節税対策

退職金の増税がほぼ決定!税理士が解説する増税の影響と老後資産への打撃

退職金の増税がほぼ決定!税理士が解説する増税の影響と老後資産への打撃
e_zeirishi

退職所得控除の縮小がほぼ決定。老後の資産計画が大きく変わる可能性があります。

メディアで退職金に関する税制改正が騒がれており、その方向性がほぼ固まってきました。我が国独特の制度である終身雇用制がすでに崩壊しつつある中、政府としては今後、転職を促進するという動きになりつつあります。これまで税制優遇されてきた退職金税制について、ついにそのテコ入れに着手され始めたということです。

⚠️ 注意

個人的には、退職金は一番増税してはいけないところだと思っています。老後の計画をぶっ壊すような改正は問題があります。

この記事では以下の3点について解説します。

  1. 退職金にどれくらい税金がかかるのか(退職所得控除・分離課税・1/2課税の仕組み)
  2. 今回の改正によって実際どれくらい税負担が増えるのか(シミュレーション)
  3. 個人事業主・中小企業経営者への影響

退職金にかかる税金の仕組み

退職金はあくまでも個人の収入であるため、個人の所得税と住民税の対象になります。所得税法上は退職所得として扱われ、税制上の優遇があります。

退職金の課税計算は以下のステップで行います。

  1. 退職金の額面(例:1,000万円)からスタート
  2. 退職所得控除を差し引く
  3. 控除後の残額を1/2する(半分だけが課税対象)
  4. その金額に税率を掛けて税額を計算する

退職所得控除の金額は勤続年数に応じて以下のように計算されます。

勤続年数1年あたりの控除額(現行)
20年以下の部分40万円
20年超の部分70万円

また、税率については以下のとおりです。

  • 所得税と住民税を合わせた最低税率:約15%
  • 最高税率:55%
  • 計算方式:分離課税(給与収入・年金収入等と合算しない)

📌 ポイント:分離課税とは?

通常の給与収入・年金収入・不動産収入などは全て合算する総合課税となり、税率が上がりやすい仕組みです。一方、退職金は退職所得だけで税金を計算する分離課税のため、税率が低くなりやすいという大きなメリットがあります。

なお、退職金を年金形式でもらう場合は雑所得として扱われます。

また、1か所で長く勤めれば勤めるほど退職所得控除が大きくなるため、節税しやすく税金が安くなりやすい構造になっています。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金は退職所得として所得税・住民税の対象になる
  • 退職所得控除を差し引いた後、残額を1/2した金額に課税される
  • 分離課税のため、他の収入と合算されず税率が低くなりやすい
  • 勤続年数が長いほど控除額が大きくなる仕組み

給与と退職金の税負担を比較してみると

退職金がいかに税制優遇されているかを実感していただくため、給与年収3,000万円の場合と退職金一括3,000万円の場合で比較してみましょう。

計算条件は以下のとおりです。

  • 大阪在住・60歳以上
  • 扶養家族0人
  • 勤続年数30年
項目給与3,000万円退職金3,000万円(現行)
退職所得控除1,500万円
(20年×40万+10年×70万)
課税対象額3,000万円(給与所得控除後)750万円
((3,000万-1,500万)×1/2)
社会保険料含むなし
所得税約948万円111万円
住民税約275万円75万円
合計税負担約1,223万円186万円
実質負担率約40%約6.2%

給与だと約40%の税負担がかかるのに対し、退職金にするとわずか約6.2%で済みます。いかに退職金が税制優遇されているかがよくわかります。

📝 このセクションのまとめ

  • 同じ3,000万円でも、給与では約1,223万円の税負担が発生する
  • 退職金(勤続30年)では税負担が186万円と、負担率わずか6.2%
  • 退職金には社会保険料もかからないため、手取りが大幅に有利

今回の改正案:退職所得控除の縮小内容

今回の改正案の内容は次のとおりです。

⚠️ 改正案の内容

退職所得控除について、勤続期間20年超の部分の1年あたり控除額を70万円から40万円に縮小する方向で検討されています。つまり、全勤続年数を通じてフラットに1年あたり40万円となります。

勤続年数現行の控除額(1年あたり)改正後の控除額(1年あたり)
20年以下の部分40万円40万円(変更なし)
20年超の部分70万円40万円(縮小)

📝 このセクションのまとめ

  • 勤続20年超の部分の控除額が70万円→40万円に縮小される見込み
  • 全勤続年数でフラットに1年あたり40万円となる
  • 長期勤続者ほど影響が大きい

改正後の税負担シミュレーション:約50万円の増税に

先ほどと同じ条件(退職金3,000万円・勤続30年)で、改正後の税負担を計算してみましょう。

項目現行改正後
退職所得控除1,500万円
(20年×40万+10年×70万)
1,200万円
(30年×40万)
課税対象額750万円900万円
所得税111万円146万円
住民税75万円90万円
合計税負担186万円236万円
実質負担率6.2%7.9%
増税額約50万円の増税

退職所得控除が1,500万円から1,200万円に縮小されることで、税負担が約50万円増えることになります。退職所得控除の計算自体はシンプルになるかもしれませんが、老後の計画をされていた方にとっては、かなり厳しい話です。

📌 ポイント:まだ最終確定ではありません

現段階ではまだ最終確定ではありません。年末12月の税制改正大綱で正式に明らかになる見込みです。ただし、退職所得控除がさらに撤廃されたり、1/2課税が廃止になったりする可能性も否定できません。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金3,000万円・勤続30年のケースで約50万円の増税になる試算
  • 負担率は6.2%→7.9%に上昇
  • 最終確定は12月の税制改正大綱を待つ必要がある

iDeCo・企業型DCとの関係にも注意

会社員の方にとって、もう一つ注意すべき点があります。それは、iDeCo(個人型確定拠出年金)企業型DC(企業型確定拠出年金)との絡みです。

60歳以上になればiDeCoを解約してその解約金を受け取ることができますが、一時金でもらう場合は退職所得として扱われます(年金形式でもらう場合は雑所得となるため今回の改正の対象外です)。

⚠️ iDeCo・企業型DCを一時金で受け取る方への注意

iDeCoや企業型DCを一時金で受け取る場合は退職所得として扱われるため、今回の退職所得控除縮小の影響を直接受けます。増税により手取りが減る可能性があります。

さらに、昨年(2022年)4月にiDeCoの受け取り開始期間が75歳まで延長できるようになりました。これに伴い、会社の退職金とiDeCoの受け取りタイミングを5年以上または20年以上空けなければ、解約時の税負担が重くなってしまうという取り扱いが生じています。このような増税改正があった上に、さらに退職所得控除まで縮小されるというのは、二重の打撃と言えます。

📝 このセクションのまとめ

  • iDeCo・企業型DCを一時金で受け取る場合は退職所得となり、今回の改正の影響を受ける
  • 年金形式で受け取る場合は雑所得となるため、今回の改正とは関係ない
  • 会社退職金とiDeCoの受け取りタイミングのズレにも引き続き注意が必要

個人事業主・中小企業経営者への影響

今回の改正は会社員だけの話ではありません。個人事業主・中小企業経営者にも大きな影響があります。以下のような制度・手法を活用している方は全て対象となります。

対象者制度・手法影響
中小企業の従業員中退共(中小企業退職金共済)・特退共(特定退職金共済)受け取り時に退職所得として課税されるため増税の影響あり
個人事業主小規模企業共済(一括受け取り)退職所得として扱われるため今回の増税に絡んでくる
中小企業経営者生命保険を原資とした役員退職金会社に満期金が入り、退職金として受け取る場合は退職所得となるため影響あり

⚠️ 役員退職金に関する追加の注意点

勤続年数5年以下の特定役員については、すでに1/2課税が廃止されるという改正がなされています。昨今さまざまな改正が重ねられてきた中で、さらに退職所得控除の縮小という増税に着手しようとしているのが現状です。

📌 ポイント:積立NISAや一般NISAは対象外

積立NISAや一般NISAは配当所得・譲渡所得の非課税制度であるため、今回の退職所得控除の改正とは一切関係ありません。ご安心ください。

多くの方が老後の資産運用計画を立て、それに基づいて掛け金を払ってきています。不労収入などへの増税ならまだしも、老後の計画を根底から覆すような改正については、慎重に議論する必要があるのではないでしょうか。

この改正によって人材の流動化が促進され日本がより良くなるという考え方もある一方で、中小企業の退職金制度を破壊するという見方もあります。今後の税制改正大綱の動向を注視していく必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 中退共・特退共を活用している中小企業従業員も影響を受ける
  • 個人事業主の小規模企業共済(一括受け取り)も退職所得として課税される
  • 生命保険を活用した中小企業経営者の役員退職金も対象となる
  • 積立NISA・一般NISAは今回の改正と無関係

記事全体のまとめ

今回の退職金増税に関する改正案と影響範囲を整理すると、以下のとおりです。

  • 退職所得控除の勤続20年超部分が1年あたり70万円→40万円に縮小される見込み
  • 退職金3,000万円・勤続30年のケースで約50万円の増税(負担率6.2%→7.9%)
  • iDeCo・企業型DCを一時金で受け取る場合も退職所得として影響を受ける
  • 中退共・特退共・小規模企業共済・生命保険を原資とした退職金も全て対象
  • 最終確定は12月の税制改正大綱で明らかになる予定

📌 今後の対応について

まだ最終確定ではないものの、退職金や老後の資産形成に関わる方は今から情報収集と計画の見直しを始めておくことが重要です。特にiDeCoの受け取り方法(一時金か年金か)については、税負担を踏まえた上で慎重に検討してください。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

関連記事

退職所得控除の改正でiDeCoはやめるべき?税理士が解説する損しない受け取り方
iDeCo上限引上げと退職所得控除改悪を税理士が解説|5年ルールが10年に延長
iDeCo2027年から最大月7万5000円に拡充!節税効果と出口課税の罠を税理士が解説
     

東京エリア

千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング

関西エリア

大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング

関東エリア

首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング

中部エリア

製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング

九州・沖縄

九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング

その他地域

北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら