株式譲渡損失の確定申告で国保・扶養に影響?税理士が解説する損得判断の基本

株式譲渡損失の確定申告で国保・扶養に影響?税理士が解説する損得判断の基本
e_zeirishi

株式譲渡損失の確定申告は「損得を慎重に判断」することが大切です。損益通算や繰越控除で税金を取り戻そうとすると、国民健康保険料の増加や扶養親族からの除外につながるリスクがあります。

特定口座の種類と確定申告の関係

株式投資をしている方の大半は、証券会社で特定口座を開設されているのではないでしょうか。特定口座とは、証券会社が1年間の売買損益を計算して年間取引報告書を作成してくれるため、確定申告の手間を大幅に省けるしくみです。

特定口座には大きく2種類あります。

口座の種類税金の納め方確定申告
源泉徴収あり特定口座証券会社が所得税・住民税を源泉徴収して納税原則不要(申告不要制度)
源泉徴収なし特定口座自分で計算・納税必要(分離課税で申告)

大半の方は手間が省ける源泉徴収ありの特定口座を利用しています。ところが、源泉徴収なしの特定口座が有利になる人もいます。それが会社員や年金受給者です。

  • 会社員:給与所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告不要(課税なし)
  • 年金受給者:年金収入が400万円以下で、その他の所得が20万円以下であれば確定申告不要

少しだけ株式投資をしていて、特段大きなキャピタルゲインを狙っているわけでもない、という方は、源泉徴収なしの特定口座で取引して確定申告をしないのが得策です。

📝 このセクションのまとめ

  • 特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類がある
  • 会社員・年金受給者は一定条件下で確定申告不要になる
  • 取引が少なく利益も小さい場合は確定申告しないほうが得策なケースも

株式譲渡所得の課税方式:申告不要と分離課税

株式譲渡所得の課税方式は、申告不要分離課税のいずれかを適用します。それぞれのしくみは次のとおりです。

課税方式内容税率(所得税+住民税)確定申告
申告不要証券会社が源泉徴収して完了。源泉徴収あり特定口座のみ選択可所得税15.315%+住民税5%不要
分離課税他の所得(給与・事業・雑所得等)と合算せず、譲渡所得単独で税計算所得税15.315%+住民税5%必要

源泉徴収なしの特定口座は、分離課税で確定申告する一択です。一方、源泉徴収ありの特定口座は、申告不要にするか分離課税で確定申告するかを選択できます。

申告不要にできるのにわざわざ確定申告を選択する理由は、他の口座との損益通算譲渡損失の繰越控除を行うためです。

📌 ポイント

申告不要にできる源泉徴収あり特定口座でも、損益通算や繰越控除のために確定申告を選択することができます。ただし、確定申告をすると合計所得金額・総所得金額等に影響が出る点に注意が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 課税方式は「申告不要」と「分離課税」の2種類
  • 源泉徴収なし特定口座は分離課税での申告が必須
  • 源泉徴収あり特定口座は損益通算・繰越控除のために申告を選択することができる

令和5年からの改正:所得税と住民税の課税方式の一致

令和4年までは、所得税で確定申告をしても住民税は申告不要を選択することができました。住民税がベースとなる国民健康保険料等への影響を避けることが可能だったのです。

ところが、令和5年からは所得税と住民税の課税方式を一致させるという改正が行われました。所得税で確定申告をしたら、住民税も確定申告したものとして扱われます。

⚠️ 注意

令和5年以降は、所得税で確定申告をすると住民税も同じ課税方式が適用されます。以前のように「所得税は申告、住民税は申告不要」という使い分けはできなくなりました。確定申告をすれば、国民健康保険料や扶養判定にも自動的に影響します。

📝 このセクションのまとめ

  • 令和4年まで:所得税は申告、住民税は申告不要という選択が可能だった
  • 令和5年から:所得税と住民税の課税方式を一致させる改正が実施
  • 確定申告をすると国保料・扶養判定への影響を避けられなくなった

合計所得金額と総所得金額等の違い

確定申告の影響を理解するうえで、合計所得金額総所得金額等の違いを押さえておくことが非常に重要です。株式の譲渡損失の繰越控除と密接に関係しています。

用語内容繰越控除との関係
合計所得金額給与所得・事業所得・譲渡所得など各種所得を合計した金額。株式の譲渡損失と譲渡利益を損益通算した後の金額繰越控除を適用するの金額
総所得金額等合計所得金額から、翌年以降に繰り越した譲渡損失を控除した後の金額繰越控除を適用したの金額

これらの金額がどのような場面で使われるかを整理すると、次のようになります。

使われる場面基準となる所得金額
扶養控除・配偶者控除等の人的控除の判定合計所得金額
住宅借入金等特別控除の適用対象者の所得基準合計所得金額
住民税非課税世帯の判定合計所得金額
医療費控除の足切り額の計算総所得金額等
寄附金控除の上限額の計算総所得金額等
国民健康保険料の計算総所得金額等
後期高齢者医療保険料の計算総所得金額等

📌 ポイント

株式投資でいくら儲かっても、確定申告をせず源泉徴収だけで完了させておけば、合計所得金額にも総所得金額等にも影響しません。扶養に入り続けられますし、国民健康保険料も安く抑えられます。住民税非課税世帯として各種給付金や支援を受けられる可能性もあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 合計所得金額=損益通算後・繰越控除前の金額(扶養判定・住民税非課税世帯の基準)
  • 総所得金額等=繰越控除後の金額(国民健康保険料・医療費控除の基準)
  • 源泉徴収のみで完了させれば、どちらの金額にも影響しない

損益通算の仕組みと確定申告が必要なケース

ここからは、源泉徴収あり特定口座を前提として、損益通算の具体的なしくみを見ていきます。

同一の特定口座内であれば、譲渡損失と譲渡利益は自動的に相殺され、源泉徴収された税金も精算してくれます。特段のアクションは不要です。

確定申告が必要になるのは、複数の特定口座を持っている方です。例えば2つの特定口座を持っていて、片方は譲渡損失、もう片方は譲渡利益が出ている場合、両者を相殺して源泉徴収された税金の還付を受けるには確定申告が必要です。

この場合、次の2つのパターンが考えられます。

パターン損益通算後の結果所得への影響
譲渡利益>譲渡損失譲渡利益の一部が残る残った利益が合計所得金額・総所得金額等に算入される。扶養判定や国保料に影響する可能性あり
譲渡損失>譲渡利益譲渡利益はゼロになり、損失の一部が残る源泉徴収税額は全額還付。所得も出ないため影響なし。残った損失は翌年以降3年間繰り越せる

📝 このセクションのまとめ

  • 同一口座内の損益通算は自動処理されるため確定申告不要
  • 複数口座をまたいだ損益通算は確定申告が必要
  • 損失が利益を上回る場合は所得への影響がなく、残った損失は3年間繰り越せる

譲渡損失の繰越控除で注意すべき落とし穴

損益通算しても相殺しきれなかった譲渡損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越し、その間の譲渡利益と相殺することができます。これが譲渡損失の繰越控除です。

ここで非常に重要な注意点があります。繰越控除を実行する年(利益と相殺する年)の取り扱いは、損失が発生した年とは異なります。

具体的には次のとおりです。

  • 合計所得金額:繰越控除を適用するの譲渡利益の全額が算入される(扶養判定に影響)
  • 総所得金額等:繰越控除を適用したの残額が算入される(国民健康保険料に影響)

⚠️ 注意

繰越控除を実行する年は、損失が発生した年と異なり、繰越控除前の譲渡利益が合計所得金額に含まれます。つまり、扶養親族の判定基準となる合計所得金額が増えてしまい、扶養から外れてしまう可能性があります。国民健康保険料については繰越控除後の金額(総所得金額等)が基準となりますが、利益が残れば保険料が上がります。

また、繰越控除には重要な選択肢があります。譲渡損失を繰り越したからといって、必ず繰越控除を実行しなければならないという決まりはありません。繰り越しても繰越控除を実行しないという選択肢もあります。

📌 ポイント

譲渡損失が出たからといって、焦って税金を取り戻そうと確定申告する前に、確定申告をした場合の影響(扶養外れ・国保料増加など)を落ち着いて点検することが大切です。人それぞれの事情によって、確定申告をしないほうが得策なケースもあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 繰越控除を実行する年は、控除前の譲渡利益が合計所得金額に算入され、扶養判定に影響する
  • 繰越控除後の残額が総所得金額等に算入され、国民健康保険料の計算に影響する
  • 繰り越した損失を必ず控除しなければならない決まりはなく、実行しない選択肢もある
  • 確定申告の前に、扶養・国保への影響を必ず確認することが重要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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