節税対策

税理士が実践する本物の節税術5選【前編】経営セーフティ共済・事前確定届出給与を徹底解説

税理士が実践する本物の節税術5選【前編】経営セーフティ共済・事前確定届出給与を徹底解説
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危険な節税に騙されないために、税理士が自分の会社でも実践している地味だけど本物の節税術を紹介します。

「節税」より「会社をよくすること」が大前提

節税節税と言っていると、怪しい節税商品や危険なスキームに引っかかりやすくなります。税務の専門家として大切にしているのは、お客様の会社をよくするというミッションです。節税はあくまでその手段のひとつ。企業の各ステージによっては、やった方がいい税金対策というものは確かに存在します。

ただし、それは「裏技」や「抜け穴」ではありません。正当派の節税・税金対策というのは、地味なものです。今回は実際に自分の会社でもやったことのある節税策を、前編として2つご紹介します。

📌 今回紹介する節税術(前編)

  • ① ダブル共済(経営セーフティ共済+小規模企業共済)
  • ② 事前確定届出給与(役員賞与の経費化)

📝 このセクションのまとめ

  • 節税は「会社をよくする」ための手段であり、目的ではない
  • 正当派の節税は派手な裏技ではなく、地味で堅実なものが多い

節税術①:退職後も安心、国も推奨するダブル共済とは

まず1つ目は定番中の定番、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)小規模企業共済のダブル活用です。どちらも中小企業基盤整備機構(国の組織)が運営しており、現在も実際に掛金を拠出し続けています。

派手さはありませんが、これより優れた節税・資産形成の仕組みはないと言っても過言ではありません。この2つが優れている理由は、3つの機能を同時に持っているからです。

  • 課税の繰り延べ機能:掛金を経費または所得控除として税負担を軽減
  • 貯蓄機能:強制的に積み立てができる
  • リスクヘッジ機能:積み立てた分を担保に融資も受けられる

この3つを同時に持つ民間商品はほとんど存在しません。まずこの2つから始めるのが節税の王道です。

経営セーフティ共済と小規模企業共済の違いを比較

項目経営セーフティ共済小規模企業共済
主な目的連鎖倒産の防止経営者自身の退職金づくり
対象者法人・個人事業主(中小企業)個人事業主・中小企業の役員
掛金月額5,000円〜最大20万円月額1,000円〜最大7万円
上限額1社あたり累計800万円上限なし(掛金月額に上限)
税メリット掛金全額を経費に計上掛金全額が所得控除
受取時の税制解約手当金として受取(法人で退職金活用可)一括→退職所得、年金→公的年金等雑所得
運用利回りなし約1%(安定運用)
元本割れリスク40ヶ月以上で全額返還任意解約は20年未満で元本割れ
個人事業主への推奨度出口設計が難しいためあまりおすすめしないおすすめ

経営セーフティ共済の詳細と「前納」の活用

経営セーフティ共済の最大の特徴は、掛金全額を経費に落とせるにもかかわらず、40ヶ月以上掛けていれば解約時に全額戻ってくる点です。つまり「貯金しているのに経費になる」という状態を作れます。

さらに、この共済には前納制度があります。月額最大20万円の掛金に加えて、決算時に1年以内の掛金を前払いすることができます。具体的には月額20万円×12ヶ月=240万円に加え、前納分240万円を合わせて最大460万円の経費を1年で作ることも可能です。

⚠️ 注意

前納を使って460万円を先取りする方法がSNSで広まっていますが、累計上限は800万円までです。先に460万円使ってしまうか、毎年240万円ずつ積み立てるかの違いに過ぎません。あくまで「課税の繰り延べ」であり、税金がゼロになるわけではありません。資金に余裕がない状態で無理に掛けるのはNGです。

小規模企業共済は「経営者の退職金」として長期積立が基本

小規模企業共済は、会社員ではない個人事業主や中小企業の役員が自分自身の退職金を積み立てるための制度です。掛金は全額所得控除となり、所得税・住民税の節税につながります。

受け取り方法によって課税区分が変わります。

受取方法課税区分税制上の扱い
一括受取退職所得退職所得控除が適用され税負担が軽い
年金受取雑所得(公的年金等)公的年金等控除が適用される

また、iDeCoとよく比較されますが、小規模企業共済は比較的リスクが少なく安定運用が特徴で、運用利回りは約1%程度です。

⚠️ 注意:元本割れに注意

  • 任意解約(好きなタイミングでやめる場合)は20年未満で元本割れ
  • 廃業等による解約でも15年未満だと元本割れ
  • 業種によっては加入者数の制限あり

この共済は15年〜20年かけることを前提に取り組んでください。

共済の「融資機能」も見逃せない

いずれの共済も、積み立てた金額の約7割を担保に融資を受けられる機能があります。資金が必要になった時に解約せずに対応できるのは大きなメリットです。

共済名融資条件金利返済方法
経営セーフティ共済無利子・無担保年利0.9%1年後一括返済(利息を払えば継続可)
小規模企業共済条件による年利0.9%〜1.5%1年後一括返済(利息を払えば継続可)

この融資機能を活用して、積み立てた共済を担保にしながら資産運用をするという使い方も考えられます。ただし、借りたお金を使い込んでしまうのは絶対にNGです。

📌 ダブル共済が「貯蓄」として機能する理由

会社経営をしながら自分の退職金を自力で貯めていくのは非常に難しいものです。固定費がかかる会社経営では、余剰資金を意図的に残すのは容易ではありません。共済に加入することで強制的に積み立てができる仕組みを作ることが、長期的な資産形成において非常に有効です。

📝 ダブル共済セクションのまとめ

  • 経営セーフティ共済は掛金全額経費化+40ヶ月以上で全額返還
  • 小規模企業共済は掛金全額所得控除+退職時に税制優遇で受取可能
  • 両者とも融資機能あり(年利0.9%〜)
  • 小規模企業共済は15〜20年の長期前提で取り組むこと
  • 余裕が出てきたら民間の生命保険・iDeCo・企業型DCも検討

節税術②:目標達成のご褒美を経費化する「事前確定届出給与」

2つ目は、経営上の目標を設定し、達成したら役員賞与を取るという方法です。これを可能にするのが「事前確定届出給与」という制度です。

通常、役員への賞与(役員賞与)は法人税法上、原則として経費に落ちません。さらに個人には所得税・住民税・社会保険料もかかるという二重の負担があります。しかし、一定の要件を満たせば、役員賞与を経費として計上することが可能になります。

📌 役員報酬・役員賞与の基本ルール

  • 役員報酬(月給):毎月同額で、不相当に高額でなければ経費に計上可能
  • 役員賞与(ボーナス):原則として経費に計上不可。ただし事前確定届出給与の要件を満たせばOK

事前確定届出給与の要件と届出期限

事前確定届出給与を経費として認めてもらうには、以下の要件を全て満たす必要があります。

  1. 株主総会で支給の決議をする
  2. 議事録をきちんと作成・保管しておく
  3. 「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に期限内に提出する
  4. 届出書に記載した内容(支給日・支給金額)の通りに支給する

届出書には「何月何日に、役員賞与としていくら支給する」と明記します。この宣言をした上で、その通りに実行することで初めて経費として認められます。

届出の期限は以下のいずれか早い日です。

期限の基準具体的な期限(3月決算法人の例)
株主総会の決議日から1ヶ月を経過する日5月末に総会→6月末ごろ
会計期間開始日から4ヶ月を経過する日4月1日起算→7月末ごろ

📌 覚え方のポイント

ざっくり言うと、決算が終わってから3ヶ月以内が届出期限と覚えておきましょう。

⚠️ 絶対にやってはいけないこと

  • 届出書を提出していない → 1円も経費に落ちない
  • 支給日が届出記載日とずれた → 全額アウト
  • 資金繰りの都合で金額を変えた(40万→50万、または40万→20万)→ 支給した全額がアウト

アウトになった場合、法人では経費に落ちないのに、個人には所得税・住民税が課税されるというダブルパンチになります。

「社会保険削減スキーム」への悪用には注意が必要

この事前確定届出給与を使った社会保険料削減スキームが一部で流行しています。具体的には、月給を極端に少なくして、その代わりに賞与で1,000万円などを一括取得する方法です。

賞与に対する社会保険料は上限額が設定されているため、月給で毎月取るよりもトータルの社会保険料負担を減らせるという仕組みです。しかし、これにはいくつかの深刻なリスクがあります。

リスク項目具体的な問題
支給タイミング・金額の厳格管理届出通りに実行できなければ全額否認
一度に多額のキャッシュアウト業績・資金繰りによっては対応不可
退職金の減少最終役員報酬額が低いと退職金の算定額が大幅に減る
将来の年金受給額の減少標準報酬月額が低くなるため年金が減る
傷病手当金の減少月給が少ないと傷病手当金も少なくなる
役員貸付金の増加生活費が足りず会社から借入が増え、借入金が残ると役員賞与と認定されるリスク
融資審査への影響役員貸付金が資産として計上されると融資審査で不利になる

⚠️ このスキームを使うべき人・使うべきでない人

使っても良い人:十分な貯蓄があり、少ない月給でも毎月の生活費が問題なく回る方

使うべきでない人:生活費を月給に依存している方、資金繰りに余裕がない方

賞与を取れなくなった場合の対処法

目標が達成できず、宣言した賞与を取れなくなってしまった場合、何もしないと深刻な税務上の問題が発生します。

仕訳の観点で整理すると、役員賞与は「未払い」として認識された後、実際に支払うことで消えるはずでした。しかし支払わないまま放置すると、その未払金が「債務免除益」として会社の利益に計上されてしまいます。役員賞与はそもそも経費に落ちないのに、その上に債務免除益として法人税の課税対象になる——まさにダブルパンチです。

この問題を回避するための対処法は以下の通りです。

  1. 支給日到来前までに、取締役会または株主総会で全額不支給の決議をする
  2. 議事録を必ず作成・保管する
  3. 役員が賞与請求権を放棄(債権放棄)する旨の書面を作成する

これらをきちんと行えば、債務免除益の問題も、個人への課税も発生しません。

役員報酬の最適ラインはどこか

よく聞かれるのが「法人の税負担と個人の税負担、どちらを優先すべきか」という問いです。

法人税率は大体25%〜32%程度です。一方、個人の所得税・住民税は役員報酬が増えるにつれて上昇します。個人の控除額にもよりますが、役員報酬が年収1,500万〜2,000万円のラインを超えてくると、個人の税率が法人税率を上回ってくると言われています。

年収ライン税負担の傾向推奨アクション
1,500万円未満個人税率<法人税率役員報酬を積極的に取る
1,500万〜2,000万円個人税率≒法人税率(分岐点)目的・ライフスタイルに応じて判断
2,000万円超個人税率>法人税率役員報酬を抑え、法人内に利益を留保

ただし、税負担だけで判断するのは必ずしも正解ではありません。個人でお金を使いたい(別荘購入・資産運用・子供への贈与など)という場合は、税負担が多少増えても個人に引き出す方が合理的なケースもあります。

📌 役員報酬の最適化はケースバイケース

100社あれば考え方や状況も100通りです。税負担だけでなく、ライフスタイル・将来の目標・資金の使い道を総合的に考えて判断しましょう。月給+事前確定届出給与(賞与)の合計が1,500万〜2,000万円のラインに収まっているかどうかを一つの目安にするのがおすすめです。

📝 事前確定届出給与セクションのまとめ

  • 役員賞与は原則経費不可だが、事前確定届出給与の要件を満たせば経費化できる
  • 届出書の提出・支給日・支給金額の3つが届出通りでないと全額否認
  • 届出期限は決算終了後おおむね3ヶ月以内
  • 社会保険削減スキームへの悪用は退職金・年金・融資審査に悪影響が出るリスクあり
  • 賞与を取れなくなった場合は支給日前に不支給決議+債権放棄で対処
  • 役員報酬の最適ラインは年収1,500万〜2,000万円が分岐点の目安

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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