社会保険料は税金と同じ?専門家が解説する日本の徴収制度の問題点
社会保険料は税金と同じなのか?日本の徴収制度の問題点を、国の予算構造や財務省の思惑まで含めて徹底解説します。
この記事でわかること
この記事では、以下の3つのテーマを順番に解説していきます。
- 社会保険料は税金の範囲に含めてよいのか、一点の結論を出す
- 「再入庁」という聞きなれない言葉と、国・各省庁の思惑
- 財務省のあくどい思惑とは何か
社会保険を国が受け取ってどう使っていくか、税金を国が受け取ってどう使っていくか——このあたりは教養にもなりますので、ぜひ知っておいてほしい内容です。
📝 このセクションのまとめ
- 社会保険料と税金の関係性について結論を出す
- 再入庁・省庁の思惑・財務省の動向という3テーマを扱う
社会保障制度とは何か
社会保障制度とは、一言でいえば「社会保障のための制度」です。では社会保障とは何かというと、私たちが例えば怪我をして仕事ができなくなったときに保証してあげますよ、年をとって仕事できなくなったときのために保証してあげますよ、あるいは病院にかかるときに全額負担は厳しいから負担してあげますよ——このあたりが社会保障の中心です。
そして、その社会保障を実現するために私たちが支払っているのが「社会保険料」です。これが日本の社会保障制度の基本的な仕組みになっています。
私たちが払っている社会保険料の内訳
私たちが毎月支払っている社会保険料は、主に以下の3種類です。
| 種類 | 対象者 | 備考 |
|---|---|---|
| 年金(厚生年金・国民年金) | 会社員・個人事業主など | 老後の生活保障 |
| 健康保険 | 会社員・個人事業主など | 医療費の一部負担 |
| 雇用保険(労災含む) | 会社員・公務員のみ | 役員・個人事業主・フリーランスは対象外 |
📌 ポイント
雇用保険(労災)は、仕事中に怪我をしたときの医療費などを負担してくれる制度ですが、会社員・公務員のみが対象です。役員・個人事業主・フリーランスには適用されません。
会社員の場合はこれらが給与から天引きで支払われ、フリーランスや個人事業主の場合は自分で納付します。
では実際にどれくらい天引きされているのか、具体的な数字で見てみましょう。2023年・東京都・本社勤務・独身・額面30万円を前提に計算すると、以下のようになります。
| 天引き項目 | 分類 | 金額(概算) |
|---|---|---|
| 健康保険 | 社会保険料 | 約14,805円 |
| 厚生年金 | 社会保険料 | 約27,450円 |
| 雇用保険 | 社会保険料 | 約900円 |
| 所得税 | 税金 | 約5,130円 |
| 住民税 | 税金 | 約15,000円 |
| 手取り合計 | — | 約236,715円 |
⚠️ 注意
上の表を見ると、社会保険料3種(上3つ)の合計が、税金2種(下2つ)の合計よりも圧倒的に多いことがわかります。これが今の日本の問題点の一つです。
📝 このセクションのまとめ
- 社会保険料は年金・健康保険・雇用保険の3種類
- 額面30万円の場合、手取りは約23万6千円まで下がる
- 社会保険料の天引き額は税金の天引き額より大きい
税金と予算——国はどのようにお金を使っているのか
次に、国の税金と予算の話に移ります。財務省が公表している2022年度の一般会計予算をもとに、ざっくり解説します。
まず「歳出」という言葉を覚えておいてください。歳出とは、国が税金などで受け取ったお金を使うこと、つまり「お金を出すこと」です。総額約110兆円の予算がどのように使われているかを見ると、以下のようになっています。
| 使い道 | 金額 | 一言コメント |
|---|---|---|
| 社会保障 | 約36兆円 | 社会保険料も別途徴収しているのに税金からも投入 |
| 地方交付税(地方への補填) | 約15兆円 | 税金を徴収して地方にばらまく構図 |
| 国債費(借金返済) | 約24兆円 | 110兆円の半分以上がこの3項目に |
一方、歳入(どこからお金を持ってくるか)を見ると、以下のようになっています。
| 財源 | 金額 |
|---|---|
| 税収(所得税・法人税・消費税など) | 約65兆円 |
| 国債発行(借金) | 約37兆円 |
つまり、国民から税金を徴収し、さらに借金をして110兆円を用意し、その使い道が地方へのばらまき・借金返済・そして社会保障への上乗せというのが国の予算の実態です。
📌 ポイント
給与明細の「所得税」だけが、この65兆円の税収に含まれています。社会保険料の金額はこの65兆円には含まれていません。社会保険料は別の仕組みで管理・運用されているのです。
📝 このセクションのまとめ
- 2022年度の一般会計予算は約110兆円、税収は約65兆円・国債発行は約37兆円
- 歳出の最大項目は社会保障(約36兆円)だが、社会保険料とは別枠
- 給与明細の所得税だけが65兆円の税収に含まれ、社会保険料は別管理
社会保障費131兆円——社会保険料はどこへ行くのか
実は、先ほどの110兆円の一般会計予算とは別に、国は社会保障費として年々右肩上がりで増加しており、2022年度にはなんと131兆円を社会保障に使っています。
この131兆円の使い道は、年金・医療費・介護などです。その財源はどこかというと、私たちが天引きや自分で納付している社会保険料です。しかし131兆円には全然足りないため、先ほどの一般会計予算の歳出から社会保障費として36兆円が上乗せされている仕組みになっています。
⚠️ 注意
社会保険料を徴収しているにもかかわらず、税金からも36兆円を社会保障に追加投入しなければならないほど財源が不足しています。2つの財源がちぐはぐに組み合わさっているのが日本の現状です。
📝 このセクションのまとめ
- 社会保障費は2022年度で131兆円、毎年右肩上がりで増加
- 社会保険料だけでは足りず、一般会計から36兆円を追加投入
- 税金と社会保険料の2本立てで社会保障を支えているが、仕組みが複雑でわかりにくい
税金と社会保険料の違い——最大の問題点は「国会を通らない」こと
税金と社会保険料は、国民が国に支払って国がそれを使っていくという点でほぼ同じです。国民レベルでは「ほぼ同じもの」と捉えてよいでしょう。ただし、重大な違いが1つあります。
| 項目 | 税金 | 社会保険料 |
|---|---|---|
| 引き上げに必要な手続き | 国会審議・法律改正が必要 | 国会を通らずに引き上げ可能 |
| メディアの報道 | 騒がれる・ニュースになる | ほぼ報道されない |
| 国民の認知 | 知っている | 知らないことが多い |
| 徴収機関 | 国税庁(財務省管轄) | 日本年金機構(厚生労働省が責任) |
消費税を引き上げるときは国会審議が必要なのでメディアが大きく報道し、国民も知ることができます。一方、社会保険料は国会を通らずに引き上げることができるため、メディアも報道せず、国民が気づかないうちに上がっているのです。
⚠️ 注意
消費税が5%から10%へ5%上がったこの間に、社会保険料は11%上がっています。しかし国民はほとんど知らないため、声を上げることすらできていません。
日本では教育でお金のことをほとんど学びません。そのため、何も知らずに社会に出て、何も知らずに給料をもらい、なんとなく天引きされてなんとなく使って人生が進んでいく人が大半です。だからこそ、こうした知識を身につけて、ちゃんと意見・提案できるようにすることが重要なのです。
📝 このセクションのまとめ
- 税金は国会審議が必要で引き上げ時にニュースになるが、社会保険料は国会を通らず引き上げ可能
- 消費税が5%上がる間に、社会保険料は11%上がっていた
- 国民が知らないうちに負担が増え続けているのが現状
徴収省庁が別々なのは日本だけ——「再入庁」という議論
ここが今日の本題です。税金と社会保険料では、徴収する省庁が違います。
- 税金を徴収するのは→ 国税庁(財務省管轄。国税局・税務署もその傘下)
- 社会保険料を徴収するのは→ 日本年金機構(2009年に社会保険庁が解体されて設立。厚生労働省が責任を負うが、基本的には独立した存在)
これはグローバルな視点で見ると異例中の異例です。先進国で税金と社会保険料の徴収省庁が別々になっているのは、日本だけなのです。
シンプルに考えれば、徴収して何に割り振るかを一括で管理した方が生産性も上がるし効率的です。そこで「日本も一本化しよう」という議論が繰り返し出てきます。それが「再入庁(歳入庁)」という考え方です。
📌 ポイント:再入庁(歳入庁)とは
税金も社会保険料も一つの省庁(歳入庁)が徴収し、予算配分を一括で考えていく——という構想です。グローバルスタンダードに合わせた効率化の議論として、たびたび浮上しています。
📝 このセクションのまとめ
- 税金は国税庁(財務省管轄)、社会保険料は日本年金機構(厚生労働省が責任)が徴収
- 徴収省庁が2つに分かれているのは先進国で日本だけ
- 一本化する「歳入庁」構想は繰り返し議論されている
財務省の「あくどい思惑」——歳入庁に猛反対する理由
歳入庁の設立に猛烈に反発しているのが財務省です。なぜでしょうか。
国税庁は財務省の管轄です。財務省は国税庁、およびその下についている国税局・税務署などの人事権を持っています。国税庁長官、東京国税局長、大阪国税局長といった主要ポストの人事を決める権限があるのです。
歴史を振り返ると、これらの主要ポストには基本的に財務官僚が任命されてきました。国税庁や国税局の叩き上げ職員が長官・局長になることはほぼありません。これはまさに「天下り」の構図です。
⚠️ 注意
もし歳入庁が設立されて国税庁と日本年金機構がその傘下に入り、独立した存在になると、財務省は国税庁の人事権を失います。天下り先がなくなるため、財務省は歳入庁の設立に猛反対しているとみられています。
もちろん、財務官僚から直接「天下りのために反対している」という裏取りができているわけではありません。しかし、さまざまな事実を積み重ねて考えると、そういう構図になっているというのが合理的な推論です。
📝 このセクションのまとめ
- 財務省は国税庁の人事権を持ち、主要ポストに財務官僚を天下りさせてきた
- 歳入庁ができると財務省は人事権を失うため、設立に猛反対している
- 省庁の縦割り・天下り問題が、制度の効率化を阻んでいる
まとめ——社会保険料は税金と思っていい、そして知識を持つことが大切
最後に全体をまとめます。
📌 社会保険料は税金と同等と思っていい2つの理由
- 財源の性質が同じ:国が国民から徴収して使っていくものである点で、税金も社会保険料も本質的に同じ
- グローバルスタンダードでは一体:先進国では税金と社会保険料の徴収省庁は1つ。日本だけが別々になっており、本来は同じ枠組みで考えるべきもの
額面30万円の給与でも手取りは約23万6千円まで下がります。社会保険料は消費税の5%引き上げをはるかに超える11%も引き上げられてきましたが、国民はほとんど知りません。
「この春も社会保険料が上がっている」という事実も、知識があってこそ気づけます。そして知識があってこそ、「それは高すぎる、やる前にできることがあるのでは」と国に意見できるようになります。
日本では教育でお金のことを学ぶ機会がほとんどありません。だからこそ、各自が力をつけて知識を蓄え、ちゃんと意見・提案していく姿勢が重要です。社会保険料と税金の仕組み、国の予算構造、省庁の思惑——これらは教養として絶対に身につけておくべき知識です。
📝 全体のまとめ
- 社会保険料は国民レベルでは税金と同じと捉えてよい
- 消費税が5%上がる間に社会保険料は11%上がっていた(国会審議なしで)
- 徴収省庁が2つに分かれているのは先進国で日本だけ。歳入庁への一本化が議論されている
- 財務省は天下り維持のために歳入庁設立に猛反対しているとみられる
- 知識を持つことが、負担増に声を上げる第一歩になる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 大河内薫のマネリテ学園 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 大河内薫のマネリテ学園を応援しています!
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