経営者必読!役員報酬・賞与で社会保険料を大幅削減するスキームが終了へ【税理士が解説】
経営者に広まっていた合法的な社会保険料削減スキームが、国の議論の的となり終了の危機を迎えています。
社会保険料の基本的な仕組みとは
社会保険料は、会社から会社員や役員に対して給料を払う際に、給料から天引きされる形で徴収されます。その内訳と負担割合は以下のとおりです。
| 保険の種類 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約5% | 約5% |
| 介護保険料 | 約1% | 約1% |
| 厚生年金 | 約9% | 約9% |
| 合計 | 約15% | 約15%(労使折半) |
本人と会社が同じ割合を負担する「労使折半」の仕組みで、合計約30%が日本年金機構などに納められます。
ただし、この社会保険料には「上限」が設けられています。給料が非常に高い人に対して無制限に15%を課すのではなく、ある一定のラインで保険料の増加が止まる仕組みです。
📌 社会保険料の上限ライン(月給・標準報酬月額)
- 健康保険・介護保険:月給 135万5,000円以上 で上限到達
- 厚生年金:月給 63万5,000円以上 で上限到達
月給150万円の人も300万円の人も、上限を超えていれば保険料は同額になります。
賞与(ボーナス)についても同様に上限があります。
| 保険の種類 | 賞与の上限ライン |
|---|---|
| 健康保険・介護保険 | 年間 573万円 |
| 厚生年金 | 月 150万円 |
つまり、賞与が600万円の人も1,000万円の人も、上限を超えた部分については社会保険料がかかりません。払う社会保険料は同じになります。
📝 このセクションのまとめ
- 社会保険料は本人・会社それぞれ約15%、合計約30%の負担
- 月給・賞与ともに「上限」があり、上限を超えると保険料は増えない
- 賞与の上限は健康保険・介護保険で年間573万円、厚生年金は月150万円
社会保険料削減スキームの具体的な内容
この上限ルールを活用したのが「社会保険料削減スキーム」です。主に経営者が活用しており、仕組みはシンプルです。
📌 スキームの基本的な考え方
毎月の役員報酬を極端に低く設定し、その分を年1回の高額賞与(ボーナス)としてまとめて支給することで、社会保険料の上限ルールを最大限に活用する。
具体的な数値で見てみましょう。まず、年収1,200万円のケースで比較します。
通常通り毎月100万円の役員報酬を支払う場合と、毎月6万円の役員報酬+年1回1,128万円の賞与を支払う場合で、社会保険料・税金の負担がどう変わるかを比較します。
| 項目 | 通常(月100万円) | スキーム活用(月6万円+賞与1,128万円) |
|---|---|---|
| 健康保険料(会社負担込) | 136万円 | 8万円(月々)+66万円(賞与) |
| 厚生年金(会社負担込) | 143万円 | 19万円(月々)+27万円(賞与) |
| 課税所得 | 818万円 | 896万円 |
| 所得税 | 127万円 | 145万円 |
| 住民税 | 83万円 | 90万円 |
| 社会保険料+税金の合計 | 488万円 | 357万円 |
| 削減効果 | ― | 131万円の削減 |
スキームを活用すると、課税所得は増えて所得税・住民税は若干増加しますが、社会保険料が大幅に減るため、トータルで年間131万円の削減が実現できます。これを10年続けると1,300万円もの差になります。
なぜ毎月の役員報酬を「6万円」にするのかというと、社会保険料の仕組みで月給6万3,000円未満の場合は「第1等級」となり、最も保険料が安い等級に該当するからです。
また、賞与が年間573万円の上限を大幅に超えていても、実際に納める保険料は573万円分の保険料しかかかりません。1,000万円超の賞与を支払っても、保険料は573万円相当分で頭打ちになるため、差額部分は「社会保険料的に無税」という状態になります。
📌 役員が賞与を使う場合の手続き
役員の場合は「事前確定届出給与」として、事前に金額と支払日を決めて税務署に届け出る必要があります。この手間はかかりますが、それだけで保険料が激減します。
年収が1,800万円のケースではさらに効果が大きくなります。毎月150万円の役員報酬では社会保険料・税負担が787万円になりますが、毎月6万円+賞与1,728万円の構成にすると619万円となり、168万円の削減が可能です。
📝 このセクションのまとめ
- 毎月の役員報酬を月6万円に抑え、残りを年1回の高額賞与で支給するのがスキームの骨格
- 年収1,200万円で年間131万円、10年で1,300万円の削減効果
- 年収1,800万円では年間168万円の削減効果
- 役員の場合は事前確定届出給与の届け出が必要
国に目をつけられたきっかけ
このスキームが突然、国の議論の的になったきっかけがあります。厚生労働省では「年収の壁」について議論する会議が継続して行われており、働く人全員を社会保険に加入させるべきという方向性が検討されていました。
その議論の中で、社会保険料の最も安い等級である「第1等級(標準報酬月額5万8,000円)」に該当する人が、特定の規模の会社に異常に多いことが判明しました。
| 会社規模 | 第1等級該当者の状況 |
|---|---|
| 従業員1〜4人の小規模企業 | 約13万人が第1等級に集中(突出して多い) |
| その他の規模の会社 | 第1等級の該当者は少ない |
そもそも「第1等級(5万8,000円)」という基準がどこから来たかというと、平成18年の改正時に、当時の最低賃金が最も低かった都道府県の時給が608円だったことを基に計算されたものです。その時給で計算するとパート従業員の月収が概ね5万8,000円程度になることから設定されました。
ところが、現在(令和6年時点)では全国で最も最低賃金が低い都道府県でも時給は951円です。同じ計算式で算出すると、最低賃金ベースの月収は約8万8,000円になります。
⚠️ 問題の本質
現在の最低賃金水準では、正当に働いている人が第1等級(標準報酬月額5万8,000円)に該当することはあり得ません。小規模企業に第1等級の人が約13万人もいるのは、最低賃金が守られていないか、社会保険料削減のために意図的に低く設定されているかのどちらかを示しています。
この疑問を受けて、社会保障審議会医療保険部会が実態調査を実施しました。標準報酬月額が5万8,000円〜8万円以下の人がどのような実態にあるかを調べた結果、主に3つのケースが判明しました。
- 障害者の方で、特例により最低賃金が低く設定されているケース(件数は3,000件未満と少数)
- 経営者の配偶者など家族を従業員として扱っているケース
- 代表取締役や役員が報酬を極端に低く設定し、高額な賞与を支給しているケース(=社会保険料削減スキームそのもの)
3つ目のケース、つまり社会保険料削減スキームが直接名指しで問題視される形となりました。
さらに、賞与で年間573万円の上限を超えている人の数が年々増加していることも判明しています。その背景として、かつては税理士業界など限られた界隈でのみ知られていたこのスキームが、インターネットを通じて広く一般に知れ渡り、「自分も会社を作って社会保険料を節約しよう」と考える人が増えていることが指摘されています。
📝 このセクションのまとめ
- 「年収の壁」の議論の中で、小規模企業に第1等級該当者が約13万人と異常に多いことが発覚
- 現在の最低賃金水準では第1等級(月5万8,000円)に該当するケースは通常あり得ない
- 社会保障審議会医療保険部会の調査で、役員が意図的に報酬を低く抑えるスキームが直接指摘された
- スキームの利用者はネットの普及とともに年々増加している
今後の改正の方向性と展開
国がこの問題に気づいた以上、当然「見直し」の議論が進むことになります。社会保険財源の不足が叫ばれる中、同じ年収1,200万円の人が片方は保険料を多く払い、片方はほとんど払っていないという状況は「公平性」の観点から問題とされます。
📌 「公平性の確保」という改正の論理
賞与に対する社会保険料の上限は、かつては存在せず、その後200万円、現在の573万円へと段階的に引き上げられてきました。引き上げの理由は毎回「公平性を確保するため」です。今回も同じ論理で上限が引き上げられる可能性が高いと考えられます。
現在の賞与上限573万円という数字の根拠は、社会保険の最高等級(月139万円)に民間の賞与平均月数である4.12ヶ月分をかけた数値です。つまり「平均的な賞与の金額」として設定されているに過ぎず、この根拠に基づけば上限を1,000万円・2,000万円へと引き上げることは論理的に可能です。
この改正については、反対する人はほとんどいないと考えられます。「節税を守るために上限を上げるべきでない」と主張する人は少なく、議論が動き出せば来年・再来年(2025〜2026年)にも改正される可能性があります。
注目すべきポイントは以下のとおりです。
- いつ改正されるか:議論が始まっているため、早ければ2025〜2026年の改正も視野に
- 健康保険だけ変わるか、厚生年金も変わるか:健康保険だけ改正された場合、削減スキームの効力は半減程度にとどまる
- 厚生年金の賞与上限も見直されるか:厚生年金も財源問題が議論されており、同様に上限引き上げの可能性がある
📝 このセクションのまとめ
- 「公平性の確保」を理由に賞与の社会保険料上限(現行573万円)が引き上げられる可能性が高い
- 改正に反対する声は少なく、早ければ2025〜2026年にも改正が実施される可能性がある
- 健康保険のみの改正か、厚生年金も含むかによってスキームへの影響度が変わる
マイクロ法人・一人社長スキームへの影響
今回の議論では、賞与を使った削減スキームだけでなく、マイクロ法人(一人社長)スキームにも波及する可能性が示唆されています。
マイクロ法人スキームとは、法人を設立して月給6万円程度の役員報酬を設定することで、国民健康保険・国民年金よりも安い社会保険料で健康保険・厚生年金に加入するというものです。
| 比較項目 | 国民健康保険・国民年金 | マイクロ法人(月給6万円)の社会保険 |
|---|---|---|
| 保険料水準 | 収入に応じて高くなる | 第1等級で最安 |
| 将来の年金 | 国民年金のみ | 厚生年金(国民年金より受給額が増える) |
| コストパフォーマンス | ― | 保険料が安く、年金受給額が増えるためお得 |
このスキームは賞与を発生させなくても成立するため、賞与上限の改正だけでは影響を受けません。しかし、今回の議論の流れの中で、月給6万円という極端に低い報酬設定そのものにメスが入る可能性も出てきています。
⚠️ 注意
マイクロ法人スキームに関しては、これまでほとんど改正の動きがありませんでした。しかし今回の議論を機に急に動き出した可能性があります。今後の最新情報に注意が必要です。(本記事は2024年10月18日時点の情報に基づいています)
📝 このセクションのまとめ
- マイクロ法人スキームは月給6万円で社会保険に加入し、国民健康保険より安く、かつ将来の年金受給額も増えるというメリットがある
- 賞与上限の改正だけではマイクロ法人スキームへの直接的な影響は少ない
- ただし、今回の議論を機に月給6万円という低報酬設定そのものが見直される可能性も浮上している
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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