利益の割合)
  • 総資本経常利益率(バランスシートの総資産に占める経常利益の割合)
  • 前期比での売上高成長率(成長を見る指標)

こういった財務指標で会社の儲け具合、いわゆる決算書の吉凶を判断されている方が多いのではないでしょうか。もちろん、預金残高も非常に大切ですので、そちらも確認します。

💡 補足:動画では触れていませんが…

売上高経常利益率の業種別平均は、製造業で約3〜5%、卸売業で約1〜2%、サービス業で約5〜8%程度とされています。自社の利益率を業種平均と比較することで、経営の強みや課題がより明確になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 一般的に注目されるのは利益・利益率・売上成長率
  • 預金残高も重要な確認ポイント
  • しかし財務のプロが真っ先に見るのは別の項目

財務のプロが損益計算書で真っ先に見る項目は「役員報酬」

年間に何百・何千もの決算書を拝見してきた経験から言うと、実は真っ先に目がいくのは役員報酬です。「社長はどれくらいお給料を取っているのか」という点が、どうしても気になってしまうのです。

損益計算書には「役員報酬」として記載されており、さらにその次のページには販売費及び一般管理費の内訳明細書が添付されています。そこに役員報酬の内訳が記載されていますので、社長だけでなく、ご両親・ご兄弟・お子様など、ご家族全体でどれくらい取られているのかを確認します。

📌 ポイント

役員報酬の確認先は2か所あります。
①損益計算書の「役員報酬」勘定科目
②販売費及び一般管理費の内訳明細書(役員ごとの金額が記載)

銀行員の方も、意外と損益計算書を役員報酬から見てしまう方が多いのではないでしょうか。これは業界の「癖」とも言えますが、れっきとした理由があります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

金融機関の審査では「実態利益」という概念が使われます。役員報酬の過不足を調整した上で会社の真の稼ぐ力を見る手法で、役員報酬が低すぎる場合は「潜在的な利益が隠れている」と判断されることもあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 財務のプロが最初に確認するのは役員報酬
  • 内訳明細書でご家族全体の報酬額も把握する
  • 金融機関も同様の視点を持っている

中小企業の経営成果は「利益」ではなく「役員報酬」に現れる

原則論で考えると、売上が伸びてコスト削減に成功すれば、利益が増えるはずです。しかし、中小企業の損益計算書ではそうならないことが意外と多いのです。

売上増加やコスト削減の成果が最初に向かうのは、実は役員報酬なのです。中小企業の経営成果というのは、利益ではなく役員報酬に現れることが多い。これが、役員報酬から決算書を読む最大の理由です。

利益だけで会社の儲け具合を判断していると、本当の経営実態を見失ってしまうことがあります。

視点一般的な見方財務プロの見方
経営成果の現れ方利益(経常利益)に現れる役員報酬に現れることが多い
判断指標売上高経常利益率・ROA役員報酬水準+利益の組み合わせ
リスク利益が低くても問題ないと見る役員報酬が低いと将来リスクを察知

💡 補足:動画では触れていませんが…

中小企業庁の調査でも、中小企業オーナーの「報酬+利益」の合計額が実質的な経営成果を示すとされており、金融機関の内部審査でも「オーナー報酬加算後の利益」で評価するケースが多いです。

📝 このセクションのまとめ

  • 売上増・コスト削減の成果は役員報酬として先に現れやすい
  • 利益だけで判断すると経営実態を見誤る
  • 「役員報酬+利益」の合計で経営成果を評価すべき

オーナー社長の「矛盾」─ 頑張れば頑張るほど相続・事業承継コストが増える

中小企業の多くはオーナー社長が株式も保有しています。社長個人、あるいはご家族を含めて100%近くの株式を保有しているケースが大半です。

ここに大きな矛盾があります。会社の内部留保を高めることは、財務的には正しい行動です。バランスシートの利益剰余金を積み上げ、自己資本比率を高め、借金に頼らない経営を実現する。これが教科書的な正解です。

しかし、会社の内部留保が高まると、オーナー社長の個人バランスシートにある株式の評価額も連動して上昇します。これはイコールの関係です。

場面かかる税金課題
社長が亡くなった場合相続税株式(非現金資産)に現金で納税が必要
生前に後継者へ贈与する場合贈与税評価額が高いと贈与税も高額になる
株式を売却して現金化する場合所得税・住民税譲渡所得として課税される

つまり、頑張れば頑張るほど自分の資産価値が高まり、それに比例して将来の税金も増えていくという矛盾に直面するのです。しかも、税金はお金で納めなければなりません。株式はお金ではありませんので、現金を別途準備する必要があります。

⚠️ 注意

会社に現金があれば、会社が自社株を買い取って相続人に現金を渡すという対策も可能です。ただし、これは会社の資金繰りを直撃します。できる限り個人でも現金・金融資産を確保しておくことが重要です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

事業承継税制(特例措置)を活用すると、後継者への自社株贈与・相続にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度があります。ただし要件が複雑なため、顧問税理士との事前相談が不可欠です。特例承継計画の提出期限にも注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 会社の内部留保増加=オーナーの株式評価額上昇=将来の税負担増
  • 相続・贈与・譲渡いずれの場面でも税金は現金で納付が必要
  • 個人での現金・金融資産の蓄積が事業承継リスクへの備えになる

法人と個人、どちらに残すか─年収2000万円が一つの目安

法人税と所得税・住民税を比較した場合、法人に残すか個人に残すかの分岐点は年収約2000万円が目安です。

役員報酬の水準有利な残し方理由
2000万円超会社(法人)に残す個人の所得税・住民税率が法人税率を上回るため
約2000万円どちらでも大差なし法人税率と個人の実効税率がほぼ同水準
2000万円未満個人で受け取る所得税率が法人税率より低い場合がある

この目安を踏まえると、役員報酬の目標額は年間2000万円程度が一つのベンチマークになります。そしてその中から毎年数百万円をコツコツ貯金できる体制を整えることが理想です。

📌 ポイント:具体的な資産形成シミュレーション

役員報酬2000万円を取得し、毎年300万円を貯蓄した場合:
5年間で1500万円の自己資金が形成されます。
この1500万円を頭金に投資用マンションを購入し、銀行融資を活用すれば家賃収入が得られます。家賃収入が生活費を補えるようになれば、役員報酬を引き下げる選択肢も生まれます。

役員報酬が700万〜800万円程度の場合、ご家族がいる中でなかなか貯蓄は難しいでしょう。内部留保が積み上がっていく一方で個人の現金が不足すると、いざという時(万が一の相続など)に奥様や後継者が対応に困る事態になりかねません。

⚠️ 注意

「内部留保を高めることが最優先で、自分は二の次・三の次でいい」という考え方の社長もいますが、若い経営者ほど役員報酬をしっかり取っておくことが重要です。好業績の時に個人の資産形成をしておかないと、業績悪化時に身動きが取れなくなります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

役員報酬は原則として期首から3か月以内に決定し、原則として年間を通じて同額でなければ「定期同額給与」として損金算入できません。業績に応じて柔軟に変更したい場合は「事前確定届出給与」の活用も検討してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 法人vs個人の分岐点は年収約2000万円
  • 2000万円を目標に役員報酬を設定し、毎年数百万円の貯蓄体制を作る
  • 投資用不動産などで家賃収入を確保すると、将来の報酬引き下げも可能になる

業績悪化時こそ役員報酬が「コスト削減の切り札」になる

中小企業が業績不振に陥った際、金融機関の継続的な支援を得るためにはコスト削減の姿勢を示すことが不可欠です。しかし現実的に、中小企業でできるコスト削減策は限られています。

そのほぼ唯一と言っていい選択肢が、役員報酬のカットです。

📌 ポイント:金融機関への説明力の比較

【状況】売上減少により500万円の赤字が発生。社長の年収は1500万円

▼ 説明A(売上回復を訴える場合)
「売上を頑張って回復させます」→ 確実性が低く、銀行は納得しにくい

▼ 説明B(役員報酬カットを示す場合)
「役員報酬を1500万円から1000万円に削減します。500万円の赤字が確実に解消され、現状の売上水準でも黒字化できます」→ 確実性が高く、銀行が支援しやすい

役員報酬のカットは、損益分岐点売上高(BEP)を引き下げる効果があります。固定費である役員報酬を削減することで、より少ない売上でも黒字を維持できる体制になるのです。

ただし、ここで重大な問題が生じます。社長が1500万円から500万円に役員報酬を落とした時に生活が成り立たなくなってしまうと、実際には削れないのです。削れるかどうかは、業績が良い時期に個人でどれだけ蓄えておいたか、あるいは家賃収入などの副収入があるかどうかにかかっています。

業績悪化時の状況役員報酬カットの可否経営への影響
個人貯蓄あり・家賃収入あり◎ 大幅カット可能生活維持しながら会社の損益分岐点を引き下げられる
個人貯蓄なし・副収入なし✕ カット困難生活が成り立たず、金融機関への説得力も失う
個人貯蓄あり・副収入なし△ 一時的なカット可能貯蓄が尽きると限界が来る

💡 補足:動画では触れていませんが…

役員報酬を期中に減額する場合、「業績悪化改定事由」に該当すれば期中でも損金算入が認められます。ただし、業績悪化の事実を客観的に示せることが条件です。恣意的な減額とみなされると損金不算入になるリスクがあるため、税理士への事前確認が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 中小企業の現実的なコスト削減策は役員報酬カットがほぼ唯一
  • 役員報酬カットは損益分岐点を引き下げ、金融機関への説得力も高い
  • カットできるかどうかは、好業績時の個人資産形成にかかっている

金融機関との付き合い方─内部留保の厚みと役員報酬のバランス

金融機関は最終的に内部留保の厚みを見てお金を貸すかどうかを判断します。しかし、役員報酬をしっかり取りながらも毎年コツコツと内部留保を積み上げている段階では、内部留保の絶対額がまだ大きくなくても借入ができるケースがあります。

銀行から融資を受けられている状況であれば、現在の内部留保の水準でそれほど急いで厚みを増やさなくても資金調達ができているわけです。つまり、銀行が現在の決算書の内容(役員報酬水準と内部留保のバランス)を承諾した上でお金を貸しているのですから、そういう時期は役員報酬を遠慮せずしっかり取るべきです。

📌 ポイント:役員報酬を適切に取ることの二重効果

  • 個人の資産形成:貯蓄・投資用不動産購入などで将来の事業承継・相続コストに備えられる
  • 業績悪化時の対応力:役員報酬を削れる余地が生まれ、損益分岐点を引き下げて金融機関の支援を継続しやすくなる

決算書を見る側(税理士・銀行員)が役員報酬を真っ先に確認するのは、「この社長はちゃんと個人でも備えができているか」を見ているからです。役員報酬が低いにもかかわらず頑張っている社長を見ると、どこかでリスクを抱え込んでいるという不安感が生じてしまいます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

金融機関によっては「債務償還年数」(借入残高÷(経常利益+減価償却費))で融資判断をするケースがあります。役員報酬を適切に取り、利益を一定水準に保つことで、この指標も改善しやすくなります。

📝 このセクションのまとめ

  • 金融機関は内部留保の厚みを最終的な融資判断基準にする
  • 借入ができている時期は、役員報酬を遠慮なく取ってよい
  • 役員報酬を適切に取ることで個人の資産形成と業績悪化時の対応力が同時に高まる

役員報酬を正しく設定するための実践チェックリスト

ここまでの内容を踏まえて、役員報酬の設定・見直しにあたって確認すべきポイントを整理します。

  1. 現在の役員報酬水準を確認する:年収2000万円を一つの目安として、現状との乖離を把握する
  2. ご家族への報酬分散を検討する:配偶者・親族が実際に業務に従事している場合、役員報酬を分散することで所得税の節税効果が得られる
  3. 毎年の貯蓄額を設定する:役員報酬から毎年いくら貯蓄できるかを計画し、5年・10年単位の目標額を決める
  4. 投資用不動産など副収入の確保を検討する:家賃収入があれば、業績悪化時に役員報酬を大幅カットしても生活を維持できる
  5. 相続・事業承継の準備を顧問税理士と相談する:自社株評価額と将来の相続税・贈与税を試算し、必要な個人資産額を逆算する
  6. 業績悪化シナリオをシミュレーションする:売上が何%落ちたら赤字になるか(損益分岐点)を把握し、その時に役員報酬をどこまで削れるかを確認する

⚠️ 注意

役員報酬を浪費してしまっては意味がありません。「しっかり取って、しっかり貯める」がセットです。老費(浪費)せず、計画的に金融資産として積み上げることが前提となります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

役員報酬の改定は原則として事業年度開始から3か月以内に行う必要があります(定期同額給与の要件)。年度途中での増額は原則として損金不算入になるため、期首の段階で慎重に設定することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 年収2000万円を目安に役員報酬を設定し、毎年の貯蓄計画を立てる
  • 副収入(家賃収入など)の確保が業績悪化時の「生活の盾」になる
  • 相続・事業承継の試算を早めに行い、必要な個人資産額を把握する

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 直近の損益計算書と内訳明細書を手元に用意し、現在の役員報酬(ご家族分含む)の合計額を確認する
  2. 年収2000万円との差額を把握し、来期の役員報酬改定(期首3か月以内)に向けて顧問税理士と協議する
  3. 自社株の相続税評価額を試算し、将来の事業承継・相続コストに備えた個人資産の目標額を設定する
  4. 業績が前期比30%・50%落ちた場合の損益シミュレーションを行い、役員報酬をどこまで削れるかを確認する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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