YouTuberが法人化に失敗する理由を税理士が解説|収益構造と税金の落とし穴
なぜ有名YouTuberは法人化に失敗するのか?収益構造と税金の観点から、YouTuber専門の税理士が徹底解説します。
相次ぐYouTuberの法人化トラブル
最近、「動画制作会社が赤字、裏方が代謝(退社)」「YouTuberの法人化が成功しにくい理由を考える」といった記事がちらほら出てくるようになりました。YouTuberの会社がうまくいっていないという報道が増えています。
具体的な事例として、以下の2件が大きく報道されました。
| 発覚時期 | 登録者数 | トラブル内容 | 現状 |
|---|---|---|---|
| 2024年7月 | 約452万人 | 総勢9人いたスタッフのうち6名がチームを去り、残業代が未払いだったと報道 | 残業代は決済済み |
| 2020年3月 | 約67万人 | 財務状況の悪化によりメンバーがYouTuberと保険会社の営業を兼業。2023年末にスタッフが全員退職、借金が1億2000万円あると動画で公表 | 現在は経営が順調とのこと |
こういった報道が出るたびにSNSでは「YouTuberはオワコン」「学生気分が抜けていない」「経営をなめている」といった意見がたくさん出ます。実際のところは各YouTuberによっても違いますし、成功している方もいれば失敗している方もいて本当に千差万別です。
芸能人やYouTuberを専門にしている会計事務所で大物YouTuberのお客様を50人以上担当している立場から、YouTuber経営の問題点・難しさについて解説します。この話はもちろんYouTuberに限らず、個人事業主や中小企業経営者といったあらゆる商売につながる問題点でもあります。
📝 このセクションのまとめ
- 有名YouTuberの法人化トラブルが相次いで報道されている
- 残業代未払い・多額の借金など、経営上の深刻な問題が表面化
- この問題はYouTuberだけでなく、あらゆる業種の経営者に共通する
会計士視点で見る「商売の4タイプ」
会計士の視点で申し上げると、世の中のありとあらゆる商売は次の4タイプしか存在しません。
| 収入の頻度 | 収入の金額 | 評価 |
|---|---|---|
| 定期的 | 高収入 | 最高だが滅多に存在しない |
| 不定期 | 高収入 | 爆発力はあるが経営が安定しない |
| 定期的 | 低収入 | 安定しているが効率的には稼げない |
| 不定期 | 低収入 | 最悪。すぐに転職すべき |
一番いいのは「定期的に高収入が入ってくる」ビジネスですが、こんなものは滅多にありません。なぜなら、仮に定期的に高収入が入ってくるビジネスがあったとしても、みんなそこに参入しますからライバルが増えて、定期的な高収入はいつかなくなります。よほど特許や規制で守られているところ以外は、この「定期的に高収入」は存在しません。
一方「不定期低収入」のビジネスについては、やらない方がいいです。たまにちょっとしかお金が入ってこないビジネスは絶対に長続きしません。自分のやっているビジネスがこれだと思ったら、すぐに転職した方がいいと思います。
なので世の中にある商売のほとんどは「不定期に高収入」か「定期的な低収入」のどちらかになります。
📌 ポイント:最も安定した経営スキーム
世の中の商売で最も良いビジネススキームは、「不定期な高収入」と「定期的な低収入」の両方をバランスよく持つことです。この両方を兼ね備えることで、経営が安定して効率的に稼ぐことができます。
例えば税理士業界でうまくいっている会計事務所というのは、毎月安い顧問料をちゃんともらっていて(定期低収入)、たまに会社のオーナーが亡くなられて相続税という利幅の大きい仕事が入ってきたり、節税保険を売ってその手数料がドカッと入ってきたりする(不定期高収入)、この両方を兼ね備えることで事務所が回っていきます。各業界でそういったスキームがあると思います。
📌 ポイント:売上の種類によってカバーする支出が変わる
- 定期低収入をベースに→ 固定費(人件費・家賃など)を払う
- 不定期高収入をベースに→ 臨時支出(設備投資・突発的費用)を払う
📝 このセクションのまとめ
- 商売は「定期/不定期」×「高収入/低収入」の4タイプに分類できる
- 「不定期高収入」と「定期低収入」の両方を持つことが経営安定の鍵
- 定期低収入で固定費を、不定期高収入で臨時支出をカバーする
YouTuberの収益構造を4タイプに当てはめると
この商売の4タイプをYouTuberに当てはめるとどうなるのか。大まかに言うと、YouTubeで流れているCMから入ってくるアドセンス収入などの広告収入は不定期高収入に入ります。
「広告って毎日入ってくるから定期的な低収入じゃないの?」と思うかもしれませんが、YouTuberなどのインフルエンサー業界的には広告収入はめちゃめちゃ不定期です。スーパーチャットなどの投げ銭、グッズ収入、イベント収入、企業案件なども同様に不定期な高収入になります。
では、なぜ広告収入が不定期高収入なのか。実際のYouTuberの収益構造を見てみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| チャンネル登録者数 | 約90万人(専門家解説タイプ) |
| 投稿頻度 | 週1〜2本 |
| 月間再生数 | 100万〜400万回 |
| 企業案件 | 年3本程度、1本あたり100万〜300万円 |
| 年間売上 | 約3000万円(うち約8割が広告収入) |
広告収入は登録者数に関係なく、再生回数に比例します。例えば月間再生数が100万回なら月約50万円、400万回なら月約200万円入ってくる計算です。動画が当たった月は200万円入ってくるけど、当たらなかったら50万円。これはもう不定期高収入でしかないですよね。
📝 このセクションのまとめ
- YouTuberの広告収入は再生回数に比例し、毎月大きく変動する
- 企業案件・投げ銭・グッズ収入も不定期高収入に分類される
- 収益の大半が不定期高収入に偏っているのがYouTuberの特徴
登録者数90万人YouTuberの収益モデルを公開
先ほどの登録者数90万人のYouTuberの収益構造を、管理会計の観点から詳しく見ていきましょう。
📌 管理会計の用語について
以下で使う「変動費」「固定費」「臨時支出」は、上場企業が決算で発表する企業会計とは別の概念です。経営を分析する際に使う管理会計の用語です。
| 項目 | 金額(年間) | 内容 |
|---|---|---|
| 年間売上 | 3,000万円 | うち約8割が広告収入 |
| 変動費 | ▲100万円 | サムネイル外注費、テロップ外注費など |
| 売上総利益(粗利) | 2,900万円 | — |
| 固定費 | ▲50万円 | Adobe等の編集ソフト(毎月定額) |
| 臨時支出 | ▲100万円 | PC・撮影機材・取材費・コラボ出張費など |
| 当期純利益 | 2,750万円 | — |
| 税金 | ▲1,200万円 | — |
| 手元に残るお金 | 1,550万円 | — |
これだけ見るとYouTuberはめちゃめちゃ儲かると思うかもしれませんが、税金が最大のコストになっているのがわかります。この点については後ほど詳しく触れます。
では、仮に動画の本数を増やすために社員を2人雇って、専用スタジオを月20万円で借りるといったことをするとどうなるでしょうか。
| 項目 | 1人運営の場合 | スタッフ2人+スタジオの場合 |
|---|---|---|
| 年間売上 | 3,000万円 | 3,000万円(同じ前提) |
| 固定費(追加分含む) | ▲50万円 | ▲1,100万円(人件費・スタジオ代等追加) |
| 当期純利益 | 2,750万円 | 1,700万円 |
| 税金 | ▲1,200万円 | ▲750万円 |
| 手元に残るお金 | 1,550万円 | 950万円 |
さらに、売上が3,000万円から1,000万円に下がった場合を考えてみましょう。YouTubeでは広告単価が1再生0.5円から0.2円に下がるといったことはめちゃめちゃよくある話です。
⚠️ 注意:売上が下がっても固定費は急に下げられない
スタッフを雇ってスタジオを借りている状態で売上が1,000万円に下がると、固定費は急に削減できないため、当期純利益が▲300万円の赤字に転落します。収入の構造がYouTuberの場合は不定期高収入に偏りすぎるため、この事態が起きやすいのです。
📝 このセクションのまとめ
- 登録者90万人でも年間売上3,000万円のうち税金は約1,200万円と重い
- 人件費・スタジオ代などの固定費を増やすと、売上変動時のリスクが一気に高まる
- 広告単価の下落など、YouTubeの収益は外部要因で大きく変動する
人を雇う前に「定期低収入」を確保せよ
賢いYouTuberは定期低収入を作る工夫をしています。具体的には以下のような方法です。
- メンバーシップ(月額課金サービス)
- 年間契約のスポンサーを見つける(ゲーム配信系に多い)
- 自分の専門性を生かしたコンサル契約を結ぶ
定期低収入があると固定費を賄いやすくなります。なぜなら、最低限入ってくるお金がわかれば、人件費にしても家賃にしても「じゃあその額までに抑えよう」という計算ができるからです。
📌 YouTuber経営の基本フレームワーク
- 変動費:売上から自動的にカバーできるのであまり気にしなくてよい
- 固定費(人件費・家賃):定期低収入でカバーする
- 臨時支出(設備投資等):不定期高収入でカバーする
売上を「定期低収入」と「不定期高収入」に分け、経費を「変動費」「固定費」「臨時支出」に分けて管理する。これを理解できていれば、途中でスタッフを突然解雇したり、残業代が払えなくなるという事態は本来ありえないはずです。
人を雇うには定期低収入がどれくらいあるかを考える。これは経営の初歩中の初歩です。会計士はどの商売でも、今のビジネスが不定期高収入に偏りすぎていたら「定期低収入は何かないですか?」とアドバイスします。逆に定期低収入しかない場合は「不定期高収入を何とか探しましょう」と助言するわけです。
📝 このセクションのまとめ
- スタッフを雇う前に、人件費を賄える「定期低収入」を確保することが必須
- メンバーシップ・年間スポンサー・コンサル契約などで定期収入を作る
- 「定期低収入で固定費、不定期高収入で臨時支出」の原則を守る
税金が原因で法人化が失敗するメカニズム
有名YouTuberが法人化に失敗するもう一つの大きな理由が税金です。YouTuberは社会的信用があまりないため、会社を作って信用を作るという目的や、節税のために法人を作るというのはよくある話です。
ただし、この法人化は税金の面でかなりの落とし穴があります。それぞれの納税状況を比較してみましょう。
| 立場 | 税金の天引き | 納税意識 |
|---|---|---|
| 会社員 | 給与から事前に源泉徴収される | あまり意識しなくてよい |
| 個人事業主 | 業種によって源泉徴収あり・なし(講演・音楽・コンサル・デザインなどは源泉あり) | 源泉なし業種は納税意識が強くなる |
| 法人(会社) | ほぼ事前天引きなし | 利益が出たらほぼ必ず納税が必要 |
初めて法人を作った方はやはり納税が嫌なんですよね。できれば1円でも払いたくない。先ほどの例でも利益が2,750万円出たら税金が1,200万円。利益がめっちゃ出やすい業種ほど税金が最大のコストになります。
「だから本当に払いたくない」となった場合、どうなるか。
⚠️ 注意:「経費を使えば節税できる」という発想の危険性
税金を払わないための取り替え方法として「経費をバンバン使う」という選択をしがちです。経費を使えば利益が減り、納税も少なくて済むからです。特にYouTuberの場合は動画にすることで経費にしやすい傾向があります(もちろん全部が全部ではなく、税務調査で税務署と戦うケースもあります)。
この「何でも経費にしている」状態は、従業員から見ると「社長だけ遊びも旅行も食事も全部経費にしている」「自分たちの給料は少ないのに社長だけ爆買いしている」という不信感につながります。こうした社長と従業員の格差問題が起きやすいのがYouTuberの特徴でもあります。
納税資金不足が引き起こす悪循環
さらに深刻なのが、納税資金不足による悪循環です。YouTuberに限らず言えることですが、とにかく税金よりも仕事を優先しがちという問題があります。
YouTuberで言うと、「納税するぐらいなら動画の企画や経費に使いたい」という発想になりがちです。Googleからの入金は8月分の動画なら9月20日頃には入金があるなど、入金サイクルが早いです。一方、納税は1年経った後になります。
この時間差が問題を引き起こします。
- 手元にお金があるのでどんどん経費をかけすぎてしまう
- いざ納税の時期になると「お金がない、どうしよう」という状態になる
- 知り合いや金融機関から借金をする
- 借金を返済しても税金は安くならないのでどんどん苦しくなっていく
⚠️ 注意:個人事業主の延長線上で会社を作ってはいけない
個人事業主として1人でYouTubeをやっている分にはこういった問題は起きにくいのですが、「会社にして人を雇おう」となると全く別物です。器としては会社なのに、実際のマインドや作業自体は個人事業主のままというスタイルであればまだうまくいくかもしれませんが、「会社を作って組織として大きくするんだ」となった途端に難しくなるのがYouTuberの特徴です。これは皆様の業界でも近い話があるかもしれません。
📝 このセクションのまとめ
- 法人化すると税金の天引き制度がほぼなくなり、自分で納税資金を管理しなければならない
- 「経費を使って節税」という発想が従業員との格差・不信感を生む
- Googleからの入金は早いが納税は1年後という時間差が資金管理を難しくする
- 個人事業主のマインドのまま法人化・組織化しようとすると失敗しやすい
まとめ:YouTuber法人化失敗を防ぐ2つの鉄則
有名YouTuberが次々と法人化に失敗する理由を整理すると、主に以下の2点に集約されます。
📌 鉄則①:定期低収入を確保してから固定費・人件費を払う
YouTuberの収益は不定期高収入に偏りがちです。スタッフを雇う前に、まず人件費を安定してカバーできる定期低収入(メンバーシップ・年間スポンサー・コンサル契約など)を確保することが必須です。定期低収入がないまま人を雇うことは、経営の初歩的なミスです。
⚠️ 鉄則②:利益が出る業種ほど納税が最大のコストになることを忘れない
利益がたくさん出やすい業種は、納税が最大のコストになります。税金から逃れようと経費を使いすぎると、従業員との関係悪化や納税資金不足を招きます。国家権力である税務署はどこまでも追ってきますから、ここを軽視すると後で非常に苦しくなります。
この2点はYouTuberに限らず、個人事業主や中小企業経営者など、あらゆる商売に共通する経営の基本原則です。自分のビジネスの収益構造を「定期低収入」と「不定期高収入」に分けて把握し、それぞれの支出をどちらでカバーするかを明確にすること。これが安定した経営への第一歩です。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
関連記事
会社設立1年目の役員報酬の決め方を税理士が解説|失敗事例と3つのパターン
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
