個人事業主の赤字申告は税務調査で狙われる|法人との違いを税理士が解説
個人事業主の赤字申告は法人の赤字とは意味がまったく異なり、税務調査のターゲットになりやすい。その理由を数字を使って解説します。
個人事業主の赤字が「超やばい」理由とは
一般的に、個人事業主やフリーランスの方は法人と比べると税務調査に入られにくいと言われています。しかし、赤字申告が続いている場合は例外で、調査の対象となる可能性が極めて高くなります。
📌 結論:なぜ個人事業主の赤字はやばいのか
法人の利益は、自分の生活費などに関係のない純粋な事業上の利益です。一方、個人事業主の利益は自分の生活費も含めた金額です。利益が赤字であれば、「生活どうしているの?」と税務調査官は疑問を持ちます。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主は通常、法人より税務調査に入られにくい
- 赤字申告が続く場合は例外で、調査対象になりやすい
- 個人の利益は生活費を含むため、赤字だと「生活できているのか」を疑われる
数字で見る:個人事業主と法人の利益の違い
実際に数字を使って、個人事業主と法人の利益の意味の違いを見ていきましょう。
まず、個人事業主として売上が1,000万円、経費が500万円かかっている場合を考えます。差し引き利益は500万円となり、この500万円に対して所得税・住民税・事業税がかかります。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 経費(一般) | 500万円 | 500万円 |
| 役員報酬 | なし | 500万円 |
| 経費合計 | 500万円 | 1,000万円 |
| 利益 | 500万円 | 0円 |
| 法人税・所得税 | 所得税・住民税・事業税(約15〜60%) | 法人税等(約25〜32%)+役員報酬に個人課税 |
この表のポイントは、同じ売上・同じ経費構造であっても、法人は役員報酬を経費として計上できるという点です。仮に利益500万円を全額役員報酬として取ると、法人の利益はゼロになります。
ただし、法人の利益をゼロにしたからといって税金がゼロになるわけではありません。役員報酬500万円に対して所得税・住民税という個人の税金がかかりますし、さらに社会保険料の負担も発生します。個人と法人どちらが有利かは、役員報酬の設定額も含めてシミュレーションして判断する必要があります。
📌 個人と法人で「生活費の財源」が異なる
- 個人事業主の利益500万円:生活費の財源そのもの
- 法人の利益0円:法人として計上すべき利益(個人の生活費ではない)
- 役員報酬500万円:法人の場合、これが個人の生活費の財源となる
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主の利益は生活費の財源を含む
- 法人は役員報酬を経費計上でき、法人利益と個人の生活費を切り分けられる
- 個人と法人の最大の違いは「役員報酬の計上」ができるかどうか
赤字の場合:個人事業主と法人でどう見られ方が違うか
次に、数字を変えて赤字のケースを見てみましょう。売上が1,000万円に対して経費が1,200万円かかっている場合です。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 一般経費 | 1,200万円 | 700万円 |
| 役員報酬 | なし | 500万円 |
| 経費合計 | 1,200万円 | 1,200万円 |
| 利益 | ▲200万円(赤字) | ▲200万円(赤字) |
| 生活費の財源 | なし(赤字のため) | 役員報酬500万円 |
損益計算書の数字は同じ「マイナス200万円の赤字」でも、税務当局の見方はまったく異なります。
- 個人事業主の場合:「マイナス200万円で、生活は大丈夫なの?どうやって生活しているの?」と疑問を持たれる
- 法人の場合:法人自体は赤字でも、役員は年収500万円の役員報酬を受け取っているため、生活費の財源がある。疑問を持たれにくい
⚠️ 注意
個人事業主が赤字なのに生活できている場合、税務調査官は「売上の一部を除外して、その除外した売上をもとに生活しているのではないか」と疑います。この状態が数年続いていると、税務調査の対象となる可能性が高まります。
📝 このセクションのまとめ
- 赤字額が同じでも、個人事業主と法人では税務当局の見方がまったく異なる
- 個人事業主の赤字=生活費の財源がないことを意味するため、不自然に映る
- 法人の赤字=役員報酬が別途あるため、生活費の財源は確保されている
やむを得ない赤字と問題のある赤字の違い
ここで一点、重要なことをお伝えしておきます。個人事業主やフリーランスの方の中には、駆け出しであったり、経済環境の変動によって本当に赤字が出ているケースもあります。
そのような場合はやむを得ないことで、資金調達や融資を受けて何とか頑張っていくしかありません。問題となるのは、無理やり経費を計上して意図的に赤字にしている場合です。
| 赤字の種類 | 内容 | 税務リスク |
|---|---|---|
| やむを得ない赤字 | 駆け出しや経済環境の変化による本当の赤字 | 低い(説明がつく) |
| 個人貯蓄で補填 | 赤字だが個人的な貯蓄があり生活できている | 比較的低い(説明がつく) |
| 意図的な赤字 | 無理やり経費を計上して赤字にしている | 極めて高い |
「個人事業主で赤字だけれども、個人的な貯蓄があるので生活できている」という説明がつけば、まだ安心です。しかし、そのような説明ができない場合は要注意です。
⚠️ 注意:法人でも同様のリスクがある
法人だけを経営していて、法人が赤字でかつ役員報酬もほとんど取っていない場合も同様です。「どうやって生活しているの?」と問われます。売上の一部を除外して、その除外した売上をもとに生活しているのではないかと疑われてもおかしくありません。
📝 このセクションのまとめ
- 本当の事業不振による赤字はやむを得ない
- 個人貯蓄で補填している場合は説明がつく
- 意図的な経費の水増しによる赤字は税務調査リスクが極めて高い
- 法人でも赤字+役員報酬ほぼゼロの場合は同様のリスクがある
法人の利益から支払うべきもの:返済・税金・配当
法人の場合、売上から経費を引いて利益が残ると安心感がありますが、その利益から支払うべきものがたくさんあります。
- 税金:法人税・法人住民税・事業税など(約25〜30%)
- 借入金の元本返済:金利部分(支払利息・割引料)はPL上の経費に計上できるが、元本部分はBSに計上されPLには出てこない。税引き後の利益から返済しなければならない
- 配当:基本的に税引き後の利益から支払う。ただし、配当金はPL上の経費に計上できないため法人税の節税にはつながらない
特に借入金の元本返済は重要なポイントです。利益が出ていなければ返済ができないため、法人にとって利益を確保することは非常に重要です。
📌 配当に関する注意点
中小企業では役員報酬で給与を受け取る方が多いですが、社会保険料の負担がないという理由で配当を受け取る方もいます。ただし、配当金はPL上の経費に計上できないため、法人税の節税にはつながりません。ご注意ください。
📝 このセクションのまとめ
- 法人の利益からは税金・借入返済・配当を支払う必要がある
- 借入金の元本返済は税引き後利益から行うため、利益確保が重要
- 配当はPL上の経費にならないため、法人税節税にはならない
個人事業主の利益から支払うべきもの:生活費が最大の違い
個人事業主の場合も、利益から支払うべきものがあります。法人と比較すると、最大の違いが明確になります。
| 支払うべきもの | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 税金 | 所得税・住民税など | 法人税・法人住民税・事業税など |
| 借入金の返済 | あり(税引き後利益から) | あり(税引き後利益から) |
| 生活費(自分の給料) | あり(利益から賄う) | なし(役員報酬として別途計上) |
個人事業主が赤字の場合、税金はほぼかかりません。しかし、借入金の返済はどうするのか、個人の生活費はどうするのかという点が不思議に思われます。
⚠️ 税務調査のリスク
個人事業主が赤字にもかかわらず生活できている状態が数年続いている場合、売上除外をしているのではないかと疑われ、税務調査の対象となる可能性が高まります。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主の利益は税金・借入返済・生活費の全てを賄う必要がある
- 法人は役員報酬を別途計上するため、法人の利益と生活費が切り分けられる
- 赤字の個人事業主が生活できている場合、売上除外を疑われるリスクがある
よくある誤解:「赤字にすれば節税になる」は危険な考え方
動画の中では、こんなエピソードが紹介されています。「前の税理士さんから、個人はいろいろ突っ込んで赤字にしておけばいいと言われたから、領収書をいろんな人からもらってきて経費に突っ込んで赤字にした」というものです。
これは非常に危険な行為です。個人事業主が意図的に経費を水増しして赤字にすることは、税務調査で狙われる典型的なパターンです。
⚠️ 絶対にやってはいけないこと
- 他人からもらった領収書を自分の経費として計上する
- 事業と無関係な支出を経費として計上する
- 意図的に赤字を作り出して税負担をゼロにしようとする
このような行為が発覚した場合、修正申告や追徴課税の対象となります。
📝 このセクションのまとめ
- 「赤字にすれば節税になる」という考え方は危険な誤解
- 他人の領収書を経費計上するなどの行為は脱税行為にあたる
- 発覚した場合は修正申告・追徴課税のリスクがある
まとめ:個人事業主は自分の決算書を見直そう
確定申告シーズンが終わったばかりのこの時期に、個人事業主の方はご自身の決算書を見直してみてください。
📌 最後のポイント:個人と法人の利益の意味の違い
- 法人の利益:税金と借入返済の財源(個人の生活費とは切り分けられている)
- 個人事業主の利益:税金・借入返済だけでなく、生活費の財源にもなる
赤字続きの場合、業績の悪化や経済環境の変化による本当にどうしようもない赤字であればやむを得ないところです。しかし、そうでない方、特に意図的に経費を水増しして赤字にしている方は、今すぐ見直すことをおすすめします。
📝 記事全体のまとめ
- 個人事業主の赤字は、税務調査官に「生活どうしているの?」と疑われる
- 法人は役員報酬という形で生活費を確保できるため、法人の赤字とは意味が異なる
- 個人事業主の利益は税金・返済・生活費の全ての財源であるため、赤字=生活できないはず
- 意図的な経費水増しによる赤字は税務調査のターゲットになる
- 本当のやむを得ない赤字や、個人貯蓄で補填している場合は説明がつく
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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