実家の名義は母か子どもか?税理士が解説する不動産相続の正解
実家の名義変更を誤ると、相続税・所得税で数百万円損することも。パターン別に正しい判断を解説します。
実家の名義は「母」か「子ども」か?結論から言うと…
父親が亡くなった後、実家の名義をお母さんにした方がいいのか、それとも子どもにした方がいいのか。ネットで調べると両方の意見が出てきて迷ってしまう方は多いと思います。
結論から言うと、お母さん名義にした方が有利になることが多いです。ただし、これはパターンによって変わります。今回はパターン別に「このケースではお母さん」「このケースでは子ども」というところまで詳しく解説していきます。
まず前提となる家族構成を整理しましょう。お父さん・お母さん・子ども2人の4人家族で、お父さんが亡くなったというシチュエーションで話を進めていきます。
📌 ポイント
最大のポイントは「同居している子どもがいるかどうか」です。これによって有利な相続の仕方が大きく変わります。
| パターン | 同居状況 | 基本的に有利な相続先 |
|---|---|---|
| パターン① | 父・母の2人暮らし(同居の子なし) | 母が相続 |
| パターン② | 父・母・長男の3人暮らし(同居の子あり) | 母でも同居の子でも可 |
📝 このセクションのまとめ
- 実家の名義はお母さんにした方が有利なケースが多い
- ただし「同居の子どもがいるか」によってパターンが分かれる
【税金ポイント①】小規模宅地等の特例で土地評価額が80%引きに
まず相続税の観点から解説します。相続税とは、人が亡くなったときにその方が残した財産にかかる税金です。ただし、日本中全員にかかるわけではなく、一定額(基礎控除)を超えた財産を残した方にだけかかります。
基礎控除の計算式は以下のとおりです。
| 計算式 | 今回のケース(相続人3人) |
|---|---|
| 3,000万円 + 600万円 × 相続人の人数 | 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円 |
この金額を超えると相続税がかかってきます。ここで重要になるのが、自宅の土地部分に使える特例です。
📌 小規模宅地等の特例とは
亡くなった方の自宅の土地を、配偶者または同居している親族が相続すると、土地の評価額を80%引きで計算できる特例です。
例:土地の評価額が5,000万円の場合 → 80%引き(4,000万円オフ)で1,000万円として計算できます。
この特例が使えるかどうかで、相続税が何百万〜何千万円も変わることがあります。
父・母の2人暮らしのケースでは、お母さんが相続すれば80%引きが適用されます。しかし、同居していない子どもが相続すると、この80%引きは使えません。
一方、父・母・長男の3人暮らしのケースでは、同居している長男が相続しても特例が使えるため、税金面での不利はありません。
📝 このセクションのまとめ
- 小規模宅地等の特例で土地評価額を最大80%引きにできる
- 適用できるのは「配偶者」または「同居している親族」
- 同居していない子どもが相続すると特例が使えず、相続税が大幅に増える可能性がある
【税金ポイント②】自宅売却時の3,000万円特別控除
2つ目のポイントは所得税です。不動産を売却したときにも税金がかかります。
所得税は「儲け(所得)」に対してかかる税金です。不動産を売った場合の儲けとは、買ったときの価格より高く売れた差額のことです。
| 具体例 | 内容 |
|---|---|
| 購入価格 | 5,000万円 |
| 売却価格 | 8,000万円 |
| 儲け(譲渡所得) | 3,000万円 |
| 税率(所得税15%+住民税5%) | 約20%(正確には20.315%) |
| 税額 | 3,000万円 × 20% = 600万円 |
ただし、ここでも特例があります。自分が住んでいるマイホームを売却した場合は、儲けが出ていても3,000万円まで非課税になる「3,000万円特別控除」という制度です。
3,000万円 × 20% = 600万円の差が出るため、この特例が使えるかどうかは非常に大きな問題です。
お父さんが亡くなった後、お母さんが相続してお母さんが売却すれば、お母さんはそこに住んでいるため特例が使えます。しかし、別のところに暮らしている子どもが相続して売却した場合は、住んでいないため特例が使えず、600万円の節税メリットが消えてしまいます。
⚠️ 注意:住民票だけ移すのは絶対NG
3,000万円特別控除を無理やり使おうとして、実際には住んでいないのに住民票だけ実家に移してから売却しようとする人が多くいます。しかし、税務署はこの手口を厳しく取り締まっています。実際に住んでいないのに住民票だけ移すのは絶対にやめてください。必ず実際に住んでいる場所に住民票を置くことが前提です。
📝 このセクションのまとめ
- 自宅売却時の儲けには所得税・住民税(約20%)がかかる
- 住んでいる人が売却すれば3,000万円特別控除が使え、最大600万円の節税になる
- 住んでいない子どもが相続して売却すると、この控除が使えない
- 住民票だけ移して特例を使おうとするのは税務署に厳しく取り締まられているため絶対NG
【気持ちのポイント③】お母さんの安心感も大切な理由
3つ目のポイントは、税金ではなくお母さんの気持ちの観点です。
お父さんが亡くなってお母さんが1人になると、その後の生活はとても不安なものです。自分がこれからも住み続ける場所の権利を自分で持っていれば安心できます。しかし、その権利が子どもの名義になってしまうと、お母さんは子どもからそこを「借りる」ような形になってしまいます。
家賃を請求してくる子どもはなかなかいないとは思いますが、その可能性がゼロではない以上、お母さんとしてはとても心細くなってしまいます。夫婦の財産は夫婦で協力して築き上げてきたものですから、お父さんが亡くなったときはまずお母さんの気持ちを第一に考えることが大切です。
📌 お母さんが相続した方がいい3つのポイント(父・母の2人暮らしの場合)
- 小規模宅地等の特例:配偶者が相続すれば土地評価額を80%引きにできる
- 3,000万円特別控除:住んでいるお母さんが売却すれば最大600万円の節税になる
- お母さんの安心感:自宅の権利を自分で持つことで精神的な安定につながる
📝 このセクションのまとめ
- 税金面だけでなく、お母さんの気持ち・生活の安心感も相続先を決める重要な要素
- 子ども名義にすると、お母さんが「借りている」立場になってしまうリスクがある
同居の子どもがいる場合のパターン
次に、父・母・長男の3人で暮らしていたケースを考えてみましょう。
この場合、仮に同居している長男が実家を相続するとしても、以下の税制上のメリットはどちらも受けられます。
- 小規模宅地等の特例:同居している親族が相続するため、土地評価額の80%引きが適用される
- 3,000万円特別控除:同居している子どもが相続してそのまま売却すれば特例が使える
つまり、同居の子どもがいれば、子どもが相続しても税金面で損することは少ないです。
ただし、お母さんの気持ちを考えれば、子どもが全て相続するよりお母さんと子どもの共有名義にしておくという選択肢もあります。まずはお母さんのお気持ちを優先して考えていただくのがよいでしょう。
相談を受ける際には、最初に必ず確認することとして「ご家族の構成」「どんな財産を持っているか」「子どもたちがどこに住んでいるか・同居していたかどうか」があります。これは最重要ポイントです。
📝 このセクションのまとめ
- 同居の子どもがいれば、子どもが相続しても小規模宅地等の特例・3,000万円特別控除が使える
- それでもお母さんの気持ちを考え、共有名義も選択肢のひとつ
- 「同居しているかどうか」は相続相談で最初に確認すべき最重要ポイント
お母さん名義にするデメリット:認知症リスクと名義変更2回問題
お母さんに名義を移すことにはデメリットもあります。しっかり把握しておきましょう。
デメリット①:認知症になると不動産が売れなくなる
お父さんが亡くなってお母さんが自宅を相続した後、お母さんの足腰が悪くなって施設に入りたいと考えたとします。施設の費用を捻出するために自宅を売ろうとしたとき、もしお母さんが認知症になっていたらどうなるでしょうか。
不動産の売却契約は、所有者本人がきちんと理解した上でサインしなければなりません。子どもが「代わりに契約する」ということはできません。認知症の方が理解・判断できない状態では、売りたくても売れないという深刻な問題が起きてしまいます。
📌 対策:家族信託が有効
こうした問題への対策として、最近は家族信託が非常におすすめです。自宅の所有者はお母さんのままですが、お母さんが認知症などになった場合には長男が代わりにサインできるという契約を元気なうちに結んでおくことができます。
また、成年後見制度という救済制度もありますが、手続きが複雑なため、元気なうちに家族信託を検討しておくことが重要です。
相続対策よりも先に認知症対策をしっかりしておかないと、気づいたときには相続対策ができなくなってしまいます。
デメリット②:名義変更が2回必要になる
父→母→子どもという流れで相続が発生すると、名義変更が2回必要になります。名義変更の際には登録免許税という税金と、司法書士への手数料がかかります。
ただし、相続時の登録免許税は比較的安いため、金額的にはそれほど大きな負担にはなりません。そのため、この点よりもお母さんの気持ちを優先した方がよいでしょう。
📝 このセクションのまとめ
- お母さんが認知症になると不動産が売れなくなるリスクがある
- 対策として、元気なうちに家族信託を検討することが重要
- 名義変更が2回必要になるが、登録免許税は比較的安いため大きな問題にはなりにくい
一次相続と二次相続:配偶者に全て相続させると損する場合がある
「一次相続」「二次相続」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。まず言葉の意味を整理しましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 一次相続 | 夫婦のどちらか一方が先に亡くなったときの相続(今回の例ではお父さんが亡くなったとき) |
| 二次相続 | 残された配偶者(今回の例ではお母さん)が亡くなったときの相続 |
一次相続のときに重要な制度が「配偶者の税額軽減」です。夫婦間の相続については、最低でも1億6,000万円まで相続税が課税されないという制度があります。
これを聞くと「じゃあ全部お母さんに相続させれば相続税ゼロになってお得じゃないか」と考える方が多いのですが、実はこれが最も損してしまう可能性がある分け方なのです。
⚠️ 注意:全額お母さんに相続させると二次相続で税金が跳ね上がる
一次相続で相続税が0円になっても、二次相続(お母さんが亡くなったとき)で相続税が何倍にも膨れ上がることがあります。
例えば、一次相続で1,000万円払うはずだったものが0円になっても、二次相続で3,000万円払わなければならなくなるケースもあります。
なぜ二次相続で税金が高くなるのか、その理由を解説します。
- 相続人の人数が減る:一次相続では相続人が「配偶者+子ども2人」の3人ですが、二次相続では「子ども2人」の2人になります。相続税は相続人が多いほど税金が少なくなる仕組みのため、人数が減ると税額が増えます
- 財産が集中する:一次相続で全額お母さんに渡すと、二次相続時にはお母さんの財産が膨らんでいるため、課税対象額が大きくなります
ただし、だからといって一次相続で全て子どもに渡せばいいかというと、そうとも言い切れません。先ほど解説した小規模宅地等の特例を活用することでメリットが取れるケースも多くあります。
実際の相談では、シミュレーションを作成して一次相続・二次相続を合計した税負担が最も少なくなる分け方を計算した上で判断します。
📌 相続税の2大特例
- 小規模宅地等の特例:自宅の土地を配偶者または同居親族が相続すると評価額が80%引き
- 配偶者の税額軽減:夫婦間の相続は最低でも1億6,000万円まで相続税がかからない
この2つを押さえておくと、相続税対策の全体像がつかみやすくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 配偶者の税額軽減で一次相続の相続税を0円にできても、二次相続で税金が何倍にも増えることがある
- 一次・二次相続を合計した税負担でシミュレーションして判断することが重要
- 相続税の2大特例は「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」
複雑な家族関係(再婚・前の配偶者との子どもがいる場合)
家族関係が複雑なケースも考えてみましょう。例えば、亡くなった男性の相続人として「前の奥さんとの子ども」と「現在の奥さん(年齢差のある配偶者)」がいる場合です。
この場合、先ほど解説した「お母さんの気持ちを大切に」という原則が、なかなかそのまま当てはまらないケースがあります。
相続の流れを整理すると、以下のようになります。
- お父さんが亡くなった時点では、前の奥さんとの子どもと現在の奥さんの両方に相続権があります
- 現在の奥さんが財産を相続した場合、その財産は奥さんが亡くなった後、奥さんの血のつながった子ども(いれば)、いなければ奥さんのご兄弟が相続します
- 前の奥さんとの子どもは、現在の奥さんの財産を相続することができません
つまり、お父さんが亡くなった時点で、前の奥さんとの子どもと現在の奥さんの間で相続についての主張がぶつかりやすい状況になります。
📌 複雑な家族関係では遺言書が必須
前の配偶者との子どもがいるなど家族関係が複雑な場合は、遺言書をしっかり残しておくことが非常に重要です。遺言書があれば、相続人間のトラブルを大幅に防ぐことができます。
📝 このセクションのまとめ
- 再婚家庭など複雑な家族関係では、相続人間の利害が対立しやすい
- 前の配偶者との子どもは、現在の配偶者が相続した財産を受け取ることができない
- 複雑な家族関係がある場合は、遺言書を必ず残しておくことが大切
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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