年金繰下げ受給を途中でやめても増額分を受取れる!特例的な繰下げみなし増額制度を税理士が解説
繰下げ受給を途中でやめても増額年金を5年分一括受給できる新制度が登場しました。
年金の繰下げ受給とは?上限75歳への引き上げで生じた問題
2022年4月から、年金受給を繰り下げられる年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられました。これにより、より長く繰り下げて年金を増額できるようになった一方で、新たな不都合な問題が生じてきました。
その問題とは、繰下げ受給をやめて本来の年金をさかのぼって一括請求すると、年金の一部が時効によって消滅してしまうというものです。この事態を救済するために新たに設けられた制度が、「特例的な繰下げみなし増額制度」です。
📌 ポイント
年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳→75歳に引き上げられたことで、途中でやめた際に時効(5年)の問題が顕在化。これを救済するために「特例的な繰下げみなし増額制度」が創設されました。
📝 このセクションのまとめ
- 2022年4月から繰下げ受給の上限が70歳→75歳に引き上げ
- 上限延長により、途中でやめると時効(5年)で年金が消滅する問題が発生
- この問題を救済するために「特例的な繰下げみなし増額制度」が創設された
繰下げ受給の仕組みと2つの選択肢
65歳に達すると、日本年金機構から年金請求のハガキが届きます。この年金請求書を提出しなければ、自動的に「繰下げ受給待機」の状態になります。年金は請求しなければもらえないため、提出しないことで待機状態に入る仕組みです。
この待機状態から年金を受け取るには、次の2つの選択肢があります。
- 繰下げ受給を選択する:66歳以降、希望の時期に繰下げ請求書を提出する。提出した時点で繰下げ年齢が確定し、割増された年金額が以降一生涯にわたって支払われる。
- 繰下げをやめて一括受給する:繰下げ受給を選択せずに年金請求をすれば、65歳からの年金を遡って一括で受け取ることができる。この場合、割増はされていない65歳時点の年金額が一生涯支給される。
📌 ポイント
繰下げ受給は「何歳まで繰り下げます」という申請手続きがないため、66歳以降であればいつでも希望の時期に繰下げ請求書を提出できます。確定するのは請求書を提出した時点です。
📝 このセクションのまとめ
- 65歳で年金請求書を提出しなければ自動的に繰下げ待機状態になる
- 待機状態からは「繰下げ受給」か「遡って一括受給」の2択
- 一括受給を選んだ場合は割増なしの65歳時点の年金額が一生涯支給される
繰下げを途中でやめる人はどんな事情がある?
繰下げ受給を途中でやめて遡って一括受給するのは、どのような事情がある人なのでしょうか。一般的には入院や介護などでまとまった資金が必要になった場合に助かる制度として解説されることが多いです。もちろんそういった利用ができるのはありがたいのですが、それ以外にも次のような利用ケースが考えられます。
- 繰下げするかどうか迷っている場合:65歳で年金請求書が届いた時点で繰下げするかどうか迷い、とりあえず待機にしておいて後からじっくり考えた結果「やっぱり繰下げはやめよう」と判断した時に利用できる。
- 健康状態の変化によるリスク回避:70歳まで繰下げ予定だったが、その手前で重い病気になったり心身の具合が悪くなったりした場合に、損益分岐点を超えて長生きできるか不安になり、繰下げをやめて本来受給に切り替えることができる。
- 入院・介護などの緊急資金需要:まとまった資金が急に必要になった場合に、遡って一括受給することで資金を確保できる。
繰下げ受給の損益分岐点(年金額面での計算)は次の通りです。70歳まで繰り下げた人は、81歳11ヶ月まで生きると、トータルで65歳から年金受給した場合よりも多くの年金を受け取ることができます。
📝 このセクションのまとめ
- 緊急の資金需要だけでなく、迷っていた場合やリスク回避としても利用できる
- 70歳繰下げの損益分岐点は81歳11ヶ月
- 健康状態の変化があった場合に繰下げをやめる選択肢は有効なリスクヘッジになる
旧制度の問題点:5年の時効で年金が消滅してしまう
年金には5年の時効があります。繰下げ受給の上限が75歳に引き上げられたことで、この時効がネックになってきました。
例えば、72歳の時に「繰下げはやめて遡って本来の年金を受け取りたい」と思っても、遡れるのは5年前の67歳までです。旧制度では次のような問題が生じていました。
| 年齢 | 旧制度での扱い |
|---|---|
| 65歳・66歳 | 時効で消滅(二度と受け取れない) |
| 67歳〜71歳(5年分) | 一括受給可能 |
| 72歳以降 | 本来の年金(月額10万円)を一生涯受給 |
⚠️ 注意
旧制度では、70歳を超えて繰下げ待機していた場合、遡り一括受給をしても5年より前の年金は時効で消滅し、二度と受け取れませんでした。繰下げ上限が75歳に延びたことで、この問題がより深刻になりました。
📝 このセクションのまとめ
- 年金の時効は5年
- 72歳で繰下げをやめた場合、旧制度では65・66歳分(2年分)が時効消滅
- 75歳まで繰下げ上限が延びたことで、この問題がより大きくなった
新制度の内容:特例的な繰下げみなし増額制度とは
この問題を救済するために登場したのが「特例的な繰下げみなし増額制度」です。
対象となるのは70歳到達後から80歳到達前に限られますが、繰下げ受給を選択せずに年金請求をした場合、5年前に繰下げ受給の申し出があったとみなされることになりました。
これにより、次のような取り扱いになります。
- 5年前に繰下げ受給が確定したとみなされ、その時点の割増年金額が確定する
- 割増された年金額をベースに計算された5年分が一括で受け取れる
- 5年前までの期間は繰下げ待機状態とみなされ、時効で消滅することはなくなる
- 請求以降は、割増された年金額が一生涯支払われる
📌 ポイント
「特例的な繰下げみなし増額制度」の適用対象は70歳到達後〜80歳到達前に繰下げをやめて請求する場合です。この範囲内であれば、5年前に繰下げ申し出があったとみなして増額年金が適用されます。
📝 このセクションのまとめ
- 対象は70歳到達後〜80歳到達前に繰下げをやめて請求する場合
- 5年前に繰下げ受給の申し出があったとみなされる
- 増額された年金額で5年分を一括受給でき、以降も増額年金が一生涯支給される
旧制度と新制度の金額比較:72歳でやめた場合
具体的な金額を設定して、旧制度と新制度を比較してみましょう。ここでは65歳時点の年金が月額10万円として計算します。
まず、繰下げによる増額率は1ヶ月あたり0.7%です。各年齢での年金月額は次の通りです。
| 受給開始年齢 | 増額率 | 月額年金 |
|---|---|---|
| 65歳(本来受給) | 増額なし | 10万円 |
| 67歳 | +16.8% | 11万6,800円 |
| 72歳 | +58.8% | 15万8,800円 |
| 75歳 | +84.0% | 18万4,000円 |
では、72歳になって繰下げ受給をやめ、65歳からの本来受給を選択した場合の旧制度と新制度の違いを見てみましょう。
| 項目 | 旧制度 | 新制度 |
|---|---|---|
| 65歳・66歳分 | 時効消滅(受取不可) | 繰下げ待機期間とみなし(消滅なし) |
| 67〜71歳分(5年間)の一括受給額 | 月10万円×60ヶ月=600万円 | 月11万6,800円×60ヶ月=704万4,000円 |
| 72歳以降の月額年金 | 10万円(増額なし) | 11万6,800円(67歳時点の増額率適用) |
| 72歳以降の年金 | 一生涯月10万円 | 一生涯月11万6,800円 |
旧制度と新制度では雲泥の差があることがわかります。一括受給額だけで104万4,000円の差があり、さらに72歳以降の毎月の年金額も増額されたまま一生涯受け取れます。
「75歳まで繰り下げをしても安心な制度を作りましたから、どんどんやってください」と言わんばかりの制度設計ですね。
📝 このセクションのまとめ
- 繰下げの増額率は1ヶ月あたり0.7%(67歳で+16.8%、72歳で+58.8%)
- 72歳でやめた場合、旧制度の一括受給額600万円→新制度では704万4,000円
- 新制度では72歳以降も増額された月額11万6,800円が一生涯支給される
税務上の注意点:遡り一括受給した場合の確定申告
遡って数年分を一括で受け取った場合、税金はどうなるのでしょうか。これは重要な注意点です。
⚠️ 注意
遡って一括受給した年金は、受け取った年に全額まとめて収入にするのではありません。本来受け取るはずだった各年分の雑所得として扱われます。一括受給した年金収入を各年分に振り分け、追加の税金が生じる場合は修正申告が必要になります。
さらに、この修正申告に関連して注目すべきエピソードがあります。国のルール通りに一括請求をしただけなのに、税務署から延滞税(ペナルティー)を課されたことに納得できず、裁判を起こした方がいたとのことです。
「国のルール通りに一括請求しただけなのに、なぜ延滞税というペナルティーを課されるのか」というお気持ちはよく理解できます。遡り一括受給をした場合には、税務上の手続きについても事前にしっかりと把握しておくことが大切です。
📌 ポイント
- 遡り一括受給した年金は「受け取った年の収入」ではなく、各年分の雑所得として扱う
- 各年分に振り分けた結果、追加税額が生じる場合は修正申告が必要
- 修正申告が必要な場合、延滞税が発生する可能性があることも念頭に置いておく
📝 このセクションのまとめ
- 遡り一括受給した年金は各年分の雑所得として扱われる(一括で収入にしてはいけない)
- 追加税額が生じる場合は修正申告が必要
- 修正申告には延滞税が発生する場合がある点にも注意が必要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
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