節税対策

役員報酬「月100万円」が最適な理由を税理士が解説|所得税と法人税の分岐点

役員報酬「月100万円」が最適な理由を税理士が解説|所得税と法人税の分岐点
e_zeirishi

役員報酬の最適額に迷ったら「月100万円」が一つの目安になる理由を解説します。

役員報酬の設定はなぜ難しいのか

役員報酬の設定は、経営者にとって頭を悩ませるテーマの一つです。役員報酬が多いとプライベートで使えるお金が増えるのはいいのですが、その分税金が高くなってしまいます。そのため、個人の所得税と法人税の負担を考慮しつつバランスを取っていくのが難しいポイントです。

まず、年収ごとの税金・社会保険料の負担をざっくりシミュレーションしてみると、以下のようになります。

年収税金・社会保険料の負担率(目安)
1,000万円約27%
1,500万円約31%
2,000万円約35%
3,000万円約40%

なんとなく高額な役員報酬を設定してしまうと、毎年びっくりするぐらいの税金を負担しているかもしれません。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員報酬が増えるほど個人の税負担も増える
  • 年収3,000万円では負担率が約40%に達する
  • 個人と法人のバランスを取ることが節税の基本

所得税と法人税の実効税率の違い

所得税は「超過累進税率」という仕組みになっており、年収が増えると税金が上がっていきます。これは7段階で上がるようになっていて、最高では45%、住民税を足すとなんと55%になることがあります。

一方で法人税は、所得税ほど細かく分かれていません。ざっくりまとめると以下の通りです。

法人所得の区分実効税率(目安)
400万円以下約20%
400万円超〜800万円以下約25%
800万円超約34%(以降は変わらず)

法人税は800万円を超えると34%で頭打ちになります。つまり、いくら稼いでも34%のままです。これが所得税との大きな違いです。

📌 ポイント

利益をうまく個人と法人に分けていくことで、手元に残るお金を増やすことができます。どちらで課税されるかによって、税率に大きな差が生まれるのです。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税は最高55%(住民税込み)まで上がる累進課税
  • 法人税の実効税率は最高でも約34%で頭打ち
  • 個人と法人に利益を分散することが節税の鍵

課税所得900万円が分岐点になる理由

所得税と法人税のどちらで払った方が税金的にお得になるのか。その判断基準として重要なのが、課税所得900万円という分岐点です。

所得が低いうちは、住民税と合わせてもせいぜい15〜20%程度なので、個人で払った方がお得です。しかし課税所得が900万円を超えると、税率が33%から43%に一気に上がります。

具体的に所得税+住民税の合計税率を見てみると、以下のようになります。

課税所得の区分所得税率住民税率合計税率法人税との比較
695万円〜899万9千円23%10%33%法人税(34%)より低い ✅
900万円〜1,799万9千円33%10%43%法人税(34%)より高い ❌

つまり、課税所得が900万円を超えると所得税の方が法人税より高くなるのです。この高い税率を払うぐらいだったら、会社に利益を残して法人税を払った方が税金的にはお得、という考え方になります。

📌 ポイント

課税所得900万円が、個人課税と法人課税のどちらが有利かを判断する一つの分岐点です。これを超えると、個人で受け取るより会社に残す方が税金的に有利になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 課税所得900万円未満なら所得税+住民税が33%で法人税より低い
  • 課税所得900万円以上になると合計43%となり法人税より高くなる
  • 900万円が個人・法人どちらで課税するかの分岐点

役員報酬「月100万円」が目安になる理由

では、なぜ役員報酬「月100万円」が一つの目安になるのでしょうか。月100万円の役員報酬は、年間では1,200万円になります。

年収1,200万円から各種控除を差し引くと、大抵の場合、課税所得が899万9千円以内のラインに収まります。つまり、所得税+住民税の合計税率が33%で済み、法人税(34%)より少し低い負担で済むのです。

📌 ポイント

役員報酬を月100万円(年1,200万円)に設定すると、各種控除を差し引いた課税所得が900万円を下回るケースが多く、所得税+住民税の合計税率33%で法人税より有利な水準に収まります。一見乱暴なようで、実は意外といいところをついている目安です。

さらに、役員報酬の金額が高くなると受けられる控除が少なくなっていく点にも注意が必要です。

  • 合計所得金額が900万円を超えると、配偶者特別控除の金額が徐々に下がる
  • 合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者特別控除が受けられなくなる
  • 合計所得金額が2,000万円を超えると、住宅ローン控除が受けられなくなる

税率の面だけでなく、こうした各種控除への影響も考慮して役員報酬を決めていくことが重要です。役員報酬を高くしすぎるのは避けた方がいいでしょう。

⚠️ 注意

役員報酬が高くなると所得税の税率が上がるだけでなく、配偶者特別控除や住宅ローン控除など各種控除も受けられなくなります。税率の有利・不利だけでなく、控除への影響も必ず確認しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 月100万円(年1,200万円)の役員報酬は課税所得が900万円以内に収まりやすい
  • 所得税+住民税33%で法人税より有利な水準
  • 900万円・1,000万円・2,000万円超で受けられる控除が段階的に減少する

会社のお金を個人に移す方法|出張手当と役員退職金

役員報酬を低く抑えて会社にお金を残したとしても、そのお金は事業資金・社用車・交際費など事業に関わるものにしか使えません。プライベートで自由に使えないという不自由さがあります。では、会社に残したお金を個人に移す方法はあるのでしょうか。

① 出張手当の活用

従業員や役員に支給された出張手当には、実は所得税も住民税もかかりません。例えば、日当と宿泊費を合わせて2万円支給したとして、実際の出費が1万円で済んだ場合、差額の1万円が非課税の臨時収入になります。これによって、会社から個人に利益を移すことが可能になります。

⚠️ 注意

出張手当は常識的に考えて妥当な金額である必要があります。日当と宿泊費を合わせてだいたい2〜3万円程度が常識的なラインです。1回の日当を100万円にするといった極端な金額設定は認められません。

② 役員退職金の活用

会社内に利益を貯めておき、役員退職時に退職金としてドカンと吐き出す方法もおすすめです。役員退職金が節税に有効な理由は2つあります。

  1. 退職金の受け取りが税制的に優遇されている
  2. 社会保険料がかからない

まず税制優遇の面から見てみましょう。退職金は分離課税で、退職所得控除が適用できます。控除額の計算式は以下の通りです。

勤続年数退職所得控除額の計算式
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

例えば、勤続20年であれば40万円 × 20年 = 800万円の控除が受けられます。退職金が800万円で勤続20年の場合、その退職金に対する税金はゼロになります。

さらに、退職所得控除を超える退職金を受け取った場合も、課税所得を1/2にすることができます。計算式は以下の通りです。

📌 役員退職金の課税所得計算式

(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税所得

退職所得控除を適用した上でさらに1/2になるため、非常に有利な課税方法です。

次に社会保険料の面です。現在、役員報酬に対しては法人と個人で折半して約30%の社会保険料を負担しています。一方、退職金の支給であれば社会保険料は一切かかりません。税制優遇と合わせると、役員報酬で受け取るよりも断然有利になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 出張手当は非課税で会社から個人へお金を移せる(目安は日当+宿泊費で2〜3万円)
  • 役員退職金は退職所得控除+1/2課税で税制優遇が大きい
  • 役員退職金には社会保険料がかからないため役員報酬より有利
  • 今すぐ大きなお金を動かしたい場合は、役員報酬を多めに出すことになる

会社にお金を残した方がいいケース

会社にお金を残すか個人に残すか、判断に迷う経営者は多いです。ここでは大まかな目安を解説します(ケースバイケースであることをご承知ください)。

会社にお金を残した方がいい場合は、主に以下のケースです。

  • 設備投資を予定している場合
  • 事業の拡大を考えている場合
  • 新設法人で法人の資金繰りを安定させたい場合

これらのケースでは、金融機関からの融資を前提として、役員報酬を低く抑えてあえて会社にお金を残していくという方法が取られることがあります。

ただし、役員報酬を少なくしすぎると、生活費が足りなくなって会社からお金を借りるという事態になりかねません。この「会社から役員が借りたお金」を役員貸付金と言いますが、これには注意が必要です。

役員貸付金のデメリットは以下の通りです。

  • 役員個人への利益供与とみなされる可能性がある
  • 融資が受けにくくなる
  • 税務上の問題が生じる場合がある

特に融資への影響が深刻です。金融機関が融資の判断材料にするのは「返済能力(期日までにちゃんと返してくれるか)」と「資金の使途(貸したお金がちゃんと事業に使われているか)」の2点です。決算書に多額の役員貸付金が残っていると、「貸したお金が社長のプライベートで使われているのではないか」という疑念を持たれ、融資の際に不利になってしまう可能性があります。

⚠️ 注意

役員貸付金が多額に残っていると、融資を受ける際に貸付金の返済が条件として求められるケースもあります。役員報酬を低く抑えるにしても、最低限会社から借りなくて済む額で設定することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 設備投資・事業拡大・新設法人では会社にお金を残すのが有効
  • 役員貸付金は融資審査で不利になるリスクがある
  • 役員報酬は「会社から借りずに済む最低限の生活費」を確保できる額に設定する

個人にお金を残した方がいいケース・バランス型の考え方

一方、個人にお金を多く残した方がいい場合もあります。代表的な例は以下の通りです。

  • 個人で住宅ローンを組んでいる場合
  • 教育費がかさむ場合
  • 事業拡大や事業承継の予定がない場合

社長が役員報酬で受け取るお金は基本的に自由に使えます。プライベートに使えるのはもちろん、会社の資金繰りが悪い時に補填としてお金を使うこともできます。こうして社長個人のキャッシュを会社に貸すことを役員借入金と言います。

役員借入金は金融機関からの借入と違い、返済日や利息を自由に定められるというメリットがあります。ただし、役員借入金も相続財産として相続税が発生する可能性があるため、早めに解消していくことがベターです。

📌 バランス型の考え方

役員報酬を年間1,200万円(月100万円)に設定して課税所得を900万円以内に収め、所得税+住民税33%の負担に抑える。生活に支障がなければ、残りは法人に残しておくというのが一つの目安です。法人のキャッシュの使い道は事業に限定されますが、税負担とのバランスを考えるとこの水準が合理的です。

法人のお金は事業に縛られるため不自由さがありますが、個人のお金は何に使っても自由です。ただし、個人に残した方がトータルの手取りという意味では損になる可能性もあります。会社と生活の状況に応じてアレンジしていくことが大切です。

📝 このセクションのまとめ

  • 住宅ローン・教育費など生活費が多い場合は個人に残す方が安心
  • 役員借入金は返済日・利息を自由に設定できるが、相続税対策として早めに解消が必要
  • バランス型の目安は役員報酬月100万円(年1,200万円)で課税所得900万円以内に収めること
  • キャッシュの自由度(個人>法人)と税負担のバランスを考慮して決定する

まとめ|役員報酬の最適額を決める3つのポイント

今回の内容を整理すると、役員報酬の最適額を考える上での重要なポイントは以下の通りです。

  1. 所得税と法人税の実効税率の違いを把握する
    個人の課税所得が900万円を超えると所得税の負担が法人税より重くなる
  2. 役員報酬は年間1,200万円(月100万円)が一つの目安
    課税所得を900万円以内に収め、所得税+住民税33%で法人税より有利な水準を保てる
  3. 会社・生活の状況に応じてアレンジする
    設備投資・融資予定があれば会社に残し、生活費が多い場合は個人に残す。退職金の活用も検討する

📌 最終ポイント

役員報酬の金額設定は、税率だけでなく配偶者特別控除・住宅ローン控除などの各種控除、社会保険料の負担、キャッシュの自由度、融資への影響など多角的な視点で判断する必要があります。迷ったときは「月100万円(年1,200万円)」を起点にシミュレーションしてみましょう。手取りを最大化する役員報酬の決定については、別の動画でも詳しく解説しています。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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