賢い遺言書の残し方を税理士が徹底解説|種類・要件・遺留分まで
遺言書の種類から遺留分まで、相続専門税理士が徹底解説します。
遺言書があればできること
今日のテーマは遺言書についての徹底解説です。これから遺言書を書こうと思っている方や、すでに書き終わったけれどちゃんと書けているのか不安に思っている方は、ぜひ最後まで一緒に確認していきましょう。
まず、遺言書があればできることとして、いくつかのポイントをご紹介します。
一つ目は円満な相続です。もし自分が亡くなってしまった時に、遺産の分け方について争いが起きてしまうのではないかと心配のある方は、遺言書を書いておけば、どのように分けていくかをあらかじめ指定することができます。これにより、喧嘩のない円満な相続を実現させることができます。
二つ目は遺贈という概念です。ぜひこの言葉も覚えていただきたいのですが、遺言書を使って相続人ではない方に財産を渡していくことを、法律用語で「遺贈」と呼びます。例えば、自分が亡くなった時に子供を飛ばして孫に財産を渡したい場合、「孫に財産を残します」と書いていただければ、お孫さんに遺産を残すことも可能です。このことを遺贈と呼びます。
三つ目は付言事項です。遺言書にはメッセージを書き添えることができます。「この遺言書はこういう気持ちで書いたんだよ、家族みんな仲良く分けて、みんな助け合って生きてちょうだいね」といったお手紙を添えることができます。これが遺産の分け方の際に「お母さんこういう風に言っているんだから、みんなでこういうふうに協力して分けていこうよ」という相続の潤滑油として非常に効果を発揮します。ぜひ付言事項も積極的に使ってみてください。
四つ目は相続手続きの簡略化です。遺産を受け取る方は、遺言書があるとその遺言書だけでいろんな相続手続きができます。銀行の名義変更や不動産の名義変更なども、遺言書があると非常にスムーズになります。
遺言書の種類:自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言書の種類として皆さんにぜひ押さえていただきたいのは2つあります。一つが自筆証書遺言、もう一つが公正証書遺言です。厳密に言うと秘密証書遺言などもあるのですが、実際に日本国内でよく使われているのはこの2つですので、この2つを押さえていただければ十分です。
自筆証書遺言とは、本人が内容・日付・氏名を手書きし、押印・封印・保管する遺言です。自分の手で書いていく遺言書です。
公正証書遺言とは、公証人という法律の専門家中の専門家が本人の意思を確認し、証人2人と共同で作成する遺言です。法律のスペシャリスト中のスペシャリストである公証人が作る遺言書ですので、皆さんもイメージが湧くと思いますが、公正証書遺言の方が法律的な強さ・堅固さは高くなっています。
自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット
まず自筆証書遺言のメリットについてです。作成が容易で、紙とペンと封筒と印鑑があればいつでもどこでも作ることができます。コストがかからず変更も容易にできます。また、民法改正により要件が大幅に緩和されました。これについては後で詳しく解説しますが、一昔前はすべての内容を手書きしなければなりませんでしたが、今は一部分についてパソコンを使ったり、代筆してもらったり、コピーを取ることも認められるようになっています。作るのが簡単というのが最大のメリットです。
一方、自筆証書遺言のデメリットとして、まず検認が必要という点があります。いざ相続が発生した時に自筆証書遺言が残されていても、すぐに封筒を開けてはいけません。遺言書を発見したら相続人はその遺言書を家庭裁判所に持って行き、原則としてそこで一斉に開封することが原則です。見つけた人がすぐに封を破いてしまうと、厳密に言うと罰金が課されてしまいます。この検認手続きが必要になることが、なかなか大変です。
次に紛失・破棄などの保管上の危険があります。自筆証書遺言にまつわるトラブルは、圧倒的に紛失が一番多いです。亡くなった方が一生懸命遺言書を書いて大事なところに保管していたのに、いざ相続が発生した時にはそれがなくなってしまって見つからない、というケースが大変多くあります。
また、要件不備による紛争が起こりやすいという点もあります。自筆証書遺言を作る時は、必ず日付が入っていなければならない、名前が書いてなければならないなど、細かいルールがたくさんあります。普段から遺言書を書く人はいませんので、どうしてもそういったところが抜けてしまって遺言書の効力が出ないという方が大変多くいらっしゃいます。
次に公正証書遺言のメリットについてです。最大のメリットは、紛失・破棄などの保管上の危険がないという点です。作成した遺言書は公証役場で保管してもらいます。コピーなどをなくしてしまったとしても、原本自体は公証役場にしっかり保管されていますので、そこで再発行を受ければ内容を確認することが可能です。
また、要件不備で無効となることはありません。公証人が作りますので、日付がないとか名前がないといったことで無効になることは決してありません。さらに検認が不要で法的な安全性が高いという点もメリットです。
一方、公正証書遺言のデメリットとしては、作成に手間と費用がかかる点があります。原則として公証役場に足を運んで作成することになりますし、費用としてはだいたい安くても2万円、高ければ10万円を超えることもあります。この費用は遺言書を作る方がどれくらいの財産を持っているかによって価格が変わっていきます。
また、変更や書き直しに手間がかかる点もあります。遺言書を書き直す際も基本的には公証役場でもう一度作っていただく必要がありますので、少し手間がかかります。さらに、公証人次第では作成を拒否されることもあります。公正証書遺言は公証人がしっかり意思確認をして作るものですので、あいまいな内容では断られることもあります。
自筆証書と公正証書にはそれぞれ長所と短所がありますが、専門家としては公正証書遺言をおすすめしています。なんといっても保管してもらえる安心感と、公証人が意思確認をして作りますので無効とされるリスクが自筆証書に比べて大変少なくなります。
遺言書をめぐるトラブルと対策
遺言書をめぐるトラブルで一番多いのは、遺言書を作った方が認知症になっていたのではないか、不安定な状態で作った遺言書ではないかという問題です。相続人が「認知症だった親に無理やり遺言書を書かせたんだろう、こんな遺言書は無効だ」と訴えを起こすことが実は世の中で非常に多いトラブルです。
先ほど公正証書遺言で作れば安全とお話ししましたが、実は公正証書遺言であっても無効になるパターンは存在します。公証人の方々は年間に非常にたくさんの遺言書を作りますので、一人一人に認知症の診断書がありますかといったところまで実は確認しないのです。
そこで私がおすすめしているのは、遺言書を作ったらその後にかかりつけのお医者さんのところへ行き、「あなたは認知症ではないですよ、意思能力はちゃんとしていますよ」という診断書を取っておく方法です。医師にそのような診断書を書いていただければ、遺言書が無効になるリスクはほとんどなくすることができます。
2019年民法改正による自筆証書遺言の要件緩和と法務局保管制度
2019年1月13日に変わった民法のルールをご紹介します。自筆証書遺言のうち本文は手書きし、財産目録は代筆・パソコン・コピーで作成し、署名押印をすれば有効ということになりました。今はすべてを手書きしなくても良くなっています。
注意点として、本文(誰にどのように財産を分けていくかという内容)については相変わらず手書きが必要です。ただし、財産目録(どんな財産があるかという内容)については、パソコンで作ったり代筆で作ったりしてもOKということに変わっています。通帳のコピーや不動産の登記簿謄本のコピーなども財産目録の代わりになります。
ただし注意していただきたいのは、財産目録の改ざんに注意が必要という点です。財産目録を作ったら、その下に名前と印鑑を必ず押さなければなりません。例えば白紙に名前を書かせておいて、その後にその白紙に「別紙目録金1億円」と書き換えて財産目録をすり替えてしまう、ということも実はできてしまいます。こういった改ざんがないように、本文と財産目録について割印をするなど、トラブルに巻き込まれないようにご注意ください。
合わせてぜひ知っておいていただきたいのが、自筆証書遺言の保管制度です。2020年7月10日から始まったこの制度は、一言で言うと作成した遺言書を法務局が預かってくれる制度です。
具体的な流れは次の通りです。まず家で遺言書を作成します。これを法務局に持っていき、法務局の人が形式の確認(名前がちゃんと書いてある、日付が書いてあるなど)をチェックしてくれます。形式に問題なければ遺言書を預かってもらいます。その後、遺言書を預けた人が亡くなった場合、残された家族が法務局に行って「父の遺言書はありますか」と聞くと、遺言書のコピーを交付してくれます。さらに他の相続人に対して「この遺言書を預かっていますよ」という通知までしてくれます。
この制度は大変おすすめで、1通につき3,900円というお手頃な価格で利用することができます。交付を受ける際も1通1,400円と非常に安い価格で利用できます。
さらにこの制度の大きなポイントは、遺言書を作った方が自分で足を運んで法務局で手続きをするという点です。遺言書をめぐるトラブルは、遺言書を書いた人の本当の気持ちではなかったのではないか、認知症だったのではないかということでトラブルになることが一番多いです。この保管制度を使っていれば自分で足を運んで作り保管しているものですので、遺言書を残すぞという気持ちの表れになります。そのため無効とされるリスクをかなり低くすることができます。法務省から詳しいパンフレットが出ていますので、気になる方はぜひ調べてみてください。
遺留分とは?クイズで学ぶ最低限の相続権
ここで遺言書にまつわるクイズをご紹介します。とある方が亡くなって遺言書を残していました。悲しみに暮れる中でご家族がその遺言書の中身を見てみると、そこには「私の遺産は全て愛人に残します」というとんでもない内容の遺言が残されていました。
このような遺言があった場合、遺産は全て愛人に渡ってしまうでしょうか?
正解は×(バツ)です。相続人には最低限の遺産を相続できる権利「遺留分」があります。
遺言書があれば自分が亡くなった時の遺産の行き先を自由に決められますが、相続人に対しては遺産を最低限相続できる権利である遺留分があります。遺留分を侵害するような遺言書があった場合、例えば今回のご家族であれば、愛人に対して「遺留分を返しなさい」ということが言えます。言われた側はその遺留分に達するまでのお金を相続人にお返しする、これが遺留分の制度です。
遺留分をめぐるトラブルは、医師の意思能力の問題と同じくらい多く起きています。例えば「遺産は全て長男に残す、次男には1円も相続させない」という遺言書があると、次男は長男に対して遺留分の侵害として請求することができます。このようなことが世の中で非常に多く起きています。
合わせて押さえていただきたいのは、この遺留分はあくまで権利だということです。相続人が持っている権利ですので、使うかどうかは相続人次第です。仮に遺留分が侵害されていたとしても、「それがお父さんの気持ちだな」と納得するのであれば、そのままの状態になっていくこともあります。
遺留分の割合と計算方法
遺留分は実際どのくらいあるのかということですが、遺留分は法定相続分の半分と覚えていただければと思います。
具体的には、例えば相続人が配偶者と子供たちというシチュエーションにおいては、配偶者が1/2・子供が1/2の法定相続分を持っています。これのさらに半分になりますので、配偶者の遺留分は1/4、そして子供が3人いる場合は1/4をさらに3人で分けることになりますので、1/12ずつの遺留分を持っているということになります。
子供がいない場合、配偶者と直系尊属(親)が相続人になります。この場合については遺留分が1/6あるということになります。
両親がすでに他界している場合については、配偶者と兄弟姉妹が相続人になりますが、ここで大変大事なポイントがあります。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。1/4の法定相続分はありますので1/8の遺留分があるのかと思いきや、兄弟姉妹については遺留分は認められていないのです。
ここから言えることは、お子さんのいらっしゃらないご夫婦については、「私の遺産は全て配偶者に相続させます」という遺言書を残しておけば、兄弟たちは相続に口出しをすることができないということです。「自分たちも相続人なんだから少しは遺産をください」ということは法律上言えません。お子様のいらっしゃらない方については、この遺留分を気にせずに遺言書を書くことができますので、ぜひ積極的に活用していただければと思います。
また、遺留分は侵害されていると知った日から1年間行使しないと、時効によって消滅します。ここは大事ですので押さえておいてください。相続が発生した日から1年ではありません。相続が発生して自分の遺留分が侵害されている遺言書があると知った日から1年間が始まります。
実務上の計算例として、例えば亡くなった方が1億円の財産を持っていた場合、配偶者と子供3人がいるとすると、配偶者が2,500万円の遺留分を持っており、子供たちは各833万円ずつの遺留分を持っていることになります。
実務上、遺留分はどういった形でトラブルになっていくかというと、遺留分の元となる遺産の評価額(時価)をめぐってトラブルになりがちです。遺産が全て預金であれば価格は明確ですが、例えば自宅不動産がある場合、その不動産の価格はいくらなのかという問題があります。遺留分の計算をする際は相続が発生した時の時価で見ていくとしか決まっていないため、その時価とは何かというところで実務上はトラブルになります。
遺留分としてお金が欲しい人からすると不動産の時価が高ければ高いほどたくさんもらえますし、お金を払う側からすると不動産の時価が安ければ安いほど支払う価格も低くなります。双方がこの不動産の価格について言い合うことがあり、最終的には不動産鑑定士などのプロに頼んで鑑定評価を出してもらうというプロセスになっていきます。この元となる価格の算出が実務上は大変難しくなっています。
なお、相続税の計算であれば不動産の評価はこうやって出してくださいという算式がちゃんとありますが、遺留分の話はあくまで民法の取り扱いになりますので時価という形にしかなりませんので、その点ご注意ください。
最後に、民法改正により2019年7月より遺留分の精算は金銭で行うこととされました。以前は不動産や株式で渡すこともありましたが、2019年7月からは遺留分請求されたらお金で精算することが原則となっています。もしお金ではなく不動産や株式で遺留分をお支払いしようとすると、所得税の対象になってしまうという大変恐ろしい取り扱いがありますので、ご注意ください。
円満な相続を実現させるためにはぜひ遺言書の活用をおすすめしています。実際に書く際は弁護士・司法書士・税理士などに相談しながら書いていただくことをおすすめします。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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