不動産売却の税金を税理士が解説|所有期間の正しいカウントと特別控除の注意点
所有期間のカウント方法を間違えると、税率が倍近く跳ね上がることも。不動産売却にかかる税金の仕組みと注意点を詳しく解説します。
不動産売却で生じる「譲渡所得」とは
不動産を売却して利益が出た場合には、その利益に対して所得税と住民税がかかります。この不動産の売却によって生じる利益のことを譲渡所得と言います。
譲渡所得は、給与所得などの他の所得と合算するのではなく、区分して計算していきます。これを「分離課税」と呼びます。
また、不動産の売却にかかる税率は、売却のタイミング、すなわちその不動産の所有期間によって異なります。この所有期間のカウントの仕方を間違えてしまうと、低い税率を適用できると思っていたのに、高い税率で税金を計算しなければならないという事態になってしまいます。
📌 ポイント
譲渡所得は他の所得と合算せず「分離課税」で計算します。税率は所有期間によって大きく変わるため、売却前に必ず確認することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 不動産売却の利益は「譲渡所得」として所得税・住民税の対象になる
- 他の所得とは合算せず、分離課税で計算する
- 税率は所有期間によって大きく異なる
譲渡所得の計算方法
課税対象となる譲渡所得の計算式は次のとおりです。
| 計算式 |
|---|
| 譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 (- 特別控除額) |
特別控除額がある場合には、譲渡価額からさらに差し引くことができます(特別控除については後述します)。
各項目の内容は以下のとおりです。
- 取得費:売った土地・建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額
- 譲渡費用:不動産会社への仲介手数料、測量費、建物の撤去費用など
📝 このセクションのまとめ
- 譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用(- 特別控除額)
- 取得費には購入代金・手数料が含まれる
- 譲渡費用には仲介手数料・測量費・撤去費用などが含まれる
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違い
税率は不動産の所有期間に応じて異なります。土地・建物を売却した年の1月1日時点での所有期間が基準となります。
- 長期譲渡所得:所有期間が5年超の場合
- 短期譲渡所得:所有期間が5年以下の場合
それぞれの税率は以下のとおりです。
| 区分 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39% |
⚠️ 注意
短期譲渡所得の税率(合計39%)は、長期譲渡所得(合計20%)の約2倍です。所有期間が5年を超えてから売却するかどうかで、納税額に大きな差が生じます。
📝 このセクションのまとめ
- 所有期間5年超 → 長期譲渡所得(合計税率20%)
- 所有期間5年以下 → 短期譲渡所得(合計税率39%)
- 税金を抑えるには所有期間が5年を超えてから売却するのが有利
所有期間のカウントの仕方(間違いが多い重要ポイント)
ここが最も間違いやすい論点です。所有期間は「購入日から売却日まで」で計算するのではありません。購入日から「売却した年の1月1日」までの期間で判定します。
具体的な事例で確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 購入日 | 2019年6月1日 |
| 売却日 | 2024年8月31日 |
| 購入日〜売却日(誤ったカウント) | 5年3ヶ月 → 「5年超で長期」と誤認 |
| 購入日〜売却年の1月1日(正しいカウント) | 4年7ヶ月 → 5年以下で短期! |
この事例では、売却日までの期間で計算すると「5年3ヶ月で長期譲渡所得」と思いがちですが、正しくは売却した年(2024年)の1月1日時点で所有期間を判定するため、4年7ヶ月となり短期譲渡所得に該当してしまいます。
📌 覚え方のポイント
「購入から売却までの間にお正月が6回あれば長期譲渡所得」と覚えておくと分かりやすいです。売却した年のお正月(1月1日)時点での所有期間が判定基準になります。
また、相続で取得した土地の所有期間については注意が必要です。相続した日ではなく、亡くなった方(被相続人)がその土地を取得した日からカウントします。
📝 このセクションのまとめ
- 所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定する(売却日ではない)
- 購入〜売却日の期間が5年超でも、1月1日時点で5年以下なら短期扱い
- 相続した不動産は、被相続人の取得日からカウントする
- 「お正月が6回あれば長期」と覚えると分かりやすい
10年超所有の居住用財産に適用できる軽減税率の特例
建物および敷地の所有期間が、売却した年の1月1日時点で10年を超える居住用財産については、一定の要件を満たすことで、税率をさらに低く抑えられる特例を適用することができます。
具体的な税率は以下のとおりです。
| 分離課税長期譲渡所得の金額 | 所得税率 | 住民税率 |
|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 4% |
| 6,000万円超の部分 | 15% | 5% |
6,000万円以下の部分については所得税率が10%と、通常の長期譲渡所得(15%)よりもさらに低い税率が適用されます。
この特例を適用するための主な要件は次のとおりです。
- 売却した年の1月1日時点で、建物および敷地の所有期間が10年を超えていること
- 売却した不動産が居住用財産(マイホーム)であること
- その他、定められた要件を満たしていること
⚠️ 注意
この特例における所有期間のカウント方法も、短期・長期の判定と同様に、売却した年の1月1日時点で判定します。購入日から売却日までの期間で計算しないよう注意してください。
具体的な事例で確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自宅の購入日 | 2013年6月1日 |
| 引っ越し(居住しなくなった日) | 2020年8月31日 |
| 建物の取り壊し | 2021年(翌年) |
| 売却日 | 2024年8月31日 |
この事例では、売却した年(2024年)の1月1日時点での所有期間は約10年7ヶ月となり、10年超の要件を満たすため、この軽減税率の特例を適用できます。
📝 このセクションのまとめ
- 売却年の1月1日時点で所有期間10年超の居住用財産は軽減税率の特例が使える
- 6,000万円以下の部分は所得税率10%(通常の長期より低い)
- 所有期間のカウントは通常の長期・短期判定と同じ方法
居住しなくなった日から3年以内の売却要件に注意
居住用財産の特例には、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければならないという要件があります。
先ほどの事例で確認します。引っ越しをした2020年8月31日が「居住しなくなった日」となりますので、そこから3年を経過する2023年12月31日までに売却しなければ、この特例を受けることができません。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 居住しなくなった日(引っ越し日) | 2020年8月31日 |
| 3年を経過する日の属する年の12月31日 | 2023年12月31日(期限) |
| 実際の売却日 | 2024年8月31日 |
| 判定 | 2024年8月31日は2023年12月31日を過ぎているため、この要件を満たさない |
⚠️ 注意
引っ越し後、建物の取り壊しや売却準備に時間がかかっているうちに、「居住しなくなった日から3年経過する12月31日」の期限を超えてしまうケースがあります。引っ越し後は早めに売却手続きを進めることが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 居住用財産の特例は「居住しなくなった日から3年経過する12月31日まで」に売却が必要
- 引っ越し後に建物を取り壊して売却準備をしている間に期限を超えてしまうケースに注意
- 期限を過ぎると特例が適用できなくなる
マイホーム3,000万円特別控除とは
自宅を売却した場合には、居住用財産の譲渡所得の特別控除という制度も利用できます。一般に「マイホーム3,000万円特例」とも呼ばれます。
この特例の主なポイントは以下のとおりです。
- 譲渡所得から最大3,000万円を控除できる
- 所有期間に関わらず適用できる(5年以下でも可)
- 居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければならない
📌 特例の併用について
今回ご紹介した「10年超居住用財産の軽減税率の特例」と「マイホーム3,000万円特別控除」は、併用が可能です。特例によっては併用できないものもありますが、この2つは組み合わせて使うことができます。利益が出た場合には、他にも使える特例がないかも合わせて確認することをお勧めします。
📝 このセクションのまとめ
- マイホーム3,000万円特例は所有期間に関わらず適用できる
- 居住しなくなった日から3年経過する12月31日までに売却が必要(期限は軽減税率特例と同じ)
- 10年超居住用財産の軽減税率特例と併用可能
不動産売却前に特例の要件を必ず確認しよう
不動産の売却のタイミングによっては、税率が高くなってしまったり、特例を適用できなくなったりしてしまいます。
不動産の売却によって生じる利益(譲渡所得)については、さまざまな特例が設けられています。売却前に特例を適用するための要件を確認することを強くお勧めします。
📌 売却前のチェックリスト
- 売却年の1月1日時点での所有期間を確認する(5年超か5年以下か)
- 居住用財産の場合、所有期間が10年超かどうか確認する
- 引っ越し(居住しなくなった日)から3年経過する12月31日の期限を確認する
- マイホーム3,000万円特別控除の適用要件を確認する
- 複数の特例が使える場合、併用可能かどうかを確認する
📝 このセクションのまとめ
- 売却タイミングによって税率・特例適用の可否が大きく変わる
- 売却前に必ず要件を確認し、有利な特例を見落とさないようにする
- 特例の併用可否も事前に確認することが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】を応援しています!
関連記事
確定申告が終わったら今すぐやるべきことベスト3【税理士が解説】節税・納税スケジュール管理の完全ガイド
金融所得課税がまた強化!税率30%・対象4億円まで拡大を税理士が解説
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
