税務調査

税務調査で狙われやすい確定申告書の特徴8選|個人事業主が提出前に確認すべきポイントを税理士が解説

税務調査で狙われやすい確定申告書の特徴8選|個人事業主が提出前に確認すべきポイントを税理士が解説
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確定申告書を提出する前に、税務調査のターゲットになりやすい8つの特徴を確認しておこう。

税務調査の基本知識:強制調査と任意調査の違い

税務調査にはざっくり2種類あります。強制調査任意調査です。

強制調査は、ドラマで見るような「捜査令状を持って突然やってくる」タイプの調査です。明らかに脱税の証拠を掴んでいる場合に行われるもので、一般の個人事業主に入ることはほぼありません。

今回の記事で大前提となるのは任意調査です。定期的に5年前後に1回入られるもので、事前に事業所または顧問税理士に連絡が来て、日取りを決めてから実施されます。突然来るわけではないので、その点はご安心ください。

📌 ポイント

  • どちらかといえば個人より法人の方が調査対象になりやすい(事業規模が大きいため)
  • 赤字の事業所より黒字の事業所の方が調査対象になりやすい
  • 個人事業主に調査が入るのはごくごく稀なケースだが、絶対ではない

📝 このセクションのまとめ

  • 税務調査には強制調査と任意調査の2種類がある
  • 個人事業主が対象となるのは主に任意調査で、事前連絡がある
  • 稀ではあるが、個人事業主でも調査対象になることはある

【記載ミス系①】還付加算金が記載されていない

税務調査で狙われやすい確定申告書の特徴、1つ目は還付加算金が記載されていないケースです。

還付加算金とは何かというと、税金を払いすぎた場合に返してもらえる「利息相当額」のことです。例えば、源泉徴収された税金や、予定納税(前年の税額の3分の1を先に納める制度)を支払っていて、確定申告をしてみると所得が低かった・赤字だったというケースでは、その源泉徴収税額や予定納税額の全部または一部が還付されます。

そしてその還付額に対して利息が付くのですが、これが「還付加算金」です。

項目税務上の扱い
所得税の支払い経費にならない
所得税の還付金(元本部分)収入にもならない
還付加算金(利息相当)雑所得として課税対象

申告書への記載方法は以下の通りです。

  1. 申告書第2表「所得の内訳」欄に「雑所得(その他)」として「還付加算金 ○○円」と記載する
  2. 第1表の「収入金額」の雑所得欄に転記する
  3. 還付加算金から引ける経費はないため、所得金額の雑所得(その他)欄(9番)にそのまま同額を記載する

⚠️ 注意

還付加算金は国税当局が把握している数字です。記載がなければ申告漏れとして指摘される可能性があります。特に金額が大きい方は必ず確認してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 還付加算金は雑所得として課税対象になる
  • 国税当局が把握しているため、記載漏れはすぐ指摘される
  • 第2表の所得の内訳欄と第1表の雑所得欄に必ず記載する

【記載ミス系②】家事按分をしていない

2つ目は家事按分をしていないケースです。個人事業主の支出は次の3種類に分かれます。

種類内容経費計上
必要経費事業に関連する支出全額OK
家事関連費(家事按分)プライベートと仕事の両方にまたがる支出一部OK(按分が必要)
家事費家計費・生活費・娯楽費・医療費・生命保険料などNG

家事関連費の代表的な例としては以下のものがあります。

  • 自宅兼オフィス・自宅兼店舗の家賃や水道光熱費
  • 仕事とプライベートを兼用している携帯電話代
  • 仕事とプライベートを兼用している車の維持費

所得税法上、これらは原則として経費に落とせませんが、「業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合」はその部分について経費算入が認められます。

家事関連費を経費に落とすための3つのルールは次の通りです。

  1. 実際に仕事でちゃんと使っていること
  2. 仕事で使っている割合の計算根拠がちゃんとあること(主観ではなく客観的に説明できること)
  3. 申告書・決算書に正しく記載していること

📌 ポイント:使用割合の説明例(家賃の場合)

例えばオフィス兼家賃の場合、「独身でワンルームのときは仕事スペースが半分だったので経費割合50%」→「結婚して2LDKに引っ越して仕事スペースの比率が縮小したので20%」→「再び引っ越して40%」というように、ライフステージの変化と経費割合の変化をストーリーとして説明できれば完璧です。

⚠️ 注意

仕事とプライベートの両方にまたがる支出を100%経費計上するのはNGです。一部を自己否認(家事按分)しておくことが必要です。青色申告決算書の2ページ目「地代家賃の内訳」欄で、総額・按分割合・経費計上額を明示しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 個人事業主の支出は「必要経費」「家事関連費」「家事費」の3種類
  • 家事関連費は客観的な根拠のある按分割合で一部のみ経費計上する
  • 100%経費計上は調査で否認されるリスクが高い

【記載ミス系③】自家消費・家事消費の計上漏れ

3つ目は自家消費(家事消費)の計上漏れです。これは一定の業種に限った話ですが、見落としやすいポイントです。

例えば、八百屋さんや飲食店などで、事業主が自分の商品を自分で食べることがありますよね。所得税法では、こういった「事業用の商品を自分で消費した場合」は売上として計上する必要があります。

その理由は「収益費用対応の原則」にあります。仕入れた分は経費に落としているわけですから、それに対応する売上を個別に計上しなければならないのです。もちろん、その仕入れを経費から外しているなら計上は不要ですが、原則として売上計上がルールです。

税法自家消費の計上基準
所得税売価の70%以上
消費税売価の50%以上

⚠️ 注意

確定申告書には業種が記載されます。税務当局はその業種を見るだけで「自家消費・家事消費があるかどうか」を判断できます。金額の計上漏れがあれば指摘される可能性は非常に高いです。青色申告決算書の該当欄(自家消費・家事消費の欄)に必ず記載しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 八百屋・飲食店など商品を扱う業種は自家消費を売上計上する必要がある
  • 所得税は売価の70%以上、消費税は50%以上が計上基準
  • 業種から計上漏れはすぐ見抜かれるため必ず記載する

【脱税疑惑系④⑤⑥】増収減益・赤字決算・丸い数字ばかり

ここからは、脱税を疑われる「見た目」の問題です。記載ミスではなく、申告書・決算書全体の数字のパターンから調査対象になりやすいケースです。

国税には「KSK(国税総合管理)システム」があり、全業種の平均的な利益率などのデータが蓄積されています。申告書・決算書の数字が不自然と判断されると、そのデータが抽出されて調査対象になる仕組みです。

④ 増収減益(PL損益計算書が増収減益)

項目前年当年変化
売上1,000万円1,500万円+50%
経費500万円1,100万円+120%(売上増加率を超える)
利益500万円400万円減少

売上が伸びているのに経費がそれ以上に増えて利益が減少しているケースです。税務当局は3期分の決算書を並べて比較するため、このような動きがあれば目をつけられます。ただし、増収減益自体が悪いわけではありません。仕込みの年や設備投資の年はこういった状況になることもあります。

⑤ 赤字決算が続いている

個人事業の場合、法人と違って「役員報酬」という経費の概念がありません。事業所得(利益)が自分の生活費の財源でもあります。それがマイナスの状態が続いているということは、「どうやって生活しているのか」という疑問を持たれることになります。

項目法人(赤字でも問題ない理由)個人事業(赤字が続くと疑われる理由)
生活費の財源役員報酬(経費)として別途確保できる事業所得(利益)から直接支払う必要がある
赤字時の生活役員報酬があれば問題なし赤字なのに生活できている理由の説明が必要

個人事業の利益から実際に支払うものは次の通りです。

  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険料・国民年金
  • 借入金の返済元本(経費にならない)
  • 自分の生活費

不自然に赤字が続いている場合は、相続財産・多額の貯蓄・その他の収入源がない限り疑われる可能性が高いです。

⑥ 記載されている数字が丸い数字ばかり

⚠️ 注意

例えば、売上・経費・利益のすべてがきれいな丸い数字(100万・200万・50万など端数がない数字)ばかりの申告書は非常に不自然です。実際の取引では端数が出るのが当たり前で、会計事務所の実務でもこのような申告書はほぼ見たことがありません。証拠なしに税金がかからないように数字を作ったと疑われても仕方のない状態です。

📝 このセクションのまとめ

  • 国税KSKシステムが3期比較で不自然な数字の動きを検出する
  • 増収減益・赤字決算継続・丸い数字ばかりは調査対象になりやすい
  • 赤字決算が続く場合は生活費の財源を説明できるようにしておく

【脱税疑惑系⑦】外注費・支払手数料などの金額が異常に大きい

7つ目は外注費・支払手数料・広告宣伝費・雑費などが異常に大きいケースです。これらの科目は脱税に利用されやすいため、税務当局が特に注目します。

外注費や支払手数料を経費として認めてもらうためには、以下の点を説明できるようにしておく必要があります。

  • 実態があるか:実際にサービスを受けた事実があるか
  • 支払先の情報:支払先の社名・本店所在地を明確に言えるか
  • 性質の確認:交際費や寄付金的なものではないか(単なるお礼・寄付は経費にならない)
  • 契約書の有無:契約書が存在するか
  • 金額の根拠:特に高額の場合、どんな業務に対していくら払っているか説明できるか
  • 成果物・請求書:レポートや書面などの成果物、請求書、支払証拠があるか

📌 ポイント

税務調査官は「何か脱税をしている」という前提で疑ってかかるのが仕事です。疑われること自体は避けられませんが、正当な経費であることを示す証拠・書類を事前に整えておくことで、スムーズに対応できます。真面目にやっている方こそ、準備をしっかりしておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 外注費・支払手数料・広告宣伝費・雑費が異常に大きいと調査対象になりやすい
  • 支払先情報・契約書・請求書・成果物・支払証拠を整えておく
  • 交際費や寄付金的な性質のものは外注費として計上できない

【脱税疑惑系⑧】所得税申告書と消費税申告書の売上金額が違う

最後の8つ目は、所得税申告書に記載されている売上と、消費税申告書に記載されている課税売上高の数字がずれているケースです。特にインボイス登録をして今年から消費税の申告書デビューをした方は注意が必要です。

所得税の申告書では、税抜き経理が標準で売上を計上します(消費税免税事業者の場合は税込み)。消費税の申告書では「課税売上高」として税抜きの金額が記載されます。この2つの数字が一致していれば問題ありませんが、ずれている場合は売上漏れを疑われます。

ただし、業種によっては数字がずれること自体は全くおかしくありません。代表的な例を確認しておきましょう。

業種・収入の種類所得税上の売上消費税上の課税売上ずれる理由
大家業(住居用アパート)計上あり非課税(計上なし)住居の賃料は消費税非課税
大家業(テナント・駐車場)計上あり計上ありテナント・駐車場は消費税課税
YouTuberのGoogleアドセンス収入計上あり課税対象外(計上なし)消費税が含まれていないため
YouTuberの国内企業タイアップ収入計上あり計上あり国内企業からの対価は消費税課税

大家業の場合、住居用の家賃収入は消費税非課税なので所得税上の売上(例:1,200万円)と消費税上の課税売上(例:600万円)がずれていても問題ありません。しかし、一般の事業主でこのようなずれが生じていると「売上に何か漏れがあるのでは」と調査対象になる可能性があります。

実際に、所得税申告書と消費税申告書の売上のずれが原因で税務調査に入られた事例があります。

⚠️ 注意

YouTuberの場合、Googleアドセンス収入は消費税課税対象外ですが、国内企業からのタイアップ・企業案件収入は消費税課税対象です。この区別を誤ると消費税申告書への計上漏れが生じ、調査対象になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 所得税申告書と消費税申告書の売上がずれていると調査対象になりやすい
  • 大家業や一部の収入種別では正当な理由でずれることがある
  • 一般事業主でずれがある場合は必ずその理由を説明できるようにしておく

税務調査で狙われないための対策:「特殊事情」欄を活用する

④〜⑧のような「脱税を疑われる見た目」になってしまっている方でも、できる対策があります。それが青色申告決算書3ページ目の「本年における特殊事情」欄への記載です。ほとんどの方がこの欄を空白にしていますが、ここに理由を書くだけで税務当局からの印象が大きく変わります。

記載例としては以下のような内容です。

  • 「今年は人材投資・設備投資があり赤字決算となったが、来年以降は黒字の見通しが立っている」
  • 「決算書に記載されている外注費○○万円は、今年から製造工程の一部を外注化したためのものである」
  • 「消費税申告書上の課税売上高と所得税申告書上の収入金額の差額は、YouTubeのGoogleアドセンス収入(消費税課税対象外)○○万円によるものである」

📌 ポイント

「税務当局に手の内を見せない方がいいのでは」と思われるかもしれませんが、これは逆効果です。ちゃんとやっている事業者が情報を開示することで、「内部管理体制が整った、しっかりした事業所なので税務調査に入る必要はない」と判断されるケースが意外と多くあります。真面目にやっている方ほど、この欄を積極的に活用してください。

なお、法人の場合も法人事業概況説明書の2枚目下部の特殊事情欄を同様にフル活用することをお勧めします。

📝 8項目の総まとめ

【記載ミス系:提出前に必ずチェック】

  • ① 還付加算金が雑所得として記載されているか
  • ② 家事関連費が適切に按分されているか(100%計上はNG)
  • ③ 自家消費・家事消費が売上として計上されているか(飲食店・八百屋など)

【脱税疑惑系:特殊事情欄に理由を記載して対策】

  • ④ 増収減益になっていないか(なっていても理由を記載)
  • ⑤ 不自然に赤字決算が続いていないか
  • ⑥ 数字が丸い数字ばかりになっていないか
  • ⑦ 外注費・支払手数料・雑費が異常に大きくないか
  • ⑧ 所得税申告書と消費税申告書の売上がずれていないか(ずれている場合は理由を記載)

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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