106万円の壁が撤廃へ!週20時間で社会保険強制加入の新ルールを税理士が解説

106万円の壁が撤廃へ!週20時間で社会保険強制加入の新ルールを税理士が解説
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週20時間以上働くだけで社会保険強制加入へ。年収の壁はどう変わるのか?

年収の壁が複雑すぎる理由:税金と社会保険の2種類がある

「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」……年収の壁が多すぎて何がなんだか分からない、という方も多いと思います。これが複雑に感じる最大の理由は、税金に関する壁社会保険に関する壁の2種類が混在しているからです。

壁の種類金額ライン内容
税金の壁(緑)103万円自分に所得税がかかる/親の扶養から外れるライン
税金の壁(緑)150万円配偶者の税負担が増え始めるライン
社会保険の壁(黄)106万円一定条件下で自ら社会保険に加入しなければならないライン
社会保険の壁(黄)130万円扶養から外れ、自ら社会保険に加入しなければならないライン

このうち103万円の壁についても、今回の税制改正で事実上撤廃され、123万円の壁160万円の壁という形にリニューアルされることが決まっています。こちらは次回の年末調整・確定申告に関わってくる内容ですので、別途解説予定です。

そして今回の本題である106万円の壁についても、撤廃される方向で閣議決定されました。

📝 このセクションのまとめ

  • 年収の壁には「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類がある
  • 103万円・150万円は税金の壁、106万円・130万円は社会保険の壁
  • 今回の改正では106万円の壁が事実上撤廃される方向

現行の106万円の壁とは?4つの加入条件を整理

現行ルールでは、以下の条件をすべて満たす場合に限り、自ら社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません。

  • 正社員が51人以上の会社に勤務していること
  • 収入が月8万8,000円以上(年換算で約106万円)であること
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 学生ではないこと(学業が本分の学生は対象外)

つまり、年収が130万円に届いていなくても、比較的大きな会社(51人以上)に勤めていて上記の条件を満たす場合は、すでに社会保険への加入が必要になっています。これは数年前から導入されているルールで、対象となる企業規模は段階的に縮小されてきました。

📌 ポイント

「年収130万円以下なら社会保険に入らなくていい」というのは誤解です。51人以上の会社に勤めていて週20時間以上・月収8万8,000円以上の場合は、年収130万円未満でも社会保険への加入が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 現行の106万円の壁は4条件をすべて満たす場合に適用
  • 51人以上の企業・月収8万8,000円以上・週20時間以上・非学生が条件
  • 年収130万円未満でも社会保険加入が必要なケースがある

新ルールの衝撃:週20時間以上働くだけで社会保険強制加入へ

今回の改正で何が変わるかを一言で言えば、「週20時間以上働くだけで社会保険の対象になる」ということです。4つあった加入要件のうち2つが撤廃され、条件が大幅に厳しくなります。

厚生労働省の資料によれば、政府は「加入要件がシンプルになる」と説明しています。具体的には以下のように変わります。

要件現行改正後
企業規模51人以上段階的に撤廃(2027年10月〜36人以上→順次拡大)
賃金要件月8万8,000円以上3年以内に廃止
週所定労働時間20時間以上20時間以上(変更なし)
学生除外学生は対象外学生は対象外(変更なし)

つまり改正後は、学生でなければ、週20時間以上働いた時点でアウト。年収も会社の規模も関係なくなります。

賃金要件(月8万8,000円)が撤廃される背景には、最低賃金の継続的な引き上げがあります。毎年最低賃金が上昇し続ければ、週20時間働くだけで自然と年収106万円を超えるようになるため、「賃金要件を設ける意味がなくなる」という判断です。政府は各地域の最低賃金の上がり方を見ながら、3年以内に廃止するとしています。

⚠️ 注意

「2か所のパート先を掛け持ちして、それぞれ20時間未満に抑えれば合計20時間以上でも大丈夫」という工夫は、現行ルールでは有効な場合があります。ただし、今後のルール変更によってこの抜け道が使えなくなる可能性もあるため、最新情報を随時確認してください。

また、企業規模の要件については、2027年10月から36人以上の企業が対象となり、その後も段階的に拡大し、最終的には10人以下の小規模企業まで対象となる見通しです。これからおよそ10年かけて段階的に進む予定です。

📝 このセクションのまとめ

  • 新ルールでは「週20時間以上・非学生」の2条件のみで社会保険加入が必要に
  • 賃金要件(月8万8,000円)は3年以内に廃止予定
  • 企業規模要件は2027年10月から段階的に拡大し、最終的に全規模が対象

個人事業所への社会保険適用拡大も進む

社会保険の適用拡大は、パートタイム労働者だけの話ではありません。個人事業所についても対象が広がります。

現行では、法人の事業所は原則として強制加入ですが、個人事業所には一部例外が設けられています。常時5人以上を使用する個人事業所のうち、法定17業種のみが社会保険の適用対象で、それ以外の業種は対象外でした。

これが2029年10月から変わり、これまで対象外だった業種も適用対象となります。具体的に対象となる業種は以下のとおりです。

  • 農業・林業
  • 宿泊業
  • 飲食業
  • 理美容業
  • デザイン業

ただし、すでに存在している事業所については「当分の間は対象外」とする経過措置が設けられています。将来的にどうなるかは未定ですが、しばらくは見逃してもらえる形です。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業所でも2029年10月から農業・飲食・宿泊・理美容・デザイン業が適用対象に
  • 5人未満の個人事業所は引き続き対象外
  • 既存事業所は当分の間、経過措置あり

パート主婦の手取りはどれだけ減る?具体的な試算

新ルールが適用された場合、実際にパートで働く方の手取りはどう変わるのでしょうか。具体的な試算を見てみましょう。

ケース年収社会保険料負担手取り(現行)手取り(改正後)手取り減少額手取り維持に必要な年収
50人以下企業勤務・週20時間以上106万円年間約16万円約103万円約88万6,000円約15万円減約120万円
年収を130万円未満に抑えていた方129万円年間約20万円約123万円約107万9,000円約16万円減約150〜160万円

年収106万円のケースでは、社会保険料の負担により手取りが約15万円減少します。社会保険に加入することで所得税などは安くなりますが、それでも手取りの減少は避けられません。手取りを現状維持するためには、逆算すると年収120万円程度まで稼ぐ必要があります。

年収129万円のケースでは、社会保険料が年間約20万円増加し、手取りが約16万円減少します。なお、基礎控除の改正によって160万円の壁が新設される予定のため、税負担はほとんどかかりません。手取りを維持するには年収150〜160万円程度まで稼ぐことが必要になります。

⚠️ 注意

手取りが10%以上ダウンするのは非常に大きな影響です。「将来の年金が増える」「傷病手当金の保障が増える」といったメリットはありますが、目先の家計への影響は深刻です。年収をセーブして社会保険を回避しようとしても、新ルール下では週20時間以上働く限り回避できなくなります。

「社会保険に入れば得」は本当か?元を取るのに何年かかるか試算してみた

政府広報オンラインのサイトでは、「パート・アルバイトの皆さんへ:社会保険の加入対象になるとより手厚い保障が受けられます」として、社会保険加入のメリットが紹介されています。

そのモデルケースによると、月額保険料8,100円20年間払い続けると、将来の年金が月額8,900円(年額10万6,800円)増えるとされています。

では、本当に元が取れるのか、実際に試算してみましょう。

項目金額
厚生年金保険料(個人負担)月8,100円 × 12か月 × 20年 = 194万4,000円
健康保険料(個人負担・概算)月4,000円 × 12か月 × 20年 = 96万円
20年間の合計個人負担約290万円
年金の増加額(年額)10万6,800円
元を取るのに必要な年数290万円 ÷ 10万6,800円 ≒ 約27年

個人負担だけで計算しても、元を取るのに約27年かかる計算になります。

さらに見落としてはいけないのが、勤務先企業も同額を負担しているという点です。個人が払う金額と同じだけ、会社も社会保険料を支払っています。この企業負担分も含めて考えると、実質的に元を取ることは何十年かかっても不可能に近いと言えます。

もちろん、医療保険(傷病手当金など)や障害年金といった恩恵を受けられる可能性はあります。しかし、純粋に「払った保険料 vs もらえる年金」という観点では、非常に厳しい計算結果になります。政府の広報資料にはこうした詳細な説明が十分に書かれていない点は問題があると言えるでしょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 20年加入で個人負担の合計は約290万円(年金保険料+健康保険料)
  • 年金増加額(年10万6,800円)で元を取るには個人負担分だけで約27年かかる
  • 企業負担分を含めると実質的に元を取ることは非常に困難

中小企業とパート主婦はどう対策すべきか?救済措置の内容

では、新ルールに対してパートで働く方・中小企業はどのように対応すべきでしょうか。政府は一応の救済措置を設けています。

「社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者への支援」として、3年間の特例的な措置が実施される予定です。内容は、事業主が追加負担することで労働者の社会保険料負担を軽減できるというものです。

年収目安通常の労働者負担割合特例適用時の労働者負担企業が追加負担する割合
約106万円(月収8万8,000円)50%25%25%(合計75%を企業が負担)
年収が上がるにつれて50%20〜14%段階的に減少
年収161万円超50%50%(通常通り)この制度は利用不可

要するに、企業が自社の判断で労働者の保険料負担を肩代わりできる制度です。ただし、労働者の負担を0にすることは認められません。また、働く側の年金は減らさないという仕組みになっています。

この制度を活用して「社会保険料の負担が軽い職場」として採用強化や福利厚生のアピールに使えるのは、実質的に体力のある大企業や余裕のある会社に限られるという指摘は否めません。

📌 ポイント:助成金による国のバックアップ

企業が追加負担した保険料については、国などがその全額を支援する方針が示されています。おそらくキャリアアップ助成金などの制度を活用して補助される見込みです。ただでさえ採用難の時代ですので、この制度を活用して採用強化につなげることも一つの戦略です。ただし、手続きの手間が増えることは避けられません。

📝 このセクションのまとめ

  • 3年間の特例措置として、企業が追加負担することで労働者の保険料を軽減できる
  • 年収106万円相当の場合、労働者負担を通常の半分(25%)にできる
  • 企業の追加負担分は国(助成金等)が全額支援する方針
  • 実質的に大企業・体力のある企業向けの制度であり、中小企業には負担が大きい

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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