株取引の確定申告で所得がアップ?知らないと大損する仕組みと弊害を税理士が解説

株取引の確定申告で所得がアップ?知らないと大損する仕組みと弊害を税理士が解説
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株取引の確定申告が逆効果になる仕組みと弊害を徹底解説します。

特定口座(源泉徴収あり)の利益は「所得として表に出ない」

株取引をしている人の大半は、源泉徴収ありの特定口座を開設されているのではないでしょうか。源泉徴収ありの特定口座では、証券会社が20.315%の税率で所得税・住民税を源泉徴収して納めてくれるため、それで課税は終了します。

課税はされているわけですから、所得は確かに発生しています。しかし、源泉徴収ありの特定口座の利益は、公の書類上は所得として出てこないのです。所得証明にも載ってきませんし、何の所得制限にも影響しません。

ですから、いくら儲けても以下のものに一切影響しません。

  • 補助金・支援金の給付
  • 国民健康保険料
  • 介護保険料
  • 住民税非課税世帯の判定

これに加えて、NISA口座の利益は税金も取られない非課税ですから、特定口座で設けていれば何にも問題はありません。

📌 ポイント

源泉徴収ありの特定口座の利益は、確定申告をしない限り「所得として表に出ない」ため、各種所得制限に影響しません。しかし確定申告をした瞬間に、その利益が公に表面化します。

📝 このセクションのまとめ

  • 源泉徴収ありの特定口座は証券会社が20.315%を源泉徴収して課税終了
  • 利益は所得証明に載らず、所得制限にも影響しない
  • 確定申告をすると、それまで隠れていた所得が表面化する

確定申告の3パターンと「所得金額」の関係

株取引で確定申告をする場面は主に3パターンあります。また、各種制度の所得制限の基準となる「所得金額」には3種類があります。まずその関係を整理しましょう。

確定申告のパターン主な目的
損益通算株の損失と配当・他の利益を相殺して税負担を減らす
譲渡損失の繰越控除前年以前の損失を今年の利益と相殺して税負担を減らす
配当控除配当所得を総合課税で申告し、税額控除を受ける
所得金額の種類計算の位置づけ
合計所得金額給与所得・事業所得・雑所得等の所得金額を合計した金額
総所得金額等合計所得金額に譲渡損失の繰越控除を適用した後の金額
課税所得金額総所得金額等から所得控除額を差し引いた金額(税額計算の基礎)

📝 このセクションのまとめ

  • 株取引の確定申告パターンは「損益通算」「譲渡損失の繰越控除」「配当控除」の3つ
  • 所得制限の基準となる所得金額は「合計所得金額」「総所得金額等」「課税所得金額」の3種類

各パターンが「合計所得金額」に与える影響

各種所得制限で最もよく使われるのが合計所得金額です。3つの確定申告パターンそれぞれが合計所得金額にどう影響するかを見ていきましょう。

① 配当控除の場合

配当控除を受けるためには、配当所得を総合課税で申告しなければなりません。配当控除を行う場所は「課税所得金額に税率を掛け算して税金を計算した後」の税額控除の段階です。つまり、確定申告をした配当所得は、そのままストレートに合計所得金額に加算されてしまいます。

② 譲渡損失の繰越控除の場合

繰り越されてきた損失を使うためには、配当所得や譲渡所得を申告しなければなりません。繰越控除を行う場所は「合計所得金額の後」の段階です。つまり、確定申告をした配当所得や譲渡所得は、そのままストレートに合計所得金額に加算されます。

③ 損益通算の場合

損益通算だけは「合計所得金額を計算する前」に行います。そのため、損益通算をして利益が残れば、その利益が合計所得金額に加算されます。一方、損益通算をして損失が残った場合は、その損失は翌年以降に繰り越して繰越控除の対象にしていきます。残った損失で合計所得金額を減額することはできません。

📌 ポイント:損失を繰り越すだけの確定申告は所得に影響しない

損失が残った場合、その損失は合計所得金額をスルーするため、何も影響しません。損失を繰り越すだけの確定申告は、所得に全く影響しないのです。

申告パターン合計所得金額への影響
配当控除配当所得がそのまま加算される(影響あり)
譲渡損失の繰越控除申告した配当・譲渡所得がそのまま加算される(影響あり)
損益通算(利益が残る場合)残った利益分が加算される(影響あり)
損益通算(損失が残る場合)損失は翌年繰越のみ・合計所得金額はスルー(影響なし)

📝 このセクションのまとめ

  • 配当控除・繰越控除の申告では、配当・譲渡所得がそのまま合計所得金額に加算される
  • 損益通算で損失が残る場合のみ、合計所得金額への影響はゼロ
  • 「損失を翌年に繰り越すだけ」の申告は所得制限に影響しない

合計所得金額がアップすると何が困るのか?所得控除・住民税非課税世帯への影響

合計所得金額は、各種所得制限の基準として非常によく使われています。代表的なものを見ていきましょう。

■ 所得控除への影響

控除の種類所得制限の内容
基礎控除合計所得金額が2,500万円以下でないと適用不可。2,400万円超から控除額が徐々に減額。
配偶者控除配偶者の合計所得金額が48万円以下かつ控除する本人の合計所得金額が1,000万円以下が要件。900万円超から控除額が段階的に減額。
配偶者特別控除配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下かつ本人の合計所得金額が1,000万円以下が要件。900万円超から控除額が段階的に減額。
扶養控除生計を一にする親族の合計所得金額が48万円以下が要件。

⚠️ 注意

所得制限は控除する本人だけの問題ではありません。配偶者や親族が株取引の確定申告をすることで、その人の合計所得金額が48万円を超えてしまい、配偶者控除・扶養控除の対象から外れてしまうケースがあります。家族全員の申告状況を確認することが重要です。

■ 住民税非課税世帯への影響

住民税非課税世帯の判定基準も合計所得金額です。地域によって基準額に差があり、一級地・二級地・三級地に区分されています。東京都23区(一級地)を例にすると、次のとおりです。

世帯の状況合計所得金額の基準(東京都23区の場合)
同一生計の配偶者または扶養親族がいる人35万円 × (本人 + 扶養家族の人数) + 31万円以下
配偶者も扶養親族もいない単身者45万円以下

世帯全員がこの要件を満たさなければなりません。例えば夫婦2人の家族であれば、妻を扶養している夫の合計所得金額が101万円以下(35万円×2人+31万円)、扶養されている妻は45万円以下ということになります。

⚠️ 注意

世帯のうちの誰か1人でも株取引の確定申告をして合計所得金額がアップし、住民税非課税の要件を外れると、その世帯全体が住民税非課税世帯でなくなってしまいます。世帯全員が医療・介護などの各種支援を受けられなくなる可能性があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 基礎控除・配偶者控除・扶養控除はいずれも合計所得金額が判定基準
  • 配偶者や親族が確定申告をして合計所得金額が48万円を超えると、控除対象から外れる
  • 住民税非課税世帯の判定も合計所得金額が基準で、世帯全員が要件を満たす必要がある
  • 1人でも要件を外れると世帯全体が住民税非課税世帯でなくなる

介護保険料への影響:合計所得金額アップが招く負担増

65歳以上の人が加入する介護保険は、住民税が非課税か課税かという区分と、公的年金等の収入と合計所得金額の金額によって保険料が決定されます。東京都中野区では17段階まで区分があり、所得がアップするにつれて保険料も高くなります。

また、合計所得金額は以下にも影響します。

  • 介護サービス費の自己負担割合
  • 高額介護サービス費の負担限度額

📌 ポイント

株取引の確定申告によるメリット(税金の還付など)と、介護保険料・介護サービス費の自己負担増というデメリットを天秤にかけて判断することが必要です。特に高齢者の方は要注意です。

📝 このセクションのまとめ

  • 65歳以上の介護保険料は合計所得金額の水準によって段階的に決まる
  • 介護サービス費の自己負担割合・高額介護サービス費の限度額にも影響する
  • 高齢者ほど確定申告の弊害が大きくなりやすい

「総所得金額等」がアップすると何が困るのか?国民健康保険料・後期高齢者医療保険料への影響

総所得金額等とは、合計所得金額に譲渡損失の繰越控除を適用した後の金額です。配当控除を行う場所は総所得金額等のずっと後の税額控除の段階ですから、確定申告をした配当所得は合計所得金額を増加させると同時に、総所得金額等も増加させます。

繰越控除は総所得金額等の前で行いますから、繰越控除をして残った利益があればそれが総所得金額等に加算されます(申告した配当・譲渡所得が繰り越されてきた損失より大きい場合)。逆にまだ損失が残れば、さらに翌年以降に繰り越していきます。損失は総所得金額等とは相殺できませんのでスルーです。損益通算は合計所得金額の前で行いますから、損益通算して残った利益があればその利益が合計所得金額を増加させると同時に総所得金額等も増加させます。

■ 国民健康保険料への影響(東京都新宿区の例)

国民健康保険料には均等割額と所得割額があり、影響を受けるのは所得割額です。所得割額は総所得金額等から基礎控除額43万円を差し引いた金額(世帯合計)に保険料率を掛け算して算出されます。

保険料の種類新宿区の保険料率
医療分内訳は合計に含む
支援金分内訳は合計に含む
介護分内訳は合計に含む
合計11.34%

つまり、総所得金額等がアップすると、その11.34%分だけ国民健康保険料がアップすることになります。これはかなりのインパクトです。

■ 高額療養費制度への影響

国民健康保険の高額療養費制度も同様です。70歳未満の人の1か月間の自己負担限度額は、総所得金額等から基礎控除額を差し引いた金額の世帯合計額が基準になっています。段階が上がる間近にいる世帯は、負担額に大きな差が生じますので特に要注意です。

70歳以上の人については、住民税の課税標準の世帯合計額(=総所得金額等から各種所得控除額を差し引いた金額)が基準になっています。

■ 後期高齢者医療保険料への影響

後期高齢者医療保険料は1人ごとに算定されます。影響を受けるのは所得割額で、総所得金額等から基礎控除額を差し引いた金額に東京都内均一の保険料率9.94%を掛け算して保険料が計算されます。総所得金額等がアップすると、その9.94%分だけ後期高齢者医療保険料がアップすることになります。

⚠️ 注意

国民健康保険料・高額療養費・後期高齢者医療保険料はいずれも総所得金額等が基準です。確定申告で総所得金額等がアップすると、これらすべてに連鎖的に影響が及びます。還付される税額と増加する保険料負担を必ず比較してから申告を判断してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 国民健康保険料の所得割額は「総所得金額等 − 43万円(基礎控除)」の世帯合計が基準
  • 新宿区の場合、総所得金額等アップ分に対して11.34%の保険料が増加する
  • 高額療養費(70歳未満)も同じ基準で自己負担限度額が変わる
  • 後期高齢者医療保険料も総所得金額等が基準で、東京都内一律9.94%の所得割が適用される

会社員と個人事業主・高齢者では影響の大きさが異なる

ここまで解説してきた影響は、すべての人に同じように及ぶわけではありません。立場によって影響を受ける範囲が異なります。

立場主な影響範囲
会社員社会保険料は給料が基準のため、合計所得金額・総所得金額等の影響を受けない。主に所得控除(配偶者控除・扶養控除等)に影響。
個人事業主・フリーランス国民健康保険料など全般に影響を受ける。
高齢者(65歳以上・75歳以上)介護保険料・後期高齢者医療保険料・介護サービス費の自己負担など、医療・介護関係の費用負担に特に注意が必要。

📌 ポイント

株取引の確定申告をするメリット(税金の還付・損失の活用)と引き起こすデメリット(各種保険料の増加・所得制限への抵触)を正確に把握したうえで、自分はどちらに比重を置いた方がよいかを判断することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 会社員の社会保険料は給料基準のため、株の確定申告の影響は主に所得控除の範囲にとどまる
  • 個人事業主・フリーランスは国民健康保険料など全般に影響を受ける
  • 高齢者は医療・介護関係の費用負担への影響が特に大きい

あえて確定申告をするメリットが生まれるケースとは?

最後に、課税所得金額の観点から、株取引の確定申告をする動機になるケースについて紹介します。

課税所得金額とは、総所得金額等から所得控除額を差し引いた金額で、この金額をもとに税金が計算されます。

注目したいのは、総所得金額等から所得控除額を控除しきれない場合、つまり所得控除額の方が大きいケースです。

  • 年金受給者で所得が少ない方
  • 退職して所得が大きく減った方
  • 多額の医療費を支出した方

このような場合、利益が出ている特定口座を確定申告して、余っている所得控除額を使ってすでに源泉徴収された税金の還付を受けることができます。

⚠️ 注意

このケースでも、確定申告をすることで合計所得金額や総所得金額等がアップしてしまうことに変わりはありません。税金の還付額と、保険料増加・各種制限への影響によるデメリットを必ず比較検討してから申告を決断してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得控除額が総所得金額等を上回る場合、特定口座の利益を申告して税金の還付を受けられる可能性がある
  • 年金受給者・退職者・多額の医療費支出者が該当しやすい
  • それでも合計所得金額・総所得金額等はアップするため、デメリットとの兼ね合いを必ず確認すること

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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