節税対策

節税しながら退職金を貯める方法6選|税理士が法人向けに徹底解説

節税しながら退職金を貯める方法6選|税理士が法人向けに徹底解説
e_zeirishi

法人経営者が節税しながら退職金を効率よく積み立てる6つの方法を徹底解説します。

「節税しながら退職金を貯める」は厳密には課税の繰り延べ

節税をしながら退職金を貯める方法は非常に画期的に聞こえますが、厳密には節税ではなく「課税の繰り延べ」、つまり税金の先送りに過ぎません。A級ベンゼ(完全な節税)となるようなものではないということをまず補足しておきたいと思います。

ただし、これは決して悪いものではありません。課税を繰り延べることによって、事業上の資金繰りをコントロールできるという点に大きな意味があります。

📌 ポイント

今回ご紹介する6つの方法を検討する前に、まず「退職金をいくらまで経費に落とせるのか」「退職金の手取りはどれくらいか」「その原資をどう確保するか」という3点を押さえることが非常に大切です。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金の積み立てを活用した節税は、厳密には「課税の繰り延べ」である
  • 資金繰りのコントロールに意味があり、活用する価値は十分にある

役員退職金の適正額と税負担の優遇を理解する

6つの制度を検討する前に、役員退職金がいくらまで経費として認められるのかを理解しておく必要があります。

実務上よく使われる計算式は以下のとおりです。

計算要素内容
最終役員報酬月額退職直前の月額報酬
役員在籍年数役員として勤務した年数
功績倍率代表取締役社長の場合、一般的に3倍が適用されることが多い

適正な役員退職金の計算式:最終役員報酬月額 × 役員在籍年数 × 功績倍率

実務上は役員退職金規定を従業員の規定とは別に作成します。ただし、この計算式に基づいて計算しても「不相当に高額」と判断された場合や、退職金規定がそもそも存在しない場合は、税務上否認されてしまいますのでご注意ください。

⚠️ 注意

「不相当に高額」かどうかの基準は、役員の業務従事期間・退職の事情・同業種同規模の法人における退職金支給額(同じ税務署管内の基準)などをもとに判断されます。中小企業のデータは取得が難しいですが、上記の計算式の範囲内に収まるよう設定することが重要です。

次に、退職金を受け取る側の税負担について確認します。退職金は「退職所得」として所得税法上の税制優遇があります。以下の表で給与所得との負担割合を比較してみましょう(扶養家族0・勤続年数30年の前提)。

受取方法年収(相当額)3,000万円の場合年収(相当額)1億円の場合
給与として受け取る場合
(社会保険料・所得税・住民税含む)
約39.2%約49.5%
退職金として受け取る場合約5.8%約18.4%

同じ金額でも、給与として受け取ると約40〜50%の負担になるのに対し、退職金として受け取るとわずか5〜18%程度で済む、非常に優遇された制度です。

⚠️ 注意

退職金を受け取る際は、「退職所得の受給に関する申告書」を必ず作成・提出してください。この申告書の提出がなければ、一律20%の税負担が発生してしまいます。

また、退職金と同時期に小規模企業共済の給付金やiDeCoの満期解約金を受け取った場合、これらも退職所得として扱われるため、合算することで税負担がさらに跳ね上がる場合があります。受け取るタイミングには十分注意してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員退職金の適正額は「最終報酬月額 × 在籍年数 × 功績倍率(社長は一般的に3倍)」で計算する
  • 退職金規定を必ず作成し、不相当に高額にならないよう注意する
  • 退職金は給与に比べて税負担が大幅に軽く、非常に有利な受け取り方
  • 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れずに

方法①:小規模企業共済

節税しながら退職金を貯める方法の1つ目は小規模企業共済です。小規模・中小企業の役員も個人事業主も加入できる制度で、iDeCoなどよりも優先して活用していただきたい制度です。

項目内容
加入対象小規模・中小企業の役員、個人事業主
掛け金月額1,000円〜7万円(1,000円単位で増減可)
一括払い1年分に限り可能
節税効果掛け金が全額所得控除になる(所得税・住民税の節税)
予定利回り1%
運営主体中小企業基盤整備機構(政府系組織)
解約・受け取り廃業・死亡・65歳以上などで解約可能
受け取り時の税制退職所得または雑所得(年金受け取りの場合)として税制優遇あり
貸付機能あり(金利0.9〜1.5%、期限一括返済)

⚠️ 注意

任意解約(好きな時に解約する場合)は、掛け金期間が20年未満だと元本割れします。ご自身の年齢を考慮した上で加入を検討してください。また、貸付機能はあくまで緊急時の事業資金用です。老後資金として貯めているものなので、使いすぎには注意が必要です。

実際に開業当初は月額5,000円からスタートし、1万円→1万5,000円→3万円と徐々に増額して、現在は月額7万円を掛けています。無理のない範囲で少額から始めて増額していくのがおすすめです。

📝 このセクションのまとめ

  • 役員・個人事業主ともに加入でき、iDeCoより優先して活用したい制度
  • 掛け金は全額所得控除になり、予定利回り約1%と安全性が高い
  • 20年未満の任意解約は元本割れするため、長期での利用が前提

方法②:生命保険(長期平準・養老保険)

2つ目は生命保険を活用する方法です。こちらは会社経営者向けの方法になります。生命保険には保険会社の利益が含まれていることは覚えておく必要がありますが、節税・貯蓄・保障をまとめて手に入れられるのが最大のメリットです。

節税効果は以前に比べて薄れており、基本的には最大4割までしか節税効果がありません。それでも強制的に退職貯蓄ができ、保障もついてくるため、普通の貯金だけでは難しいという方には活用するメリットがあります。

経営者向けの定番は長期平準定期保険です。その活用の流れは以下のとおりです。

  1. 保険に加入し、保険料(最大4割)を経費として計上して節税
  2. 退職のタイミングで保険を解約し、解約返戻金を受け取る
  3. 解約返戻金は利益として上乗せされるため、多額の納税が発生する
  4. この課税を打ち消すために退職金を支給し、節税する

📌 ポイント:養老保険(従業員向け退職金制度)

財務体質が良く資金繰りに余裕がある会社には養老保険を活用するケースも多いです。掛け金の5割(半分)を損金として経費計上できるため、長期平準定期保険よりも節税メリットが大きいと言えます。

ただし、使いこなすには以下の条件があります。

  • 普遍加入が原則:役員・従業員、原則として全員が加入しなければならない
  • 社員数が多いほど多額のコストがかかる
  • 社長一人の一人会社では加入できない(家族以外の社員が必要)

⚠️ 注意

生命保険を活用した節税はあくまでも「課税の繰り延べ」です。永久に税金がなくなるわけではない点をご了承ください。

📝 このセクションのまとめ

  • 節税効果は最大4割。節税・貯蓄・保障を同時に実現できる
  • 長期平準定期保険が経営者向けの定番プラン
  • 養老保険は掛け金の5割損金算入が可能だが、全員加入が条件で使い勝手は難しい

方法③:iDeCo(個人型確定拠出年金)・企業型DC

3つ目はiDeCo(個人型確定拠出年金)または企業型DC(企業型確定拠出年金)です。企業型DCは「会社版iDeCo」とイメージしてください。

よく混同されるNISAとiDeCoの違いを整理しておきます。

項目NISAiDeCo
制度の種類投資制度(投資の税金が非課税)年金制度(個人向け確定拠出年金)
目的投資益の非課税老後資金の積み立て
節税効果運用益が非課税掛け金が所得控除(所得税・住民税の節税)
リスク投資なのでマイナスになる可能性あり投資なのでマイナスになる可能性あり

次に、iDeCoと企業型DCの違いを比較します。

項目iDeCo企業型DC
運営主体個人会社
掛け金の負担個人(会社員の場合)基本は会社負担
掛け金上限(会社員)月額23,000円(確定給付年金なしの場合)月額55,000円
一人会社での加入可能可能
商品の選択肢多いやや少ない
個人の社会保険料変わらない給与が下がることで削減効果あり(将来の社会保障も減るデメリットあり)

📌 ポイント:中小企業の福利厚生としての企業型DC

人手不足が続く昨今、企業型DCは福利厚生面での競争力を高める手段として有効です。会社が掛け金を負担してくれる企業型DCは、従業員にとって非常にメリットが大きく、iDeCoより優先度が高い場合が多いです。要件を満たせば、企業型DCに加入しながら個人でiDeCoを併用することも可能です。

また、企業型DCや小規模企業共済と同じ中小企業基盤整備機構が運営する制度として、中退共(中小企業退職金共済)特定退職金共済(商工会議所等が運営)があります。これらは純粋に従業員向けの制度であり、社長・経営者は加入できません。

  • 中退共:月額5,000円程度から掛けられる安全な制度
  • 特定退職金共済:月額1,000円程度から掛けられる

⚠️ 注意

中退共・特定退職金共済は、従業員が懲戒解雇などの不正退職をした場合でも、通常通り退職金が支払われます。これが嫌な経営者は生命保険など別の制度を使うケースが多いです。

📝 このセクションのまとめ

  • iDeCoは掛け金が所得控除になる年金制度。NISAとは別物
  • 企業型DCは月額55,000円まで会社が負担でき、一人会社でも加入可能
  • 中退共・特定退職金共済は従業員専用で、経営者は加入不可
  • 企業型DCは福利厚生の強化にも有効

方法④:経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

4つ目は経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済)です。厳密には退職金のために使うものではありませんが、節税しながら資金を積み立てる制度として紹介します。

得意先が倒産した際に、今まで積み立てた掛け金総額の最大10倍(最大8,000万円)の融資を無担保・無保証人で受けられる制度です。

項目内容
掛け金月額5,000円〜20万円(随時変更可)
積立上限800万円
損金算入掛け金全額経費(1年間の前払い分も全額経費計上可)
解約返戻率40ヶ月以上の掛け金で100%返戻
解約時の課税収益計上(課税の繰り延べ)
貸付機能解約手当金の範囲内で貸付可(金利0.99%、1年一括返済)
倒産時の融資無利子(ただし掛け金の大部分が没収される)

📌 賢い活用法

800万円に達した後も解約せずに持ち続けることができます。業績変動が激しい方は赤字の年に解約して資金を戻す(800万円以上の赤字があれば課税されない)という使い方が有効です。また、自分が退職するタイミングで解約して退職金に充当するという方法も賢い選択肢の一つです。

⚠️ 注意

  • 40ヶ月未満で解約すると元本が目減りします。
  • 倒産時の融資は無利子と書かれていますが、掛け金の大部分が没収されるため、実質的にはそれなりの金利負担と同等です。

📝 このセクションのまとめ

  • 掛け金全額が経費になり、最大800万円まで積み立て可能
  • 連鎖倒産防止のリスクヘッジをしながら節税できる
  • 40ヶ月以上掛けると100%返戻。退職時の解約で退職金原資にも活用可能

方法⑤:NISA(少額投資非課税制度)

5つ目はNISAです。これは会社で行うものではなく、個人として活用するものです。

NISAとは、株式投資をする際に一般口座・特定口座とは別の「NISA口座」を開設し、その中で投資をすることで、配当金や株の売却益にかかる約20%の所得税・住民税が非課税になる制度です。

2024年からスタートした新NISAでは、旧制度の積立NISAと一般NISAが合体し、大幅に使いやすくなりました。

項目旧:積立NISA旧:一般NISA新NISA
年間投資枠40万円120万円積立枠:120万円
成長投資枠:240万円
合計:360万円
非課税期間20年間5年間無期限
非課税保有限度額800万円600万円1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)
枠の再利用不可不可可能(売却した分の枠を再利用できる)

📌 新NISAの最大のポイント

新NISAは非課税期間が無期限になり、売却して空いた枠を再利用できるのが画期的です。1,800万円という枠を一度使ったら終わりではなく、売却後にまた投資に使えます。令和5年度税制改正の中で特に評価できる制度です。

個人的に資金に余裕がある経営者の方は、1,800万円の非課税枠を活用した投資を検討してみてください。

⚠️ 注意

節税ありきでNISAを始めるのは危険です。NISAはあくまで投資制度なので、投資の知識を身につけてから活用してください。iDeCoと違い途中でやめることはできますが、運用成績によっては損失が出る可能性もあります。

なお、2023年中は旧制度の一般NISA・積立NISAを引き続き活用し、2024年以降に新NISAへ移行するのがおすすめです。

📝 このセクションのまとめ

  • NISAは投資の利益が非課税になる個人向け制度
  • 新NISAは年間360万円・生涯1,800万円まで非課税・無期限・枠の再利用が可能
  • 投資の勉強をしてから活用することが大前提

方法⑥:育み基金(福祉育み企業年金機構)

6つ目はまだあまり知られていない比較的新しい制度、育み基金(正式名称:福祉育み企業年金機構)です。2018年からスタートした確定給付企業年金制度の一種で、厚生労働省の許可を受けて設立された退職金制度です。

項目内容
制度の種類確定給付企業年金
加入任意加入(役員・従業員それぞれが選択可)
掛け金(最低)1人あたり月額1,000円
掛け金(最大)給与の20%、かつ上限月額100万円
元本保証加入者の元本は基本的に確保される
企業型DCとの併用要件を満たせば可能(その場合DCの掛け金上限は月額27,500円)
解約一度加入すると解約不可

例えば役員報酬月額500万円の社長であれば、月額100万円まで掛けることができます。年間では1,200万円もの経費を作ることができるため、節税メリットは非常に大きいです。

加入要件は以下のとおりです。

  • 厚生年金の適用事業所であること
  • 2年連続赤字でないこと
  • 反社会勢力でないこと
  • 設立1年以上であること
  • 債務超過でないこと
  • 一人社長はNG(従業員が必要)

⚠️ 注意:デメリットと注意点

  • 一度加入すると解約できません。加入は慎重に検討してください。
  • 手数料が高い(従業員数が多いほどコスト増)
  • 給与が下がることで社会保険料の削減効果はあるが、将来の社会保障も減るリスクがある
  • 企業の追加負担リスク:運用成績が悪化した場合、従業員には満額支払われますが、不足分は会社(契約者)が負担しなければなりません。
  • まだ新しい制度のため、中小企業基盤整備機構のように100%安全とは言い切れない

📌 現時点での推奨スタンス

育み基金は話題性が高まっている制度ですが、まだ新しいため、現時点では顧問先への積極的な推奨は控え、もう少し様子を見て情報が揃った段階で検討するというスタンスをとっています。あくまで「最新の方法の一つ」として情報提供として捉えてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 2018年スタートの確定給付企業年金制度で、月額最大100万円まで掛けられる
  • 任意加入で節税メリットが非常に大きい一方、解約不可・企業追加負担リスクがある
  • 一人社長は加入不可。まだ新しい制度のため、導入には慎重な判断が必要

6つの方法の比較まとめ

以上6つの方法を整理すると、以下のようになります。

方法対象従業員も加入可個人事業主も可
①小規模企業共済役員・個人事業主
②生命保険(長期平準・養老保険)法人経営者(養老は従業員も)✓(養老保険)
③iDeCo・企業型DC役員・従業員✓(iDeCoのみ)
④経営セーフティ共済法人・個人事業主
⑤NISA個人(経営者・従業員問わず)✓(個人として)
⑥育み基金法人(従業員がいること)

また、従業員専用の制度として中退共(中小企業退職金共済)特定退職金共済があります。これらは経営者は加入できませんが、月額1,000〜5,000円程度から掛けられる安全な制度として、従業員の退職金制度として活用できます。

📌 組み合わせ活用のすすめ

どれか一つを単独で利用するだけでなく、資金に余裕がある方は複数の制度を組み合わせて活用することも可能です。それぞれの制度の特性を理解した上で、自社の状況に合った最適な組み合わせを検討してみてください。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

関連記事

中小企業の法人保険で失敗しない!よくある失敗事例3選と正しい活用法を税理士が解説
年内ギリギリ間に合う!個人事業主・フリーランスの駆け込み節税策5選【税理士が解説】
経営セーフティ共済の改正を税理士が解説|解約後2年間は節税不可に
     

東京エリア

千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング

関西エリア

大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング

関東エリア

首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング

中部エリア

製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング

九州・沖縄

九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング

その他地域

北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら