年金受給者に168万の壁が誕生?2025年税制改正で手取りはいくら増えるか税理士が解説
年金収入168万の壁が誕生?見た目より減税効果が薄いそのからくりを徹底解説します。
今回のテーマ:2025年税制改正と年金受給者への影響
2025年度の税制改正大綱が出てまいりました。例年であればこの大綱の通りほぼほぼ決定ということになるんですが、今回は国会の勢力図も変わっています。政府与党と国民民主党が税制に関してバチバチとバトルを繰り返しているそんな状況の中で、ひょっとしたらこの大綱も変わる可能性があるかもしれません。ただ、例年通り大筋そのまま行くという前提でお話を進めてまいります。
「71歳の年金暮らしの親がいるんですが、今回の123万の壁は適用されるんでしょうか?」というご質問をいただきました。実は年金受給者の場合、123万という数字は関係ないんです。年金受給者には別のラインが設定されています。
📌 今回のポイント
年収の壁が103万円→123万円に引き上げられると、年金受給者の壁は168万円(65歳以上)または118万円(65歳未満)に変わります。ただし、残念ながら減税効果はほとんどないというのが実態です。
📝 このセクションのまとめ
- 2025年税制改正大綱は例年通り成立する前提で解説
- 年金受給者には「123万の壁」ではなく「168万の壁」が適用される
- ただし実際の減税効果は極めて薄い
まず復習:会社員の年収103万→123万の壁とは
年金受給者の話に入る前に、会社員やアルバイト・パートで働く方の所得税の計算の仕組みをおさらいしておきましょう。
給与収入(年収)から給与所得控除(みなし経費)を差し引いて「給与所得」を求め、さらにそこから所得控除を差し引いて「課税所得」を算出します。課税所得に税率をかけて所得税が決まります。
| 控除の種類 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 給与所得控除(最低保証額) | 55万円 | 65万円 |
| 基礎控除(所得税) | 48万円 | 58万円 |
| 基礎控除(住民税) | 43万円 | 43万円(据え置き) |
| 年収の壁(合計) | 103万円 | 123万円 |
この「年収の壁」を超えると、自分自身の所得税が発生し、かつ親などの扶養から外れることになります。そのため長年「103万の壁」として注目されてきました。
⚠️ 注意
給与所得控除の10万円増額は年収190万円以下の方にしか減税効果がありません。また、基礎控除の引き上げは所得税の計算上のみで、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きです。そのため、実際の減税効果は中途半端にしかなりません。
📝 このセクションのまとめ
- 会社員の年収の壁は103万円→123万円に引き上げ
- 給与所得控除が55万→65万、基礎控除(所得税)が48万→58万に増額
- 住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きで減税効果は限定的
年金受給者の税金計算の仕組み:公的年金等控除とは
年金受給者の所得税計算は、会社員と似ていますが使う控除が異なります。年金収入から公的年金等控除を差し引いて「雑所得」を求め、そこから所得控除を差し引いて課税所得を算出します。
この公的年金等控除は、会社員の給与所得控除と同様に「みなし経費」として認められているもので、最低保証額がかなり高めに設定されています。
| 区分 | 公的年金等控除の最低保証額 |
|---|---|
| 65歳以上 | 110万円 |
| 65歳未満 | 60万円 |
年金収入が増えるほど公的年金等控除額も上がっていき、最大で195万円まで設定されています。
なお、年金といっても課税対象になるものとならないものがあります。
- 課税対象(雑所得・公的年金等区分):国民年金、厚生年金、基金、確定給付年金、iDeCo など
- 課税対象(雑所得・公的年金等以外区分):生命保険などの個人年金(私的年金)
- 非課税:障害年金、遺族年金、寡婦年金、年金生活者支援給付金 など
📝 このセクションのまとめ
- 年金受給者には「公的年金等控除」が適用される(給与所得控除に相当)
- 65歳以上は最低110万円、65歳未満は最低60万円が控除される
- 障害年金・遺族年金などは非課税のため対象外
年金受給者の年収の壁:改正前と改正後の比較
では、今回の税制改正によって年金受給者の「年収の壁」がどう変わるのかを整理しましょう。
改正前は、公的年金等控除の最低保証額に基礎控除(48万円)を足したラインが年収の壁でした。改正後は基礎控除が所得税の計算上のみ10万円増額されるため、壁も10万円ずつ上がります。
| 区分 | 改正前の壁 | 改正後の壁 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 110万+48万=158万円 | 110万+58万=168万円 | +10万円 |
| 65歳未満 | 60万+48万=108万円 | 60万+58万=118万円 | +10万円 |
65歳以上の年金受給者の壁が158万円→168万円になるということで、一見するとかなり優遇されているように見えます。しかし、実際の減税効果を見てみると話は変わってきます。
📌 ポイント
年金受給者の壁が168万円に上がっても、基礎控除の引き上げは所得税の計算上のみです。住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きのため、減税効果は所得税の最低税率5%分しか生じません。
📝 このセクションのまとめ
- 65歳以上の年金収入の壁は158万円→168万円に引き上げ
- 65歳未満は108万円→118万円に引き上げ
- ただし住民税の基礎控除は据え置きのため、実際の恩恵は限定的
シミュレーション:年金収入別の手取り増加額
では実際に、年金受給者の手取りがいくら増えるのかシミュレーションしてみましょう。
【ケース1】年金収入180万円・65歳以上の場合
65歳以上で他の所得がなく、年収330万円以下の方は公的年金等控除が110万円適用されます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 年金収入 | 180万円 | 180万円 |
| 公的年金等控除 | ▲110万円 | ▲110万円 |
| 雑所得 | 70万円 | 70万円 |
| 基礎控除(所得税) | ▲48万円 | ▲58万円 |
| 課税所得(所得税) | 22万円 | 12万円 |
| 基礎控除(住民税) | ▲43万円 | ▲43万円(変わらず) |
| 課税所得(住民税) | 27万円 | 27万円 |
| 税負担合計(所得税+住民税) | 約4万2,120円 | 約3万7,000円 |
| 手取り額 | 約175万7,000円 | 約176万2,000円 |
| 手取りの増加額 | 年間約5,000円アップ | |
世の中の平均的な年金収入は180万円程度と言われていますが、その場合の手取り増加は年間わずか5,000円にとどまります。
【ケース2】年金収入300万円・65歳以上の場合
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 年金収入 | 300万円 | 300万円 |
| 手取り額(概算) | 約280万円 | 約278万円台 |
| 手取りの増加額 | 年間約5,100円アップ | |
年金収入が300万円に増えても、手取りの増加額は年間約5,100円とほとんど変わりません。
⚠️ なぜこんなに少ないのか
基礎控除の引き上げ(10万円)は所得税の計算上のみ反映されます。住民税の計算では基礎控除は43万円のまま据え置きです。そのため、所得税の最低税率5%分(10万円×5%=5,000円)しか減税効果が生まれません。住民税は一切変わらないため、まるで半分だけ改正したような状況です。
📝 このセクションのまとめ
- 年金収入180万円の場合、手取り増加は年間約5,000円にとどまる
- 年金収入300万円でも手取り増加は年間約5,100円と大差なし
- 住民税の基礎控除が据え置きのため、所得税の5%分しか恩恵がない
今後の注意点:高齢者にはさらなる増税の可能性も
今回の税制改正で減税効果がほとんどないという残念な結果になりましたが、さらに気になるのは今後の増税リスクです。
アルバイトなどをしながら給与収入と年金収入の両方がある方は、給与所得控除と公的年金等控除をダブルで受けられます。これがあまりにも優遇されすぎているという声が上がっており、来年以降の改正で手が入る可能性が高いとされています。
📌 検討されている改正の内容
給与所得控除と公的年金等控除、両者の合計を280万円以内に抑えるという改正が来年以降に入る可能性があります。今回の税制改正大綱には盛り込まれませんでしたが、引き続き注視が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 給与収入と年金収入の両方がある方はダブル控除が受けられる
- この優遇措置に対して「高すぎる」という批判があり、将来的な改正が検討されている
- 両者の控除合計を280万円以内に制限する改正が来年以降に入る可能性がある
年金受給者は確定申告が必要?申告不要の条件と還付の可能性
年金受給者の方からよく聞かれるのが「確定申告は必要なのか?」という質問です。
原則として、年金収入は所得税の課税対象ですので確定申告が必要です。ただし、以下の要件をすべて満たす場合は申告不要となります。
- 公的年金等の収入合計が年間400万円以下であること
- 年金から源泉徴収が適切に行われていること
- 年金以外の所得(副業など)が20万円以下であること
ただし、「申告不要」は「税金を払わなくていい」という意味ではありません。すでに源泉徴収という形で税金が差し引かれています。
📌 還付申告(任意申告)のすすめ
申告不要の要件を満たしていても、医療費控除がある場合などは確定申告することで所得税が還付される可能性があります。これを「還付申告」といいます。申告義務はなくても、計算してみて税金が戻ってくるようであれば、ぜひ申告することをおすすめします。
📝 このセクションのまとめ
- 年金収入400万円以下・源泉徴収済み・他の所得20万円以下なら申告不要
- 申告不要でも税金は源泉徴収で納めており、還付の可能性がある
- 医療費控除などがある場合は還付申告で税金が戻ってくる可能性が高い
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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