個人事業主が年末にやりがちな勘違い節税3選を税理士が解説
年末の駆け込み節税、実は逆効果かもしれません。個人事業主が陥りがちな勘違い税金対策3選を徹底解説します。
個人事業主の税金の基本的な仕組み
もう11月に入り、2025年の年末も近づいてきました。個人事業主・フリーランスの皆さん、12月末が締めなので、そろそろ節税対策に焦っていないでしょうか。「あれを経費にしよう」「これを控除しよう」と詰め込もうとされている方も多いと思いますが、ちょっと待ってください。
他人から聞いた節税対策が、実は全く意味がなかったり、あったとしても効果がむちゃくちゃ薄かったりするものが結構あります。下手をしたら損をしているかもしれません。
そもそも個人事業主の皆さんの税金はどうやって計算するかというと、売上からその売上を得るためにかかった経費を引いて、所得(利益・儲けのこと)を算定し、税額を計算します。厳密にはこの所得から、医療費控除・配偶者控除などさまざまな控除制度を引いて税率をかけていきます。
| 税金の種類 | 最低税率 | 最高税率 |
|---|---|---|
| 所得税・住民税・事業税(合計) | 約15% | 約60% |
所得(利益)が大きければ大きいほど税負担が増えます。売上を減らすのは商売の本末転倒なので、いかに必要経費を計上していくかが節税の最大のポイントになるわけです。
📌 ポイント
節税は全てではありません。節税することによる弊害(手元資金の減少・決算書の悪化・融資審査への影響など)も多くあります。この点は記事の後半で詳しく紹介します。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主の税金は「売上-経費=所得」に税率をかけて計算する
- 所得税・住民税・事業税の合計税率は最低約15%、最高約60%
- 節税の基本は「いかに経費を計上するか」だが、やりすぎには弊害もある
【勘違い節税①】年内の駆け込み仕入れは全く意味がない
まず1つ目は年内の駆け込み仕入れです。結論から言うと、これは無意味です。全く意味ありません。むしろ経費ではなく、あなたの資産が増えるだけです。
そのからくりを見ていきましょう。何かの商売をやっておられる方は商品の仕入れを行いますが、そもそも年始の段階で去年から引き継いだ在庫があります。そして年内に仕入れたものがあります。
年末の在庫については、卸売業・小売業・飲食業などの方も、決算のときに在庫の棚卸しをしますよね。あれは何をしているかというと、残っている商品の数量と仕入れ価格を計算して、実際いくらの金額が売れずに残っているのかを算定するわけです。
📌 棚卸しの目的と「売上原価」の計算式
年内に仕入れてお金を払ったからといって、全額を経費に落とすことはできません。経費になるのは「売れた部分(売上原価)」だけです。
売上原価 = 期首在庫 + 年内仕入れ額 - 期末在庫
期末に残った在庫は「資産」として計上され、来年売れた段階で経費になります。棚卸しの最大の目的はこの売上原価を把握するためです。
これは個人事業主の方や会社経営者の初心者の方に多い誤解ですが、12月に慌てて仕入れをしたとしても、増えるのは「年内の仕入れ額」と「期末在庫」です。黄色の部分(売上原価)は、仕入れた分が売れていなければ変わりません。増えることもないのです。
例えば年末12月30日ギリギリに仕入れたものが12月31日に売れたら経費になります。しかし売れているのでその分利益も発生しますよね。節税を目的にこういったことをするのは全く意味がないと言えます。
⚠️ 注意
外注費(建築業・製造業の外注費など)も同じ考え方です。製品や現場が完成していなければ「仕掛かり工事」「仕掛かり品」として在庫と同様に扱われ、経費計上できません。アパレル事業など在庫期間が長い商品を扱う方は、大量に仕入れることで資金繰りも悪化するリスクがあります。
ただし、経営的に意味があるケースもあります。
- 来年以降に商品の仕入れ価格が上がる(価格高騰)が見込まれる場合
- 消費税課税事業者の場合(消費税の計算上は仕入れた時点で消費税の控除が可能なため、消費税の節税効果はある)
ただし商品が劣化する・生鮮品で腐るといった点には注意が必要です。節税のために駆け込み仕入れをするのは今すぐやめてください。
📝 このセクションのまとめ
- 年内に仕入れても、売れていなければ「期末在庫(資産)」になるだけで経費にならない
- 経費になるのは「売上原価(売れた分)」のみ
- 消費税課税事業者は消費税の節税効果はあるが、所得税の節税にはならない
- 価格高騰対策など経営的理由がある場合を除き、節税目的の駆け込み仕入れは無意味
【勘違い節税②】経費の前払いは原則として当期分しか落とせない
2つ目は経費の前払い(一括前払い)です。節税効果がないわけではありませんが、一時的な効果しかない上に、条件が厳しくリスクも大きいという点を理解しておく必要があります。
税務・会計の大原則として、前払いをしても経費に落ちるのは「当期に対応する部分」だけです。
📌 具体例:12月1日に保険料を年払い(年間120万円)した場合
- 今年の経費に落とせる金額:10万円(12月の1ヶ月分のみ)
- 残り110万円:来期の経費(「前払費用」として貸借対照表の資産に計上)
キャッシュアウト(お金の支払い)と帳簿上の経費計上タイミングがずれるのが会計の仕組みです。
ただし、「短期前払費用の特例」という制度を使えば、一括で全額を経費に落とせる場合があります。この特例に引っかかって「やってみよう」という方も非常に多いです。
短期前払費用の特例の適用条件は以下の3つ全てを満たす必要があります。
- 契約を年払い契約に変更していること:元々月払い契約のまま年払いをしても適用不可
- 1年以内に対応するものであること:1年を超える年払いは対象外。例えば2年分払ってもこの特例は一切適用できない
- 等質等量かつ毎期継続適用すること:サービスの内容が1年間を通じて変わらないこと、かつ毎年継続して適用すること
「等質等量」という条件が特に重要です。地代家賃や保険料のように「ずっと同じ保証を受ける」「ずっと物件を借り続ける」といったサービスであれば適用できます。
⚠️ 短期前払費用の特例が使えないケース(よくある誤解)
- 広告宣伝費:1年間でさまざまな媒体に広告を掲載するため、サービス内容が変わる
- 税理士の顧問報酬:帳簿作成がメインの月もあれば、節税対策・資金繰り相談がメインの月もあり、サービス内容が一定でない
サービス内容がバラバラで一定していないものは、この特例を使えません。
さらに「継続適用」という要件があるため、一度この前払いを選択するとずっとやり続けなければなりません。来年赤字が出たから月払いに戻す、というのは基本的にNGです。
そもそも家賃を1年分ドーンと払うのは金額が大きくて大変です。万が一大家さんが倒産してしまったら?貸し倒れてしまう可能性もあります。会社経営・事業経営においては、節税よりも資金繰りの方が大事です。この短期前払費用の特例を使うと資金繰りのリスクが増えてしまいます。
📌 消費税課税事業者へのメモ
短期前払費用の特例も、在庫の話と同様に消費税については控除できます。消費税の節税効果はありますので、消費税課税事業者の方は覚えておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 経費の前払いは原則として当期対応分しか経費にならない
- 短期前払費用の特例は「年払い契約・1年以内・等質等量・毎期継続」の全条件を満たす必要がある
- 広告宣伝費・税理士顧問料など内容が変動するものは特例の対象外
- 一度選択したら継続義務があり、資金繰りリスクも増大するため基本的にはお勧めしない
【勘違い節税③】車の駆け込み購入はキャッシュが出る割に節税効果が薄すぎる
3つ目は車の駆け込み購入です。結論から言うと、キャッシュが出ていく割に節税効果がむちゃくちゃ薄いです。オートローンを組めばお金が出ていかずに節税できるかもしれませんが、それでも効果は薄すぎます。
車だけでなく、機械・設備・パソコンなど事業で長期間使うものを購入した場合は、減価償却という処理をしなければなりません。購入金額の全額を一気に経費に落とすことはできないのです。
| 資産の種類 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 営業用車両 | 6年 |
| パソコン | 4年 |
| 木造建築の建物 | 22年 |
| RC建物 | 47年 |
長期間使うものだから、費用を期間配分しなければならないというのが原則です。
「でも節税のために4年落ちのベンツを買ったら一括で節税できると聞いた」という方もいらっしゃるかもしれません。そのからくりを解明していきましょう。
📌 減価償却の方法:定額法と定率法の違い
個人事業主の場合は原則として定額法(毎年均等額を経費計上)を使います。法人の場合は建物等の一部を除き定率法(初年度に多く計上し、その後逓減)がメインです。個人事業主も届出を出すことで定率法を選択できます。
| 条件 | 償却方法 | 償却率 | 500万円の車の初年度経費 |
|---|---|---|---|
| 新車・耐用年数6年・定額法 | 定額法 | 0.167 | 83万5,000円 |
| 新車・耐用年数6年・定率法 | 定率法 | 0.333 | 166万5,000円 |
| 4年落ち中古・耐用年数2年・定率法 | 定率法 | 1.00 | 500万円(全額) |
4年落ちの中古車が人気な理由はここにあります。新車の耐用年数6年から4年を差し引いて一定の計算式に基づくと耐用年数が2年になります。定率法で耐用年数2年の償却率はなんと1.00なので、500万円×1.00=500万円全額を1年で経費計上できるわけです。
自分が乗りたい車がある。それが500万する。4年落ちの中古で売られていた。それをオートローンを組んで買うとなると、キャッシュアウトせずに全額経費に落とせて節税ができる——とても画期的なことに思えますよね。しかし、ここには落とし穴があります。
⚠️ 年の途中で購入した場合は「月数按分」が必要
この全額償却が適用されるのは、あくまでも年始(1月)に購入した場合の話です。年の途中で購入した場合は、使っていた期間(月数)で按分しなければなりません。
例:10月・11月に利益が出たことが判明して12月に500万円の4年落ち中古車を購入した場合
500万円 × 1.00 × 1ヶ月/12ヶ月 = 41万6,000円しか今年の経費にならない
残りの約460万円は来年以降に経費計上できますが、購入した年の節税効果は非常に低くなります。
📌 消費税課税事業者へのメモ
車の購入に関しても消費税の節税効果はあります。消費税課税事業者の方は覚えておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 車・機械・パソコンなど長期使用資産は減価償却が必要で、購入年に全額経費計上できない
- 4年落ち中古車を定率法で償却すると全額経費化できるが、それは年始購入の場合の話
- 年の途中(例:12月)に購入すると月数按分され、500万円の車でも当年の経費は約41万6,000円にとどまる
- 消費税の節税効果はある
本当に使える特例:少額減価償却資産の特例と消耗品の継続処理
ここまで「やってはいけない節税」を紹介してきましたが、減価償却には実際に使える特例があります。年内に駆け込んで買うことで節税ができるものがちゃんとあるのです。それが少額減価償却資産の特例です。
| 区分 | 取得価額 | 処理方法 | 条件 |
|---|---|---|---|
| A(原則) | 10万円以上 | 法定耐用年数で減価償却 | なし |
| B(少額資産) | 10万円未満 | 全額即時経費計上 | 青色申告でなくてもOK |
| C(一括償却) | 20万円未満 | 3年間で1/3ずつ経費計上 | あまり使われない |
| D(少額減価償却資産の特例) | 30万円未満 | 全額即時経費計上 | 青色申告・年間合計300万円上限・確定申告書への記載が必要 |
特にDの「30万円未満の少額減価償却資産の特例」が重要です。青色申告をしていることが条件になりますが、本来パソコンなら4年かけて少しずつ経費化しなければならないところを、1セットが30万円未満であれば一括で経費計上できます。ただし1年間で合計300万円までという上限があります。
⚠️ 注意:償却資産税(固定資産税)の対象になる
BとCの10万円未満・20万円未満の特例は償却資産税の対象外ですが、Dの30万円未満の特例を使うと、通常の減価償却をした場合と同様に償却資産税(固定資産税)の対象となります。この点は注意が必要です。
また、確定申告書への記載も必要ですので忘れずに対応してください。事業に必要なスマートフォン(30万円未満に収まるもの)など、必要なものがあれば年内に購入してこの特例を活用するのは有効な節税策です。
もう1つ、消耗品の継続処理という技もあります。事務用品(ノート・ペン・コピー用紙・ホッチキスの針など)・作業用消耗品・清掃用品(タオル・ブラシ・清掃剤など)・広告宣伝用品(チラシ・カタログ・パンフレット・高額のティッシュ・試供品・サンプルなど)は、本来は棚卸しをして「貯蔵品」として資産計上しなければならないのが原則です。
しかし以下の要件を満たせば、購入した都度に全額消耗品費として経費計上することが認められます。
- 毎年概ね一定数量を購入していること
- 毎年経常的に消費していること
この要件を満たしていれば、棚卸しをせずに購入した都度を全額経費計上でき、節税ができます。少額減価償却資産の特例やこの消耗品の継続処理をうまく活用することで、効果的な節税が可能です。
⚠️ よくある質問:飲み代や空の領収書はどうなの?
- 飲み代:事業上の取引先などとの飲食でなければ経費性は認められません
- 空の領収書:払っていないのに払ったことにして節税するのは脱税です。絶対にやめてください。
📝 このセクションのまとめ
- 30万円未満の資産は「少額減価償却資産の特例」(青色申告・年300万上限)で全額即時経費計上できる
- 10万円未満の資産は青色申告でなくても無条件で経費計上可能
- 消耗品は毎年一定量を継続購入・消費していれば棚卸しなしで全額経費計上できる
- 事業に必要なものを購入する場合にのみ意味がある。不要なものを買うのは本末転倒
節税対策は年間を通じた月次管理が最重要
YouTubeやブログを見るといろいろな節税策が紹介されていますが、タイトルだけで判断しないようにしてください。節税するにはいろいろな要件や計算方式があり、状況によって変わるところも多くあります。
節税対策で最も大事なことは、年間を通じて継続することです。そのためには月次決算をきちんと組んでおかなければなりません。今の売上・利益がどれくらいなのか、見通しを立てておくことが重要です。特に法人化を目指している・事業拡大を目指しているという方には、このことが非常に大事になってきます。
税金が大変だと慌てるからこそ、節税にもならないお金を使うだけの策に引っかかってしまうのです。今を当てて変なことをするくらいなら、潔く今年は税金を払う。そして来年の年始から節税対策を本格化していく方が賢明です。
📌 今すぐできる来年への準備
- 現在、白色申告で節税効果が全くない方は、今のうちに青色申告の準備をしておく
- 月次で売上・利益を把握する仕組みを作る
- 年間を通じた節税計画を立てる
過度な節税がもたらす弊害:節税は手段であって目的ではない
事業の目的は利益を出すこと、事業を円滑に進めることです。節税が全てではありませんし、そもそも節税にはいろいろな弊害があります。
- 手元資金の減少:節税策のほとんどはキャッシュアウトを伴うため、手元の資金が減る。事業用の投資で将来の売上に結びつくものであれば問題ないが、無駄な投資は意味がない
- 決算書の悪化:節税して経費を使うことで決算書が悪くなり、融資審査における評価がダウンする。事業資金の調達がしにくくなったり、できても金利が高くなったりする
- 住宅ローン審査への影響:個人事業主は生活と商売が密着しているため、住宅ローンの審査も非常に不利になることがある
- 経営の不安定化:お金がないと潰れやすい事業体になる
納税は国民の義務であり、節税は立派な権利の1つです。しかし過度な節税はお勧めしません。あくまでも「利益が先、節税はその後」という考え方を大切にしてください。事業スタート時点から節税を考えるということのないように気をつけていただきたいと思います。
📝 このセクションのまとめ
- 節税はキャッシュアウトを伴うため、過度にやると手元資金が減る
- 経費を使いすぎると決算書が悪化し、融資審査・住宅ローン審査に不利になる
- 「利益が先、節税はその後」という優先順位を守ることが大切
- 節税対策は年間を通じた月次管理と計画的な取り組みが最も重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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