税務調査

赤字でも税務調査は来る!インボイス後に狙われる税金3選を税理士が解説

赤字でも税務調査は来る!インボイス後に狙われる税金3選を税理士が解説
e_zeirishi

赤字だから税務調査は来ない、は大きな誤解です。インボイス制度開始後、消費税と源泉所得税を中心に赤字企業でも狙われるポイントを解説します。

赤字でも税務調査がある理由

税務調査にはざっくり言うと強制調査任意調査があります。強制調査は脱税の証拠があるなど特別な理由がある場合に行われるもので、捜査令状などを持って急に来るイメージです。一般の事業者が経験するのは任意調査で、調査の日程や場所は事前に税務当局と打ち合わせをして決めます。

一般的に個人よりも法人の方が事業規模が大きいため調査に入られやすく、また赤字よりも黒字の方がターゲットになりやすいと言われています。黒字が出ているということは、何かしら無理な経費計上をしているのではないかと疑われやすいからです。

📌 ポイント

赤字だからといって税務調査に入られないわけではありません。利益が出た時にかかる法人税・所得税とは異なり、黒字・赤字に関わらずかかる税金があります。それが消費税源泉所得税、そして印紙税です。

印紙税は契約書など収入印紙を貼るべき書類に印紙が貼られていない場合に過怠税が課されるもので、比較的金額は小さくなりやすいため、今回は消費税源泉所得税に絞って解説します。

また、個人事業主と法人では赤字の意味合いが大きく異なります。

区分赤字の意味調査リスク
個人事業主自分自身の生活費(給与相当額)も含んだ上での赤字高め。「どうやって生活しているのか」と疑われやすい
法人役員報酬をすでに差し引いた後の赤字比較的理解されやすいが、長期赤字は調査対象になりやすい

⚠️ 注意

個人事業主の方が無理な経費を計上して赤字にしている場合は特に要注意です。赤字なのに生活できているという事実が、脱税の疑いを生む可能性があります。

税務調査のターゲットになりやすい代表的な状況は以下の通りです。

  • 最近売上が急拡大した、または増収減益(売上が増えているのに経費がそれ以上に増えている)
  • 特定の経費科目が大幅に増加するなど、激しい動きがあった
  • 法人の繰越欠損金(最長10年)が全て使い切れてしまった
  • 10年以上税務調査が来ていない

📝 このセクションのまとめ

  • 税務調査は黒字・赤字に関わらず来る可能性がある
  • 消費税と源泉所得税は赤字でも課税される税金
  • 個人事業主の赤字は特に疑われやすい
  • 繰越欠損金の消滅や長期間の未調査も調査トリガーになる

【消費税①】クレカ明細は仕入税額控除に使えない

インボイス制度に関連した調査について、国税庁長官は「大口かつ悪質な事例に限定して実施する」と述べており、インボイスに関する書類の不備や多少の記載誤りを重点的に調査するものではないと明言しています。しょうもない粗探しはしないということですので、この点はご安心ください。

ただし、クレジットカードで切った経費の領収書については気をつけておく必要があります。消費税の仕入税額控除の仕組みを確認しましょう。

項目金額消費税(10%)
売上1,000万円受取消費税 100万円
経費500万円仮払消費税 50万円
納付消費税50万円(100万 − 50万)

この「支払った仮払消費税50万円を差し引くこと」を仕入税額控除と言います。インボイス制度のもとでは、この仕入税額控除を受けるためには次の両方が必要です。

  • 帳簿への記載
  • インボイス(適格請求書)または簡易インボイス(適格簡易請求書)の保存

⚠️ 注意

クレジットカードの明細はインボイスではありません。クレカ明細はクレジットカード会社が発行するものであり、実際にお金を受け取ったお店が発行するものではないため、インボイスとして認められません。

クレカ明細しか手元にない場合、仕入税額控除50万円が丸ごと使えなくなり、納付消費税が100万円になってしまいます。つまり50万円の負担増です。

「そんな無茶な調査はしないだろう」と思われる方も多いかもしれませんが、実際に消費税に重点を置いた税務調査の立ち会い経験があります。結構多くの方がクレカのレシートを捨ててしまっており、「カード明細があればいいんじゃないか」とおっしゃる方が多いです。

法人税や所得税の計算においては、カードで切った経費についてカード明細があればある程度の客観性があるとして全面否認されることはありません。しかし消費税の仕入税額控除は別です。消費税は意外に厳しい税なのです。

インボイス制度が始まる前は、3万円未満の少額経費についてはクレカ明細があれば領収書がなくてもよいというルールがありましたが、このルールはインボイス制度の開始とともに撤廃されました。今まで以上に厳しく見られる可能性がありますので、くれぐれもご注意ください。

📌 ポイント

カードで支払った際は、お店から発行される領収書(簡易インボイス)を必ず受け取って保存しましょう。なお、小規模事業者向けの特例や、インボイスが不要なケース、インボイス番号がなくてもよいケースも存在します。

📝 このセクションのまとめ

  • クレカ明細はインボイスではなく、仕入税額控除に使えない
  • カード払いの際はお店から発行される領収書(簡易インボイス)を保存する
  • 3万円未満の少額特例はインボイス制度開始で廃止された
  • 領収書を捨てると50万円単位で消費税の負担増になるリスクがある

【消費税②】外注費か給与か——業務委託の実態判定

これも非常に有名な話です。外注費(業務委託)なのか給与なのかという問題も、消費税に深く関わっています。

例として、社員を雇用している会社で売上1,000万円、経費は給与のみ550万円払っているケースを考えます。

区分給与として支払う場合外注費(業務委託)として支払う場合
売上1,000万円1,000万円
経費550万円(給与)550万円(外注費・税込)=税抜500万円
法人税課税対象利益450万円500万円
法人税(約25%)約112.5万円約125万円
受取消費税100万円100万円
仕入税額控除0円(給与は消費税課税対象外)50万円(外注費は仕入税額控除OK)
納付消費税100万円50万円
合計税負担約212.5万円約175万円

このように、給与を外注費に変えるだけで消費税の仕入税額控除50万円が取れるようになり、合計で約38万円の節税ができる計算になります。

⚠️ 注意

ネットやYouTubeの表面的な情報だけをつまみ食いして「見た目だけ変えれば節税できる」と勘違いしている経営者も多いですが、そんな甘いものではありません。社員を業務委託にしてインボイスを取らせたからといって、自動的に外注費として認められるわけではないのです。

外注費か給与かはすべて実態判定で決まります。判定のポイントは以下の通りです。

判定項目外注費(業務委託)寄り給与(雇用契約)寄り
業務遂行の拒否権ある(断れる)ない(断れない)
専属性低い(他社とも契約できる)高い(その会社専属)
指揮監督の度合い弱い強い

これらを総合的に見て、実態が雇用契約と判断されれば、税務調査で外注費が否認されます。その場合のリスクは消費税だけにとどまりません。

  • 仕入税額控除の否認(消費税の追徴)
  • 源泉徴収漏れによる源泉所得税の追徴課税(加算税・延滞税含む)
  • 社会保険料の追徴課税の可能性
  • 社員から強制解雇として訴えられるリスク

📝 このセクションのまとめ

  • 給与は消費税課税対象外のため仕入税額控除が取れないが、外注費は取れる
  • 社員を形式だけ業務委託に変えても、実態が雇用なら給与と判定される
  • 実態判定は「拒否権・専属性・指揮監督度合い」などを総合的に判断
  • 否認されると消費税・源泉所得税・社会保険料など複数の追徴リスクがある

【源泉所得税①】現物給与——住宅の貸与・商品券に注意

ここからは源泉所得税のお話です。少しマニアックですが、税務調査で狙われやすいポイントです。

現物給与とは、金銭ではなく物で給与を支給するものです。代表的なものとして食事代住宅の貸与(社宅)があります。

📌 ポイント

経費に落ちるという点は福利厚生費も給与も共通ですが、給与である以上は源泉徴収をしなければなりません。源泉徴収義務は給与を支払う会社側にあります。給与を支払うたびに一定の所得税を差し引き、その人の代わりに税務署に納める義務があります。これを忘れると会社に責任が来ます。

住宅の貸与(社宅)については、会社が賃貸借契約を結ぶか、会社が不動産を所有して社員を住まわせるものです。何も考えずに適当にこれをやると、支払った家賃の全額が給与扱いになってしまうことがあります。社宅に関しては非常に複雑な算式があるため、慎重に対応が必要です。

商品券を配った場合は、金銭同等物として賞与や給与として扱われ、当然ながら源泉徴収の対象になります。ご注意ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 現物給与(住宅貸与・食事代など)は原則として源泉徴収の対象
  • 社宅の家賃を適切に処理しないと全額給与扱いになるリスクがある
  • 商品券は金銭同等物として給与・賞与扱いになり源泉徴収が必要

【源泉所得税②】社員への慶弔金・記念品の課税判定

社員の慶弔費や記念品の贈呈についても、福利厚生費として処理できるかどうかには明確なルールがあります。

福利厚生費として認められる(給与課税されない)主な要件は以下の通りです。

  • 全従業員が一応の対象になっているかどうか
  • 社会通念上妥当な金額かどうか
  • 社内規定や税のルールに沿っているかどうか

例えば、社内規定が備わっていて、特定の事象(結婚・出産など)が発生した時に全社員が対象になるという場合は問題ありません。

⚠️ 注意

例えば特定の社員に結婚祝いとして100万円を渡した場合はどうでしょうか。世間相場から考えると、結婚祝いは3万〜5万円、多くても10万円程度です。この100万円というレベルの金額は、給与扱い=源泉徴収の対象とされても不思議ではありません。

記念品の贈呈(創業記念など)については、以下の要件を全て満たす必要があります。

要件内容
記念品としての適切性記念品としてふさわしいものであること
処分見込み価格1万円以下であること
支給間隔創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、概ね5年以上の間隔で支給すること

これらの要件が備わっていない場合、記念品の贈呈についても給与課税されます。また、記念品の代わりに現金を渡す場合は給与扱いになりますのでご注意ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 慶弔金は社内規定があり全従業員対象・社会通念上妥当な金額であれば福利厚生費になる
  • 特定の社員への高額な慶弔金(例:結婚祝い100万円)は給与課税される
  • 記念品は処分見込み価格1万円以下・5年以上の間隔などの要件を満たす必要がある
  • 記念品の代わりに現金を渡すと給与扱いになる

【源泉所得税③】食事代の現物給与課税——まかないにも注意

食事代についても細かなルールがあります。原則として現物給与は源泉徴収の対象です。飲食店でまかないを出している会社も多いと思いますが、まかないも源泉徴収の対象になります。

ただし、以下の2つの要件を両方満たす場合は給与課税されません。

要件内容
自己負担割合食事価格の半分以上を本人が負担していること
月額上限食事価格から本人負担額を引いた差額が1ヶ月あたり3,500円以下であること

ただし、月3,500円という金額はあまりにも小さすぎます。物価水準が上がっている現在の世の中では、ここは税制改正などで引き上げてくれないとおかしいですね。

また、以下の特別なケースでは例外的に課税されません。

  • 深夜勤務の場合で夜食の支給ができないために1食あたり税抜き300円以下を支給する場合(これも金額が小さいですが)
  • 残業や宿日直を行う時に支給する食事は無料で支給しても課税されない

⚠️ 注意

残業・宿日直時の食事は無料支給でも課税されませんが、「食事手当」として現金で渡すと給与課税されます。どこかで食事を取ってもらって、その実費を支給するという形にしないと課税されてしまいますのでご注意ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 食事代(まかない含む)は原則として現物給与として源泉徴収の対象
  • 非課税になるには「半額以上自己負担」かつ「差額が月3,500円以下」の2要件を満たす必要がある
  • 残業・宿日直時の食事は無料支給でも非課税だが、現金の食事手当は課税される

赤字でも税務調査に備えるための心構え

赤字だからといって税務調査が来ないわけではありません。特に多額の赤字が出ている場合、多少の経費を否認したところで法人税や所得税の追徴はできません。そのため、税務調査官のターゲットはこういった消費税や源泉所得税に向かいます。

真面目に経理処理をされている方は問題ないとは思いますが、知らなかった場合でも追徴課税されてしまいます。例えば:

  • クレカ明細の領収書を捨ててしまっていた
  • 食事代を「事業関連性があるから福利厚生費」として処理していたが、給与課税が必要だと知らなかった
  • 業務委託の実態判定を意識していなかった

こういった方は非常に多いですが、それでも追徴課税されるリスクは非常に高いです。ぜひ理論武装して、これから来るであろう税務調査を乗り切っていただけたらと思います。

また、冒頭の豆知識として——臨時案件がドカンと決まって売上の入金があった時に「頑張った自分にご褒美を」ということで北新地で豪遊した、年間で何百万か福利厚生費に計上していたというのは、現物給与として源泉徴収の対象になります。「あかん、追徴税額の納税のために銀行の融資に申し込みに行く」という事態になりかねませんので、ご注意ください。

📌 ポイント

税務調査で福利厚生費の大きな金額があると「これは何ですか?」とよく聞かれます。そういった時に社内規定や明確な根拠を示して説明できるように準備しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 赤字でも消費税・源泉所得税は調査対象になる
  • 知らなかったでは済まされない——事前の理論武装が重要
  • 福利厚生費の大きな計上は税務調査で必ず確認される
  • 社内規定と明確な根拠を整備しておくことが自衛策になる

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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