節税対策

役員貸付金のメリット・デメリットと返済方法を税理士が解説

役員貸付金のメリット・デメリットと返済方法を税理士が解説
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会社から役員へお金を貸す「役員貸付金」。低金利で借りられる強烈なメリットがある一方、税務・融資面での落とし穴も多い。

経営者になると、個人と法人のどちらにどれくらいキャッシュを残すかが悩みどころです。税率上は会社にある程度のお金を残した方が有利だと分かっていても、会社のお金は自由に使えません。私生活でお金が必要になったとき、例えばマイホームの購入などで、会社のお金が使えたらと思う場面は少なくないでしょう。

そんなときに活用できる仕組みが「役員貸付金」です。お給料という形ではなく、会社から役員にお金を貸すという形を取ることができます。ただし、いくつかの注意点もありますので、慎重に考えて取り組む必要があります。

役員貸付金とは何か?使われる3つのケース

役員貸付金とは、その名の通り会社が社長もしくは役員へお金を貸している状態のことです。社長目線で言うと、社長が会社からお金を借りるということであり、本来であれば将来的に会社へ返済する必要があります。

役員貸付金がよく行われるのは、主に以下の3つのケースです。

  1. プライベートで高額の買い物や支払いをする際に一時的に借りる場合(例:自宅の購入)
  2. 節税目的で役員報酬を低く設定している場合
  3. 使途不明金の処理をする場合

1つ目について、中小企業の経営者は住宅ローンを組むのが難しいケースがあります。そのような場合に、会社から借りることができれば非常に助かります。

2つ目について、例えば役員報酬を年間1,000万円から100万円に減らすと、所得税と住民税がかなり安くなります。しかし100万円で生活するのは現実的に厳しい。そこで、生活費の不足分を会社から借りるというテクニックとして役員貸付金が活用されます。

3つ目について、内容不明な支出の処理を社長本人に確認できないケースがあります。担当者が「この支払いは何ですか」と聞いても社長になかなか連絡が取れない、といった場合に、役員貸付金として処理することがあります。これは特に、税理士に記帳をお願いしているような場合によく起こります。

⚠️ 注意

役員貸付金が積み重なって高額になるのは、会社にとって危険な状態です。本当に必要なこと以外には使わないことを強くお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員貸付金とは、会社が社長・役員にお金を貸している状態
  • 主な利用ケースは①高額プライベート支出②役員報酬の低設定③使途不明金の処理
  • 高額になると会社にとってリスクになるため、必要最小限にとどめること

役員貸付金のデメリット①:利息がかかる

自分の会社から借りるのに利息が発生するのか、と疑問に思う方も多いでしょう。しかし、会社は営利を目的とする組織であるため、たとえ社長に対する貸付であっても利息を計上する必要があります。

一人社長であれば利息を計上しなくてもよさそうに思えますが、法人においては会社と社長個人は別人格とみなされます。そのため、税法上は社長に対する貸付であっても第三者への貸付と判断されます。会社のお金は「他人の財布」だということです。

利息分は会社の利益として計上されるため、法人税が増額する場合もあります。もし利息を計上しなかった場合は、税務調査で指摘される可能性があります。

利息を計上しなかった場合のリスクを避けるためには、通常の金銭貸付と同様の手続きが必要です。

  • 契約書の締結
  • 株主総会・取締役の承認を受けること
  • 議事録の作成

また、利率が極端に低い場合も問題になります。役員貸付金の利率の基準は以下の通りです。

貸付を行った年度適用利率
平成30年・令和2年度中1.6%
令和3年中1.0%
令和4年中0.9%

この基準金利よりも低い利息、あるいは無利息で役員に貸付を行った場合、その差額分は役員賞与として課税されてしまいます。

📌 ポイント

利息を取らないケースもあり得ます。ただしその場合は、なるべく短期間、目安として1年以内に返済することが重要です。経費の立替のように短期で精算するケースであれば、利息を厳密に計上しなくてもよいと考えられる場合があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 会社と社長は別人格のため、役員への貸付にも利息の計上が必要
  • 令和4年の基準利率は0.9%。これを下回ると役員賞与として課税される
  • 短期(1年以内)で返済する場合は、利息の計上が不要になるケースもある
  • 契約書・議事録の整備が必須

役員貸付金のデメリット②:銀行融資が受けにくくなる

金融機関が融資の際に判断するポイントは主に2つです。

  • 返済能力:期日までにきちんと返してくれるか
  • 資金使途:お金が事業目的に使われているか

決算書に多額の役員貸付金が載っていると、金融機関は「貸したお金が会社の事業に使われず、社長個人に回されている」と判断します。そうなると融資を受けられないケースも十分あり得ます。

⚠️ 注意

実務上の対処法として、決算の直前に一旦返済し、決算書に役員貸付金を載せないようにすることが重要です。例えば3月決算であれば、3月中に返済してもらい、4月以降にまた借りるという形であれば決算書に載りません。融資の可否は決算書で判断されるため、決算書上でなるべく役員貸付金が見えない状態にすることが大切です。

📝 このセクションのまとめ

  • 決算書に役員貸付金が載ると、銀行からの印象が著しく悪くなる
  • 融資が受けられないケースも現実に起きている
  • 決算直前に返済し、決算書に載せない工夫が実務上の対処法
  • 年度内に返済し、翌年度に再度借りるという形であれば問題ない

役員貸付金のデメリット③:役員賞与とみなされるリスク

貸し付けたつもりのお金が、貸付ではなく役員報酬や賞与とみなされるリスクがあります。「会社から貸しているのではなく、給料やボーナスではないか」と税務署から判断されてしまう可能性です。

みなされた場合、源泉所得税などが課されることになります。つまり給与と同様の扱いになるため、社長個人の所得税・住民税が重くなります。

なぜこのようなことが起きるかというと、返済しないからです。返済しなければ「もらっているのと同じ」と判断されても仕方ありません。役員貸付金が返済されないまま残り続けると、滞留債権、あるいは単に贈与しているだけではないかとみなされます。

📌 ポイント

このリスクを避けるためには、定期的に返済を行うことが非常に重要です。契約書があればより安心ですが、仮に契約書がなかったとしても、定期的に返済していくという実態があることが大切です。

📝 このセクションのまとめ

  • 返済しないままにすると役員報酬・賞与とみなされ、源泉所得税が課される
  • 滞留債権・贈与とみなされるリスクもある
  • 定期的な返済の実態を作ることが最大の対策

役員貸付金の強烈なメリット2つ

デメリットが多い役員貸付金ですが、あえて挙げるなら2つの強烈なメリットがあります。

メリット①:役員報酬の代替として活用できる

役員報酬を経費として計上するには、厳しいルールがあります。

  • 定期同額給与:株主総会で決められた金額を毎月同額で支払うこと(いわゆる月給)
  • 事前確定届出給与:ボーナスのこと。会計年度開始から4ヶ月目まで(3月決算なら7月10日まで)に、支給日・支給額を税務署に届け出て、届出通りに支給すること

特に事前確定届出給与は、たった1円・たった1日のズレで全額が経費として認められなくなるという厳しいルールがあります。創業したばかりで利益が読めない時期に高い役員報酬を設定してしまうと、後で困ることになりかねません。

そこで役員報酬を低く設定する、あるいは0にして、社長の生活費は役員貸付金で賄うという活用方法があります。

メリット②:低金利で借りることができる

役員貸付金の利率は、令和4年中に貸付を行ったものであれば約0.9%です。これを他の借入手段と比較すると、その低さが際立ちます。

借入手段金利の目安
役員貸付金(令和4年)約0.9%
銀行カードローン2〜14%程度
消費者金融カードローン3〜18%程度

また、役員の病気や災害などで多額の生活費が必要となった場合など、合理的な返済期間での貸付であれば、無利息または低い利息であっても役員貸付金として認められるケースがあります。

📌 ポイント

役員貸付金をうまく活用すれば、所得税をかけずに低金利で生活費を受け取れる可能性があります。ただし、使いすぎには注意が必要です。社長個人としてはお金を借りられても、会社自身が金融機関から借りられなくなる可能性があることを忘れてはいけません。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員報酬を低く設定した際の生活費補填として活用できる
  • 令和4年の利率は0.9%と、銀行・消費者金融より圧倒的に低金利
  • 病気・災害など合理的な理由があれば無利息・低利息でも認められるケースがある
  • 会社の融資能力への影響を常に意識すること

既存の役員貸付金の返済方法4つ

すでに役員貸付金がある場合、どのように返済していけばよいのでしょうか。主な返済方法は以下の4つです。

返済方法①:役員報酬から返済する

毎月の役員報酬の手取りから、役員貸付金の返済に充てる方法です。ただし、返済金の分だけ役員報酬の手取りが減少します。手取りの減少を避けるために役員報酬を増額すると、今度は社長個人の所得税・社会保険料が増加してしまうというジレンマがあります。

返済方法②:個人資産を会社に売却する

役員個人の資産(主に土地・建物・車など)を会社に売却し、その売却代金と役員貸付金を相殺する方法です。売却によって利益が生じた場合、役員には譲渡税が課されることになります。

返済方法③:役員退職金で相殺する

役員退職時に支払われる退職金と役員貸付金を相殺する方法です。ただし、この方法では退職するまで役員貸付金が決算書に残り続けるというデメリットがあります。また、退職が形式的なもので、その後も実質的に経営を握っていた場合は、退職金が役員報酬とみなされるリスクがあります。

返済方法④:経費立替との相殺

社長が会社のためにクレジットカードで経費を立て替えたことがある場合、会社はその立替分を精算する義務があります。その立替金と役員貸付金を相殺することで、少しずつ役員貸付金を減らしていく方法です。経費精算を受けられないというデメリットはありますが、貸付金を着実に圧縮できます。

⚠️ 注意

どの返済方法にもそれぞれデメリットがあります。原則として、役員貸付金が膨れ上がる前に、年度内に返済してしまうことが最善策です。貸付金が積み上がってからでは、返済方法の選択肢も限られ、税負担も大きくなります。

📝 このセクションのまとめ

  • 返済方法は①役員報酬から返済②個人資産の売却③退職金との相殺④経費立替との相殺の4つ
  • いずれの方法もデメリットを伴う
  • 最善策は年度内に返済し、貸付金を積み上げないこと

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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