確定申告後に税務署から連絡が来る原因と対策を税理士が解説
確定申告書を提出した後に税務署から電話・書面・呼び出しが来る原因と対策、ペナルティの違いを詳しく解説します。
確定申告後も安心できない?税務署からの連絡とは
確定申告書を提出し終えて「ひと安心」と思っている方は多いかと思います。しかし実際には、だいぶ後になってから税務署から電話がかかってきたり、書類が送られてきたり、最悪の場合は呼び出しを受けてしまうこともあります。
今回のお話は、いわゆる「税務調査」ではなく、「簡易な接触」と呼ばれる行政指導についてです。この行政指導は主に電話によって行われることが多く、「ここが間違っている可能性があるので直してください」「ここを確認しておいてください」といった内容が伝えられます。それ以外にも書面で修正を要求してきたり、税務署に呼び出されることもあります。
📌 ポイント
行政指導(簡易な接触)は、言ってみれば「注意」のようなもので、法的拘束力はありません。修正してくださいと言われても、それに従うかどうかは任意となっています。ただし、無視してしまうと税務調査に発展することもあるため、基本的には従った方が良いでしょう。
税務調査についても多くは任意調査ですが、税務調査を無視するとよほどの理由がない限り「調査拒否」として罰則規定が適用されることもあります。その点で、簡易な接触(行政指導)と税務調査は法的に大きく異なります。
📝 このセクションのまとめ
- 確定申告後に税務署から連絡が来るケースは珍しくない
- 連絡の多くは「行政指導(簡易な接触)」であり、法的拘束力はない
- 無視すると税務調査に発展する可能性があるため、従うのが基本
簡易な接触と税務調査の違い・件数の比較
個人事業者の方の中には、行政指導と税務調査の違いが分からないという方も多いかと思います。税務署から電話がかかってくることに変わりはないため、軽いお尋ねである行政指導を「税務調査が来た」と言っている方も多くいます。しかし厳密には税務調査ではなく、行政指導という扱いになります。
なお、税務署では「調査等」という呼び方をしており、これは税務調査と行政指導(簡易な接触)の両方を含む概念です。
| 区分 | 令和6年度の件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 調査等(合計) | 約73万件 | 100% |
| 簡易な接触(行政指導) | 約69万件 | 約94% |
| 税務調査(実調査) | 約4万6,000件 | 約6% |
簡易な接触は税務調査の約15倍の件数となっており、全体の94%程度が簡易な接触です。小規模な事業者はほとんどが簡易な接触の対象だと思っておいて問題ないでしょう。
📌 ポイント:電話の意図を必ず確認しよう
税務署から初めて連絡が来た場合、どちらか分からないことがあります。その場合は電話口の担当者に「これは行政指導ですか?それとも税務調査の一環ですか?」と直接聞いてください。税務署職員にはその旨を答える義務があります。また、行政指導を行う場合は法律上、納税者にその旨を告げなければなりませんが、それを省略する職員もいるため、必ず電話の意図を確認するようにしましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 令和6年度の調査等73万件のうち、94%が簡易な接触
- 実際の税務調査(実調査)は約4万6,000件にとどまる
- 電話が来たら「行政指導か税務調査か」を必ず確認する
行政指導(簡易な接触)で指摘されやすいミスとは
簡易な接触では、明らかに申告書上で分かってしまうミスにフォーカスして「ここが間違っています」「ここが申告漏れです」と指摘し、「直しておいてください」と伝えてくることが非常に多いです。単純ミスだと理解できれば、速やかに従って修正申告を行い、追加で納税すればそれ以上の問題にはなりません。
以下に、行政指導の対象となりやすい代表的なミスをまとめます。
- 収入の申告漏れ(給与・報酬・家賃収入)
- 控除の要件を満たしていないのに控除を適用している
- 扶養控除・特定親族特別控除の重複適用
- 不動産売却(譲渡所得)の申告漏れ
- 申告書の単純な計算ミス
📝 このセクションのまとめ
- 簡易な接触は申告書を見ただけで分かる明らかなミスが対象
- 速やかに修正申告・追加納税すれば、それ以上の問題にはならない
収入の申告漏れ:給与・報酬・家賃収入の基準を知ろう
収入の申告漏れは、行政指導の対象となる最も代表的なケースです。1か所からしか給与をもらっていない方は申告を漏らすことはほとんどありませんが、複数の勤務先がある場合はうっかり1か所の給与を申告し忘れることがあります。
税務署には支払い調書・源泉徴収票という形で、あなたに収入を支払った側から報告が入ります。その報告と確定申告書の内容が一致しなければ、申告漏れとして判断されてしまいます。報告義務が生じる金額の基準は以下のとおりです。
| 収入の種類 | 税務署への報告義務が生じる金額 | 書類の名称 |
|---|---|---|
| 給与(源泉所得税が引かれるもの) | 年間50万円超 | 源泉徴収票(支払調書) |
| 業務委託報酬など | 年間5万円超 | 支払調書 |
| 法人から支払われた家賃(不動産オーナー・個人事業主) | 年間15万円超 | 支払調書 |
報酬の場合は給与よりもさらに基準が低く、年間5万円を超える報酬をもらっていれば税務署は把握していると思っておいた方が良いでしょう。家賃についても年間15万円という非常に低い金額が基準となっています。
⚠️ 注意
上記の基準以下であっても、税務署が日々の税務調査で蓄積した膨大なデータベース(取引情報・所得金額など)から申告漏れが発覚することがあります。「少額だから大丈夫」とは思わないようにしましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 給与は年間50万円超、報酬は年間5万円超、家賃は年間15万円超で支払い側に税務署への報告義務が生じる
- 申告書と支払調書の内容が一致しなければ申告漏れとして判断される
- 基準以下でも税務署のデータベースから発覚する可能性がある
控除の適用ミス:所得要件・重複適用に要注意
控除の要件を満たしていないのに控除を適用してしまうミスも、申告書を見ただけで税務署に分かってしまうため、行政指導の対象になりやすいです。代表的な控除の所得要件を確認しましょう。
| 控除の種類 | 所得要件 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除(令和3年以前居住) | 合計所得金額3,000万円以下 | — |
| 住宅ローン控除(令和4年以降居住) | 合計所得金額2,000万円以下 | — |
| 住宅ローン控除(40㎡以上50㎡未満) | 合計所得金額1,000万円以下 | 床面積要件あり |
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | 本人の所得金額1,000万円以下 | 生計を一にする配偶者が対象 |
| ひとり親控除 | 本人の所得金額500万円以下 | — |
自分の所得を正確に把握していなかったために所得要件を超えているにもかかわらず控除を申告してしまうケースは、申告書を見ただけで税務署に分かってしまいます。必ず自分の所得金額を把握した上で各控除を申告するようにしてください。
また、扶養控除・特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の子供の控除)については、夫婦のどちらかでしか適用できません。1人の子供について夫婦双方が控除を申告してしまう重複適用は認められません。夫婦双方の確定申告書があれば重複は簡単に分かってしまうため、お尋ねの対象となります。
📌 ポイント:所得金額調整控除はW適用が可能
扶養控除などは夫婦どちらかでしか適用できませんが、所得金額調整控除は夫婦どちらも適用できます。基本的には年収850万円以上の方が対象で、夫婦ともに850万円を超えている場合は2人とも1人の子供について適用可能(W適用)です。扶養控除との違いを混同しないよう注意してください。また、所得金額調整控除を漏らしてしまうと非常にもったいないため、要件を満たしている方は必ず確認しましょう。
なお、例外的なケースとして、夫婦のどちらかが年の途中で出国したり亡くなったりした場合は、その時の状況に応じて扶養控除を適用できることがあります。結果的にその年については夫婦どちらも扶養控除などが適用できるケースも存在しますが、これはかなり稀なケースです。基本的には扶養控除・特定親族特別控除は夫婦どちらかでしか適用できないと覚えておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 住宅ローン控除・配偶者控除・ひとり親控除にはそれぞれ所得要件がある
- 扶養控除・特定親族特別控除は夫婦どちらかでしか適用できない(重複はNG)
- 所得金額調整控除は夫婦W適用が可能(年収850万円以上が対象)
不動産売却・計算ミスもすぐにバレる
不動産を売却したにもかかわらず譲渡所得を申告していない場合も、すぐにお尋ねの対象となります。不動産売却の情報は登記情報から税務署が把握できるため、あなたがいつ頃不動産を売却したかを前もって税務署は把握しています。
そのため、遅くとも確定申告の時期までには税務署から通知が送られてきます。これは「譲渡所得をきちんと申告してください」というメッセージです。この通知が来ているにもかかわらず申告しなければ、当然行政指導(お尋ね)の対象となりますので注意してください。
また、申告書の単純な計算ミス(縦の合計が間違っている、端数処理が間違っている、数字を転記する箇所が間違っているなど)も速やかにお尋ねの対象となります。
⚠️ 注意:手書き申告は絶対にやめましょう
単純な計算ミスは、会計ソフトや国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば基本的に防ぐことができます。手書きによる申告はミスが発生しやすいため、必ずこれらのツールを活用してください。
📝 このセクションのまとめ
- 不動産売却の情報は登記情報から税務署が把握しており、譲渡所得の申告漏れはすぐに発覚する
- 税務署から事前通知が来ているにもかかわらず申告しないと行政指導の対象になる
- 計算ミスは会計ソフト・確定申告書等作成コーナーで防げる。手書き申告は避けること
行政指導 vs 税務調査:ペナルティ(加算税)の違い
行政指導の段階で修正するか、税務調査が入ってから修正するかで、後々のペナルティが大きく変わります。申告した税額が少なかった場合に追加で納税する際のペナルティを過小申告加算税、全く申告していない場合のペナルティを無申告加算税といいます。
| タイミング | 過小申告加算税 | 無申告加算税 |
|---|---|---|
| 行政指導に従って修正申告 | 0%(かからない) | 5% |
| 税務調査の通知後・調査開始前に修正 | 50万円以下:5% 50万円超:10% | 50万円以下:10% 50万円超〜300万円以下:15% 300万円超:25% |
| 税務調査開始後(更正の予知後)に修正 | 50万円以下:10% 50万円超:15% | 50万円以下:10% 50万円超〜300万円以下:15% 300万円超:25% |
例えば、本来50万円の税金を払わなければならなかった場合に過小申告加算税が10%だとすると、さらに5万円が上乗せされて税金を払わなければなりません。時間が経つほど、また申告漏れの金額が多くなるほど、加算税のパーセンテージが増えていきます。
⚠️ 注意:延滞税は行政指導でもかかる
延滞税(納税が遅れたことによる利息の意味合いを持つペナルティ)については、行政指導の場合でも税務調査の場合でも同様にかかります。行政指導だからといって延滞税が免除されるわけではありませんのでご注意ください。
📌 ポイント
行政指導(お尋ね)の段階で速やかに修正申告をすれば、過小申告加算税はゼロ、無申告加算税も5%で済みます。税務調査に発展してからでは加算税が大幅に引き上がるため、お尋ねが来た段階で早めに対応することが最善策です。
📝 このセクションのまとめ
- 行政指導の段階で修正すれば過小申告加算税は0%、無申告加算税は5%で済む
- 税務調査後は加算税が大幅に引き上がり、無申告で300万円超の場合は25%になる
- 延滞税は行政指導・税務調査を問わずかかる
今後はAIで調査対象を選定:簡易な接触はさらに増える
数年前から国税庁もAIを活用して税務調査や行政指導の対象者を選定しています。従来は税務署職員が、同業他社と比較した利益率の低さや売上・利益の変動の大きさといった数値的な要素をもとに調査先を決めていましたが、最終的には人が判断していました。
今後はAIを駆使して調査先を選定するようになります。AIはスコアリングも可能で、例えば「Aさんは脱税している可能性が80%、Bさんは70%」といった判断もできます。どちらか1件しか調査に入れない場合はAさんを優先する、といった効率的な選定が可能になります。
📌 ポイント
税務署としては、手間のかかる税務調査よりも簡易な接触でどんどん申告漏れを摘発したいという方針があります。国税庁のレポートにもその趣旨が記載されており、今後も簡易な接触(行政指導)が増えていく可能性があります。税務署職員の人手不足もあり、効率重視で調査・行政指導を行う傾向は今後さらに強まると考えられます。
📝 このセクションのまとめ
- 国税庁はAIを活用して調査対象者を効率的にスコアリング・選定している
- 今後は簡易な接触(行政指導)がさらに増加する可能性がある
- 申告ミスや申告漏れは以前より発覚しやすくなっていると考えるべき
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士ナガイ の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士ナガイを応援しています!
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