年金の併給調整をわかりやすく解説|受給できる組み合わせと税務の基本
複数の年金をもらえる状況になったとき、どの組み合わせなら同時に受給できるのか?年金の併給調整のルール、受給できる組み合わせの覚え方、そして年金にかかる税金の基本を専門家がわかりやすく解説します。
1人1年金の原則とは
公的年金には「1人1年金の原則」があります。これは、原則として2種類以上の年金を同時に受け取ることはできないというルールです。
たとえば、障害基礎年金・遺族厚生年金・老齢基礎年金をすべてもらいたいと思っても、原則として1つしか選べません。
📌 ポイント:同じ種類の年金は上乗せ受給OK
「老齢基礎年金+老齢厚生年金」「障害基礎年金+障害厚生年金」のように、同じ種類の基礎年金と厚生年金の組み合わせは、基礎部分と上乗せ部分の関係なので何歳でも受給できます。問題になるのは、異なる種類(障害と遺族、老齢と遺族など)を組み合わせる場合です。
異なる種類の年金を受け取りたい場合は、「年金受給選択申出」によってどの年金を受け取るかを選択することになります。
💡 補足:動画では触れていませんが…
年金受給選択申出書は年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。選択した年金は変更することも可能ですが、変更が反映されるまでに時間がかかる場合があるため、早めの手続きが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 原則として2種類以上の年金を同時受給することはできない(1人1年金の原則)
- 同じ種類(老齢基礎+老齢厚生など)は上乗せ関係なので同時受給OK
- 異なる種類の年金は「年金受給選択申出」でいずれかを選ぶ
65歳以降に受給できる年金の組み合わせ
1人1年金の原則には例外があります。65歳以上であれば、以下の「基礎年金と厚生年金の組み合わせ」は同時に受給することができます。
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+遺族厚生年金
- 老齢基礎年金+遺族厚生年金
これらの組み合わせは、65歳以上であれば受給が認められます。逆に言えば、65歳未満では認められない組み合わせです。
どの組み合わせが可能で、どれが不可能かを整理するために、以下の表を活用してください。
| 基礎年金 \ 厚生年金 | 老齢厚生年金 | 障害厚生年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|---|
| 老齢基礎年金 | ○(何歳でも) | × | ○(65歳以上) |
| 障害基礎年金 | ○(65歳以上) | ○(何歳でも) | ○(65歳以上) |
| 遺族基礎年金 | × | × | ○(何歳でも) |
📌 組み合わせの覚え方:「上皇様いらっしゃい」+「ロシャ(4の字)」
表を書くときのコツは次のとおりです。
- 上に厚生年金(老齢・障害・遺族)を並べる(「上に厚生年金で、いらっしゃい」=上皇様いらっしゃい)
- 左に基礎年金を「老齢・障害・遺族」の順で並べる(「ロシャ」の順)
- 表の中に「4の字」を書くように○を入れると、65歳以上で受給できる組み合わせが視覚的に分かる
試験や実務でこの表を素早く書けるようにしておくと、どの組み合わせが可能かを瞬時に判定できます。
💡 補足:動画では触れていませんが…
2006年(平成18年)の法改正以前は、65歳以降でも障害基礎年金と老齢厚生年金の併給は認められていませんでした。現在は認められているため、障害年金を受給している方が65歳を迎えた際には、老齢厚生年金との併給を検討する価値があります。
📝 このセクションのまとめ
- 65歳以上なら「障害基礎+老齢厚生」「障害基礎+遺族厚生」「老齢基礎+遺族厚生」の3パターンが受給可能
- 表を「老齢・障害・遺族」の順に書き、4の字で○を入れると覚えやすい
- ○でも「何歳でもOK」と「65歳以上でOK」の2種類があることに注意
65歳以降の老齢厚生年金と遺族厚生年金の調整ルール
同じ厚生年金同士(老齢厚生年金と遺族厚生年金)を両方もらうことは原則できませんが、65歳以降には特別な調整ルールが適用されます。
具体的にどんな状況かをイメージしてみましょう。サラリーマンの夫が亡くなり、妻が遺族厚生年金を受給してきたとします。その妻自身もサラリーマンとして働いており、65歳になると自分の老齢厚生年金も受給できる状態になりました。この場合、2つの厚生年金がダブルで重なる状態になります。
📌 調整の基本ルール:老齢厚生年金が優先的に支給される
65歳以降に老齢厚生年金と遺族厚生年金が重なる場合、必ず老齢厚生年金が優先的に支給されます。その後、金額の大小によって以下の2パターンに分かれます。
| パターン | 状況 | 受給内容 |
|---|---|---|
| パターン① | 遺族厚生年金 > 老齢厚生年金 | 老齢厚生年金を全額受給し、差額分を遺族厚生年金として受給 |
| パターン② | 老齢厚生年金 ≧ 遺族厚生年金 | 老齢厚生年金を全額受給し、遺族厚生年金は支給されない |
なぜ老齢厚生年金が優先されるのでしょうか。その理由は課税の仕組みにあります。
- 老齢年金:雑所得として所得税の課税対象
- 遺族年金:非課税(生活困窮者への給付という性格のため)
国としては、同じ金額を支給するなら税金を徴収できる老齢年金として支給したほうが有利です。そのため老齢厚生年金が優先され、超過分だけが遺族厚生年金(非課税)として支給される仕組みになっています。
💡 補足:動画では触れていませんが…
このルールは「在職老齢年金」とは別の話です。在職老齢年金は働きながら年金を受給する場合の支給停止ルールであり、今回の併給調整とは異なる制度です。混同しないよう注意してください。
📝 このセクションのまとめ
- 老齢厚生年金と遺族厚生年金が重なる場合、老齢厚生年金が優先される
- 遺族厚生年金が多い場合→差額分を遺族厚生年金として追加受給
- 老齢厚生年金が多い場合→老齢厚生年金のみ受給、遺族厚生年金は支給停止
- 老齢年金が優先される理由は「国が税金を徴収できるため」
年金生活者支援給付金とは
所得が一定基準額以下の年金受給者に対しては、基礎年金に上乗せして月額いくらかの金額を受け取ることができます。これを「年金生活者支援給付金」といいます。
この給付金は、老齢・障害・遺族それぞれの基礎年金を受給している人に上乗せされるものです。性質は基礎年金と同様で、以下のように決まります。
| 年金の種類 | 給付金額の決まり方 |
|---|---|
| 老齢基礎年金 | 保険料の納付済期間に応じて決まる |
| 障害基礎年金 | 障害等級に応じて決まる |
| 遺族基礎年金 | 加算等なく、一定額が支給される |
💡 補足:動画では触れていませんが…
年金生活者支援給付金は2019年10月(消費税率10%引き上げ)に合わせて創設された制度です。受給するには年金請求とは別に申請が必要な場合があります。日本年金機構からの案内に従って手続きを行いましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 所得が一定以下の年金受給者には「年金生活者支援給付金」が上乗せ支給される
- 老齢・障害・遺族の各基礎年金受給者が対象
- 金額の決まり方は年金の種類によって異なる
年金の受け取り方と支給のタイミング
年金は、自分で請求手続きをしなければ受け取ることができません。これを「裁定請求」といいます。国は税金などは自動的に徴収しますが、お金を支給する場合は自分で申請に来た人にしか支払いません。年金も同様です。
実際には、受給開始年齢が近づくと日本年金機構から封筒(年金請求書)が届きますので、それに従って手続きを行います。
⚠️ 注意:年金を受け取る権利には時効がある
年金を受け取る権利(基本権)は5年で消滅時効となります。過去にさかのぼって請求できるのは最大5年分です。受給開始年齢を過ぎても放置していると、受給できる期間が短くなってしまいます。
年金の支給タイミングについても整理しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受給開始 | 65歳になった月分から受給(翌月に支給) |
| 支給日 | 偶数月の15日 |
| 支給内容 | 前月・前々月の2か月分をまとめて支給 |
| 例 | 4・5月分 → 6月15日支給、6・7月分 → 8月15日支給 |
金融機関の窓口に高齢者が並ぶ光景が偶数月に多く見られるのは、この「偶数月15日に2か月分まとめて支給」というルールがあるためです。
💡 補足:動画では触れていませんが…
年金は原則として金融機関の口座への振込で受け取ります。受取口座は裁定請求時に登録しますが、後から変更することも可能です。なお、年金の受取口座と他の口座を分けて管理することで、生活費の管理がしやすくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 年金は自分で裁定請求をしなければ受け取れない
- 受け取る権利の時効は5年
- 支給は偶数月15日に2か月分まとめて振込
年金にかかる税金の基本(保険料と受給時)
年金に関する税務は、「支払う段階(保険料)」と「受け取る段階(給付)」の2つに分けて理解することが重要です。
■ 保険料を支払う段階
国民年金・厚生年金の保険料は、いずれも社会保険料控除の対象となります。支払った保険料の全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の計算上、課税所得から差し引かれます。
給与所得者(会社員)の場合、年金保険料は年末調整で控除されます。過去の未納分をまとめて支払った場合も、支払った年の年末調整で控除を受けることができます。
■ 年金を受け取る段階
| 年金の種類 | 課税区分 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 老齢年金(老齢基礎・老齢厚生) | 課税 | 公的年金等に係る雑所得として所得税の課税対象。公的年金等控除額を差し引いた額が課税対象。 |
| 障害年金(障害基礎・障害厚生) | 非課税 | 所得税・住民税ともに非課税 |
| 遺族年金(遺族基礎・遺族厚生) | 非課税 | 所得税・住民税ともに非課税 |
障害年金・遺族年金が非課税とされている理由は、生活困窮者・遺族への生活保障という性格を持つためです。老齢年金は「老後の所得」として課税対象となります。
📌 公的年金等控除とは
老齢年金は雑所得として課税されますが、受け取った年金額の全額が課税されるわけではありません。年齢や年金収入額に応じた「公的年金等控除額」が差し引かれ、それを超えた部分が課税所得に加算されます。65歳以上の場合、公的年金等控除額は最低110万円です(2020年分以降)。
💡 補足:動画では触れていませんが…
老齢年金の受給者で年金収入が一定額を超える場合、確定申告が必要になることがあります。ただし、年金収入が400万円以下で、かつ他の所得が20万円以下の場合は確定申告が不要です。医療費控除や生命保険料控除を受けたい場合は、確定申告を行うことで還付を受けられる場合があります。
📝 このセクションのまとめ
- 保険料は社会保険料控除の対象で、所得税・住民税の計算上控除される
- 老齢年金は公的年金等に係る雑所得として課税対象
- 障害年金・遺族年金は非課税
- 老齢年金には公的年金等控除が適用される
未支給年金とは?相続税ではなく一時所得になる
年金受給者が亡くなった場合、まだ支給されていない年金が残ることがあります。これを「未支給年金」といいます。
たとえば、5月に亡くなった場合、4月分の年金は本来受け取れるはずですが、6月の支給日(偶数月15日)を迎える前に亡くなっているため、本人は受け取ることができません。
この未支給年金は、亡くなった方の遺族が請求して受け取ることができます。その際の税務上の扱いは次のとおりです。
⚠️ 注意:未支給年金は「相続税」ではなく「一時所得」
未支給年金を受け取った遺族にとって、これは相続財産ではありません。遺族自身の「一時所得」として所得税の課税対象となります。「相続税の対象では?」という引っかけに注意してください。
一時的に入ってくるお金は基本的に「一時所得」として扱われます。未支給年金も同様に、受け取った遺族の一時所得として確定申告の対象となります(一時所得には50万円の特別控除があります)。
💡 補足:動画では触れていませんが…
未支給年金を請求できる遺族には順位があります。配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順です。また、請求できる期間は死亡日の翌日から5年以内です。期間を過ぎると時効となり請求できなくなるため、早めの手続きが必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 年金受給者が亡くなった際に未支給の年金を「未支給年金」という
- 遺族が受け取る未支給年金は相続税ではなく、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象
- 請求期限は死亡日の翌日から5年以内
📋 この記事を読んだら次にやること
- 自分や家族が受給している(または受給予定の)年金の種類を確認し、課税・非課税の区分を把握する
- 65歳を迎える前後に受給できる年金の組み合わせを上記の表で確認し、最も有利な受給パターンを検討する
- 老齢年金を受給している場合、年金収入額と公的年金等控除額を照らし合わせ、確定申告の要否を確認する
- 家族が亡くなった際には未支給年金の請求を忘れずに行い、一時所得として確定申告に含める
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル ほんださん / 東大式FPチャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは ほんださん / 東大式FPチャンネルを応援しています!
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