空き家撲滅5つの法改正を税理士が解説|税金・相続・登記の最新情報2024
国が空き家撲滅へ本格始動。2024年施行の5つの法改正と税金・相続の最新情報を解説します。
空き家を放置すると損するだけ|増え続けるデメリット
空き家をすでに持っている方、またはこれから相続などで空き家を持つかもしれない方にまず知っておいていただきたいのが、空き家は放置すると損するだけだということです。
放置によるデメリットは多岐にわたります。
- 破損や倒壊事故が起きた場合、持ち主の責任問題になる
- 放火・暴行・殺人・詐欺・大麻栽培などの犯罪が起きた場合も責任の一端を負う可能性がある
- 近隣の不動産価値が下がる
- 毎年固定資産税などの税金がかかり続ける
では空き家を解体して更地にすればよいかというと、普通の一戸建てで解体費用は約100万〜300万円かかります。さらに更地にすると固定資産税が増えるという問題もあります(詳細は次のセクションで解説)。
⚠️ 注意
解体費用に数百万円かかり、さらに更地にすると税金が増えるという二重の負担があるため、空き家を解体しようという人はなかなか増えません。その結果、街がゴーストタウン化したりシャッター通りが増えたりする状況が現在進行形で続いています。こうした背景から、国は空き家撲滅政策を次々と打ち出しています。
📝 このセクションのまとめ
- 空き家の放置は事故・犯罪・税金など多くのリスクを生む
- 解体費用は100万〜300万円、かつ更地にすると固定資産税が増える
- 国は空き家撲滅のために5つの法改正を実施している
【法改正①】管理不全空き家制度|固定資産税が約4倍になる新制度
毎年発生する固定資産税について、まず基本的な仕組みを確認しましょう。固定資産税は役所が決めた評価額をもとに課税標準額を算出し、そこに固定資産税率1.4%(市街地の場合はさらに都市計画税0.3%)を掛けて毎年納める必要があります。
土地については「小規模住宅用地」であれば以下の減額特例が適用されます。
| 税の種類 | 通常の税率 | 小規模住宅用地の減額 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 評価額 × 1.4% | 課税標準額が評価額の 1/6 |
| 都市計画税 | 評価額 × 0.3% | 課税標準額が評価額の 1/3 |
例えば土地・建物合わせて固定資産税が年間10万円だった家があるとします。これは小規模住宅用地の減額が効いているからこそ10万円なのであって、住宅がない更地の状態になるとこの減額がなくなります。固定資産税の1/6減額がなくなると単純計算では6倍になりますが、負担調整という制度もあるため、実際には約4倍(10万円→40万円)程度になります。
これまでの日本では、空き家になってボロボロになっても家が残っていれば固定資産税が10万円のままで済んでいました。そのため世の中に空き家が増え続けるという悪循環がありました。
この状況を改善するために、まず「特定空き家」(倒壊の危険がある空き家)については、小規模住宅用地の減額特例を適用しないという制度が設けられました。固定資産税が10万円から40万円になり、さらに50万円以下の過料(罰金的なもの)が課せられます。
📌 ポイント:管理不全空き家(2023年12月〜)
今回の法改正①として注目されるのが、2023年12月からスタートした「管理不全空き家」制度です。完全に倒壊の危険があるレベルまでいかなくても、壁に亀裂があったり窓が割れているような状態の空き家が対象になります。管理不全空き家に指定されると、特定空き家と同様に固定資産税が約4倍になり、50万円以下の過料が発生します。つまり、税金を増やす「空き家」の対象範囲が大幅に拡大されたということです。
さらに注目されているのが、2026年から京都市でスタートする「非居住住宅利活用促進税」(通称:空き家税)です。住んでいない住宅(空き家や別荘)に対して、家屋価値割0.7%・敷地床面積割0.15%〜0.6%という形で、おおよそ年間1%前後の税金をかけるものです。京都市の事例が成功すれば、全国に波及する可能性があります。
📝 このセクションのまとめ
- 更地にすると固定資産税が約4倍になる
- 2023年12月〜「管理不全空き家」制度スタート。壁の亀裂・窓の破損でも固定資産税4倍+過料の対象に
- 2026年〜京都市で空き家税(年約1%)が導入予定。全国波及の可能性あり
【法改正②】相続登記の義務化|2024年4月から罰則あり
2024年4月から相続登記の義務化がスタートしています。これが今回取り上げる法改正の2つ目です。
| 対象 | 期限 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 新たな相続(2024年4月以降) | 相続開始から3年以内に登記申請 | 10万円以下の過料 |
| 過去の未登記相続 | 2027年までに登記申請 | 同上 |
| 住所変更登記(2026年4月〜) | 引っ越し後に住所変更登記が義務化 | 義務化に伴い罰則あり |
登記簿の名義がおじいちゃんやひいおじいちゃんのままになっているケースは珍しくありません。そういった古い未登記相続も、2027年までに必ず登記しなければなりません。
⚠️ 注意:10年間登記しなかった場合
相続登記を10年間しなかった場合、法律で定められた法定割合で分割され、それぞれの相続人に個別に管理義務と固定資産税が課せられます。例えば相続人が5人いれば、その土地・建物は1/5ずつの管理義務と固定資産税の納付義務が生じます。
なぜここまで相続登記をさせたいのかというと、登記ができない土地・建物は売買ができないからです。売買できない土地・建物はいずれ空き家になります。国としては円滑に売買させることで空き家をなくしたいという意図があります。
📝 このセクションのまとめ
- 2024年4月〜相続登記が義務化。未登記は10万円以下の過料
- 過去の未登記相続も2027年までに登記が必要
- 2026年4月〜住所変更登記も義務化
- 10年間登記しないと法定割合で分割され、各相続人に管理義務・固定資産税が課される
【法改正③】空き家特例の改正|2024年から「空き家のまま売れる」に
相続で空き家を受け取り、特に使い道がなければ売るという選択肢が多いと思います。この場合の税金の流れを確認しておきましょう。
| タイミング | 税金の種類 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 相続時 | 相続税 | 10%〜55%(課税遺産額による) |
| 売却時(5年超保有) | 所得税・住民税 | 約20% |
相続税と売却時の所得税が二重にかかる可能性があります。ただし、早く売ると税制上の優遇があります。
📌 ポイント:相続税の取得費加算
相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、「相続税の取得費加算」として支払った相続税を経費として認められます。その分、売却時の所得税が安くなります。早期売却が税務上有利になる理由の一つです。
そして今回の法改正③として特に注目されるのが、「相続空き家の3,000万円控除(空き家特例)」の改正です。
この特例は、親が住んでいた家が空き家になった場合、更地にするかリフォームして耐震工事をした家にして売れば、売却益に対して3,000万円控除(利益が3,000万円以下なら税金ゼロ)が使えるというものでした。しかし更地にするには解体費用が数百万円かかり、リフォームして売るにもお金がかかります。
そこで2024年の法改正により、ルールが大きく変わりました。
- 売り主は空き家のまま売ってよい
- 買い取った側が更地にするか耐震リフォームをすれば、売り主側が3,000万円控除を使える
- 相続人が3人以上の共有名義の場合は、各人2,000万円ずつの控除に変更(一部縮小)
要するに、空き家特例を使いながら気楽に売りやすくなりました。
📌 空き家特例の適用条件
- 昭和56年5月以前に建築された建物(旧耐震基準の建物)であること
- 売却価格が1億円以下であること
- 相続開始から3年後の12月31日までに売却すること
📝 このセクションのまとめ
- 相続空き家の売却には相続税と所得税が二重にかかる可能性がある
- 相続開始から3年10ヶ月以内の売却で「取得費加算」が使え、所得税が安くなる
- 2024年〜空き家特例が改正。空き家のまま売っても3,000万円控除が使えるようになった
- 適用条件は旧耐震基準(昭和56年5月以前)・売却価格1億円以下
【法改正④】相続土地国庫帰属制度|不要な土地を国に手放せる新制度
相続で受け取った空き家が過疎地域や不便な土地にある場合、市区町村に寄贈しようとしても実際にはほぼ無理です。市区町村も便利な土地は公園などに活用できますが、不便な土地は使い道がありません。
そこで誕生した新制度が、法改正④の「相続土地国庫帰属制度」です。2023年4月からスタートしています。
この制度の主な条件と費用は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 相続または遺贈で取得した土地(過去の相続も可) |
| 土地の種類 | 宅地・田・畑・森林・雑種地・原野など |
| 審査手数料 | 1筆あたり1万4,000円 |
| 負担金 | 原則20万円 |
| NG条件 | 崖地・担保付き・ゴミがある・権利争いがある土地は不可 |
一方、都市部や利便性がある土地の場合はまだまだ選択肢があります。
- そこに住み続ける
- とにかく維持し続ける
- 管理を誰かに依頼する
- リフォームして誰かに貸し出す
- 売却する(最も手っ取り早い)
📝 このセクションのまとめ
- 2023年4月〜「相続土地国庫帰属制度」スタート。不要な土地を国に手放せる
- 審査手数料1筆1万4,000円+負担金原則20万円で申請可能
- 崖地・担保付き・ゴミあり・権利争いありの土地は対象外
空き家の売り方|仲介と直接買取りの徹底比較
空き家の一般的な売り方は、不動産仲介会社を通じて買い手が現れるのを待つ方法です。しかし空き家の場合、相続税を急いで支払わなければならない、家族間で争いがあって早くお金で解決したいなど、時間的な余裕がないケースも多くあります。そういった場合は不動産会社による直接買取りという方法もあります。
仲介と直接買取りを比較すると以下のようになります。
| 比較項目 | 仲介 | 直接買取り |
|---|---|---|
| 買い手 | 幅広い(個人・法人) | 不動産会社のみ |
| 売却価格 | 希望価格に近い | やや低めになることも |
| 売却までの時間 | 時間がかかる | 早い(早い業者は営業日内に入金も) |
| 手間 | 内見対応など手間がかかる | 手間が少ない |
| 仲介手数料 | かかる | なし |
| 売り主の責任(契約不適合責任) | 残る | 買取り時点で消滅 |
仲介の場合、売り主の責任(契約不適合責任)は売却後も残ります。つまり売ってから欠陥が見つかった場合、売り主の責任になる可能性があります。一方、直接買取りの場合は不動産会社が買い取った時点で売り主の責任はなくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 急いで現金化したい場合は直接買取りが有効
- 直接買取りは仲介手数料なし・売り主責任なし・スピード売却が可能
- 仲介は希望価格に近いが時間がかかる
【法改正⑤】仲介手数料の上限改正|800万円以下は最大33万円に
仲介を使う場合の手数料について、法改正⑤があります。
これまで仲介手数料は売却価格の3%+6万円が一般的でした。しかし2024年7月から、売却価格が800万円以下の場合は最大33万円に変更されました。
📌 なぜこの改正が行われたのか
例えば500万円の土地の場合、3%だと仲介手数料は15万円+6万円=21万円程度となり、仲介会社にとって手数料が安すぎてあまり積極的に動けないという問題がありました。800万円以下の物件でも最大33万円まで手数料を取ってよいとすることで、仲介会社が低価格物件でも積極的に動けるようにした国の方針です。
空き家の売却では仲介手数料が最低でも33万円かかると想定しておきましょう。多くの場合、業者は上限の33万円を請求してきます。
📝 このセクションのまとめ
- 2024年7月〜売却価格800万円以下の仲介手数料上限が最大33万円に変更
- 空き家売却では仲介手数料として最低33万円を見込んでおく
- 直接買取りの場合は仲介手数料不要
不動産会社から聞いた!空き家を高く売る3つのテクニック
不動産会社への取材で聞いた、空き家をできるだけ高く売るためのテクニックを3つ紹介します。
テクニック①:「今月中に売る」と伝える
業者に売却を相談する際、「売る業者はまだ決めていないが、今月中に売る」と伝えると価格を上げやすいそうです。不動産会社には毎月ノルマがあるため、「今月中」と言われると積極的に動く気持ちが高まります。必ず価格が上がるわけではありませんが、交渉の際に意識してみてください。
テクニック②:行政の解体助成金を活用してから売る
空き家の建物については、行政が解体のための助成金を出しているところが多くあります。この助成金は個人だから使えるケースが多く、業者が買い取った後では使えないことがほとんどです。
- 個人が200万円かけて解体→100万円の助成金が出る→実質100万円の負担
- 買取り業者にとっては200万円の解体費用が不要になる
- その分、200万円高く買い取ってもらえる可能性がある
助成金の内容は自治体によって大きく異なります。書類の申請手続きを手伝ってくれる不動産会社もあるので、相談してみましょう。
テクニック③:複雑な権利関係を事前に解消しておく
複数の相続人が入っている共有名義状態や、ひいおじいちゃんからの相続が何代にもわたって積み重なった「数次相続」の状態では、仲介・直接買取りを問わず売却が非常に困難になります。
⚠️ 注意
権利関係が複雑に絡まっている場合は、売却前に専門家(弁護士など)を入れて権利関係を解消することを強くおすすめします。放置すると売却自体ができなくなる可能性があります。
📝 このセクションのまとめ
- 「今月中に売る」と伝えることで業者の積極性を引き出せる場合がある
- 行政の解体助成金を活用してから売ると、その分高く買い取ってもらえる可能性がある
- 共有名義・数次相続など複雑な権利関係は事前に専門家で解消しておく
📌 5つの法改正まとめ
| 法改正 | 内容 | 施行時期 |
|---|---|---|
| ①管理不全空き家制度 | 壁の亀裂・窓の破損でも固定資産税約4倍+過料 | 2023年12月〜 |
| ②相続登記の義務化 | 相続から3年以内に登記義務。未登記は10万円以下の過料 | 2024年4月〜 |
| ③空き家特例の改正 | 空き家のまま売っても3,000万円控除が使えるように | 2024年〜 |
| ④相続土地国庫帰属制度 | 不要な土地を国に手放せる(負担金原則20万円) | 2023年4月〜 |
| ⑤仲介手数料上限改正 | 800万円以下の物件は最大33万円に | 2024年7月〜 |
国は「アメとムチ」の両方を使って空き家撲滅を推進しています。ムチ(税金・罰則)がさらに厳しくなる前に、早めに売却などの対策を準備しておくことが重要です。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
関連記事
不動産売却の譲渡所得税とは?課税対象と計算方法を税理士が解説
相続した売れない土地の処分方法3選|弁護士が解説する負動産対策
小規模宅地等の特例を税理士がわかりやすく解説|80%引きの条件と注意点
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
