厚生年金保険料の上限がまた引き上げ?税理士が解説する社会保険料の仕組みと対策
賃上げの次は社会保険料の引き上げ。会社員・経営者が知っておくべき厚生年金の最新動向を解説します。
今回のテーマ:厚生年金保険料の上限がさらにアップ
今回は会社員と会社経営者向けの内容です。個人事業主・フリーランスと、会社員・会社経営者とでは、加入している社会保険の種類が異なります。
| 働き方 | 医療保険 | 年金保険 |
|---|---|---|
| 個人事業主・フリーランス | 国民健康保険 | 国民年金 |
| 会社員・会社経営者 | 健康保険 | 厚生年金保険 |
個人事業主・フリーランスの方が加入する国民健康保険・国民年金は、保険料が高い割に保障内容が薄いという特徴があります。一方、会社員や会社経営者が加入する健康保険・厚生年金保険は、国民健康保険・国民年金が少しパワーアップしたバージョンと言えます。
今回、改正が入りそうなのが厚生年金保険の部分です。
📌 今回の改正ポイント(結論)
月給66万5000円以上の人に新たな等級が設けられ、社会保険料の引き上げが検討中です。まだ最終確定ではありませんが、2023年末にこのような議論がなされました。年金財政を改善させることを目的として、主に高所得者層の保険料を引き上げる方向で、おそらく今年末までに決定がなされ、来年度以降から保険料が上がるものと見られています。
対象となるのは全体の約6.3%・約260万人ほどとされており、多くの方はご安心いただける数字ではあります。しかし、上限の引き上げはつい3年前にも行われており、それがまたさらに引き上げられるということになります。
あれだけ「賃上げ、賃上げ」と言われてきましたが、賃上げをした結果として社会保険料負担が増え、さらに昨年末に発表された税制改正においても増税項目が目立っていました。なかなか国民生活は楽にならないですよね。
📝 このセクションのまとめ
- 会社員・会社経営者は健康保険+厚生年金保険に加入
- 今回の改正ターゲットは厚生年金保険料の上限
- 月給66万5000円以上の約260万人が対象見込み
- 2023年末に議論開始、今年末までに決定の見通し
社会保険料の計算・徴収の仕組み
自営業者の国民健康保険料は所得(事業の儲け)によって決まり、国民年金は定額で保険料が決まっています。一方、会社員・会社経営者が加入する健康保険と厚生年金は、標準報酬月額というものをもとに保険料が決定されます。これはざっくり言えば皆さんの月給のことです。
会社員の方は会社が保険料の半分を負担してくれますが、オーナー経営者の方は、従業員が負担している分と同額を会社が負担しなければなりません。これが結構重たい費用になります。徴収した分に会社負担分を合わせてトータルで毎月納付していく仕組みです。
📌 社会保険料率の内訳(会社負担+個人負担の合計)
社会保険料率は会社負担・従業員負担を合わせると約30%にもなります。これは実際、多くの人にとって税金より高い負担です。
| 保険の種類 | 大阪(40歳未満) | 大阪(40歳以上・介護保険対象) | 東京(40歳未満) | 東京(40歳以上・介護保険対象) |
|---|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 10.29% | 12.11% | 9.87% | 11.66% |
| 厚生年金保険料 | 18.3%(全国共通) | |||
健康保険料は都道府県によって料率が異なりますのでご注意ください。料率が高い都道府県もあれば、低い都道府県もあります。なお、東京の方が大阪より健康保険料率は低くなっています。
📝 このセクションのまとめ
- 社会保険料は「標準報酬月額(≒月給)」をもとに計算される
- 会社と従業員が折半して負担する
- 合計の保険料率は約30%で、税金より高いケースも多い
- 厚生年金保険料率は全国一律18.3%
健康保険と厚生年金の等級の違い:なぜ今回狙われたのか
健康保険料の保険料額表と厚生年金保険料の保険料額表は、計算構造が少し異なります。特に大きく違うのが等級の数と上限です。
| 保険の種類 | 等級数 | 現行の最高等級(報酬月額) |
|---|---|---|
| 健康保険 | 非常に多い(上限も高い) | 135万5000円以上 |
| 厚生年金保険 | 32段階 | 63万5000円以上 |
健康保険料に比べると、厚生年金保険料の等級は非常に少なく、上限も低いことがわかります。現在の厚生年金保険料の最高等級では、月収63万5000円以上の場合、トータル負担が月額11万189円となっています。
増税・保険料引き上げを行う際は、こういった制度の隙間をついてくるものです。「健康保険と比べて、厚生年金はここに隙間があるな」という形で今回目をつけられたわけです。
📝 このセクションのまとめ
- 健康保険は等級数が多く上限も高い(最高:月収135万5000円以上)
- 厚生年金は32段階と等級が少なく上限も低い(最高:月収63万5000円以上)
- この「隙間」が今回の引き上げのターゲットとなった
今回の改正で保険料はいくら上がるのか
今回ターゲットとなりそうなのは、現在の最高等級である月給66万5000円以上の方です。新たに1等級が増える見通しとなっています。
前回(約3年前)と同じ改正内容だとすれば、負担増は以下のようになります。
| 期間 | 負担増額(労使折半後の個人負担) |
|---|---|
| 月額 | 約2,700円(保険料トータルでは約5,490円) |
| 年間 | 約33,000円 |
実際には社会保険料が増えると所得控除を受けることができるため、所得税と住民税の節税効果は生まれます。しかし、厚生年金保険料の引き上げによる負担増の方が大きく、目立った節税効果はないと言えます。
一応、保険料が増えることによるメリットとして以下の点は挙げられます。
- 将来もらえる老齢年金が増える可能性がある
- 病気や怪我になった時の傷病手当金が増える
とはいえ、やはりこの負担は非常に重いです。社員さん個人も大変ですし、会社が負担すべき厚生年金保険料も、人数が多ければ多いほど増えるわけですから、今の世の中をうまく反映しているとは言い難い状況です。
📌 厚生年金保険料率の推移:20年でどれだけ上がったか
GIG.comニュース(2017年8月)の記事によれば、約20年前の厚生年金保険料率はわずか14%ほどでした。現在は18.3%ですから、4%以上も引き上げられています。じわじわと分かりにくいように毎年引き上げを続けてきた結果です。
📝 このセクションのまとめ
- 対象:月給66万5000円以上の方(全体の約6.3%・約260万人)
- 個人負担の増加額:月額約2,700円・年間約3万3,000円
- 所得税・住民税の節税効果はあるが、保険料増の方が大きい
- 厚生年金保険料率は約20年で14%→18.3%に上昇
社会保険料を引き下げる対策はあるのか
非常に高額な社会保険料ですが、これを引き下げる対策はあるのでしょうか。残念ながら、小手先のテクニックぐらいしかございません。4つご紹介します。
- 等級のギリギリのラインを狙って昇給する
例えば月給30万999円の方と31万円ジャストの方では等級が違います。個人負担だけでも健康保険料で約1,000円、厚生年金保険料で2,000円弱変わってきます。非常に細かい話ではありますが、社員さんや自身の昇給をする際にこの境界線を意識することが1つの方法です。 - 定時決定の時期を外して昇給する
健康保険料・厚生年金保険料はざっくり言うと4月・5月・6月の給与額の平均値をもとに算定(定時決定)されます。この4〜6月の期間に給与額が増加していなければ、定時決定による等級の改定はありません。4月に昇給するのはあまりよろしくなく、例えば7月に昇給月を設定するといった工夫が有効です。 - 4月・5月・6月の残業代を減らす
定時決定の算定期間である4〜6月の残業を抑えることで、標準報酬月額を低く抑えることができます。 - 月給を限りなく小さくして、ほとんど賞与で受け取る(主に社長向け)
「事前確定届出給与」というスキームを使った社会保険料の削減方法です。ただし、これはほとんど社長さんにしかできない方法です。
⚠️ 注意(対策4について)
月給を極限まで下げて賞与で受け取る方法(事前確定届出給与スキーム)には、以下のような複数のリスクがあります。安易に実施することはお勧めできません。
- 将来の老齢年金が減る
- 傷病手当金が減る
- 役員退職金の額が小さくなってしまう
- 資金繰りのリスクが悪化する
- 税務リスクが悪化する
⚠️ 注意(対策2の随時改定について)
大活躍している社員さんがいらっしゃる場合など、2等級以上の昇給があった場合は、定時決定に限らず随時改定という形で社会保険料が変わってしまいます。この点はご注意ください。
また、サラリーマンの方に関しては残念ながら対策はほとんどなく、給与を下げるしかないのが現実です。社会保険料は税金と異なり、節税策がほとんど存在しないことが不満を持たれる方が多い理由でもあります。
健康保険料に関しては完全に掛け捨てになってしまいますし、厚生年金についても将来もらえる年金が増えるとはいえ、現役世代の負担感は非常に重いのが実情です。
📝 このセクションのまとめ
- 対策①:等級の境界線を意識した昇給設計
- 対策②:4〜6月を外した昇給タイミングの設定(7月昇給など)
- 対策③:4〜6月の残業代を抑える
- 対策④:月給を小さくして賞与で受け取る(社長向け・リスクあり)
- サラリーマンへの有効な対策はほとんどない
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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