特定口座・源泉徴収ありでも確定申告すべきケース3選を税理士が解説
特定口座・源泉徴収ありを選んでいても、確定申告することで税金が戻ってくるケースが3つあります。
株式投資の税金の基本:なぜ確定申告しなくていいのか
株式投資を始めるときは証券会社で口座を開設します。今であればネット証券を使うのが手数料・費用的にもおすすめです。口座を開設しただけで株式投資を一切していなければ税金はかかりません。
株式投資で税金がかかるのは、以下の2つの場合です。
- 配当金を受け取った場合(配当所得)
- 株式を売却して利益(売却益)が出た場合(譲渡所得)
会社員の方は所得20万円超で確定申告が原則必須というルールがあります。ただしこれは所得税だけのルールで、住民税には20万円という縛りがありません。住民税も含めると、株式投資で1円でも利益が出たら原則として確定申告が必要ということになります。
📌 口座の種類と確定申告の関係
| 口座の種類 | 税金の計算 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 一般口座 | 自分で行う | 必須 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が計算 | 自分で申告が必要 |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が計算・徴収 | 原則不要 |
| NISA口座 | 非課税 | 申告不要 |
ほとんどの方が特定口座・源泉徴収ありを選択しているのが現状です。NISAは金額の制限はあるものの完全に非課税なので申告不要です。
📝 このセクションのまとめ
- 株式投資の税金は「配当所得」と「譲渡所得」の2種類
- 特定口座・源泉徴収ありなら原則として確定申告不要
- NISAは完全非課税で申告不要
総合課税と申告分離課税:課税方式の違いを理解しよう
株式投資の税金には「総合課税」と「分離課税」という2つの課税方式があります。
| 課税方式 | 内容 | 税率 |
|---|---|---|
| 総合課税 | 給与・配当など全ての所得を合算して税率を適用 | 5%〜45%(所得に応じて変動)+住民税10% |
| 申告分離課税 | 給与と分けて株式投資の損益だけで計算 | 所得税15.315%+住民税5%=合計約20.315% |
| 申告不要 | 証券会社が源泉徴収で完結 | 所得税15.315%+住民税5%=合計約20.315% |
株式投資の収益は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」に分かれます。不動産でいえば家賃収入と売却益の関係と同じです。
- インカムゲイン(配当所得):申告不要・申告分離・総合課税の3パターンから選択可能
- キャピタルゲイン(譲渡所得):申告不要・申告分離の2パターンから選択可能
📌 申告不要(特定口座・源泉徴収あり)の主なメリット
- 確定申告の手間がかからない
- 所得にカウントされない(扶養控除の判定に影響しない)
- いくら稼いでも約20%の税負担で済む
- 国民健康保険料の計算に影響しない
- 住宅ローン控除の所得3,000万円ラインにカウントされない
ただし、令和5年度税制改正で所得3億3,000万円超の方には追加課税が行われる場合があります。ほとんどの方には該当しませんが、念のごご注意ください。
申告不要を選んでいると、これからご紹介する配当控除・外国税額控除などの特典は一切受けられません。有利・不利を天秤にかけて検討することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 課税方式は「総合課税」「申告分離課税」「申告不要」の3種類
- 申告不要は手間がなく所得にカウントされないメリットがある
- ざっくり言うと給与所得900万円超の方は申告不要が特におすすめ
【ケース1】複数口座の損益通算と繰越控除
複数の証券口座を持っている方向けのお話です。片方の口座で売却損が出ていて、もう片方の口座で配当金収入や売却益がある場合、同じ口座内であれば証券会社が自動的に計算してくれます。しかし別々の口座にまたがっている場合は、そのまま放置すると損のある口座の損失が活用されず、利益のある口座の税金だけ取られっぱなしになってしまいます。
こういった場合は確定申告することでお得になります。確定申告が必須で、かつ申告分離課税を選択する必要があります。
📌 損益通算の具体例
| A口座 | B口座 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 損益 | 株の損切り:▲300万円 | 配当金:+100万円 | ▲200万円 |
| 申告しない場合 | 損失は活用されない | 約20万円の税金が源泉徴収されたまま | 20万円の税金を払い損 |
| 申告した場合 | 損益通算で配当金100万円と損失300万円を相殺→所得0円 | 20万円が全額還付 | |
株式投資で損が出ていても、落ち込まずにこの制度を活用しましょう。
申告分離課税を選ぶことで、配当金と株の売却損益が「同じ仲間」として扱われ、損益の通算が可能になります。税率は申告不要の場合と同じく所得税15.315%・住民税5%です。
【ケース1続き】赤字の繰越控除で未来の節税も可能
先ほどの例でいうと、損益通算後にまだ200万円の赤字が残っています。この赤字、なんと最長3年間繰り越すことができます。
📌 繰越控除の活用イメージ
- 今年:株式投資で300万円の損失発生(確定申告して損失を繰り越す)
- 来年:株式投資で200万円の利益発生
- 今年の赤字200万円と来年の黒字200万円を相殺→来年の所得ゼロ
つまり、未来の節税ができるということです。
⚠️ 注意
確定申告をせずに赤字を放置すると、この繰越控除は一切できません。赤字が出た年はもちろん、繰り越した損失を使って節税する年も、どちらも確定申告が必要です。相場の変動が激しい時期こそ、赤字が出たらとりあえず確定申告しておきましょう。
確定申告に必要な書類(株式関連)は以下の通りです。
- 証券会社から発行される特定口座年間取引報告書
- 会社の源泉徴収票
- 確定申告書(第一表・第二表・第三表)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 確定申告書付表「株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」
⚠️ 注意:扶養・国民健康保険料への影響
確定申告で申告分離課税を選ぶと、その所得が扶養控除や国民健康保険料の計算に影響します。申告不要にしていれば影響がなかったものが、申告することでカウントされてしまうという点だけはご注意ください。
📝 このセクションのまとめ
- 複数口座で損益がバラバラの場合、確定申告で損益通算できる
- 赤字は最長3年間繰り越しが可能で、未来の節税に活用できる
- 繰越控除を使うには赤字が出た年も確定申告が必要
- 申告分離課税を選ぶと扶養・国保料に影響が出る点に注意
【ケース2】配当控除:課税所得900万円以下の方は必見
配当控除とは、配当所得(配当金)に対して最大10%を所得税から控除してもらえる制度です。住民税でも控除はありますが、率は低くなります。
⚠️ 配当控除の対象外となるもの
- 外国株式(米国株など)の配当
- J-REIT(不動産投資信託)の分配金
これらは配当控除の対象外です。国内の通常の株式・投資信託の配当金が対象となります。
配当控除を受けるには、確定申告をして総合課税を選びます。申告分離課税(損益通算・繰越控除)とは選択が異なるため、両者を同時に使うことはできません。
総合課税を選ぶと税率が変わります。所得税は所得に応じて5%〜45%、住民税は10%(固定)となります。申告分離課税の住民税5%と比べると、住民税は倍になります。
所得税の税率は「超過累進税率」という仕組みで、所得全体にひとつの税率がかかるのではなく、階層ごとに分けて計算します。
| 課税所得の範囲 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
📌 配当控除の具体例:配当金50万円の場合
| 申告不要の場合 | 配当控除(総合課税)の場合 (課税所得330万円以下) | |
|---|---|---|
| 所得税 | 7万6,575円(15.315%) | 配当控除10%引きで実質0% |
| 住民税 | 2万5,000円(5%) | 10%(ただし後述の方法で5%にできる) |
| 合計 | 約10万円 | 大幅に軽減される |
課税所得が低い方ほど配当控除の恩恵が大きくなります。
課税所得900万円以下の方の場合、配当控除後の実質税率は以下のようになります。
| 課税所得 | 所得税率 | 配当控除10%引き後の実質所得税率 |
|---|---|---|
| 330万円以下 | 10% | 0% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 10% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 13% |
ただし住民税の配当控除率は2.8%にとどまるため、住民税は実質7.2%かかります。課税所得900万円以下の方の場合、所得税13%+住民税7.2%=合計約20.2%となり、申告不要の約20.315%よりわずかにお得という水準です。
住民税を申告不要にして配当控除の恩恵を最大化する技(令和5年分まで)
配当控除で所得税を下げながら、住民税は申告不要のまま(5%)にする方法があります。具体的には、所得税の確定申告では総合課税を選び、住民税については申告不要のままにするという、税金の種類によって申告方法を分けるテクニックです。
手続きは確定申告書の第二表の下部にある「住民税・事業税に関する事項」の欄を使います。
- 確定申告書の第二表を開く
- 「住民税・事業税に関する事項」の欄を探す
- 「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の欄に丸をつける
この手続きをするだけで、住民税は申告不要(5%)のまま維持できます。国民健康保険料は住民税の計算がベースになるため、住民税を申告不要にしておくと保険料への影響もありません。
⚠️ 重要:この方法は令和5年分(今回)の確定申告で終了
所得税と住民税の申告方法を別々に選択できる制度は、令和5年分の確定申告をもって終了となります。今年の申告が最後のチャンスですので、該当する方はぜひ活用してください。
📝 このセクションのまとめ
- 配当控除は国内株式・投資信託の配当金に対して最大10%を所得税から控除できる
- 確定申告で総合課税を選ぶ必要がある(申告分離との併用不可)
- 課税所得900万円以下の方に特に有利
- 住民税を申告不要にする技は令和5年分が最後
【ケース3】外国税額控除:米国株投資をしている方限定
米国株(外国株)に投資している方の特定口座年間取引報告書をよく見ると、「外国所得税の額」という項目が記載されています。例えば、配当金14万2,918円に対して、日本の所得税1万9,661円・住民税6,414円に加え、外国所得税1万4,476円も引かれているといった具合です。
税率に換算すると、こうなります。
| 国内株の配当 | 米国株の配当 | |
|---|---|---|
| 課税の仕組み | 日本の税金のみ | 米国で10%源泉徴収後、残額に日本の税金 |
| 実質税負担率 | 約20.315% | 約28% |
この二重課税の問題を解消するのが外国税額控除です。確定申告することで、外国で納めた税金を日本の税金から差し引いてもらえる場合があります。
📌 外国税額控除の対象は「配当金」のみ
米国株の売却益(キャピタルゲイン)については、日米租税条約が適用されるため、アメリカの税金はかかりません。通常通り日本の税金だけで済みます。外国税額控除を検討するのは米国株の配当金だけです。
外国税額控除には控除限度額があります。計算式は以下の通りです。
📌 外国税額控除の限度額の計算式
控除限度額 = 所得税額 × (国外所得(配当金) ÷ 所得総額)
つまり、皆さんが納めた所得税のうち、国外で稼いだ所得(配当金)の割合分までしか控除を受けられません。限度額を使い切れなかった分は3年間繰り越しが可能です。
確定申告で外国税額控除を受けるには、総合課税または申告分離課税のいずれかを選択します。必要な書類として、第一表・第二表に加え「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」を準備してください。
⚠️ NISAで米国株投資をしている方への重要な注意点
NISAは国内の所得税・住民税が非課税になる制度ですが、米国で徴収される外国税(約10%)は非課税になりません。さらに、NISAで保有する資産については外国税額控除も受けることができません。NISA口座で米国株の配当を受け取る場合は、この点を理解した上で投資判断をしてください。
申告が完了すると、確定申告書第一表の「外国税額控除」欄に金額が記入される形になります。外国税額控除を受けると総合課税または申告分離課税を選ぶことになるため、扶養控除・国民健康保険料への影響がある点も覚えておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 米国株の配当は現地10%+日本約20%で実質約28%の税負担になる
- 外国税額控除を使えば二重課税を解消できる場合がある
- 外国税額控除の対象は配当金のみ(売却益は日米租税条約で日本の税金だけ)
- NISA口座では外国税は非課税にならず、外国税額控除も受けられない
3つのケースの総まとめ:あなたはどれに該当する?
特定口座・源泉徴収ありを選んでいても、確定申告した方がよい3つのケースを整理します。
| ケース | 該当する方 | 選ぶ課税方式 | 主なメリット |
|---|---|---|---|
| ①損益通算・繰越控除 | 複数口座で損益がバラバラな方・赤字が出た方 | 申告分離課税 | 税金の還付・未来3年間の節税 |
| ②配当控除 | 国内株・投資信託の配当金がある方(課税所得900万円以下) | 総合課税 | 最大10%の所得税控除 |
| ③外国税額控除 | 米国株など外国株の配当金がある方 | 総合課税または申告分離 | 二重課税の解消 |
📌 費用対効果を考えることが大切
確定申告は手間がかかります。頑張って申告したけれど所得税の還付が100円しか受けられなかったという場合、本当に申告すべきかどうか考える必要があります。税金が戻ってくるかどうかだけでなく、費用対効果を意識して判断しましょう。
まずは証券会社から届く特定口座年間取引報告書を確認し、上記の3つのケースに該当していないかチェックしてみてください。
📝 最終まとめ
- 特定口座・源泉徴収ありでも、3つのケースでは確定申告が有利になる
- ①損益通算・繰越控除:複数口座の赤字を活用して還付・未来の節税
- ②配当控除:課税所得900万円以下なら所得税を最大10%控除
- ③外国税額控除:米国株配当の二重課税を解消(NISAは対象外)
- 申告すると扶養・国保料への影響が出る点は常に注意が必要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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