税務調査で否認された経費を公認会計士が実例公開|確定申告の落とし穴
税務調査で実際に否認された経費の実例を、公認会計士が赤裸々に公開します。
確定申告から税務調査までの流れ
まず大前提として、確定申告から税務調査に至るまでの流れをおさらいしておきます。
- 確定申告を提出する(内容がどんなにデタラメでも税務署は一応受理する)
- 確定申告は2,000万件以上あるため、概ね合っていようが間違っていようがスルーされることも多い
- 明らかにおかしい内容には「お尋ね」として文書や電話で質問が来る(専門用語で「簡易な接触」と呼ぶ)
- お尋ねの結果、さらに問題があると判断された場合は税務調査として調査官が仕事場や自宅に来る
- 税務調査で経費を否認され修正申告をすると、追加の延滞税が発生。悪質な場合は重加算税も重なりものすごい出費になる
📌 ポイント
「お尋ね」の段階で間違いを認めて修正申告することもできますが、そこでさらに疑いが深まると本格的な税務調査に発展します。税務調査は突然やってくるわけではなく、こうした段階を経て行われます。
📝 このセクションのまとめ
- 確定申告は受理されても、内容が怪しければ「お尋ね」や税務調査に発展する
- 税務調査で否認されると延滞税・重加算税が加算され、大きな出費になる
経費として認められる3つのポイント
所得税の条文では「仕事に関して必要だったら経費」というくらいのことしか書かれていません。実際には過去の判例をベースに経費かどうかを判断していきます。経費かどうかのポイントは無数にありますが、代表的な3つを押さえておきましょう。
| ポイント | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| ① 直接性 (業務関連性) | 仕事に直接絡んでいるか。その職業に関係なければ経費にならない。直接性がなければプライベートとみなされる。 | その職業に無関係な費用はNG。直接性がないと「プライベートですよね」と言われる。 |
| ② 客観性 | 第三者が見ても「直接性がある」と認められるか。社会通念上の妥当性、契約書・領収書・レシートなどの客観的証拠が重要。 | 領収書・レシートの保存、契約書の整備など。 |
| ③ 収益性 | その経費があるからこそ売上が立ち、利益が出たといえるか。 | 接待しても全然売上が上がらなかった場合は「単に友達と飲んでいるだけでは」と言われる可能性がある。 |
税務調査では、その人の職業への直接性と金額の2軸で争われることが多いです。金額が高ければ当然もめやすく、金額が安ければスルーされることも多いです。これら3つをひっくるめた結果として「必要経費かどうか」が判断されます。
📌 ポイント
「この経費は直接性はこうです、客観性はこうです、収益性はあります」と自分で説明できるなら経費に入れてよいでしょう。どれか一つでも説明できないなら入れない方が無難です。
📝 このセクションのまとめ
- 経費として認められるかは「直接性・客観性・収益性」の3つで判断される
- 金額が高いほど税務調査で争われやすい
- 自分で3つのポイントを説明できない経費は計上しない方がよい
明らかに経費として認められないもの
税務調査で争うまでもなく、最初から経費として認められないものがあります。
■ プライベートな費用(家事費)
- いわゆる生活費全般
- 家族の出費
- 趣味に偏ったもの
- ペット関連費用
- 衣装・散髪・化粧・美容(プライベートとの切り分けができないため)
■ 理不尽だけど経費にならないもの
代表的なのがスーツ代です。今どきスーツは仕事の時しか着ないという人も多いですが、昔からずっと経費として認められていません。理由は「スーツは普段着でも着られるから、プライベートに使えないとは言えない」という理屈です。これは50〜60年前の判例がいまだに生きている税法の世界ならではの話で、時代錯誤な面もありますが、現状ではそういう扱いです。
また最近議論になっているのがベビーシッター代です。仕事をするために子供を預けることは少子化対策の観点からも必要なことですが、現時点では経費として認められていません。「仕事は仕事、子育ては家の話で仕事と関係ない」という理屈です。保育園代も同様の議論が起きます。
⚠️ 注意
スーツ代・ベビーシッター代・美容費などは「仕事のためだから」と思っていても、現行の税務上は経費として認められません。計上しないよう注意しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 生活費・家族の出費・趣味・ペット・美容は経費NG(家事費)
- スーツ代は「普段着でも着られる」という理由で経費にならない
- ベビーシッター代も現時点では経費として認められていない
税務調査で否認された経費【接待交際費・会議費】
ここからは実際に税務調査で否認された経費の実例を紹介します。まずは接待交際費・会議費に関するケースです。
■ 実家の買い物レシート
あるお客様が前の税理士にレシートをまとめてガサッと渡したところ、その中にお母さん(九州在住)が買ったレシートも混入していました。お客様は東京在住なのに、福岡・中洲の飲食レシートが大量に含まれており、税務調査で「なぜ九州の領収書がたくさんあるのか、この日あなたは東京にいるはずなのになぜ福岡で飲んでいるのか」と指摘され、悪質と判断されて否認されました。
⚠️ 注意
税理士に「おまかせ」にしている方でも、経費になりそうな領収書・レシートだけを税理士に渡すことが大切です。安い顧問料の税理士は一枚一枚の領収書の住所まで確認しないケースもあります。自分でも内容を把握しておきましょう。
■ スーパーの食材費
スーパーで購入した食材を会議費として計上していたケースです。スーパーの食材を会議費として証明するには、「何日の誰が出席した会議でこの食材を使いました」という記録が必要です。それがなければ自宅の夕飯との区別がつかないとして否認されました。
■ 自宅での食事会の食材
取引先との食事会を自宅で開催し、そのための食材を購入したケースです。「自宅で食事会をするために食材を買った」という説明でも、自宅の晩御飯なのか接待なのか区別がつきにくいとして否認されました。
■ 自宅近所の飲食代
例えば仕事先が東京で自宅が八王子の場合、東京近辺の飲み会代は交際費として認められやすいですが、八王子での飲み会代は「本当に仕事ですか?」と問われ、否認されたケースがありました。
■ 大量の飲食代(年間500件)
飲食代のレシートが年間500件あったケースです。昼夜合わせてもほぼ毎日になるため「そんなに会議があるのか」と疑われました。いろいろと争った結果、最終的に3分の1だけが経費として認められました。
■ 1人での飲食代
1人で食べた吉野家や立ち食いそばは会議でも何でもないため否認されます。一方、喫茶店やファミレスで1人で仕事をしていた場合は本来経費に入れてよいはずですが、仕事をしていた証拠がないとして否認されました。誰かとの会議であれば認められたケースです。他に否認箇所がない場合、税務調査官は「手ぶらでは帰れない」ためこうした細かい点をついてくることがあります。
■ 自分も含まれている飲み会の領収書
取引先4人との飲み会でお店の領収書を取得したケースです。通常これは経費になるはずですが、税理士が立ち会っていない税務調査で調査官から「自分が入っているなら、自分の食事代が含まれているのでは。経費にするなら自分の料金を除いた領収書をもらうべきだった」と言われ、自分が参加した飲み会代が全額否認されました。税理士が立ち会っていれば反論できた事例です。
■ キャバクラで同じ人をずっと指名していたケース
取引先をキャバクラに連れて行って接待することは接待交際費として認められますが、金額があまりにも多かったため、税務署が反面調査(そのキャバクラへの調査)を実施しました。調査の結果、毎回同じ女性を指名していることが判明。「接待を目的にした飲食ではなく、その人に会いたかっただけ」と判断されて否認されました。
⚠️ 注意
キャバクラやホストクラブへの支出が多い方は特に注意が必要です。税務署は反面調査でお店側にヒアリングすることもあります。
📝 このセクションのまとめ
- 実家の買い物レシートが混入していたケースは悪質と判断され否認
- スーパーの食材・自宅での食事会の食材は会議費の証明が難しく否認されやすい
- 自宅近所の飲み代は「本当に仕事か」と疑われやすい
- 年間500件の飲食代は最終的に3分の1のみ認められた
- 税務調査は税理士なしで臨むと不利になることがある
- 反面調査により取引先やお店にも調査が入ることがある
税務調査で否認された経費【消耗品費・図書費・研究費】
■ 子供の参考書
「自分も勉強して仕事に役立てています」という説明でも、そもそも子供のために購入したものですから経費としては認められません。
■ 普段でも着られる衣装(芸能・映像関係者)
芸能やメディア出演など、映像に映る職業の方が「仕事のために買った」と主張した衣装でも、普通に着られる服であれば「仕事だけで着るわけではない」と指摘されます。争った結果、50%のみ経費として認められ、残り50%は否認されました。これを「家事按分」といい、半分仕事・半分プライベートという扱いになります。
■ 白紙の領収書
取引先の小さなお店から白紙の領収書をまとめてもらっていたケースです。税務調査でこの白紙領収書が発見されると、「他の領収書も水増しや偽造をしているのでは」と疑われます。実際に仕入れた物が残っていたため所得税上は経費として認められましたが、消費税の仕入れ税額控除(消費税の経費処理)は認められませんでした。インボイス制度が始まった後は、インボイスがなければ消費税として認められないケースがさらに増えるでしょう。
⚠️ 注意
白紙の領収書は絶対に受け取らないようにしましょう。仮に実際の取引があっても、消費税の仕入れ税額控除が認められないリスクがあります。インボイス制度の導入後はさらに厳しくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 子供の参考書は経費として認められない
- 仕事用の衣装でも普段着られるものは50%のみ経費(家事按分)になることがある
- 白紙の領収書は所得税上は認められても消費税上は否認されるリスクがある
税務調査で否認された経費【旅費交通費・地代家賃・備品・雑費】
■ 交通系ICカードのチャージ代
Suicaなどの交通系ICカードのチャージ代を全額経費計上していたケースです。仕事の交通費にしか使っていないカードであればチャージ代でも経費にできますが、チャージ代があまりにも多かったため、税務署が鉄道会社への反面調査を実施し、過去数年分の利用履歴を取得しました。その結果、仕事と関係ない場所への交通費が多数含まれていることが判明し、仕事先との往復分だけが経費として認められ、それ以外は全額否認されました。
⚠️ 注意
税務署は国家権力を持っており、鉄道会社・キャバクラ・銀行など、あらゆる機関に反面調査を行うことができます。「バレないだろう」と思っていることはだいたいバレやすいです。
■ 家賃の按分(なんとなくの目分量)
自宅兼事務所の家賃を「なんとなく65%くらいかな」という目分量で経費計上していたところ、税務調査で指摘を受けました。「ちゃんと面積で計算しなさい」と言われ、せいぜい50%に減らされました。
■ マンション2部屋借りていたケース
1部屋を自宅兼事務所、もう1部屋を事務所兼倉庫として借りていたケースです。税務調査の結果「1部屋は自宅、もう1部屋は事務所兼倉庫でしょう」という整理になり、事務所兼倉庫の1部屋分だけが経費として認められ、自宅兼事務所の部屋は経費として認められませんでした。
■ 観葉植物(帳簿上は賃貸事務所に置いているはずが実際は自宅に)
帳簿上は賃貸に出している先の事務所に置いているとして経費計上していた観葉植物が、税務調査で実際には自宅に置かれていることが判明し、否認されました。税務調査では「そのものが実際にどこにあるか」まで調べられます。最近は税理士もリモートでしかやり取りせず現場に行かないケースがあるため、税理士側も注意が必要な事例です。
■ 雑費に混入した衣装代・マッサージ代・食事代
雑費という科目は何でも入れられる科目になりがちですが、雑費が多すぎるとそもそもお尋ねが来やすいです。雑費の中に衣装代・マッサージ代・食事代などが細々と混入していた場合、これらは経費性が認められないとして全額否認されました。
■ 日付が書いていない領収書
日付のない領収書を雑費として計上していたケースです。日付がない領収書は、自分でメモを取るか領収書の余白に書き込むべきです。「何の経費かわからないから雑費に入れておこう」という対応では、客観性が全くないとして否認されます。経費にするなら日付・何の仕事のために使ったか・誰と食事をしたかをメモしておくことが必須です。
📌 ポイント
科目(接待交際費・会議費・消耗品費など)は何でも構いません。科目の違いで税額は変わらないので、あまり気にしなくて大丈夫です。大切なのは経費としての実態と証拠があるかどうかです。
📝 このセクションのまとめ
- 交通系ICカードの利用履歴は鉄道会社への反面調査で丸裸になる
- 家賃按分はなんとなくの目分量ではなく面積で計算する
- 備品は帳簿上の場所ではなく実際に置いてある場所で判断される
- 雑費が多すぎるとお尋ねが来やすい
- 領収書には日付・目的・相手先を必ずメモしておく
経費判断で知っておくべき重要な留意点
今回紹介した内容はあくまでも個々の実例です。状況が違えば経費かどうかの判定は全く異なってきます。
| 判定に影響する要素 | 内容 |
|---|---|
| 職業 | 同じ経費でも職業によって直接性の判断が変わる |
| 収入規模 | 収入の規模によって経費の妥当性の判断が変わる |
| 立ち振る舞い | 過去の申告状況や誠実さが調査官の心証に影響する |
| 調査官の個性 | 細かいことを言う調査官もいれば、おおらかな調査官もいる。ノルマ達成状況によっても対応が変わる |
実例として、FXをやっていた人がFX用のパソコン代すら認められなかったという判例があります。本来FXをやっている人がパソコンを使うのは当たり前で、通常なら100%経費です。しかしその人は過去何年間も無申告(確定申告をしていなかった)という心証の悪さから、「どうせそのパソコンもFX以外のことに使っていたんでしょう」と言われてしまい、否認されました。
📌 ポイント
裁判で反省の色が濃いと量刑が軽くなるのと同じように、税務調査でも日頃の立ち振る舞いや誠実な申告姿勢が心証に大きく影響します。「バレないだろう」と思っていることはだいたいバレやすいです。
また、仕事仲間が「これを経費に入れているから自分も入れていいですか」という相談をよく受けますが、他人の事例をそのまま自分に当てはめるのは危険です。同じ仕事でもやり方が違いますし、税務調査で戦えるかどうかは全く別の話です。最終的には自己責任・自己判断で、3つのポイント(直接性・客観性・収益性)を自分で説明できるかどうかを基準にしてください。
📝 このセクションのまとめ
- 経費の判定は職業・収入・立ち振る舞い・調査官によって変わる
- 無申告など心証が悪いと通常認められる経費も否認されることがある
- 他人の事例をそのまま自分に当てはめるのは危険
- 「バレないだろう」と思っていることはだいたいバレやすい
- 3つのポイントを自分で説明できるかどうかが経費計上の判断基準
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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