不動産賃貸業(アパート経営)の相続税対策を税理士が解説【基礎知識編】
不動産賃貸業を営む方が知っておくべき相続税対策の基礎知識を徹底解説します。
不動産賃貸業における相続税対策の2つのアプローチ
不動産賃貸業を営んでいる方独自の相続税対策として、まず最も大事になってくるのが「評価の引き下げ対策」です。これは大きく2つのアプローチに分かれます。
1つ目は「財産の評価を引き下げる」こと、そして2つ目は「財産の増加を抑制する」ことです。最終的にはこの両方を実施することがお勧めになります。まずは「財産の評価を引き下げる」という論点からご紹介していきます。
相続税の計算は、亡くなった日に持っている財産(土地・建物・預金など)の相続税評価額を計算して税額を算出していきます。この評価額が低ければ低いほど、支払う相続税の負担も少なくなります。ですので、許してもらえる範囲内でできるだけ評価を低くすることが重要です。土地や建物の評価については、その土地をどのように使っているかによって評価額を引き下げることができます。
土地の評価:自用地評価と貸家建付地評価
土地の相続税評価額は、基本的に路線価方式といって、国税庁の路線価を使って計算していきます。この路線価に地積を掛け合わせて算出された価格が相続税評価額であり、これを「自用地評価」と呼びます。自分が自宅として使っていたり、自分がお店として使っていたりする場合にはこの自用地評価が適用されます。
一方、今回ご紹介するのが「貸家建付地評価」です。土地の上にアパートを建築したり、貸家として使っている場合には、この貸家建付地評価が適用され、土地の評価額を引き下げることができます。
これは、アパートの敷地や貸家には借家人(そこに住んでいる方)がいるため、自分で取り壊したい・人に売りたいと思った時にさまざまな制約がかかります。その分、評価を引き下げてあげましょうという趣旨が込められています。具体的には計算式がありますが、結論としては大体20%オフになるイメージです。自用地評価から貸家建付地評価が取れると、その分20%引きになるというイメージをまずお持ちください。
よくある質問:駐車場の敷地は貸家建付地になるか?
貸家建付地についてよくいただく質問として、「駐車場の敷地は貸家建付地になりますか?」というものがあります。駐車場も人に貸している土地ではないかということで、貸家建付地になるのかという趣旨の質問です。
この点については、原則として駐車場の敷地は自用地として評価することになります。ただし、以下の例外があります。
①貸家の敷地内に併設された駐車場であること、②駐車場の契約者および利用者が全て貸家の賃借人であること、③駐車場が貸家入居者専用駐車場として使用されていること、以上の3つを満たせば、駐車場も貸家建付地として評価することが可能です。
端的に言うと、賃貸物件の隣にあって、その賃貸物件の入居者専用の駐車場として使っているのであれば、駐車場であっても貸家建付地評価が取れるということです。特に地価の高いところで賃貸物件をお持ちの方は、入居者専用の駐車場にしておけばその部分も20%オフが取れますので、これだけで相続税の負担が何百万円も変わるという方もいらっしゃいます。ぜひ検討していただくことをお勧めします。
小規模宅地等の特例(貸付事業用)で最大50%オフ
続いてご紹介するのは「小規模宅地等の特例(貸付事業用)」です。亡くなった方が不動産賃貸業をしていた土地を相続した人が、その貸付事業を継続させた場合には、その土地の評価額を200㎡まで50%引きにしてくれる特例です。
非常にシンプルな特例で、不動産賃貸を営んでいた方が亡くなって、そのアパートを相続した人が不動産賃貸業を継続させる場合には200㎡まで50%引きにしてくれます。不動産賃貸業の継続については、亡くなった日から10ヶ月間、つまり相続税の申告期限まで継続していただくことが条件です。基本的に家賃を受け取り続けるだけで条件を満たすことになるため、そんなに難しい特例ではありません。
この特例についてよくいただく質問として、「自宅の8割引きとこの特例は一緒に使えますか?」というものがあります。自宅についても、同居している親族や配偶者が相続した場合には8割引きという居住用の小規模宅地特例があります。
この居住用の小規模宅地特例と貸付事業用の小規模宅地特例は、完全に同時には使えません。居住用は本来330㎡まで特例が使えますが、そのMAXまで使っていなければ余り部分を貸付事業用に使うことができます。逆に貸付事業用から優先的に使っていって余りがあれば居住用に使うこともできます。どちらが得なのかをしっかり見ていく必要があります。
いずれにせよ、この貸付事業用が使えるか使えないかで、200㎡まで50%引きというのは非常に大きな話になりますので、必ずこの特例も押さえていただければと思います。
土地評価の関係図:8,000万円が3,200万円になる仕組み
土地の評価の関係図を整理すると、まず路線価に地積を掛け合わせて算出された価格が自用地評価です。例えば8,000万円の評価の土地があったとします。
この土地の上にアパートを建築した場合、自用地評価が貸家建付地評価になりますので、まず20%引きされます。8,000万円の20%引きで6,400万円になります。
さらに、相続人がこの賃貸経営を継続させれば、貸付事業用の小規模宅地等の特例として50%オフが取れます。6,400万円の半分、つまり3,200万円まで評価を下げることが可能になります。
元々8,000万円の土地であっても、貸付事業用の特例まで使えれば3,200万円まで評価を下げることができるのです。土地をどのように使っているか、そして誰が相続するかによって、本来8,000万円だったものが半分以下の評価まで下げることが可能になります。
建物(貸家)の評価:固定資産税評価額から30%オフ
続いて建物の相続税評価額についてご紹介します。建物の評価額は土地と違って非常にシンプルで、固定資産税評価額をそのまま使います。固定資産税の納税通知書に「価格」や「評価額」として記載されていますので、そこから確認してみてください。この固定資産税評価額は大体売買価格の7割に設定されています。
原則としてこの建物の評価は固定資産税評価額をそのまま使いますが、その建物を人に貸している場合(アパートや貸家として人に貸している場合)には、この評価額が30%オフされます。これが「貸家の評価」と呼ばれるもので、借家権割合30%を引くという取り扱いになります。
評価の関係図で言うと、例えば預金1億円で家を建築した場合、元々1億円あったのが固定資産税評価額になりますので建物の評価額は7,000万円になります。これをさらに人に貸し出せば貸家評価となってさらに30%引きされます。つまり約4,900万円くらいで評価されるという関係性になります。
使用貸借と賃貸借:1円でも家賃を払えば30%引きになるか?
ここでよくいただく質問があります。「1円でも家賃を払えば30%引きにできるのですか?」というご質問です。これは、親子間で家を賃貸するケースを想定したものです。例えばお父さんが土地を持っていて、この土地の上にお父さんが家を建築し、その家に子供を住まわせるというケースです。このケースでは基本的に家賃を取らないことが一般的ですが、あえて家賃を払えば貸家評価にできるのではないかという趣旨の質問です。
この点について重要な考え方をご紹介します。「使用貸借」と「賃貸借」という考え方があります。ただで物の貸し借りをすることを法律用語で「使用貸借」といい、お金をもらって貸し借りをすることを「賃貸借」と呼びます。
使用貸借の場合には30%引きはできないこととされています。では1円でも取れば賃貸借になるのではないかと思う方も多いと思いますが、最低でも固定資産税年額の2〜3倍ほどの家賃でないと使用貸借とみなされるという取り扱いがあります。
例えば、お父さんが毎年払っている固定資産税と同じくらいの金額の家賃しか払っていない場合は、実質的にはただで貸しているのと同じとして、税務署も使用貸借として考えることになります。ですので、大体固定資産税の2〜3倍は必ずお支払いいただくことで、貸家評価になるという位置付けになります。
なお、親子間であえて家賃を払うことで貸家の評価減や貸家建付地評価を取るというやり方もありますが、これにはメリットとデメリット両方があります。デメリット部分まで考えると、あえてやらない方がいいというケースもありますので、この点は応用編でしっかり解説します。
財産の増加を抑制する:家賃収入の帰属先を変える考え方
前半では財産の評価を引き下げるという観点で、貸家建付地や貸家の考え方をご紹介しました。すでに不動産賃貸業を営んでいる方は、もうすでに貸家建付地や貸家の評価が取れている状態です。この状態を維持したまま、次のポイントである「財産の増加を抑制する」ところに着手できれば、最も良い形を取ることができます。
財産の増加を抑制するとはどういう考え方かというと、不動産賃貸を営んでいる方はそこから上がってくる家賃や地代が、不動産の所有権を持っている人(オーナー)のところに入っていきます。しかしもし不動産の所有権を子供に生前贈与したらどうなるでしょうか。贈与した後に発生する家賃は、基本的にこの子供のところに帰属することになります。
ずっとお父さんがアパートを持ち続ければ、家賃収入はどんどん自分の預金通帳に溜まっていき、将来の相続税の負担もそれに連動してどんどん増えていきます。しかし途中でアパートを子供に贈与したらどうなるでしょうか。本来お父さんに溜まるはずだった家賃収入がお父さんのところにはたまらず、子供のところに溜まることになります。つまり財産がどんどん増加していくところをストップすることができるのです。このアプローチは時の経過とともに節税効果が大きくなっていきます。
財産の評価を引き下げる(貸家建付地評価・貸家評価を取る)アプローチも有効ですが、実はこちらの「財産の増加をいかに抑制していくか」という方が重要度は高いです。
「ローン返済中だから財産の増加はない」は誤解
このお話をすると、よく「家賃の大半はローンの返済に当てているので、財産の増加なんてありませんよ」とおっしゃる方がいらっしゃいます。ただ、ここは結構な誤解ですので解説します。
相続税の計算は、亡くなった時のプラスの財産からマイナスの財産(債務)を差し引いた純額に対して相続税が課税されます。ということは、ローンをどんどん返済しているということは、このマイナスの財産がどんどん少なくなっているということです。
つまり、ローンの減少は財産の増加と同じなのです。預金通帳の残高がどんどん増えていないから大丈夫かなと思われる方も多いですが、ローンが着実に減っているということは、将来の相続税も着実に増えているということになります。この点はしっかり押さえていただければと思います。
財産の増加を抑制するアプローチが有効だとわかったとして、ではアパートなどを子供に贈与すればいいのではないかと思われる方も多いと思います。この点については応用編でしっかり解説していきます。
流通税(不動産取得税・登録免許税)の注意点
不動産賃貸業を営む方の相続税対策として、最後にご紹介するのが「流通税」と呼ばれるものです。これも非常に重要な論点です。
例えば、お父さんがアパートを持っていて、これを子供に贈与すれば、そこから先発生する家賃収入は全部子供のものになり、財産の増加の抑制もできていいと思われるかもしれません。しかし、ここで注意しなければいけないのが流通税です。不動産の所有権を変えると、その子供に対して大きな税金がかかります。
この税金は何かというと、不動産取得税と登録免許税の2つを合わせたもので、いわゆる「流通税」と呼ばれます。この負担が結構バカにならないくらい大きくなることがあります。
不動産取得税と登録免許税について非常に大切なポイントがあります。不動産取得税は相続による取得の場合は非課税ですが、贈与による取得の場合は課税されます。同様に登録免許税は相続の時には固定資産税評価額の0.4%でよいのですが、贈与の場合には2.0%と、相続の時と比べて5倍の負担になります。
贈与で建物を渡していく時には、この不動産取得税や登録免許税が大きくかかってくるため、金額次第では相続税の節税効果を上回ってしまうということも実際にあります。ですので、このバランスを見た上でスキームを実行するかどうかを判断することが大切です。
これは贈与の時だけではありません。親子間で売買をしたり、場合によっては株式会社を設立してそこに売却するなど、さまざまなスキームを使う時に必ず出てくるのがこの流通税の負担です。ここのバランスを見て最終的にスキームを実行するか否かを見ていく必要がありますので、不動産取得税と登録免許税の負担は絶対に無視できない論点として押さえておいていただければと思います。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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