純資産金額で決める|稼いだお金を法人・個人どちらに残すべきか専門家が解説

純資産金額で決める|稼いだお金を法人・個人どちらに残すべきか専門家が解説
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法人と個人、どちらにお金を残すべきか?答えは「純資産金額」が教えてくれます。

「法人か個人か」の判断を税金面だけで考えるリスク

中小企業の経営者からよく寄せられる質問が「会社で稼いだお金は会社に残すべきか、個人に残すべきか」というものです。これは会社ごと・社長ごとに答えが異なる話であり、必ずしも絶対的な正解・不正解があるわけではありません。

ただし、もし皆さんが銀行・信用金庫などの金融機関からの融資をスムーズにしたいという優先事項をお持ちであれば、判断の軸が変わってきます。たとえば、次のような状況を目指している方は多いのではないでしょうか。

  • 銀行・信用金庫の担当者から「ぜひご提案させてください」と向こうから声をかけてもらえる関係
  • 設備投資の際に事業計画書を求められず、見積書だけで融資を検討してもらえる関係
  • 信用保証協会の保証枠を温存し、難易度の高いプロパー融資(保証なし融資)に挑戦できる状態
  • 連帯保証人の立場を外し、家族(配偶者・お子さん)へのリスクをなくしたい
  • 無担保プロパー融資の上限(信用金庫では概ね1,500万〜3,000万円)を超える調達を実現したい
  • 地方銀行・商工中金・日本政策金融公庫(中小企業事業)など、取引金融機関をランクアップしたい
  • 運転資金に融通の利く当座貸越枠を確保したい

こうした資金調達・銀行取引のスムーズ化を優先される経営者の方には、「どちらにお金を残すか」の判断基準として、貸借対照表(バランスシート)の純資産金額を見ていただくことを強くお勧めします。

⚠️ 注意

役員報酬の設定を税金面(所得税・住民税の節税)だけで考えると、個人への資産移転が優先されて法人の財務体質が後回しになりがちです。その結果、銀行評価がなかなか改善されず、望む条件での融資が受けられない・会社の成長が遅れるという事態につながります。

📝 このセクションのまとめ

  • 「法人か個人か」の判断を税金面だけで行うと、法人の財務体質が犠牲になりやすい
  • 銀行融資をスムーズにしたいなら、純資産金額を基準に判断することが重要
  • 連帯保証・融資条件・取引金融機関のランクアップなど、多くの目標が純資産の積み上げとつながっている

役員報酬の最低ラインと「個人か法人か」の判断タイミング

まず大前提として、生活がギリギリになるような役員報酬の設定は絶対に避けてください。経営者ご自身の生活を守ることが最優先です。

実際にさまざまな経営者を見てきた経験から、役員報酬の最低ラインの目安をお伝えします。

月額報酬年間報酬コメント
月50万円年600万円最低限取るべき目安の下限
月70万円年840万円より安定した生活水準の目安

この水準を確保した上で、「さらに役員報酬として個人で取るのか、それとも会社に残すのか」を判断する基準として、貸借対照表の純資産金額を見ることが重要です。所得税・住民税のどちらが安くなるかという税金面の比較も大切ですが、その前にまず純資産金額を確認してください。

💡 補足:動画では触れていませんが…

配偶者を役員に登用している場合、役員報酬を分散することで所得税・住民税の節税効果が高まります。ただし、配偶者の役員就任には「実際に業務に従事していること」が税務上の要件となるため、名目だけの就任は否認リスクがあります。実態を伴う形で検討しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員報酬は月50万円(年600万円)〜月70万円(年840万円)が最低ラインの目安
  • その上で「法人か個人か」の判断は純資産金額を基準にする
  • 税金面の比較より先に、貸借対照表の純資産金額を確認することが重要

純資産金額とは何か?銀行評価との関係

純資産金額とは、貸借対照表(バランスシート)における資本金+利益剰余金の合計です。

利益剰余金とは、会社を設立した日からその決算日までの間に、法人税を支払った後の利益をコツコツと積み重ねてきた累計額のことです。この純資産金額を積み上げることが、銀行評価を高める最もシンプルで確実な方法です。

📌 ポイント:純資産金額が消える原因は「赤字」だけ

純資産金額がマイナスになる(=債務超過)原因は赤字のみです。借金が多いから純資産がマイナスになるわけではありません。会社が赤字を出し、その累積赤字額が純資産金額を上回ったときに初めて債務超過となります。

つまり、純資産金額はその会社が「いくらまでの赤字に耐えられるか」を示す金額でもあります。純資産が1億円ある会社が500万円の赤字を出してもびくともしないのはこのためです。

項目内容
純資産金額の構成資本金+利益剰余金
利益剰余金とは設立から現在までの税引後利益の累計額
純資産がマイナスになる原因赤字のみ(借入金の増加ではない)
債務超過とは純資産金額がマイナスになった状態
純資産金額の意味会社が耐えられる最大赤字額の上限

💡 補足:動画では触れていませんが…

自己資本比率(純資産÷総資産)は財務健全性の指標としてよく使われますが、後述するアラーム管理(アラカン)システムでは倒産確率の指標として採用されていません。純資産の「絶対額」と「売上高との比率」の方が、倒産リスクの判定においてより重視されています。

📝 このセクションのまとめ

  • 純資産金額=資本金+利益剰余金(税引後利益の累計)
  • 純資産がマイナスになる原因は赤字のみ。借入金の多さではない
  • 純資産金額は「会社が耐えられる最大赤字額」でもある
  • 自己資本比率よりも純資産の絶対額・売上比率の方が倒産リスク判定に重要

金融機関の倒産確率分析「アラカン」が重視する指標

多くの金融機関が導入しているアラーム管理システム(通称:アラカン)というシステムがあります。これは決算書をコンピューターに登録すると、自動的に会社の倒産確率を分析・点数化するシステムです。

このシステムでは主に8つの項目を評価してバランスを見ており、会社の格付け(ランキング)と倒産確率のランキングを同時に算出します。

📌 アラカン分析で最も配点が高い指標:「支払余力度」

8項目の中で最も重視されているのが「支払余力度」です。これは「純資産金額と年間売上高を比較する」指標で、具体的には次のように定義されています。

総資産から支払手形・買掛金・借入金等の債務を控除した金額(=純資産)を、売上規模(年間売上高)と対比して評価する。

ここで重要なのは、自己資本比率(純資産÷総資産)という指標はアラカン分析表の中に存在しないという点です。つまり、自己資本比率が高くても低くても、倒産確率の判定にはあまり関係がないということを、金融機関側も認識しているわけです。

それよりも重視されるのが「純資産金額が年間売上高の何パーセントあるか」という比率です。たとえば純資産金額が年間売上高のわずか3〜5%しかない場合、売上高の3〜5%の赤字が出ただけで債務超過に転落してしまいます。これは倒産確率が高い不安定な状態と判断されます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

アラカンの評価結果は金融機関の内部資料であり、経営者が直接閲覧することは通常できません。ただし、顧問税理士や財務コンサルタントを通じて自社の財務状況を同様の視点で分析・把握することは可能です。定期的な財務診断を活用することをお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 多くの金融機関がアラーム管理システム(アラカン)で倒産確率を分析している
  • 8項目の中で最も重視されるのは「支払余力度」=純資産金額と年間売上高の比率
  • 自己資本比率はアラカン分析の指標に含まれておらず、倒産確率との関連は薄い
  • 純資産金額が売上高の数%しかない会社は、わずかな赤字で債務超過に転落するリスクがある

純資産の目標①:年間売上高の15%(比率による目安)

アラカン分析表には「純資産金額は年間売上高の15%以上は欲しい」という記載があります。これが1つ目の目安です。

📌 比率による純資産の目標

年間売上高 × 15% = 目標とする純資産金額の最低ライン

この水準を超えると、金融機関から見た倒産確率が低くなり、融資条件が改善されやすくなります。

年間売上高目標純資産金額(売上高×15%)
1億円1,500万円
2億円3,000万円
3億円4,500万円
5億円7,500万円
10億円1億5,000万円

この比率に達するまでは、税金面での節税効果よりも法人への利益留保を優先することが、銀行評価を高める上での合理的な戦略です。

📝 このセクションのまとめ

  • 純資産金額の目安①:年間売上高の15%以上(アラカン分析表に明記)
  • この比率に達するまでは法人への利益留保を優先する
  • 比率が低い段階で個人への資産移転を優先すると、銀行評価の改善が遅れる

純資産の目標②:金額の目安は5,000万円・1億円

比率による目安(売上高の15%)に加えて、金額の絶対値でも目標を設定することができます。ここでは売上規模別に2つの目安をご紹介します。

年間売上高5億円以下の会社:純資産5,000万円

年間売上高が5億円以下の会社では、1事業年度で5,000万円を超える赤字を出すことは通常考えにくいです。売上が減少してきたら固定費削減に取り組むのが一般的であり、急激な大赤字はなかなか発生しません。

この5,000万円という数字には、信用保証協会の「特定社債保証」制度の裏付けもあります。社債を発行して銀行から融資を受ける際に信用保証協会が保証するこの制度は、一部の優良企業しか利用できません。その適格基準として、純資産金額5,000万円以上が最低ラインとして設定されています。

📌 年間売上5億円以下の会社の目標

純資産金額 5,000万円 を達成したら、個人への節税シフトを検討してよい

例:資本金1,000万円の会社であれば、利益剰余金を4,000万円積み上げることが目標

年間売上高5億円超の会社:純資産1億円

年間売上高が5億円を超える規模になると、5,000万円の赤字は現実的に起こりうる金額になります。また、地方銀行との取引拡大や社債発行による資金調達を目指す場合、より高い水準の純資産が求められます。

地方銀行が社債を引き受ける際は、ニュースリリース等で公表されます。これは「この会社は極めて安全だと判断した」という銀行の信用の証明でもあるため、非常に厳しい審査が行われます。多くの地方銀行では、純資産金額1億円以上が有料企業(優良企業)として位置付けられる最低基準となっています。

年間売上高の規模純資産の目標金額根拠・背景
5億円以下5,000万円以上信用保証協会「特定社債保証」の適格基準、1年で5,000万超の赤字は通常発生しにくい
5億円超1億円以上地方銀行の社債引受における優良企業基準、5億円超では5,000万円の赤字が現実的なリスクになる

💡 補足:動画では触れていませんが…

純資産を積み上げるためには、役員報酬を抑えて法人税を払いながら内部留保を増やす方法が基本です。ただし、法人税の実効税率(約30〜35%)を考慮すると、一定水準を超えた後は個人への移転との税負担比較も重要になります。目標純資産金額に達した後は、税理士と相談しながら最適なバランスを検討しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 年間売上5億円以下の会社:純資産5,000万円が目標(信用保証協会の特定社債保証の適格基準にも合致)
  • 年間売上5億円超の会社:純資産1億円が目標(地方銀行の優良企業基準)
  • この目標金額に達した後は、個人への節税シフトを自由に行ってよい

純資産目標達成後は個人優先・節税重視でOK

純資産金額が目標水準(売上高の15%、かつ5,000万円または1億円)を超えた段階で、初めて個人への資産移転・節税重視の方針にシフトしても遅くはありません。

その時点では、すでに銀行との融資交渉がスムーズになっており、望む条件でお金を借りられる状態になっているはずです。連帯保証人の立場も外れやすくなり、家族が犠牲になるリスクも大幅に低減されています。

📌 法人・個人の優先順位の考え方

  • 目標純資産未達成の段階:法人への利益留保を優先。節税よりも財務体質の強化を重視する
  • 目標純資産達成後:個人への資産移転・節税を自由に行ってよい。役員報酬の増額・節税対策を積極的に検討する

この順序が逆になってしまうと、個人が先・法人が後回しとなり、銀行評価の改善に時間がかかり続けます。その結果、経営者が望む融資条件での資金調達が実現しないまま年月が過ぎてしまうことになります。

フェーズ優先すること役員報酬の方針期待できる効果
目標純資産未達成法人への利益留保生活に必要な最低限(年600〜840万円程度)に抑える銀行評価の向上、融資条件の改善
目標純資産達成後個人への資産移転・節税自由に増額可能。配偶者役員への分散も活用所得税・住民税の節税、個人資産の形成

💡 補足:動画では触れていませんが…

純資産目標を達成した後の個人資産形成には、役員報酬の増額以外にも「退職金(役員退職慰労金)」の活用が有効です。退職金は退職所得控除が大きく、給与所得と比べて税負担が大幅に軽くなるため、長期的な視点での資産移転手段として検討する価値があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 目標純資産に達するまでは法人優先、達成後は個人優先・節税重視にシフトする
  • この順序を守ることで、銀行との良好な融資関係を築きながら個人資産も形成できる
  • 逆の順序(個人先行)では銀行評価の改善が遅れ、成長機会を逃すリスクがある

まとめ:純資産金額の3つの目安を押さえよう

法人・個人どちらにお金を残すべきかを判断する際の指標として、以下の3つの目安を覚えておいてください。

目安の種類基準値出典・根拠対象
① 比率による目安年間売上高の15%以上金融機関のアラカン分析表に明記全規模共通
② 金額による目安(中小)5,000万円以上信用保証協会「特定社債保証」適格基準年間売上5億円以下
③ 金額による目安(中堅)1億円以上地方銀行の社債引受における優良企業基準年間売上5億円超

これらの目標金額に達するまでは、役員報酬は生活に必要な最低限(年600万〜840万円程度)に抑えて法人に利益を留保することを優先してください。目標を達成した後は、個人への資産移転・節税対策を自由に進めて構いません。

純資産金額を積み上げることは、銀行評価を高めるだけでなく、会社が赤字に耐えられる体力を蓄えることでもあります。さまざまな事業チャレンジやリスクを取る際に、「うちの会社はいくらまでリスクが取れるか」の答えが純資産金額です。財務体質を強化することが、会社の長期的な成長と安定につながります。

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 直近の決算書(貸借対照表)を確認し、現在の純資産金額(資本金+利益剰余金)を把握する
  2. 年間売上高×15%を計算し、現在の純資産金額との差額(目標までの積み上げ必要額)を確認する
  3. 売上規模に応じた目標金額(5,000万円または1億円)と現状を比較し、法人・個人どちらを優先すべきかを顧問税理士・財務コンサルタントと相談する
  4. 役員報酬の水準を見直し、生活に必要な最低限を確保しながら法人への利益留保を最大化できる設定を検討する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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