中小企業でもホールディングス設立が増加している理由を専門家が解説

中小企業でもホールディングス設立が増加している理由を専門家が解説
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中小企業でもホールディングス(持株会社)を設立する動きが急増しています。その背景にある「株式移転・株式交換」という手法と、ホールディングスを作る5つの目的を詳しく解説します。

中小企業でもホールディングスが増えている背景

皆さんの周りでも、取引先や仕入先などでホールディングスを作られている会社が増えてきたと感じることはないでしょうか。大手企業がホールディングスを作るのはよく耳にしますが、最近は中小企業でもこの動きが広がっています。

その大きな理由の一つが、ホールディングスを作る方法が広く浸透してきたことです。以前は一部の専門家だけが知っていた手法が、今では銀行や信用金庫の担当者の口からも「株式移転」「株式交換」という言葉が出てくるようになってきました。

💡 補足:動画では触れていませんが…

ホールディングス(持株会社)とは、他の会社の株式を保有することを主たる事業とする会社です。日本では2002年の商法改正により株式交換・株式移転制度が整備され、中小企業でも活用しやすい環境が整いました。

📝 このセクションのまとめ

  • 大手だけでなく中小企業でもホールディングス設立が増加中
  • 銀行・信用金庫でも「株式移転」「株式交換」が広く知られるようになった
  • 手法の浸透が中小企業への普及を後押しした

従来の持株会社設立の問題点

以前、銀行が勧めるホールディングス(持株会社)を作る手法として一般的だったのは、次のような方法でした。

  1. 社長が保有する既存会社の株式を、後継者(例:お子さん)名義の新会社に売却する
  2. 買い取り資金は銀行が新会社に融資する
  3. 新会社は既存会社の利益の中から借入金を返済していく

この手法には大きな問題がありました。社長の手元にお金が入ってくる一方で、子供名義の会社には借金が残ります。また、株式を売却する際には譲渡所得税・住民税として約20%の税負担が発生するため、「それほどのメリットがあるのか」という声も多くありました。

⚠️ 注意

従来の株式売却方式では、売却代金に対して約20%の譲渡所得税・住民税が課税されます。株価が高い会社ほど税負担が大きくなるため、事業承継の大きなハードルとなっていました。

📝 このセクションのまとめ

  • 従来の手法では後継者会社に多額の借金が残る
  • 株式売却時に譲渡所得税・住民税(約20%)が発生する
  • これらのデメリットが事業承継の障壁となっていた

株式移転・株式交換とは?コストゼロでホールディングスを作る方法

株式移転・株式交換という手法を使うと、従来の問題点をすべて解消してホールディングスを設立できます。具体的には以下のコストがすべて不要になります。

  • 株式を買い取るための資金(銀行からの借入不要)
  • 社長個人からの資本金の拠出
  • 株式売却に伴う譲渡所得税・住民税(約20%)

つまり、ある日突然、既存の会社の上にホールディングスという持株会社を作ることができるのです。手続きは法務局で司法書士に依頼して行うだけで完了します(会社設立コストは発生します)。

比較項目従来の株式売却方式株式移転・株式交換
買い取り資金銀行融資が必要不要
後継者会社の借金残るなし
譲渡所得税・住民税約20%課税不要
社長個人の資本金拠出必要な場合あり不要
手続き複雑法務局で司法書士に依頼

株式移転と株式交換の違い

株式移転株式交換は似ていますが、使う場面が異なります。それぞれの特徴を整理します。

手法使う場面仕組み
株式移転1社または複数社の上にホールディングスを新設する既存のA社の上に新たなホールディングス(100%親会社)を作る。社長はA社の株ではなく、ホールディングスの株を保有するようになる
共同株式移転兄弟会社(A社・B社)の上に共同でホールディングスを作るそれぞれ別の社長が経営するA社・B社を並列のまま維持しつつ、共同の親会社を設立。上下関係を作らずにグループ化できる
株式交換既存の複数社のうち1社を親会社にしたい場合兄弟関係にある会社を上下関係に組み替える。ただし社長が別々で上下関係を作りたくない場合は共同株式移転が適切

📌 ポイント

株式移転・株式交換を行っても、株主構成の比率は変わりません。例えば社長・親御さん・ご兄弟で株を保有していた場合、その比率のままホールディングスの株に切り替わるだけです。持つ株の「銘柄」がA社からホールディングスに変わるイメージです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

株式移転・株式交換は組織再編税制の対象となるため、適格要件を満たせば課税が繰り延べられます。要件を満たさない「非適格」の場合は課税が発生することがあるため、事前に税理士・司法書士との連携が必須です。

📝 このセクションのまとめ

  • 株式移転:1社または複数社の上にホールディングスを新設
  • 共同株式移転:兄弟会社の上に共同でホールディングスを設立(上下関係なし)
  • 株式交換:既存の複数社のうち1社を親会社にする
  • いずれも株主比率は変わらず、手続きは法務局で完了

ホールディングスを作る5つの目的

では、なぜ中小企業がホールディングスを作るのでしょうか。主な目的として5つ挙げられます。

目的①:先代社長の「花道」を作る(事業承継の円滑化)

事業承継において、先代社長に退職金を支払うためには、その後に先代が会社経営に口出しをしないことが原則です。税務署から退職金を正式に経費(損金)として認めてもらうためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 常勤取締役から非常勤役員(顧問・相談役など)に変更する
  • 出勤日数を大幅に減らす(週1〜2日程度)
  • 給与を大幅に減額する
  • 経営への口出しを原則しない

これでは、長年会社を育ててきた先代社長が「追い出されるような感覚」を持ってしまい、なかなか経営のバトンを渡してくれないというケースが生じます。

しかし、ホールディングスを設立すると、A社(事業会社)からは退職しつつ、ホールディングスの社長または役員として引き続き活躍できる場を作ることができます。ホールディングスとして毎月の経営会議からの報告を聞き、アドバイスをするという立ち位置が与えられるのです。

📌 ポイント

ホールディングスに先代社長専用のスペース(机・テーブル・椅子)を用意し、「グループ全体の経営アドバイザー」という組織図上の立ち位置を明確にすることで、先代の喪失感を軽減しながらスムーズな事業承継が実現できます。ただし、銀行交渉への同席や人事への口出しなど、実質的な経営関与は退職金の否認リスクにつながるため注意が必要です。

⚠️ 注意

ホールディングスの役員になった後も、銀行交渉への立ち会い・社内の部長・課長の人事への口出しなどを続けると、退職金が税務署に経費として認められない(否認される)リスクがあります。先代の関与範囲は明確に限定する必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • ホールディングスを作ると先代社長の「居場所」を確保しながら退職金を支払える
  • 事業会社では退職・非常勤化しつつ、ホールディングスの役員として活躍できる
  • 退職金の損金算入要件を満たすため、実質的な経営関与は避ける必要がある

目的②:後継者選択の多様性を持つ組織づくり

創業家の子どもが必ずしも後継者になるとは限らない時代になっています。子どもがやりたいことを見つけてそちらに進む場合もあります。そこで、ホールディングスを活用した所有と経営を分離する体制を構築する方法があります。

  • ホールディングス(所有):創業家が引き続き経営方針・企業文化・長期ビジョンを担う
  • 事業会社(経営):内部昇格者や外部のプロ経営者に任せる

この体制を取ることで、社員が事業会社の経営者というポストを経験できるようになり、後継者候補を社内で多数育てていく組織文化が醸成されます。創業家から後継者が生まれ続けることが難しくなっている現代において、この仕組みは非常に有効です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

所有と経営の分離は、上場企業では「コーポレートガバナンス・コード」でも推奨されている考え方です。中小企業においても、ホールディングス体制を通じてこの概念を取り入れることで、長期的な企業価値の向上と安定経営が期待できます。

📝 このセクションのまとめ

  • 創業家が必ずしも後継者を出せない時代に対応できる
  • ホールディングス(創業家)と事業会社(プロ経営者)を分離できる
  • 社員が経営者ポストを経験できる組織文化を作れる

目的③:新事業の切り離しによるリスク分散

会社が一つの場合、新事業を始めてもすべてのリスクを既存事業と同じ会社で負うことになります。特に内部昇格した新社長に既存事業を任せた後、オーナーが新事業を展開する際には問題が生じます。

新事業を既存のA社にぶら下げてしまうと、A社の社長(内部昇格者)のバランスシートにも影響が及んでしまいます。新事業のリスクを既存事業の社長に負わせることは適切ではありません。

そこでホールディングス体制を使い、新事業は別会社として横並びに設立します。これにより:

  • A社の社長はA社の経営だけに専念できる
  • 新事業のリスクはホールディングスオーナーが責任を持つ
  • 新事業がうまくいったらA社と合併することも可能

📌 ポイント

うまくいかなかった事業を後から分けるのは難しい(簿価や税務上の問題が生じる)ですが、最初から別会社として切り離しておけば、うまくいった場合に合併するのは比較的容易です。新事業は最初から別会社で始めることが鉄則です。

📝 このセクションのまとめ

  • 新事業を別会社として切り離すことで既存事業へのリスク波及を防げる
  • 内部昇格した社長は既存事業に専念できる
  • うまくいったら合併、うまくいかなければ清算というオプションを持てる

目的④:不動産投資の財務分離

安定した家賃収入をグループ全体で確保したいと考える経営者が増えています。しかし、不動産をA社だけで購入し続けると、本業の財務と不動産の財務が混在して決算書が複雑になり、銀行も融資判断がしにくくなるという問題が生じます。

例えば、マンション1戸程度であれば問題ありませんが、5億円・10億円規模の不動産を抱えるようになると、どのローンがどの不動産と紐づいているかも分からなくなり、決算書が「ぐちゃぐちゃ」な状態になりかねません。

そこで、不動産はホールディングスで保有し、事業会社は本業に専念するという形で貸借対照表を切り離す活用方法があります。

会社保有資産・役割メリット
ホールディングス不動産・グループ全体の資金管理不動産の財務を本業と分離、銀行が見やすい決算書
事業会社(A社等)本業の事業のみ本業の収益性が明確、銀行融資の評価がしやすい

💡 補足:動画では触れていませんが…

不動産管理会社をホールディングスに集約すると、グループ内での家賃収入を事業会社の経費として計上できるため、グループ全体の節税効果も期待できます。ただし、同族関係者間の取引は時価での設定が必要で、恣意的な価格設定は税務調査で問題になることがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 不動産をホールディングスに集約することで本業の決算書がシンプルになる
  • 銀行が融資判断しやすい財務構造を作れる
  • 事業会社は本業に専念できる

目的⑤:グループファイナンスによる資金調達の一元化

ホールディングスを活用したグループファイナンスという考え方も注目されています。これは、各事業会社が個別に銀行と交渉するのではなく、ホールディングスが銀行から一括して資金調達し、各事業会社に必要な運転資金を貸し付ける仕組みです。

この方法のメリットは以下の通りです。

  • 各事業会社の社長(内部昇格者)は銀行交渉のストレスから解放され、本業の経営に集中できる
  • 銀行交渉の経験が豊富な創業社長がホールディングスとして資金調達を担う
  • グループ全体の資金繰りを一元管理できる

📌 ポイント

グループファイナンス(ホールディングスから各事業会社への貸付)は、税務上「貸付金」として認められる正当な手法です。ただし、金利の設定(無利息や著しく低い金利は問題となる場合がある)や貸付条件の文書化など、実務上のルールを守って運用することが重要です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

グループファイナンスでは、ホールディングスから事業会社への貸付金利について、法人税法上の「適正な利率」の設定が求められます。無利息や著しく低い金利での貸付は、税務調査で寄付金として認定されるリスクがあるため、事前に税理士と相談の上で金利を設定することを推奨します。

📝 このセクションのまとめ

  • ホールディングスが銀行から一括調達し、各事業会社に貸し付けるグループファイナンスが有効
  • 事業会社の社長は本業に集中でき、銀行交渉のストレスから解放される
  • グループ全体の資金管理を一元化できる

ホールディングスを作る5つの目的まとめ

目的概要主な効果
①先代社長の花道事業会社を退職しながらホールディングスで活躍できる場を確保退職金の損金算入+先代の喪失感軽減
②後継者選択の多様化所有(創業家)と経営(プロ)を分離する体制づくり後継者候補の育成・経営の安定化
③新事業のリスク分離新事業を別会社として切り離し既存事業への影響を遮断内部昇格社長が本業に専念できる
④不動産投資の財務分離不動産をホールディングスに集約し決算書をシンプルに銀行評価の向上・財務の明確化
⑤グループファイナンスホールディングスが一括資金調達し各社に配分事業会社の経営集中・資金管理の一元化

ホールディングスは万能ではない。1社経営との比較

ホールディングス体制はさまざまなメリットをもたらしますが、1社単独で経営していくことが必ずしも間違いではありません。ホールディングスを作ることで管理コストや税務・法務の複雑さが増すことも事実です。

重要なのは、切り離し効果が必要になったとき、つまり事業が複数になったり後継者問題が現実化したりしたタイミングで検討することです。まずは顧問税理士や専門家と相談しながら、自社に必要な組織形態を見極めることをお勧めします。

比較項目1社単独経営ホールディングス体制
管理コスト低い複数社分の管理コストが発生
財務の明確性全事業が混在事業別に財務を分離できる
リスク分散全リスクを1社で負う事業ごとにリスクを分離できる
後継者対応後継者が1人必要複数の後継者候補を育てやすい
銀行交渉1社で対応ホールディングスで一元管理可能
設立コスト不要会社設立コスト・司法書士費用が必要

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自社の現状(後継者問題・新事業展開・不動産投資の有無)を整理し、ホールディングスが必要かどうかを検討する
  2. 顧問税理士または司法書士に「株式移転・株式交換」の適用可否と手続き費用を確認する
  3. 銀行や信用金庫の担当者にグループファイナンスの可能性について相談してみる
  4. ホールディングス設立後の組織図(先代社長の立ち位置・各社の役割)をイメージして書き出してみる

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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