特定口座年間取引報告書の読み方と確定申告すべき人・しない方がいい人を税理士が解説
株の書類が届いたら確定申告すべき?損する人・得する人の違いを、報告書の読み方から配当控除・損益通算・外国税額控除まで徹底解説します。
株式投資に税金がかかるケースと確定申告の原則
証券会社で口座を開設しても、株の売買などの動きがなければ税金は関係ありません。しかし、次のような場合は税金がかかります。
- 配当金をもらった場合
- 株を買って売って儲かった場合(売却益が出た場合)
確定申告が必要かどうかの原則として、会社員で株式投資をしている場合、所得が20万円を超えたら所得税の確定申告が必須となっています。
配当に関してはほぼ税引前の配当額がそのまま所得になります。売却益に関しては、売却価格と購入時の差額から売却にかかった費用などを引いた残額が所得となります。
⚠️ 注意
「所得20万円以下なら申告不要」というルールは所得税だけのルールです。住民税にはこの金額基準がありません。1円でも利益が出れば住民税の確定申告が必要となります。
📝 このセクションのまとめ
- 配当金・売却益が発生したら税金がかかる
- 所得税の申告不要ラインは20万円超だが、住民税は1円でも利益があれば申告が必要
証券口座の種類と確定申告の有無
株式投資に関しては口座の種類によって申告の有無が変わります。大きく分けると次の4種類があります。
| 口座の種類 | 税金の計算 | 税金の徴収・納付 | 確定申告 |
|---|---|---|---|
| 一般口座 | 自分でやる | 自分でやる | 必須 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社がやる | 自分でやる | 必須 |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社がやる | 証券会社がやる | 原則不要 |
| NISA(新NISA) | ― | ― | 不要(非課税) |
最もメジャーなのは特定口座(源泉徴収あり)です。証券会社が税金の計算・徴収・税務署への納付まで全部やってくれるため、確定申告の義務はありません。実務上、ほぼ99.99%の方がこの口座を利用しているという印象です。
一般口座は税金の計算も徴収も自分でしなければならず、年間でたくさん売買している方は確定申告時に非常に大変です。一方で、税金がその都度引かれないため資金繰りが早いというメリットを活かす方もいますが、計算の面倒さと目先の資金繰りのどちらを取るかという話になります。
株式投資の税率は、原則として売却益・配当ともに所得税と住民税合わせて20.315%の税負担が発生します。
📌 ポイント
特定口座(源泉徴収あり)は「確定申告の義務がない」というだけで、申告してはいけないわけではありません。申告した方がお得になるケースが存在します。以下でそのパターンを詳しく解説します。
📝 このセクションのまとめ
- 口座は4種類。最もメジャーなのは特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収あり)は確定申告不要だが、申告した方が得な場合もある
- 税率は売却益・配当ともに20.315%
特定口座年間取引報告書の読み方
特定口座を利用して株式投資をしている方のところには、年が明けて1月10日以降に「特定口座年間取引報告書」が届きます。ネット証券の場合はネット上で閲覧する形になります。
報告書は大きく2つのブロックに分かれています。
- 上部:譲渡にかかる年間取引損益及び源泉徴収額等 → 株の売却益・売却損を計算するブロック
- 下部:配当等の額及び源泉徴収税額等 → 配当金などの収入額を示すブロック
上部の見方を例で確認しましょう。SBI証券の報告書の例では次のように読み取れます。
| 項目 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| ①譲渡の対価 | 3,794,855円 | 売却価格の合計 |
| ②取得費及び譲渡に要した費用 | 2,207,175円 | 購入原価+売却費用 |
| ③差引金額(売却益) | 1,587,680円 | 譲渡所得の金額 |
| 源泉徴収税額(所得税) | 243,151円 | 15.315%が徴収済み |
| 株式等譲渡所得割額(住民税) | 71,938円 | 5%が徴収済み |
下部の配当ブロックでは、年間の配当収入額と、それに対して徴収された所得税・住民税が確認できます。例えば年間配当収入873,201円に対して、所得税133,701円・住民税43,646円が徴収されています。税率は売却益と同じく所得税15.315%・住民税5%です。
この報告書を見ることで、証券会社が正しく税額を計算・徴収・納付してくれているかどうかを確認できます。
📝 このセクションのまとめ
- 報告書は「売却損益ブロック」と「配当ブロック」の2部構成
- 売却益・配当ともに所得税15.315%・住民税5%が源泉徴収されている
- 特定口座(源泉徴収あり)なら、この報告書で税金の処理が完結している
【事例1】配当控除を活用して税金を取り戻す方法
特定口座(源泉徴収あり)で確定申告をしなかった場合、株の儲けは「所得証明」に一切載りません。税金はかかっているものの、所得としては表に出てこない「隠れ所得」のような状態になります。
確定申告をすると株の儲けが表に出て給与などと合算されるため、次のような制限に引っかかる恐れがあります。
| 制限の種類 | 所得のボーダーライン |
|---|---|
| 配偶者控除の減少 | 所得900万円超 |
| 配偶者特別控除の消滅 | 所得1,000万円超 |
| 基礎控除の減少 | 所得2,500万円超(2,400万円から段階的に減少) |
| 住宅ローン控除が0に | 所得2,000万円超 |
また、国民健康保険に加入している方は、確定申告した瞬間に株の儲けが国保の計算対象に含まれ、保険料負担が大幅に重くなるケースもあります。さらに扶養から外れてしまう方もいます。
では逆に、確定申告した方がお得な人はどんな人でしょうか。それが配当控除を活用できるケースです。
📌 配当控除とは
配当所得の最大10%を所得税から控除してもらえる優遇税制です(住民税も最大2.8%の控除あり)。ただし、外国株式・不動産REIT等は対象外です。この控除を受けるには「総合課税」方式を選択する必要があります。
配当控除を選ぶと総合課税になり、所得税率は5%〜45%の超過累進税率で計算されます。一方、申告不要を選んだ場合は分離課税で一律約20%です。配当控除を選んだ場合の実質税率を見てみましょう。
| 課税所得の水準 | 所得税率(配当控除後) | 住民税率(控除後) | 合計税率 | 申告不要との比較 |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 0% | 7.2% | 7.2% | ▲13.1%お得 |
| 330万円以下 | 0% | 7.2% | 7.2% | ▲13.1%お得 |
| 695万円以下 | 10% | 7.2% | 17.2% | ▲3.1%お得 |
| 900万円以下 | 13% | 7.2% | 20.2% | ▲0.1%(ほぼ同じ) |
| 695万円超(申告不要) | ― | ― | 20.315% | 基準 |
課税所得が695万円以下であれば、配当控除を活用することで申告不要の場合(20.315%)よりも税率が下がり、節税になります。特に課税所得330万円以下の方は所得税がゼロになるケースもあります。
一方、課税所得900万円以下の方でも申告すれば20.2%と0.1%だけ下がりますが、確定申告の手間を考えると実質的なメリットはほぼありません。そのため、目安として課税所得695万円以下という数字が判断基準となります。
⚠️ 注意
課税所得695万円以下の方でも、国民健康保険に加入している場合は要注意です。確定申告して総合課税を選ぶと配当が所得に加算され、国保の保険料負担が増えます。配当控除で削減できる所得税と増える国保負担を比較して判断してください。
なお、配当控除は配当所得に対する制度であり、売却益(キャピタルゲイン)には適用されません。実務的には株式投資で売却益を中心に儲けている方がほとんどで、配当控除を選ぶケースは比較的少ないという印象です。
確定申告すべきかどうかをまとめると次のようになります。
| 判断 | 該当する人 |
|---|---|
| 申告しない方がよい | 課税所得695万円超の人、所得を上げたくない人、配偶者控除等の制限に引っかかりたくない人、国民健康保険で保険料を増やしたくない人 |
| 申告した方がよい | 課税所得695万円以下の人(無職・専業主婦など)、配当控除で節税したい人 |
📝 このセクションのまとめ
- 確定申告すると株の儲けが所得に合算され、各種控除の制限に引っかかる可能性がある
- 課税所得695万円以下なら配当控除で税率が下がりお得になる場合がある
- 国民健康保険加入者は保険料増加との比較が必要
- 配当控除は売却益には適用されない
【事例2】複数口座の損益通算と繰越控除で税金を取り戻す方法
次は、売却損が出ているケースです。1つの特定口座(源泉徴収あり)の中で売却損と配当金がある場合、証券会社が自動的に相殺して税額を計算し直してくれます。
例えば、売却価格420,274円に対して購入金額424,272円で売却損が出ている場合、配当収入577円からこの損失3,998円を引いて1,781円に対して税金を再計算します。取り過ぎた所得税612円・住民税199円は、年が明けてから精算されて証券口座の持ち主に返金されます。同一口座内の損益通算は確定申告不要で自動的に行われます。
ただし、次のケースでは確定申告をした方がお得になります。
- 別々の口座で売却損と売却益(または配当)がある場合
- 売却損が配当金を大きく上回る場合(翌年以降への繰越しが可能)
具体的な例で見てみましょう。A口座で売却損300万円、B口座で配当金100万円(税金約20万円が徴収済み)というケースです。
📌 損益通算の仕組み
確定申告をすることでA口座の損失とB口座の配当を合算・相殺できます(申告分離課税)。配当100万円に対して売却損300万円が大きく上回るため、徴収済みの約20万円が全額還付されます。さらに余った損失200万円は翌年以降最長3年間繰り越しできます。
翌年に200万円の株の儲けが出た場合、本来40万円の税金がかかりますが、繰り越した損失200万円と相殺できるため、この40万円も還付されます。本格的に株式投資をされている方はこの損益通算・繰越控除をフル活用することをおすすめします。
国税庁の手引きの事例では、株の売却損21万9,000円に対して配当金が8万円+2万円=10万円あるケースで、相殺後に徴収済みの税額約2万円が還付され、残りの損失約10万円強を翌年以降に繰り越すというパターンが紹介されています。
申告すべきかどうかの判断基準をまとめます。
| 判断 | 該当する人 |
|---|---|
| 申告しない方がよい | 所得を上げたくない人、配偶者控除等の制限に引っかかりたくない人、損失より利益が圧倒的に大きく国保負担が増える人、申告手続きが面倒な人 |
| 申告した方がよい | 別口座間で損益通算したい人、損失を翌年以降に繰り越して未来の節税をしたい人 |
⚠️ 注意:損失の繰越しは放置すると権利を失います
大きな損失が出ているのに「どうせ赤字だから」と確定申告を放置している方が意外に多くいます。医療費控除などで確定申告を済ませてしまった後では修正が効きません。今月中に特定口座年間取引報告書を見直し、未来の節税チャンスを失っていないか確認しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 同一口座内の損益通算は証券会社が自動でやってくれる
- 別口座間の損益通算は確定申告が必要(申告分離課税)
- 損失は最長3年間繰り越せる(繰越控除)
- 損失を放置すると繰越しの権利を失うので注意
【事例3】米国株投資と外国税額控除の活用
楽天証券の特定口座年間取引報告書の例では、売却益477,445円・配当金131,968円がある状態で、2枚目に外国所得税の額12,437円という数字が入っています。米国株投資をしている方はもう一つ注意が必要です。
米国株の配当には、まずアメリカで10%の外国税が徴収されます。その後に日本で20.315%の所得税・住民税が徴収されるため、トータルの税負担は約28%になります。
📌 外国税額控除とは
確定申告をすることで、海外で徴収された外国税を日本の所得税から取り戻せる制度です。ただし、全額が戻ってくるとは限りません。控除限度額は「その年の所得税 × 外国所得÷全所得」という計算式で算出され、外国所得の割合分しか控除されません。限度額を超えた部分や余裕がある場合は、最長3年間繰り越すこともできます。
また、日米租税条約により、外国税が徴収されるのは配当金だけです。売却益には外国税はかかりませんのでご安心ください。
⚠️ NISA口座で米国株を持っている方への注意
NISAは「国内の税金が非課税」になる制度です。NISA口座で米国株の配当をもらった場合、アメリカで徴収される外国税(10%)は非課税になりません。銘柄選びの際は安易に飛びつかないよう気をつけましょう。
申告すべきかどうかの判断基準は次の通りです。
| 判断 | 該当する人 |
|---|---|
| 申告しない方がよい | 所得水準を上げたくない人、住宅ローン控除等の制限に引っかかりたくない人、外国税額控除の手続きが面倒な人 |
| 申告した方がよい | 少しでも外国税を取り戻したい人、ポートフォリオのほぼ全てが米国株の配当という人(ただし国保加入者は保険料増加に注意) |
📝 このセクションのまとめ
- 米国株の配当は外国税10%+国内税20.315%で合計約28%の税負担
- 確定申告で外国税額控除を使えば外国税を一部取り戻せる
- ただし全額は戻らない場合があり、手続きも複雑
- NISA口座でも米国株の外国税は非課税にならない
- 外国税がかかるのは配当のみ。売却益には外国税なし
確定申告の方法(総合課税・申告分離課税・申告不要)の選択まとめ
配当に関しては税金の計算方法が3パターンあります。どれを選ぶかで税負担が大きく変わります。
| 方式 | 確定申告 | 対象者 | 使える特例 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 申告不要(特定口座源泉徴収あり) | 不要 | 税率が高い人、所得を増やしたくない人、国保加入者 | 同一口座内の損益通算のみ | 配当控除・外国税額控除・別口座間の損益通算・繰越控除は使えない |
| 総合課税 | 必要 | 課税所得695万円以下で配当控除を受けたい人 | 配当控除 | 税率が5〜45%に変わる。住民税も10%になる |
| 申告分離課税 | 必要 | 赤字の損益通算・外国税額控除を受けたい人 | 損益通算、繰越控除、外国税額控除 | 所得が増えると国保・扶養・各種控除の制限に引っかかる可能性 |
なお、2025年から金融所得課税の強化がスタートしていますが、これは所得が何億円もある人向けの話であり、多くの方には現時点で影響がありません。
📝 このセクションのまとめ
- 配当の課税方式は「申告不要」「総合課税」「申告分離課税」の3択
- 課税所得695万円以下なら総合課税(配当控除)が有利な場合が多い
- 損失の繰越し・別口座間の損益通算・外国税額控除は申告分離課税で申告が必要
- 2025年からの金融所得課税強化は超高所得者向けで一般的な投資家への影響はほぼない
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
