ペアローンの落とし穴を税理士が解説|贈与税・離婚リスクなどデメリット5選
ペアローンには借入額アップ以外に、知らないと損する税金の落とし穴が潜んでいます。
マンションをはじめとする不動産価格が高騰し、東京都内のマンション平均価格が1億円を超える水準になっています。物価高騰の中で共働き世帯も増え、夫婦2人で住宅ローンを組んで借入可能額を増やす「ペアローン」の利用が急増しています。
ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンを組み、互いの連帯保証人になる仕組みです。1人で組むよりも多くのローンを借りられる可能性が高まる反面、実はそれ以上に様々な落とし穴・デメリットがあります。今回はペアローンのメリットとデメリット、そしてその対策について詳しく解説します。
ペアローンのメリット①:単独ローンより多額の借入が可能
ペアローン最大のメリットは、単独ローンよりも多額のローンを組みやすい点です。2人分の返済能力を合算して審査されるため、借入可能額がいわば「倍増」するイメージです。
📌 ポイント
夫婦2人の収入を合算して審査されるため、1人では届かない価格帯の物件を購入できる可能性が高まります。ただし、それだけ返済リスクも2人分背負うことになります。
📝 このセクションのまとめ
- 2人の収入を合算することで借入可能額が大幅にアップする
- 高騰する不動産市場で物件購入の選択肢が広がる
ペアローンのメリット②:住宅ローン控除が2人分受けられる
ペアローンの税制上の大きなメリットが、住宅ローン控除を夫婦2人分受けられる点です。ただし、パートやアルバイトのみで低収入・納税額が少ない方にはメリットが薄く、しっかり共働きでそれぞれが納税している方に特に効果的です。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで家を買った際に所得税を中心に節税できる税額控除制度です。制度の概要は以下の通りです。
| 項目 | 新築物件 | 中古物件 |
|---|---|---|
| 控除期間 | 13年間 | 10年間 |
| 控除率 | 年末時点の借入残高 × 0.7% | |
| 所得要件 | 合計所得 2,000万円以下 | |
| 床面積要件 | 50㎡以上(所得1,000万円以下は40㎡以上でも可) | |
控除の対象となる借入残高の上限は物件のカテゴリによって異なります。例えば認定住宅の場合、2024年は上限が4,500万円(前年の5,000万円から縮小)となっています。
| 物件カテゴリ | 借入残高上限 | 13年間の最大節税額目安 |
|---|---|---|
| 認定住宅 | 4,500万円 | 400万円超 |
| 省エネ住宅・ZEH | カテゴリにより異なる | — |
| 一般住宅 | カテゴリにより異なる | — |
| 中古物件 | カテゴリにより異なる | — |
⚠️ 注意
- 事業用として使用する面積部分は住宅ローン控除の対象外。自宅で仕事をされる方は注意が必要です。
- 繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になると住宅ローン控除が無効になります。
- 入居前後3年以内に「3,000万円特別控除」を受けている場合は、住宅ローン控除の対象外となります(例外あり)。
- 赤字の個人事業主など税金を納めていない方は、残念ながら住宅ローン控除の恩恵を受けられません。
📝 このセクションのまとめ
- 住宅ローン控除は年末借入残高の0.7%が所得税から控除される強力な節税制度
- ペアローンなら夫婦2人分の控除が受けられる
- 繰り上げ返済で返済期間が10年未満になると控除が無効になるので要注意
ペアローンのメリット③:3,000万円特別控除が2人分受けられる場合がある
購入した物件が将来値上がりして売却する場合、3,000万円特別控除を夫婦2人分(最大6,000万円)受けられる可能性があります。これはペアローンならではの大きなメリットです。
まず「マイホームを売った時の税金」の基本を整理しましょう。自宅を売って利益(買った時より高く売れた場合)が出ると、譲渡所得として所得税・住民税の課税対象になります。計算式は以下の通りです。
📌 譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却金額 ー 購入時の金額(土地は購入額、建物は減価償却後の価値) ー 売却にかかった費用(仲介手数料・売主負担の印紙税など)
税率は所有期間によって大きく異なります。
| 所有期間(売った年の1月1日現在) | 区分 | 所得税+住民税の合計税率 |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 約39.63% |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 約20.315% |
⚠️ 注意:購入時の契約書は絶対に捨てないこと
購入時の売買契約書がない場合、購入金額は「売却金額の5%」とみなされます。つまり95%もの利益が出たとして税金計算されてしまう非常に不利なルールがあります。売買契約書は必ず大切に保管してください。
こうした高い税負担を緩和するのが「居住用財産の3,000万円特別控除」です。自分が住んでいた家を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。つまり、利益が3,000万円以内であれば税金がかかりません。
3,000万円特別控除の主な適用要件は以下の通りです。
- 自分が住んでいる家(及びその敷地)の売却であること
- 過去に同特例や他の譲渡所得・譲渡損失の特例を受けていないこと
- 売り手と買い手が親子・夫婦など特別な関係でないこと
そしてペアローンで土地・建物を夫婦共有(共同所有)にしていた場合、なんと夫婦それぞれに3,000万円の控除が適用され、合計最大6,000万円の控除が受けられます。
⚠️ 持ち分の決め方に要注意:「夫が建物・妻が土地」はNG
旦那さんが建物のみ、奥さんが土地のみを所有するケースでは、3,000万円特別控除は原則として建物を所有している旦那さんにしか適用されません(一定の例外要件を満たせば夫婦合計3,000万円まで可)。
この持ち分の決め方は何のメリットもないため、避けてください。
📌 理想の持ち分の決め方
土地・建物を一体として夫婦で共有(共同所有)することで、夫婦それぞれに3,000万円特別控除が適用され、合計最大6,000万円の控除が受けられます。将来の売却時に物件が大きく値上がりしていた場合に絶大な効果を発揮します。
📝 このセクションのまとめ
- マイホーム売却益には所得税・住民税がかかり、税率は所有期間5年以下で約40%、5年超で約20%
- 居住用財産の3,000万円特別控除で利益3,000万円以内なら非課税
- 土地・建物を夫婦共有にすれば控除が2人分(最大6,000万円)適用される
- 「夫が建物・妻が土地」という持ち分の分け方はデメリットしかないので避けること
- 購入時の売買契約書は絶対に捨てないこと
ペアローンのメリット④⑤:団体信用生命保険と返済条件の柔軟性
ペアローンのメリット4つ目は、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できる点です。住宅ローンを組む際には団信への加入が原則必須となっており、これはローン契約者が死亡・高度障害状態になった場合に住宅ローンが全額免除される保険です。
ペアローンでは夫婦それぞれがローンを組むため、それぞれが団信に加入します。コストはかかりますが、片方が亡くなった場合はその人が負担していたローン分がチャラになるため、万一の際のリスクヘッジになります。
⚠️ 注意
片方が亡くなっても、もう一方の自分のローン残債は残ります。1人で住宅ローンを組んで団信に入っていた場合は、その人が亡くなれば全額チャラになりますが、ペアローンはそうはいきません。残された側が自分の分を1人で返済し続ける必要があります。
メリット5つ目は、夫婦それぞれの収入や信用力に基づいて返済条件が査定される点です。金利面などがそれぞれ異なる条件になる場合があり、必ずしもメリットとは言い切れませんが、条件によっては有利になることもあります。
📝 このセクションのまとめ
- 夫婦それぞれが団信に加入でき、片方が亡くなった場合はその分のローンが免除される
- ただし生存している側の自分のローンは残るため、1本ローンとは異なる
- それぞれの収入・信用力で査定されるため、返済条件が異なる場合がある
ペアローンのデメリット①②:諸費用2倍と贈与税の落とし穴
ここからがペアローンの最重要ポイントです。デメリットとその対策をしっかり確認してください。
デメリット1つ目:諸費用が2人分かかる
住宅ローンを組む際には、契約書の印紙代やローン事務手数料などのコストがかかります。ペアローンはローンを2本組むため、これらのコストが単純に2倍になります。
これが嫌な方は以下の方法を検討しましょう。
- 住宅ローンを1本にする(単独ローン)
- 連帯債務型住宅ローンを利用する(ローンは1本だが、配偶者が連帯債務を負うことで住宅ローン控除を2人分受けられる)
デメリット2つ目:共有割合を間違えると贈与税が発生する
これは世の中でも間違いが非常に多い、要注意のポイントです。具体的な事例で確認しましょう。
| 項目 | 夫 | 妻 |
|---|---|---|
| 年収 | 700万円 | 300万円 |
| 年収割合 | 70% | 30% |
| あるべき共有持ち分(5,000万円の物件) | 3,500万円(70%) | 1,500万円(30%) |
| 誤った共有持ち分(50:50にした場合) | 2,500万円(50%) | 2,500万円(50%) |
| ズレた金額 | 1,000万円分が夫→妻へ移転(贈与扱い) | |
| 発生する贈与税 | 約230万円 | |
夫の年収700万円・妻の年収300万円でペアローンを組んだ場合、あるべき共有割合は年収比の7:3です。ところが「とりあえず50:50でいいですか」というアドバイスや、何となく半々で登記してしまうケースが実際に多く発生しています。
5,000万円の物件を50:50で共有すると、夫の持ち分は2,500万円になります。本来あるべき3,500万円との差額1,000万円分が妻へ贈与されたとみなされ、贈与税約230万円が発生します。
⚠️ 登記ミスに気づいても簡単には戻せない
登記を間違えた場合、「錯誤による登記の修正(登記のやり直し)」という方法がありますが、これが認められるのはあくまで錯誤(本当に間違えた)の場合のみです。
「一旦合意して登記したけど、贈与税がかかると分かったから戻したい」という理由では基本的に認められません。それどころか、一度登記してまた戻すことで再度贈与扱いとなる可能性もあります。登記前に必ず専門家(司法書士)に確認してください。
📌 ポイント:共有割合は年収比に合わせる
ペアローンで共有割合を決める際は、夫婦それぞれの年収(返済負担)の割合に合わせることが基本です。年収700万円と300万円なら7:3が目安。この割合を超えた部分の返済額について贈与税の問題が生じます。
📝 このセクションのまとめ
- ローンを2本組むため印紙代・事務手数料などの諸費用が2倍かかる
- 共有割合を年収比と異なる割合で登記すると贈与税が発生する(例:年収700万・300万で50:50にすると約230万円の贈与税)
- 登記後のやり直しは非常に難しく、再度贈与扱いになるリスクもある
- 共有割合は必ず年収比(返済負担比)に合わせること
ペアローンのデメリット③④:収入減・死亡時のリスク
デメリット3つ目:どちらかの収入が減ると返済が厳しくなる
ペアローンは夫婦2人の収入を前提に返済計画を立てています。そのため、どちらかが育児・介護・病気などで仕事を辞めたり、収入が減ったりすると、たちまち返済が滞るリスクがあります。
特に子育て計画はしっかり立てておく必要があります。どちらかが仕事に出られなくなる期間を想定し、その間の返済が可能かどうかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
デメリット4つ目:死亡時でも生存者のローンは残る
前述の通り、ペアローンでは片方が亡くなってもその人のローン分しか消滅しません。残された側は自分のローンを1人で返済し続ける必要があります。
単独ローンで団信に加入していれば、その人が亡くなった際にローンが全額チャラになります。ペアローンはこの点でリスクが残ることを認識しておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 2人の収入を前提にしているため、どちらかの収入が減ると返済が困難になりやすい
- 子育て・介護・病気などによる収入減のリスクを事前にシミュレーションしておくことが重要
- 片方が亡くなっても自分のローンは残るため、単独ローンより死亡時のリスクが大きい
ペアローン最大のデメリット⑤:離婚時の残債問題と財産分与の税金
ペアローン最大のデメリットは、離婚時の問題です。離婚は住宅ローン開始から5年未満で発生するケースも少なくないとされています。
離婚して片方が家を出て、もう一方が住み続ける場合、ローンを単独の債務に変更する必要があります。しかし住宅購入から数年後の離婚では残債がまだ大きく、金融機関がほとんどの場合、債務者を1人に変更することを認めません。
「では物件を売ろう」という選択肢になっても、物件が値下がりしていれば残債を完済できず、補填もできないという最悪のケースに陥ることがあります。離婚後も返済について協議が難航するパターンが多いのが現実です。
📌 離婚に伴う財産分与と税金
離婚の際には、夫婦で築いた財産の一部を「財産分与」として配偶者に渡す義務があります。この財産分与に関わる税金を整理します。
| 立場 | 財産の種類 | 税金の扱い |
|---|---|---|
| 渡す側 | 現金 | 税金なし |
| 不動産・株など | 譲渡所得として所得税・住民税がかかる場合あり(値上がりしていた場合)。ただし自宅なら3,000万円特別控除が使える(離婚後は元夫婦でも親族外なので適用可) | |
| もらう側 | 現金・不動産など | 原則として贈与税はかからない(財産分与請求権に基づく給付のため) |
⚠️ 財産分与でも贈与税がかかる例外ケース
- 分与財産が多すぎると認められる場合
- 相続税などを免れるために行われた偽装離婚と認められる場合
これらに該当する場合は、財産分与であっても贈与税が課されます。
📌 豆知識:財産分与でもらった不動産は不動産取得税がかからない
財産分与によって取得した不動産については、不動産取得税が課されないという特例があります。
また、婚姻期間20年以上の夫婦であれば「配偶者控除(おしどり贈与)」として2,000万円までの贈与が非課税になる制度があります。離婚前に財産を移転する手段の一つとして検討できます。
📝 このセクションのまとめ
- 離婚時にローンを1本化することは金融機関に認められにくく、残債問題が長期化しやすい
- 物件が値下がりしていると売却しても残債を完済できないリスクがある
- 財産分与で不動産を渡す側は、値上がり分に譲渡所得税がかかる場合がある(3,000万円特別控除は使える)
- 財産分与でもらう側は原則贈与税なし。ただし分与額が過大または偽装離婚と認定された場合は課税される
- 夫婦円満を保つことがペアローンの大前提と言える
ペアローンのメリット・デメリット総まとめ
ペアローンのメリットとデメリットを改めて整理します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット① | 単独ローンより多額の借入が可能 |
| メリット② | 住宅ローン控除を2人分受けられる |
| メリット③ | 売却時の3,000万円特別控除を2人分(最大6,000万円)受けられる場合がある |
| メリット④ | それぞれが団体信用生命保険に加入できる |
| メリット⑤ | 夫婦それぞれの条件で返済条件が査定される |
| デメリット① | 印紙代・事務手数料などの諸費用が2人分(2倍)かかる |
| デメリット② | 共有割合を年収比と異なる割合にすると贈与税が発生する(例:約230万円) |
| デメリット③ | どちらかの収入が減ると返済が厳しくなる |
| デメリット④ | 死亡時でも生存者のローンは残る |
| デメリット⑤(最大) | 離婚時の残債問題・財産分与の税金問題が発生しやすい |
📌 ペアローンを検討する前に確認すべきこと
- 夫婦それぞれの年収比を把握し、共有割合をその比率に合わせること
- 土地・建物を一体として共有(共同所有)にすること
- 子育て・育児休業中の返済シミュレーションを事前に行うこと
- 登記前に司法書士・税理士に相談すること
- 購入時の売買契約書は大切に保管すること
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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