年金受給者が住民税非課税世帯になれない3つの落とし穴【税理士が解説】
老後の医療費・介護費を大幅に軽減できる住民税非課税世帯。知らずに特権を失っていませんか?
住民税非課税世帯とは?老後の生活設計における重要性
老後は医療費用や介護費用の負担が生活の重しになりがちですが、住民税非課税世帯であればこれらの費用の軽減を受けられるため、大変助かります。
今の日本では、老後までにストック(資産)を十分に積み上げておき、老後はフロー(収入)を抑えて住民税非課税世帯になるというやり方が有利になりそうです。しかし、その仕組みを知らないまま、この特権を放棄してしまっている人がいらっしゃいます。
📌 ポイント
住民税非課税世帯とは、その名の通り住民税が課税されないくらいの収入しかない世帯のことです。所得税非課税世帯ではなく、住民税が非課税であることがポイントです。主に地方公共団体がこの基準を使って優遇措置を施し、支援しています。
住民税非課税世帯の判定基準は現在の所得だけです。いくら多くの財産を持っていても、判定基準には含まれません。ですから、年金をもらえる年までに十分な財産を作っておくのがポイントです。住民税非課税世帯になって優遇を受けながら、蓄えた財産で不自由なく暮らしていくというのが理想ですね。
📝 このセクションのまとめ
- 住民税非課税世帯は「住民税」が非課税になる世帯のこと(所得税ではない)
- 判定基準は現在の所得のみ。財産の多寡は関係ない
- 老後までに資産を積み上げ、老後のフロー収入を抑えるのが有利な戦略
住民税非課税世帯になれる所得金額の基準
住民税非課税世帯になるためには、世帯全員が住民税非課税でなければなりません。同居の家族のうち1人でも住民税が課税されていてはだめです。
住民税が非課税になる所得金額は、日本全国を物価水準や生活水準で3つの級地区分に分けて、区分ごとに決められています。
| 級地区分 | 対象地域 |
|---|---|
| 1級地 | 大都市圏 |
| 2級地 | 中核都市 |
| 3級地 | その他の地域 |
例えば1級地で夫婦2人暮らしのケースでは、世帯主の所得金額のボーダーラインは101万円になります。65歳以上の年金収入ベースでは211万円です。公的年金等控除額が110万円ありますので、これを差し引くと所得金額は101万円になります。これが「211万円の壁」と呼ばれているものです。
配偶者がいない単身者や扶養者がいない人は、所得金額45万円がボーダーラインになります。年金収入ベースでは155万円です。夫婦2人ともボーダーライン以下であれば、住民税非課税世帯になれます。
夫婦2人家族(共に65歳以上の年金受給者)のボーダーラインをまとめると以下のようになります。
| 級地区分 | 所得金額(世帯主) | 年金収入ベース |
|---|---|---|
| 1級地(大都市圏) | 101万円 | 211万円 |
| 2級地(中核都市) | (各自治体基準) | (各自治体基準) |
| 3級地(その他) | (各自治体基準) | (各自治体基準) |
📌 ポイント
国民年金の満額は月約6万6,000円程度、厚生年金の平均受給額は月約15万円程度とされています。このボーダーライン以下の人は相当数いらっしゃいます。年金受給者の半数は住民税非課税世帯だといわれているのも頷けます。
📝 このセクションのまとめ
- 住民税非課税世帯は世帯全員が非課税でなければならない
- 1級地(大都市圏)の夫婦2人世帯は年金収入211万円がボーダーライン(「211万円の壁」)
- 単身者・扶養者なしの場合は年金収入155万円がボーダーライン
- お住まいの地域の級地区分は動画概要欄の級地区分表で確認できる
住民税非課税世帯になれない年金受給者の3つのケース
年金受給者でも、儲け方・受け取り方を間違えると住民税非課税世帯になれないことがあります。以下の3つのケースに該当する人は注意が必要です。
- 年金の繰り下げ受給をしている人
- 株式投資をしている人
- 個人年金を受け取っている人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ケース①:年金の繰り下げ受給をしている人
年金は65歳で受け取らずに、66歳から75歳までの間の希望する時期まで先送りして受け取ることができます。受け取る時期は1ヶ月単位で繰り下げることができ、1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額されます(年間8.4%の増額)。
住民税非課税世帯になるためには、ボーダーラインを超えないように繰り下げ受給をしなければなりません。例えば1級地のボーダーライン(年金211万円)をオーバーしないように繰り下げ受給をするためには、65歳時点の年金額がいくらであれば何歳まで繰り下げられるかを計算する必要があります。
| 65歳時点の年金額 | 繰り下げ可能な上限年齢 | 備考 |
|---|---|---|
| 194万6,000円 | 66歳まで | それ以上繰り下げると211万円超え |
| 148万5,000円 | 70歳まで | 70歳まで繰り下げても211万円以下 |
65歳時点の年金額に増額率を掛け算することで、上限を計算できます。65歳時点で既に年金額が211万円を超えている人は、逆に繰り上げ受給をして年金額を引き下げることで住民税非課税世帯になることができます。繰り上げ受給は1ヶ月あたり年金額が0.4%減額され、60歳まで繰り上げることが可能です。
⚠️ 注意
年金の繰り下げ受給・繰り上げ受給をした場合、その年金額は一生涯変わらず、変更することはできません。住民税非課税世帯になるメリットと長期的な年金総受取額を慎重に比較・検討してください。
📝 このセクションのまとめ
- 繰り下げ受給で年金が増えすぎると、211万円の壁を超えて課税世帯になる
- 65歳時点の年金額に応じて、繰り下げ可能な上限年齢が変わる
- 65歳時点で既に211万円超の人は繰り上げ受給も選択肢になる
- 一度決めた受給開始年齢は変更不可のため、慎重な判断が必要
ケース②:株式投資をしている人
住民税非課税世帯の判定に影響が出るのは、配当控除・損益通算・損失の繰越控除をするために確定申告をした時です。確定申告をすると所得が増加して、住民税非課税世帯になるためのボーダーラインを超えてしまうことがあります。
特定口座(源泉徴収あり)で取引をして、源泉徴収で課税が完了していれば問題はありません。確定申告さえしなければ、いくら儲けようが住民税非課税世帯の判定には影響しません。住民税非課税世帯というのはそういったシステムになっているのです。もちろん、NISA口座は非課税ですからいくら儲けても大丈夫です。
📌 ポイント
所得金額には複数の種類がありますが、住民税非課税世帯の判定に使われるのは「合計所得金額」です。株取引の確定申告をすると、この合計所得金額を増加させてしまいます。富裕層は株式投資で儲けながら、特定口座の源泉徴収やNISAを活用することで住民税非課税世帯のメリットを受けているのです。
確定申告をする主なケースと、合計所得金額への影響は以下の通りです。
| 確定申告のケース | 合計所得金額への影響 | 注意点 |
|---|---|---|
| 配当控除 | 配当所得がそのまま加算される | 控除は合計所得金額の計算後に行われるため、所得自体は増える |
| 譲渡損失の繰越控除 | 繰越控除前の利益がそのまま加算される | 控除は合計所得金額の後で行われるため、所得自体は増える |
| 損益通算 | 通算後の残った利益のみ加算される | 損益通算は合計所得金額の計算前に行われるため、影響を抑えられる |
⚠️ 注意
配当控除や譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告をすると、控除を行う場所が「合計所得金額」の計算後になるため、所得がストレートに加算されてしまいます。「確定申告して税金を取り戻す方が得か」「住民税非課税世帯でいる方が得か」を比較・判断することが必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 特定口座(源泉徴収あり)で完結させれば、確定申告不要で住民税非課税世帯を維持できる
- NISA口座の利益は非課税のため、住民税非課税世帯の判定に影響しない
- 配当控除・繰越損失控除のための確定申告は合計所得金額を増やすリスクがある
- 損益通算は合計所得金額の計算前に行われるため、他の2つと比べて影響を抑えられる
ケース③:個人年金を受け取っている人
個人年金保険は、満期が来たら一括で受け取るか、年金で受け取るかを自由に選択することができます。
| 受け取り方 | 所得の種類 | 課税期間 | 住民税非課税世帯への影響 |
|---|---|---|---|
| 一括受け取り | 一時所得 | その年のみ | 受け取った年のみ影響 |
| 年金受け取り | 雑所得 | 受け取る期間中ずっと | 毎年継続的に所得金額が増加する |
一括で受け取れば一時所得になり、その年だけで課税は終了します。一方、年金で受け取ると雑所得になり、受け取る期間中ずっと所得金額が増加し続けます。
📌 ポイント
年金で受け取っていたものを、残期間分を一括で受け取るように変更することも可能です。住民税非課税世帯になれる可能性がある人は、この変更を検討する余地があります。個人年金保険の受け取り方は、税金や利回りだけでなく、住民税非課税世帯になるメリットも考え合わせて判断してください。
📝 このセクションのまとめ
- 個人年金を年金形式で受け取ると、毎年継続的に雑所得が発生し課税世帯になるリスクがある
- 一括受け取りにすれば一時所得となり、影響はその年のみに限定される
- 年金受け取り中でも残期間を一括受け取りに変更できる場合がある
- 税金・利回り・住民税非課税世帯のメリットを総合的に判断することが重要
住民税非課税世帯の主な特典・優遇措置
住民税非課税世帯になることで受けられる主な特典をまとめます。特に重要なのは医療費用と介護費用に関する優遇です。
| 優遇項目 | 一般世帯 | 住民税非課税世帯 |
|---|---|---|
| 後期高齢者医療の窓口負担割合 | 所得に応じ2割または3割 | 1割負担に軽減 |
| 高額療養費制度の自己負担限度額 | 標準の限度額 | 限度額が引き下げられ、自己負担が少なくなる |
| 介護サービス費(高額介護サービス費) | 標準の自己負担額 | 自己負担が少なくなるよう優遇(施設入居者・常時利用者は特に恩恵大) |
| 介護保険料 | 標準保険料 | 別枠が設けられ、保険料が安くなる |
| 各種給付金 | 対象外の場合あり | 給付金の対象になることが多い |
| 交通機関の割引 | なし | バス・鉄道料金が割引になる場合あり(自治体による) |
高額療養費制度は、1ヶ月にかかった医療費が自己負担限度額を超えると、超えた金額を加入している保険機関が負担してくれる制度ですが、住民税非課税世帯はこの自己負担限度額自体が引き下げられています。介護サービス費も同様で、施設に入っている人や常時介護サービスを利用している人にとっては大変大きなメリットになります。
また、その他にも自治体ごとにさまざまな優遇措置が用意されています。老後の生活において、住民税非課税世帯であるかどうかは、家計に非常に大きな影響を与えます。
📌 ポイント
年金をもらいながら、住民税が課税されない範囲で資産を活用していくことが老後の賢い生活設計です。儲け方・受け取り方を誤ると、住民税非課税世帯になれない年金受給者になってしまいます。年金の繰り下げ受給・株式投資の確定申告・個人年金の受け取り方、それぞれについて事前に十分な検討をしてください。
📝 このセクションのまとめ
- 後期高齢者医療の窓口負担が1割に軽減される
- 高額療養費制度の自己負担限度額が引き下げられる
- 介護サービス費・介護保険料も優遇される(施設入居者・常時利用者は特に大きなメリット)
- 各種給付金の対象になりやすく、交通機関の割引など自治体独自の優遇もある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
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