株取引の確定申告で国民健康保険料が上がる?税理士が解説する意外な関係
株取引の確定申告が国民健康保険料を引き上げる意外な仕組みを解説します。
3種類の証券口座と確定申告の関係
株取引をする際の証券口座には、大きく分けて3種類あります。それぞれ確定申告の要否が異なるため、まず整理しておきましょう。
| 口座の種類 | 確定申告 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般口座 | 必要 | 自分で申告しなければならない |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 必要 | 確定申告が必要 |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 任意(申告不要も可) | 大半の投資家が利用している口座 |
多くの方は源泉徴収ありの特定口座を開設して投資をされているのではないでしょうか。この口座では、確定申告をしないで源泉徴収で完結する「申告不要」を選ぶことができます。
📌 ポイント
源泉徴収ありの特定口座で申告不要を選んだ場合、いくら利益が出ても所得にはなりません。そのため、所得金額を基準とする国民健康保険料には影響しません。
国民健康保険料との関係が生じるのは、確定申告をした時です。確定申告をすると所得が増えるため、保険料が上がってしまうのです。市区町村のホームページでも注意喚起がされており、知らずに確定申告をして保険料が上がったと驚く人が結構いらっしゃるようです。税務署は教えてくれませんから、自分で把握しておく必要があります。
📝 このセクションのまとめ
- 証券口座は一般口座・特定口座(源泉徴収なし)・特定口座(源泉徴収あり)の3種類
- 源泉徴収ありの特定口座で申告不要を選べば国保への影響はゼロ
- 確定申告をした瞬間に所得が増加し、国民健康保険料が上がるリスクがある
3つの「所得金額」の違いを理解する
税金や社会保険、各種給付金などは、さまざまな「所得金額」を基準にして決められています。この所得金額には3種類あり、それぞれ用途が異なります。
| 所得金額の種類 | 計算の基準 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 合計所得金額 | 株取引の損益通算をした後の金額 | 住民税課税世帯の判定、介護保険料、配偶者控除・扶養控除等の基準 |
| 総所得金額等 | さらに譲渡損失の繰越控除をした後の金額(配当控除適用前) | 国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、高額療養費制度の基準 |
| 課税所得金額 | 総所得金額等からさらに所得控除を差し引いた金額 | 所得税・住民税の税額計算 |
株取引の損益通算をした後の金額が合計所得金額、そこからさらに譲渡損失の繰越控除をした後の金額が総所得金額等です。また、総所得金額等は配当控除を適用する前の金額でもあります。
損益通算・損失の繰越控除・配当控除の適用前か適用後かという関係が、非常に重要な意味を持ちます。国民健康保険料は総所得金額等を基準にしている点が特に重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 所得金額には「合計所得金額」「総所得金額等」「課税所得金額」の3種類がある
- 国民健康保険料の基準は「総所得金額等」(配当控除適用前の金額)
- 損益通算・繰越控除・配当控除のどの段階で計算されるかが保険料に直結する
国民健康保険料の計算の仕組み(東京都新宿区の例)
国民健康保険料は自治体によって計算方式が異なり、保険料にかなりの地域差があります。必ずお住まいの自治体のホームページで確認してください。ここでは東京都新宿区を例に解説します。
保険料は以下の3つの合計額です。
- 医療分
- 後期高齢者支援金分
- 介護分
それぞれに「均等割額(固定金額)」と「所得割額(変動)」があります。問題となるのは所得割額で、これは総所得金額等によって変動します。
📌 算定基礎額の計算式
算定基礎額 = 総所得金額等 − 基礎控除額(43万円)
この算定基礎額に保険料率を掛け算して所得割額が決まります。
| 区分 | 保険料率(新宿区) |
|---|---|
| 医療分 | 7.17% |
| 後期高齢者支援金分 | 2.40% |
| 介護分 | 1.77% |
| 合計 | 11.34% |
つまり、総所得金額等が増えると、その11.34%分だけ国民健康保険料が増加することになります。
📌 最高限度額について
保険料には最高限度額があります。令和5年度は104万円が限度でしたが、令和6年度は106万円にアップします。総所得金額等が増えても、すでに最高限度額に達している方には影響はありません。
📝 このセクションのまとめ
- 国保の所得割額は「総所得金額等 − 43万円」に保険料率を掛けて計算
- 新宿区の合計保険料率は11.34%
- 保険料率は自治体ごとに異なるため、必ず自分の自治体で確認する
- 最高限度額(令和6年度:106万円)に達している場合は影響なし
【損益通算】確定申告で還付を受けたのに大損するケース
源泉徴収ありの特定口座を複数持っている場合、口座をまたいだ損益通算をするためには確定申告が必要です。具体的なケースで影響を確認しましょう。
📌 具体例
- A口座:100万円の利益
- B口座:20万円の損失
損益通算すると、相殺後の利益20万円について税率20.315%で源泉徴収された所得税・住民税が還付されます(還付額:約4万円)。
しかし、ここに落とし穴があります。相殺できなかった80万円の利益が残っています。この80万円は特定口座ですでに税金が源泉徴収されているため、追加で税金を徴収されることはありません。
⚠️ 注意
損益通算で確定申告をすると、相殺後に残った80万円が合計所得金額・総所得金額等を押し上げます。
- 国保料の増加額:80万円 × 11.34% = 約9万円アップ
- 還付額:約4万円
- 差引:約5万円の損失(還付を受けたのに大損)
確定申告をした利益が多すぎたことが原因です。利益が20万円だけであれば何の問題もなかったのですが、口座内の金額を自由に調整することはできません。
源泉徴収ありの特定口座の確定申告には、以下のルールがあります。
- 口座ごとに申告するかどうかを選択できる(口座単位)
- 口座内の特定の取引だけをピックアップして申告することはできない
- 口座内の金額を調整することはできない
- 口座内の譲渡所得と配当所得はいずれかのみを申告できる(ただし、譲渡損失を申告する場合は配当所得も合わせて申告しなければならない)
📝 このセクションのまとめ
- 損益通算で4万円の還付を受けても、国保料が9万円上がれば実質5万円の損
- 確定申告は口座単位で選択でき、口座内の金額調整はできない
- 相殺後に残る利益額が国保料に直接影響することを必ず計算してから申告判断をする
【繰越控除】損失の繰越でも国保料が上がる
損益通算をしても損失が残った場合、または1つしか持っていない特定口座が損失になった場合には、確定申告をして損失を3年間繰り越すことができます。
📌 具体例
- 前年からの繰越損失:20万円
- 今年の利益:100万円
繰越控除を適用して税金を取り戻すために、100万円の利益を確定申告します。
繰越控除の場合、確定申告をした利益がストレートに合計所得金額に影響します。繰越控除で約4万円の還付を受けられますが、控除してもなお残った80万円が総所得金額等を押し上げます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 繰越控除による還付額 | 約4万円 |
| 国民健康保険料の増加額(80万円 × 11.34%) | 約9万円アップ |
| 実質的な損益 | 約5万円の損失 |
⚠️ 注意
繰越控除でも損益通算と同様に、確定申告をした利益が総所得金額等を増加させ、国民健康保険料の大幅アップにつながります。還付額と保険料増加額を必ず比較してから申告を判断してください。
📝 このセクションのまとめ
- 損失の繰越控除は確定申告した利益がそのまま合計所得金額に影響する
- 繰越控除後に残る利益が総所得金額等を押し上げ、国保料が増加する
- 還付額より国保料の増加額が上回るケースがある
【配当控除】国保加入者は申告メリットがほぼない
配当控除を利用して税金を取り戻すためには、総合課税で配当金を確定申告する必要があります。総合課税とは、事業所得・雑所得・給与所得などと配当所得を合算した課税所得金額に所得税・住民税を課税する方式です。算出された税額から配当控除を適用して所得税・住民税を減額します。
配当控除の控除率は以下のとおりです(課税所得金額が1,000万円以下の場合)。
| 税の種類 | 配当控除率 |
|---|---|
| 所得税 | 配当所得の10% |
| 住民税 | 配当所得の2.8% |
配当金にかかる実効税率は、所得税率から配当控除10%を差し引き、住民税率10%から配当控除2.8%を差し引いた7.2%を合計して求めます。配当金は20.315%の税率で源泉徴収されているため、それより低い税率になる課税所得金額のラインが損得の分岐点です。
所得税(復興所得税含む)10.21% + 住民税7.2% = 17.41% となり、これが源泉徴収税率20.315%より低くなる課税所得金額は695万円以下のラインです。
⚠️ 注意:国保加入者は国保料を加算して考える必要がある
配当金を確定申告すると総所得金額等が増加するため、国民健康保険料もアップします。新宿区の保険料率11.34%を加算すると、実質的な税負担は以下のようになります。
| 課税所得金額 | 所得税+住民税(配当控除後) | 国保料率(新宿区)加算後 | 源泉徴収税率との比較 |
|---|---|---|---|
| 330万円以下 | 約7.21% | 約18.54% | 源泉徴収20.315%より有利(差約2%弱) |
| 330万円超〜695万円以下 | 17.41% | 28.75%超 | 源泉徴収20.315%より不利 |
| 695万円超 | 20.315%以上 | さらに不利 | 申告のメリットなし |
国民健康保険に加入している個人事業主やフリーランスの方は、新宿区の保険料率(11.34%)を加算した場合、課税所得金額330万円以下のラインでわずかに有利になるだけで、差額は約2%弱と微妙な水準です。
さらに、自治体によっては新宿区より保険料率が高いところも多くあります。お住まいの自治体の保険料率を確認し、新宿区の保険料率と入れ替えて計算してみてください。
⚠️ 結論
国民健康保険に加入している個人事業主・フリーランスの方は、配当金を確定申告(総合課税)してもメリットはほぼないと考えておいたほうが無難です。
📝 このセクションのまとめ
- 配当控除は課税所得金額1,000万円以下なら所得税10%・住民税2.8%を税額から控除できる
- 配当金を確定申告すると総所得金額等が増え、国保料も上がる
- 国保料(新宿区11.34%)を加算すると、課税所得330万円以下でわずかに有利なだけ
- 国保加入の個人事業主・フリーランスは配当金の確定申告(総合課税)のメリットがほぼない
- 自治体ごとに保険料率が異なるため、必ず自分の自治体の数字で確認する
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
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