春の税務調査は秋より軽め?現役税理士が解説する2つの理由と事前準備
春(4〜5月)の税務調査が秋より比較的軽めな理由と、調査で必ず聞かれる8項目・事前準備のポイントを徹底解説します。
税務調査とは?強制調査と任意調査の違い
税務調査には大きく分けて強制調査と任意調査の2種類があります。強制調査とは、捜査令状を持って税務当局がやってくるもので、何らかの脱税の証拠を掴まれている可能性が高い調査です。
一方、今回の動画で取り上げるのは任意調査です。真面目に経営している事業者にとっては、定期的な経理処理のチェックと捉えていただければ問題ありません。
📌 ポイント:税務調査に入られやすいのはどんな事業者?
- 個人事業主より法人の方が事業規模が大きいため調査対象になりやすい
- 赤字の事業所より黒字の事業所の方が、無理な節税をしている可能性があるとみなされやすい
- ただし「作られた赤字」と見られる場合は赤字事業所でも調査対象になる
税務調査でチェックされる税金の種類
税務調査でチェックされる税金は、基本的に国税に限られます。地方税(住民税・事業税など)は基本的に単独で調査されることはほとんどありません。ただし、国税の修正があればそれに連動して修正がなされます。
| 事業者の種類 | 主にチェックされる税目 |
|---|---|
| 法人(会社) | 法人税・地方法人税(メイン)、消費税、源泉所得税、印紙税 |
| 個人事業主・フリーランス・個人大家 | 所得税(メイン)、消費税、源泉所得税、印紙税 |
⚠️ 注意
住民税・事業税は国税の調査対象外ですが、国税の修正申告があれば自動的に連動して修正されます。「住民税は見られないから適当でいい」という考えは絶対にNGです。
📝 このセクションのまとめ
- 税務調査は基本的に「任意調査」で、定期的な経理チェックと捉えてよい
- チェックされるのは国税(法人税・所得税・消費税・源泉所得税・印紙税)
- 住民税・事業税は単独調査はほぼないが、国税修正に連動して修正される
税務調査で必ず聞かれること8項目
税務調査で聞かれることは、業種によって多少の違いはありますが、ほぼパターン化されています。以下の8項目を押さえておけば、漠然とした不安はなくなるはずです。
- 事業内容:商品の受注から納品までの期間、請求・代金回収の流れなど、どんなビジネスをしているかのヒアリング(社長へのインタビュー形式で実施)
- 売上計上のタイミングと在庫の計算根拠:仕入れた商品のうち売れたもの・売れ残ったものと売上の対応関係。決算日前後(例:3月決算なら3〜4月)の売上・仕入れの対応関係を入念にチェックされる
- 仕入れ先との年間取引金額・社名・住所:反面調査のための情報収集。取引先がその売上をきちんと計上しているかを後日確認するために使われる
- 社長の趣味・飲食代の内容・車の使用状況:仕事とプライベートの境界線のチェック。例えば趣味がゴルフの社長の接待交際費にゴルフ代が多く計上されていれば「誰と行ったのか」と深掘りされる
- 家族従業員・親族役員が本当に働いているかどうか:実態のない役員報酬や給与は全額否認される可能性がある。経営関与の証拠の保存や出勤簿の備え付けが必須
- 外注費・支払手数料・謎のコンサル料の内容:金額が大きいものについては、契約内容・役務提供の実態・成果物の有無まで説明できるようにしておく
- 修繕費の内容:現状回復なら修繕費として経費計上できるが、価値を高める改良工事は資産計上して減価償却が必要。多額の修繕費は重点チェックされる(特に不動産オーナーは要注意)
- 契約書のチェック:収入印紙が正しい金額で貼られているかどうかの確認
📌 在庫を持たない業種(SE・建築業など)への注意点
SE業や建築業などでは「仕掛工事」「仕掛品」という概念があります。案件が完成・納品していない段階でかかった原価(仕入れ・外注費など)は経費に落とせず、在庫と同様の扱いになります。この点は最も狙われるポイントの一つです。
税務調査の終わり方:修正申告・更正・申告是認の違い
税務調査は、基本的に以下の3つのいずれかで終わります。
| 終わり方 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| 修正申告 | 経費性のない処理などを指摘され、納税者が合意の上で修正。不足税額+延滞税・過少申告加算税を納付 | 最も多い |
| 申告是認 | 全ての処理が正しく、無傷で調査が終わる。「更正・決定すべきと認められない旨の通知書」が届く | 割合は少ないが存在する |
| 更正 | 完全に揉めた場合に税務当局が強制的に修正。金額が大きい案件でないと行われない | 滅多にない |
| 決定 | 無申告の場合に更正と同様の手続きが行われる | 滅多にない |
見解の相違がある場合は交渉・やり取りを経て、修正申告か申告是認のいずれかに落ち着くケースがほとんどです。申告是認で終わった場合に届く通知書は、経営者にとって立派な勲章の一つとも言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 調査の終わり方は「修正申告」「申告是認」「更正」「決定」の4種類
- 最も多いのは修正申告。不足税額+延滞税・過少申告加算税が発生する
- 申告是認(無傷で終了)も割合は少ないが存在し、通知書が届く
春の税務調査が秋より気楽な2つの理由
税務調査のシーズンは秋(9〜10月)と春(4〜5月)の2回あります。このうち春の調査は、秋の調査と比べて比較的軽めな調査が多いと言われています。その理由は2つあります。
理由①:調査にかける時間が少ない(締め日は6月末)
実は、税務調査の年度の使命(締め日)は3月末や12月末ではなく、6月末です。つまり、4〜5月に行われる税務調査は、6月末までに調査を完了させなければならないため、時間的な余裕を持って検討することがなかなか難しい状況にあります。
特に5月の調査は残り2ヶ月弱しかなく、調査官の事務的作業時間も精神的な余裕も少なくなっています。また、最近は税務当局も人手不足が深刻で、現場に新人の調査官が2人で来るケースも増えてきています。
📌 秋の調査との時間的余裕の比較
秋(9〜10月)スタートの調査は、年末ごろまでに肩をつければよく、3〜4ヶ月の余裕があります。なお、年が明けた2〜3月は個人の確定申告シーズンのため、調査官も遠慮して調査は行われないのが一般的です。秋の調査では調査官が全力で挑んでくる可能性があり、春の調査との重みが異なります。
理由②:調査官の件数ノルマ消化のための調査が多い
税務調査官には通帳税額のノルマや経費額のノルマは存在しないとされています。その代わり、件数ノルマがあります。
調査官は毎年7月1〜10日ごろに異動し、そこから翌年6月末までの約1年間で20〜30件の実地調査をこなさなければなりません。これはかなりハードルが高いノルマで、件数を消化するために「ちょっと小さい会社にも入ってみよう」「あまり問題がなさそうな会社にも入ってみよう」ということが起こり得るそうです。
つまり、春の調査には件数ノルマ消化のための調査が含まれている可能性が高く、これが「気楽な調査が多い」理由の一つとなっています。
⚠️ 注意:春の調査でも油断は禁物
春の調査が気楽とはいえ、金額の大きな案件は甘くありません。6月末の締め日を過ぎた後も、担当者が交代して時間的余裕を持って再び調査に挑んでくる場合があります。「春だから大丈夫」と油断せず、調査に入られた理由をきちんと確認することが重要です。
【コラム】書面添付制度を活用すると調査が省略されることも
税理士法第33条に基づく書面添付制度という仕組みがあります。顧問税理士が担当会社の帳簿をチェックし、経理処理に問題がないことを確認した内容を書面にまとめて申告書に添付することで、場合によっては税務調査が省略されることがあります。
書面添付をしている会社が税務調査の対象になった場合、まず最初に顧問税理士が税務当局へ出向いて意見聴取(書面に書かれた内容の説明)を行います。その結果、調査に入るほどではないと判断されれば調査省略となります。この意見聴取も件数ノルマの1件にカウントされます。
⚠️ 注意
形だけの書面添付には何の効力もありません。適正に内容を記載しなければ意味がないため、経理処理に自信がある会社が活用を検討する制度です。事務所によってはオプション費用がかかる場合もあります。
📝 このセクションのまとめ
- 春の調査が軽めな理由①:締め日が6月末のため時間的余裕がない
- 春の調査が軽めな理由②:調査官の件数ノルマ(年間20〜30件)消化のための調査が多い
- 書面添付制度を活用すると調査省略になる場合もある
- 金額が大きい案件は春でも甘くないため油断禁物
税務調査に入られやすい会社の5つの特徴
税務調査に入られるには何らかの理由があります。国税庁はKSKシステム(国税総合管理システム)という巨大なコンピューターを保有しており、同業種・同規模の事業所データと比較して異常な動きがある場合にデータが弾き出される仕組みになっています。そこから人的なチェックが加わり、調査対象が絞り込まれます。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| ①売上が急拡大した・利益率の変動が激しい | 売上が20%増えているのに経費が50%増えているなど、異常な動きがあるとKSKシステムで弾き出される。増収減益のケースは特に注意 |
| ②業績好調で繰越欠損金を使い切った | 法人税の赤字は最長10年間繰り越せる。過去の赤字を使い切った、または10年が経過して失効したタイミングで調査に入られるパターンが非常に多い |
| ③長年調査が来ていない(長期未接触) | 10年・20年調査が入っていない業績好調な事業所は、今後調査対象になりやすい。①〜⑤の他の理由に該当しない場合、この長期未接触が原因であることが多い |
| ④脱税の形跡がある | 売上を除外して社長個人口座に入れている、架空の人件費・仕入れを計上しているなど |
| ⑤その他(垂れ込みなど) | 悪質な行為について第三者から通報があった場合なども調査対象になり得る |
📝 このセクションのまとめ
- KSKシステムで同業種・同規模と比較し、異常な動きがある事業所が弾き出される
- 繰越欠損金の使い切り・失効のタイミングは特に狙われやすい
- 長期未接触(10年・20年調査なし)も調査対象になりやすい要因
税務調査の事前準備:日程・書類・担当者の設定
税務調査の連絡が来た際の事前準備について、3つのポイントに分けて解説します。
①調査の日程は慎重に検討する
顧問税理士がいる場合は基本的に顧問税理士のもとに連絡が来ます。顧問税理士がいない場合は事業所に直接連絡が来ます。「いついつ調査をしたい」と日程の打診がありますが、その日程に必ずしも従う必要はありません。
書類の確認など事前準備の時間が必要なため、1ヶ月後程度の日時設定をお勧めします。また、調査が2〜3日と言われた場合でも、スムーズに進めば「1日で終わらせてもらえませんか」「2日目は半日でなんとかなりませんか」と交渉してみることも可能です。日程は税務当局・顧問税理士・事業所の3者の都合を合わせて設定します。
②帳簿・書類のチェック
税務調査の対象期間は基本的に直近3期間です(脱税などがある場合は5年・7年、さらにそれ以上に伸びることもあります)。この3期間分の書類を事前に確認・準備しておきましょう。
- 総勘定元帳・仕訳帳・補助簿などの帳簿書類
- 領収書綴り
- 給与関係書類(賃金台帳・源泉徴収簿・年末調整の関係書類)
- 在庫表(決算時の準備資料)
- 株主総会議事録
- 消費税の計算根拠
⚠️ 書類は捨てないこと・電子保存の注意点
事業に関する書類は絶対に捨ててはいけません。電子帳簿保存法に対応した保存(画像の解像度・改ざんできないシステムなど要件あり)ができている場合は紙不要ですが、対応に自信がない場合は紙でプリントアウトして保管することをお勧めします。また、今年から基本義務化された電子取引データの保存については、要件に沿って保存されていれば紙のプリントアウトは不要です。
③調査を受ける場所と担当者の設定
調査を受ける場所は基本的に事業所ですが、事業所が狭い・打ち合わせで使用するなど都合が悪い場合は、会計事務所のオフィスで調査を受けることも可能です(書類の運搬は必要)。
立ち会いの担当者については、顧問税理士がいる場合は会計事務所の担当者・税理士が中心となって対応します。社長は最初(会社概要の説明)と最後(調査結果のまとめ)に参加すれば基本的に問題ありません。1日中立ち会う必要はありません。
顧問税理士がいない場合は、社長または経理担当者が1日中対応することになります。また、調査が入ることは社員にも事前に周知しておくことをお勧めします。
📌 その他の事前確認事項
- 付箋が貼ったままになっている書類がないか確認する(怪しまれる原因になる)
- 個人的なもの・余計なものが事業所に置いていないか確認する
- 場合によっては社長個人の通帳も提示を求められることがある(脱税の抜け道として個人口座が使われるケースが多いため)
📝 このセクションのまとめ
- 調査日程は1ヶ月後程度で設定し、事前準備の時間を確保する
- 対象は基本3期間。帳簿・領収書・給与書類・在庫表などを準備する
- 書類は捨てずに保管。電子保存の要件に自信がなければ紙でプリントアウト
- 顧問税理士がいる場合、社長の立ち会いは最初と最後だけでOK
- 個人口座の通帳提示を求められる場合もある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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